幸せのあしあと   作:緑雨

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3話 いつもと違う、いつもの日常

ー街中ー

 

奏(空はやっぱり晴天で、日差しが鋭い。空を見上げると眩しい)

 

まふゆ「…2人共、大丈夫?」

瑞希「ボクは大丈夫だよ」

奏「な、なんとか…」

まふゆ「公園まで遠いから、頑張ってね」

 

奏(そんなに遠かったかな。前に瑞希と2人で行ったくらいだし、あまり遠くないと思うけど。それに、最近は毎日病院まで歩いてたから少しは足に筋肉もついてきたし、頑張ろう)

 

ー数分後ー

 

まふゆ「…奏、ペース落ちてるよ」

奏「ま、まふゆのペースが速いから」

まふゆ「瑞希、そんなに速い?」

瑞希「ボクはこのペースでも大丈夫だよ」

まふゆ「だって、奏の体力がないだけじゃない?」

奏「うぅ…」

 

奏(もう少し体力が付いてると思ったんだけど、もう苦しい… 春なのに、こんなに暑いなんて思わなかった…)

 

まふゆ「…1回、奏の家に寄るよ。このままだと奏が倒れそう」

奏「う、うん」

瑞希「奏、肩貸すよ?」

奏「流石にそこまでは…」

 

ー宵崎家ー

 

まふゆ「奏、着いたよ」

奏「ありがとう」

 

奏(結局瑞希に肩を借りてしまった…)

 

???「宵崎さん? 帰ってきたんですか?」

まふゆ「望月さん、奏が倒れそうだから休みに来たんだ」

穂波「そうなんですね! 今、お水お持ちしますから座っていてください」

 

奏(椅子に座って、望月さんのいれてくれた水を飲む。美味しい)

 

穂波「瑞希ちゃん、久し振り。元気?」

瑞希「えっと、あの… はい、元気です」

穂波「?」

奏「望月さん、瑞希は、記憶障害なんだ。だから、望月さんのことも、わたしとか、家族のことも覚えてなくて。それで、皆で昔見たカーネーションを見に向かってるんだ」

穂波「成程… じゃあ、自己紹介しないとですね」

 

奏(望月さんは、瑞希に笑顔で自己紹介を始めた)

 

穂波「瑞希ちゃん。私はLeo/needのドラム担当の、望月穂波だよ。宵崎さんの家事代行とかしてるけど、瑞希ちゃんと同じ高校3年生だから、気楽に話しかけてね?」

瑞希「よ、よろしくお願いします」

まふゆ「Leo/need、最近はテレビの音楽番組とかでも名前を聞くようになったよね」

穂波「まだ全然です。テレビ局の人が期待の若手ってLeo/needを取り上げてくださって、それでテレビに出していただいただけです。まだ、演奏も完璧じゃないですし…」

奏「それでも、凄いよ」

 

奏(『Leo/need』。望月さんにはいつも家事を頼んでるけど、それでバンドの練習までしてるんだから、大変なんだろうな)

 

まふゆ「…望月さん、少し奏を預かって貰えない? 瑞希と公園まで行くんだけど、奏は無理そうだから」

奏「わたしも公園まで…」

穂波「わかりました。宵崎さんが元気になったら、後から2人で追いかけますね」

まふゆ「うん。お願い」

 

奏(そして、まふゆと瑞希は先に公園に向かって行った)

 

ー街中ー

 

まふゆ「…」

 

まふゆ(瑞希と2人で街を歩くのなんて、いつぶりだろう。2人きりで歩くのは、殆どなかった気がする)

 

瑞希「…あの」

まふゆ「どうしたの、瑞希」

瑞希「…なんでもない」

まふゆ「遠慮しないで、なんでも言っていいよ」

 

まふゆ(やっぱり、笑わないと話しにくいのかな。前までの瑞希はやかましいくらい話しかけて来たけど、静かなのが素? う~ん)

 

瑞希「凄い、怖い、です」

まふゆ「私が? どうして?」

瑞希「なんか目も笑ってないし、何を考えてるのかわからないし、凄い圧があって…」

まふゆ「…ごめん。でも、気にしないで。いつもこんな感じだから」

 

まふゆ(そっか、瑞希は私がどんな人か知らないんだ。親のことも、OWNのことも、なんも。少し、からかってみようかな)

 

まふゆ「ねぇ、瑞希」

瑞希「な、何でしょう?」

まふゆ「お肉って緊張してる方が美味しいんだよ」

瑞希「何の話!?」

まふゆ「私、瑞希を食べてみたいなぁ」

瑞希「!?」

まふゆ「ふふ、冗談だよ」

 

まふゆ(少しからかいすぎたかな。こんなに純粋な瑞希と話したことないから、いつもの調子で冗談を言うと怖がらせちゃうかな)

 

まふゆ「瑞希」

瑞希「な、なに?」

まふゆ「さっきより緊張、ほぐれた?」

瑞希「少しは…」

まふゆ「そう、よかった」

 

瑞希(ほ、本当になんなんだろう、この人…)

 

まふゆ「瑞希、顔に出てるよ」

瑞希「へっ!?」

まふゆ「…面白い顔」

 

瑞希(怖い…)

まふゆ(楽しいなぁ)

 

ー公園ー

 

まふゆ「着いたよ、瑞希」

瑞希「カーネーション、どこかな…」

???「♪〜」

 

まふゆ(この声、もしかして…)

 

瑞希「綺麗な声だね」

まふゆ「行ってみる?」

瑞希「え、でも、歌ってる人に迷惑じゃ…」

まふゆ「知り合いだろうから、大丈夫だよ」

瑞希「…じゃあ、もっと近くで聞いてみたい」

まふゆ「わかった。こっちだよ」

 

まふゆ(少し進んで、ベンチに人が座っている。あの黒髪、やっぱりそう)

 

まふゆ「星乃さん、だよね?」

一歌「朝比奈先輩、それに瑞希ちゃん! さっき穂波から、瑞希ちゃんが元気になったって聞いて嬉しくってここで歌ってたんだ」

瑞希「凄い、綺麗な声でした」

一歌「瑞希ちゃんの声も綺麗だと思うよ」

瑞希「そ、そう?」

一歌「? いつもより元気ないけど、やっぱり病み上がりに無理は良くないんじゃ…」

まふゆ「星乃さん、望月さんから聞いてないの?」

一歌「何をです?」

 

まふゆ(この感じ、星乃さんは瑞希の記憶障害のことを知らないんだろうな)

 

まふゆ「望月さんからは、なんて連絡が来たの?」

一歌「奏さんが家にいないから電話したら、瑞希ちゃんといるから作曲機材の箱詰めをしてほしいって頼まれたって言われました」

まふゆ「…望月さんに機材を持ってきてもらおうとしてたのかな、奏は」

一歌「穂波、力はありますから。奏さんは運動が苦手ですし…」

まふゆ「苦手レベルなら良かったんだけどね…」

 

まふゆ(瑞希のこと、星乃さんにも話しておいたほうがいいかな。でも、あんまり色んな人に言い回ることではないよね…)

 

瑞希「あの、星乃さん」

一歌「? どうしたの、瑞希ちゃん」

瑞希「星乃さんって、普段は何をしてるの?」

一歌「いつもは高校に行って、その後皆でバンドの練習して、たまにライブして。あれ、前も話さなかったっけ」

瑞希「…ボク、昔のことを思い出せなくて」

一歌「…… そっか。大変だろうけど、いつでも私達のことも頼ってね、瑞希ちゃん」

瑞希「うん。ありがとう、星乃さん」

 

まふゆ(瑞希が自分から話してくれるなら助かるな。やっぱり、本人の言葉が1番わかりやすいだろうし)

 

一歌「自己紹介、するね。私は星乃一歌。Leo/needってバンドでギターボーカルをしてるんだ。それで、よく1人で歌ったり路上ライブをしてる。街で見かけたときは、気軽に話しかけて。後、名字じゃなくて下の名前で呼んでほしいな」

瑞希「よろしく、一歌ちゃん」

一歌「うん。よろしく」

 

まふゆ(星乃さんと瑞希、瑞希が2年生の頃から仲良くなったんだったかな。瑞希が教えてくれなかったから、2人で何をしてたのかは知らないけど、また瑞希と仲良くしてくれるといいな)

 

一歌「…ねぇ、瑞希ちゃん。今から少しいい?」

瑞希「?」

まふゆ「行ってきなよ、瑞希」

瑞希「じゃあ、一歌ちゃん。何をするの?」

 

 

 

一歌「ゲリラライブだよ」

 

瑞希「ゲリラライブ…?」

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