1話 感じていること
ー朝 喫茶店ー
まふゆ(…適当な喫茶店に入ってしまった。瑞希が目覚めて1週間が経って、休みの日に瑞希の家に向かう。ナイトコードでチャットしたり、セカイで話したりはできる。でも、やっぱり直接会って話したい。かつて皆が私のためにしてくれたように、瑞希と向き合いたい。そう思って歩いていたら、丁度前からお母さんが歩いてきて、咄嗟に近くの喫茶店に入ってしまった)
店員「ご注文はお決まりですか?」
まふゆ「コーヒーでお願いします」
店員「わかりました」
まふゆ(お母さんとは、少し疎遠になっている。皆のお陰で私は少し救われたけど、お母さんとは今もちゃんと話せてはいない。結局、皆の家に匿ってもらいながら宮女に通って、卒業してすぐに大学の寮に入ってしまった)
「はぁ…」
まふゆ(溜息をついても何も変わらない。あのとき、皆は私のために頑張ってくれた。それに、瑞希が逃げるという選択肢をくれなかったら私は壊れていたかもしれない。だけど、皆に恩を返す前に瑞希は記憶喪失になってしまった。私が瑞希のことを考えているのは、きっとその恩を、あのときの瑞希を忘れられないからなのだろう。折角だから、この喫茶店に瑞希を呼ぼうかな)
雪『Amia、今暇?』
Amia『うん、暇だよ。暇だから、Kと勉強してる。明後日から、学校に行かなきゃだからね』
まふゆ(瑞希も学生だから、学校に行かないといけない。神高の先生方も、瑞希の為に寝ていた間の授業内容を纏めたプリントを用意してくれた。それに、病み上がりで無理はさせられないからと1週間は公欠としてくれた)
雪『今、喫茶店に居るから来て。勉強教えるから』
Amia『わかった。行くね』
K『わたしも、準備して行くね』
雪『うん。待ってる』
店員「おまたせしました、ご注文のコーヒーです」
まふゆ「ありがとうございます」
店員「少し苦目ですので、お好みで砂糖を使ってお飲みください」
まふゆ「はい、わかりました」
まふゆ(どうせあまり苦くないだろうと勢いよく飲む)
まふゆ「!!」
(ほ、本当に苦い。前まで味を感じなかったから、最近は味の薄いものを食べて少しずつ色んな味を確かめてた。皆が薄味って嫌がるものでも、私は泣きながら美味しいって食べることもあった。そんな私には、このコーヒーは少し刺激的すぎたみたいだ。急いで渡された砂糖を全部入れて口直しに一口飲む)
まふゆ「!?」
(思わず吐き出しそうになるのをぐっと堪える。これは甘過ぎる。砂糖は渡された分しか入れてないのに、なんでこんなに甘いんだろう。それに、皆『砂糖を沢山入れると甘くて美味しい』って言ってたのに。こんな味を皆は美味しいって感じるの?)
店員「あの、大丈夫ですか?」
まふゆ「だ、大丈夫です」
まふゆ(1度深呼吸をして落ち着く。このコーヒーは、後で瑞希か奏に飲んでもらおう。これ以上飲んだら吐いてしまいそう)
ー数分後ー
まふゆ(喫茶店の扉が開く。特徴的な桃色の髪が見えて、私は手招きしてから、さっきのコーヒーに口をつけて飲むふりをする。もし絵名が居たら、コーヒーを飲めないと馬鹿にされる気がしたから。だけど、近付いてきたのは瑞希達ではなく)
???「あ、朝比奈センパイ? なな、なんのごようでしょうか…?」
まふゆ「…あれ、鳳さん?」
えむ「はひ!」
まふゆ「ごめん、人間違いしちゃった」
えむ「そ、そうなんですね! 朝比奈センパイでも間違えますよね!」
まふゆ「うん、本当にごめんね、鳳さん」
えむ「だ、大丈夫です! 朝比奈センパイ、今日は1人なんですか?」
まふゆ「瑞希達が来るのを待ってるの」
えむ「そうなんですね! あたしも瑞希ちゃんと話したいんですけど、ご一緒してもいいですか?」
まふゆ「勿論、隣座って」
えむ「はひぃ!!」
まふゆ(桃色髪だったから呼んじゃったけど、瑞希じゃなくて鳳さんだったのか。でも、まだ元気な瑞希と話してないだろうし結果良かったかな。でも、なんで鳳さんは怯えてるんだろう。笑ったほうがいいのかな。ニコって)
えむ「ひぃ!」
まふゆ「??」
まふゆ(本当に鳳さんはわからないなぁ。瑞希みたいに、冗談言ったら少しは話しやすくなるかな?)
まふゆ「ねぇ、鳳さん。鳳って、鳳凰のことを指したりもするんだよ。それでね、鳳凰って中国のフェニックスって呼ばれたりもするんだ」
えむ「あたしの名前って、凄いわんだほいなんですね!」
まふゆ「じゃあ、鳳さんも死んだら蘇るのかな?」
えむ「え、えっと…」
まふゆ「ふふ、冗談だよ。鳳さんは人だから、不死鳥じゃあないからね」
えむ「は、はひ」
まふゆ(あれ、鳳さん、笑ってくれなかったな。もう少し、面白い冗談の方が良かったかな。取り敢えず、笑っとこ)
えむ「ひぃ、ひぃ…」
ー数分後ー
まふゆ(怯えたままの鳳さんを笑って見つめていたら、また扉が開く。そして、桃色髪と白髪を見て、いつも通りのジャージを確認して手招きする。瑞希と奏が、机を挟んだ向かいに座る)
瑞希「ごめん、ちょっと準備に時間かかっちゃってさ」
奏「…まふゆ、コーヒー飲むんだね」
まふゆ「久し振りに、頼んでみた。後、偶然会った鳳さんが瑞希と話したいんだって」
瑞希「へぇ、鳳さんってどこにいるの?」
まふゆ「私の隣。クッションみたいに丸まってるけど、人だよ」
えむ「はい! 瑞希ちゃん、久し振り!」
瑞希「あ、うん。久し振り、鳳さん。でも、えっと、」
えむ「記憶喪失なんでしょ? 類くんから聞いたよ。すっごい大変だと思うけど、笑顔でわんだほーい!」
瑞希「わ、わんだほい?」
えむ「わんだほーい、だよ瑞希ちゃん」
まふゆ(自分の事を覚えていない瑞希にも、すぐに元気よく話しかけられる鳳さんは、本当にすごいよね。いつも、見ず知らずの人にもどんどんがんがん話しかけてるし、皆と友達になれる。そんな天賦の才を、鳳さんは持っているんだろうね)
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