京の都で人々を悩ます魑魅魍魎を根絶できないかと道満は考えていた。そこで天才と呼ばれている晴明に相談することにした。

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オリジナル設定があるため、そういったものが嫌な方はお気を付けください。
また、こちらの小説はAIのべりすとを活用して書いています。


平安グリッドマン

平安グリッドマン

 

「ほう、魑魅魍魎が集まっておる。」

灯りに照らされ鈍く光るようにも見える紙を目の前に男が低い声を響かせる。

 

 質素な文机の上に紙と筆がうっちゃられている。その中の一枚が浮かび上がって見えるのは字が書かれているからだけではない。通常使われる炭ではないようで、ふちが紫色にも見える。そのせいか字自体が光っても見えるのだった。

 紙を視界に収める男は書かれた文字を読み、依頼主の病に臥せった娘を思い出す。

今回はある貴族から娘の調子が悪く、眠りが長くなっていると相談をうけた。様子を「見た」ところ、依頼主の屋敷から南西の方角からの流れを感じ、離れた道沿いのあまり目立たないたたずまいの家を見つけ、中を「確認」すると家に踏み込み紙を見つけたのだ。

 

「血で相手の名前を書いて自分の想いをあの娘に伝えようとしたのか。まったく、若い者のやることはわからん。呪術的な触媒になり悪さをしておる。」

 

 男は一言こぼしながらも、手は懐から必要なものを澱みなく出していく。白い皿の上に名前の書かれた紙を触らぬように気をつけながら移し、回まわりにろうそくを立てると、手と声、魂とで必要な祝詞を唱える。

 

 すると皿の上の紙が悶えたように燃え上がる。大元となる紙を燃やして終えても安心することなく、力につられた魑魅魍魎を祓っていく。家の中を清め終え、仕上げをするため四方に札を張り終え、扉の外に出ると家主が帰ってきた。

「おや、道満さま。我が冬用の屋敷になにようですかな?」

 

「おや?この家の主人かな。わしはとある方から依頼を受け、調べたところこの家から異様な気を感じたため祓いに来たのだ。このまま入るとそなたも呪われる。わしの前に立ってもらいたい。」

 

 道満は有無を言わさず若者を自分と扉との間に立たせ動かないように伝えると、足踏みで陣を作りながら祝詞を唱える。

 

 最後に一声大きな声を出して祝詞を唱え終えると道満の方から一陣の風が吹いた。

 

 若者が訝し気な顔をしているのに気が付くが、一言「呪いははれた。よかったな。」と声をかけるだ下で詳しい説明などはせず、その場を離れ依頼主の元へ戻る。

 

 依頼主を安心させるためにも、病の元を絶ったこと、恨みによるもではなかったことを伝えて帰路についた。

 

 自室にもどり、試案を巡らせる。都のそこここに悪いものが蔓延り誰かが困る。困った誰かに呼ばれて対応するということの繰り返しであった。

「重くなる前に知るには…いや、元から立つには?」何かを考え込むようにぶつぶつと言い出したかと思うと、おもむろに立ち上がって部屋を出る。

「おい、晴明!」

 道満が安倍晴明の部屋に押しかけて座り込む。

「どうしたのです?そうぞうしい」

 

「この間貴様が思いついたという思い付き、もう一度きかせてくれ。確か、稲妻がどうしたという話だったと思うが。」

 

「えぇ、思いつきましたよ。雷は音より早く、強力な力を持っている。その力をどうにか利用できないかと思案していた時、冬の朝に肥後守を持とうとしたところ、指先と刃の間に稲妻が走ったのです。そして、それを見た瞬間閃いたのですよ。」

 

「ほぉ、それはどのようなものだ?」

 

「えぇ、雷に似た働きをする式神というのはいかがでしょう?ただ、これはすぐにできませんね。もっと研究を重ねなければ。特に稲妻の動きには法則性などないので…」

 

「なあに、ものは試しだ今できることをやって見せてくれ」

 

「わかりました。」

 

 そういうと、晴明は懐から札を取り出すと手を胸の前で合わせ、呪文のようなものを唱え始めた。すると、晴明の手の中から小さな稲妻が生まれ、手の上を踊るように移動し始めた。

「うむ、確かにまだ何も起こらんな。しかし、なぜこのようなことを思いつくのだ。」

 

「ただ、稲妻という現象を見ていて、ふと思ったんですよ。」

 

「本当にお前は天才だ。まぁいい。この術、名を付けるとしたらなんとする?」

 

「まだ何とも決めかねています。それに、雷のほうからも何かの働きがあるのではないかと思うこともあるのです。単なる力の塊ではないと思うのです。」

 

「ふむ。わしもその研究を手伝う。式を見せてくれ」

 晴明はまだ説明を続けようとしていたが、話が長くなる予感がしたので晴明から式札を受け取り、自室に帰る。

さすがに晴明が設計した式らしく美しく洗練された式を見ると、嫉妬と羨望の気持ちが同時に現れる。そんな感情を抑えつつ、式札を半眼で見つめる。

「想いとは力。力とは流れ。流れとは方向。方向が生まれるには始まりと終わりが必要。始まりは思。終わりは対象。」

 雷の速さなればどこへでも瞬く間に赴くことができよう。人の中に悪い思念が生まれる前に対応できれば人は悪さができまい。「悪の心を外に出せば、人の中に良き思いを芽生えさせることができるだろう。」

 善意や好意といった良い思いの流れを作れば、そこに力が集まってくる。

「そうなれば、力が集まる場所となり、大きな力になるのではなかろうか。」

 そこまで考えて道満は顔を上げると、以前動力が思いつかず棚上げしていた自立式の式神を封印した紙を取り出す。

「感出治煌、感情をとらえて表に出させ、煌めくように治す。お前の想いを姿に表せ。」

 道満は「雷」の術を自分の術に落とし込みながら祝詞を唱える。晴明の手の上で踊っていた稲光が式の上にも表れる。いく瞬か踊ったが紙に黒いしみが現れたかと思うと火がついてしまう。しかし道満は慌てる様子もなく光の様子を見ている。紙が燃え尽きるとともに光が形をなし、蓑をまとったような姿の小人が手の上に現れる。

「わしの言葉がわかるか?」

と道満が問うと式神はうなずいて答える。それを見て満足げにうなずくと質問と指示を繰り返しながら式神の様子を観察すると、晴明の所へ向かおうとして外をみて夜になっていることに気が付く。

「夜も更けたか。」

 そう言うと道満は床に入った。

 翌朝、朝食を食べ終わると晴明の元へ向かうと、昨日の話を晴明に聞かせる。

「ほう、昨日の思い付きをすぐに形に?これが新しい式ですか。しかし元となる紙は?」

 

「紙の上で雷が走り燃えてしまったが、万が一のことも考え書き写しておいた。」

そういうと、机の上の紙を手に取ると、晴明に見せてやる。

 

「この新しい式は民の悩みや苦しみを感知して、大きくなって他に影響を与える前に実体化させることで本人も気づいていない暗い思いを救い、我々が払いやすいようにする。」

 

「ふむ、なかなかに面白いですね。」

 

「これうまく使って我々が負の感情に先に知ることができれば、人に害を与えることもない。」

 

「早速ですが試してみましょうか?」

 

「あぁ、もちろんだ。」

 そうして道満が最初に作った式を呼び寄せ名づけをする「感出治煌(カンデジファン)、人の煌めきを増やすため、感情に応じて治すために出ていく。」

 

「これは、いい名だ。道満殿は相変わらず真面目な名づけをする。」

 

「どういう意味だ!」

 晴明は笑いながら道満をからかう。

「では、実際にやってみましょう。」

 

***

 

 結果から言うと実験は成功だった。しかし、わずかな悪感情にも反応してしまい、端から陰陽師が払えるようにしてしまって妖怪があふれる結果になってしまった。「これは失敗だな……」

「えぇ、予想以上に負の感情に敏感に反応してしまいましたね。」

 

「やはり、雷の力を使いこなすというのは難しいようだな。」

 

「そうですね。雷の力を操り、自在に動かすことができれば、また違った形で役に立つと思います。」

 

「そうだな。しかし、まだ諦めるのは早い。管理できる環境で式神に学ばせられたり、こちらが動くべき前兆で妖怪化できれば使えるようになる。」

 

「なるほど、では何体も作ってみるか、育てる環境を整備して…」晴明がぶつぶつと独り言をはじめ、自分の世界に入ってしまう。

 道満は晴明の様子をみて自室に戻る。晴明は晴明で独自の式神を作っていくだろう。自分は2人で作った式神の性能向上と機能調整などをすることにする。そして新たに式神が感情を受け取った雷の通り道があることがわかった。その道を利用する式神を量産できれば都にいない人間の感情も把握することができるのではないだろうか。

 式神同士で連携して実体化したものを別の式神が討伐できるような仕組みを整えることができれば陰陽師は自分の研究や力量を高めることもできるのではないか?式神が討伐できないほどに強力なものは勝手には実体化させず陰陽師が来るまで待ち、陰陽師に知らせる。

 道満の頭の中に様々な仕組みや実行する方法が浮かんでは消える。翌日、晴明に考えたことを説明すると、

「それは素晴らしい。ぜひやりましょう。私は常々自力で妖魔や魑魅魍魎、鬼などを討伐する式神を作りたいと思っておりました。先日の道満殿の式神のおかげで現実になりそうだと思っていたところです。」

と目を輝かせていた。

 道満は晴明と話し合い、道満と晴明がそれぞれ式神を作る方法をとることにし、道満が試験的に作った感出治煌を都で試験的に使うことにした。

 晴明と話したことをほかの陰陽師にも伝え、都の中に妖魔などが出ても大丈夫な体制を作り自分は研究に没頭する。

 雷の道…式神が人の感情を察知する方法…感情が形作るための力…今まで不思議に思わず使っ ていた陰陽師の力や式神の力で今まで意識していなかっただけでわかっていなかったことを認識し、まだまだ学ぶことがあると思い道満は相好を崩した。

 

***

 

 それからも道満と晴明はそれぞれ式神の開発にいそしんだが、感出治煌と同等のものはできても構想したものはできなかった。晴明に至っては試行錯誤を繰り返すばかりで一向に完成することはできなかったという。

 2人が死に、感出治煌も後継の弟子に引き継がれたが指示を出せるほどに力のあるものはいなかったため封印される。

 

 時は移り変わり産業革命が起き、人は暗闇を追い出す。機械を発展させ、遠くの人ともつながるようになり、日本にも電化が訪れる。式神を封じた護符も失われたが2人に作られた式神は稼働していたものも眠っていたものの、電力を感じて目を覚ますものがいた…




戦国グリッドマンという漫画作品の題名を見て、道満や晴明がグリッドマンやカーンデジファー、アレクシスケリヴなどを作ったとしたら面白いのでは?と思って書き溜めていました。
グリッドマンはもともとハイパーエージェントで一平の描いていたイラストで実体化したため晴明は完成させれず、名前ももらえなかったという設定にしました。
アレクシスの能力にも説得力をつけたかったですが、文章が長くなりすぎると思いカーンデジファーを作ったところだけにしておきました。


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