―病院―
奏「瑞希、何があったか、覚えてる?」
瑞希「…わからない」
奏(隠してる? いや、本当に忘れて…)
「私は宵崎奏。瑞希、覚えてない?」
瑞希「…ごめん、覚えてない」
奏「…そっか。瑞希、自分のことはわかる?」
瑞希「それもわからない」
奏(本当に、覚えてないのかな… そうだ、絵名のことは覚えてないかな。絵名とは親しかったし、わかるかも。スマホに写真、入ってたはず)
「瑞希、この人誰かわかる」
瑞希「わからない」
奏「わかった。 …あれ、こんなファイルあったかな」
瑞希「? どうしたの?」
奏「Re:Untitled …え?」
奏(そのファイルを開いたとき、光に包まれた)
―???―
奏「ここは…」
瑞希「ここ、どこ?」
奏(わたしも、ここは知らない。『誰もいないセカイ』とは違う。初めて見た、真っ白な何もないセカイ)
???「…奏? 瑞希も。今日は、何しに来たの?」
奏「…ミク」
奏(目の前にいるミクは、見たことがある。『誰もいないセカイ』のミクだ)
ミク「久しぶり、奏、瑞希」
奏「うん、久しぶり。でも、なんで…」
瑞希「…宵崎さん、この人は?」
ミク「?」
奏「奏でいいよ。えっと、この人はミク。初音ミク、わかる?」
瑞希「…知らない。初めまして」
奏(ミクのことも忘れてる… 瑞希は、何を覚えてるのかな)
ミク「瑞希、どうしたの? 元気がないよ」
瑞希「…ごめん」
奏「ミクも瑞希に何があったのか知らないんだね…」
奏(その時、近くで光が舞った。誰かが来た)
???「ちょっとミク! なんでUntitledが… 瑞希!? 元気になったの!?」
瑞希「…ごめん」
???「なんで謝るのよ! ちゃんと説明しなさいよ!」
奏「絵名、落ち着いて」
絵名「…ミク、絶対に瑞希を逃がさないで」
ミク「?」
絵名「瑞希、ちゃんと全部説明して」
瑞希「…ごめん」
奏「絵名、気持ちはわかるけど落ち着いて。ミクにも絵名にも、瑞希にも説明するから」
奏(私は、まず瑞希が記憶喪失になっていることを説明した)
絵名「…何よそれ。それじゃあ瑞希はニーゴのことも忘れてるっていうの?」
奏「うん。それだけじゃない、瑞希は自分のことも忘れてる」
絵名「…そう」
ミク「絵名、大丈夫?」
絵名「…うん」
瑞希「ニーゴ?」
奏「ニーゴっていうのはね、わたし達のサークル名。音楽を作ってるんだよ」
瑞希「凄いね」
奏「瑞希も一緒に作ってたんだよ」
瑞希「…」
奏(瑞希が記憶喪失って知って、絵名は凄い悲しそうで。ミクも私も確かに辛いけど、先に進まないと)
「ミク、このセカイが何かわかる?」
奏(このセカイのことを、知らないと)
ミク「わからない。だけど、このセカイは奏達の想いで出来てる」
奏「わたし達の、想い…」
???「なんだか、不思議なことになってるね」
奏「まふゆ?」
まふゆ「うん。絵名と一緒に来た」
奏「もしかして、作業してた?」
まふゆ「うん。早めに作業してたら、Untitledがあったから絵名に声かけて来た」
瑞希「誰?」
まふゆ「朝比奈まふゆ。あっちの騒がしいのが東雲絵名。それであなたが、暁山瑞希」
瑞希「…初めまして」
まふゆ「ご飯食べてくる。すぐ戻るから」
瑞希「…ボクもお腹すいた」
奏「そうだ、もう面会時間が終わるからわたしも帰らないと。瑞希、帰るよ」
瑞希「うん」
奏(瑞希の手をつかんで、Re:Untitledを止めた)
―病院―
奏(戻ってこれた… 瑞希は隣にいる)
看護師「奏ちゃん、面会時間終了… 暁山さん、起きたんですか?」
奏「看護師さん、瑞希、さっき起きたんです」
看護師「よかった… 医師に連絡してきますね」
奏「あの、瑞希はいつ退院できますか?」
看護師「身体検査をして、異常がなかったら今夜にも退院できますよ」
奏「検査が終わるまで、待っていていいですか?」
看護師「勿論です。暁山さんのお母さんにも、起きたらすぐ帰れるようにしてほしいといわれてますから、すぐに検査します。少し待っていてくださいね」
奏(それからすぐに医師が来て、検査室に瑞希は連れてかれた。瑞希のお母さんとお姉さん、それに絵名と彰人君、白石さんと神代さんが来てくれて、みんなで待った。お姉さんは外国に住んでるみたいだけど、瑞希が入院したことを聞いて先週帰って来たらしい。明後日にはまた海外に行くから、丁度いいタイミングだった。まふゆは大学の寮にいるから来れなかった。数時間病院のロビーで待って、21時頃、看護師さんに連れられて瑞希がロビーに来た)
暁山母「よかった… 本当に良かった…」
杏「瑞希、大丈夫?」
彰人「おい暁山、お前が寝てる間絵名が大変だったんだぞ」
絵名「…」
彰人「絵名?」
看護師「体に異常は見つかりませんでした。ただ…」
奏(言い淀んでる… それなら、やっぱり)
奏「記憶が…」
看護師「はい。脳に強い衝撃が加わったため、記憶障害を引き起こしています」
暁山姉「そんな…」
杏「嘘…」
彰人「神代先輩、何とかなりませんか!」
類「体ならまだしも記憶となると僕にはなにも…」
看護師「一応退院できますが、どうしますか?」
暁山母「瑞希、どうしたい?」
瑞希「…ボクが帰っても、迷惑じゃない?」
奏(私は、瑞希と一緒にいたい。独りぼっちになんてさせたくない)
奏「ううん。帰ろう、瑞希。わたしは、瑞希を支えるよ」
絵名「そうよ、迷惑なんて気にしてんのらしくないじゃない」
奏「瑞希のお母さん、わたし達にも瑞希のお手伝いをさせてください」
杏「私も私も!」
類「僕もできることはさせていただきたい」
彰人「…俺も」
暁山母「瑞希は、いいお友達に恵まれたわね。瑞希、帰りましょう?」
瑞希「…うん」
奏(瑞希と共にわたし達は瑞希の家に向かった)