『はい!皆心配かけてごめんね!今日から活動再開していくよ!』
二日目の朝。私はなんとか恵を納得させて配信を始めた。と言っても、攻略なんてものは多分要らない。だから、どっちかと言うと私なんかの事を心配してくれる人の不安解消と報告がメインである。
『いや〜。参っちゃったね。まさかスマホ壊されちゃうとは思わなかったよ〜。あ、でも、恥ずかしいところを見せるとこだったから良かったと思おっかな!』
ゴブリンを処理しながら、私は元気ですと言外に見せつけていく。相手は1000人規模のゴブリン。軽く相手出来ると感じさせれば、力の衰えは悟られない筈だ。
『あ、今回はね、妹にカメラをお願いしてるから、揺れるのは許してね。あれだよ!いつも私の動画を編集してくれる子!』
別に恵をネットの世界にばばーん、とするつもりはない。ただ、それでも妹の偉大さを見せつけてやりたかったというちょっとした姉心である。
『あ、参考になる…ような戦い方を意識したいけど、流石にこれは普通の人は真似できないかも』
そう言いながら、魔石を活用していく。流石に、いざというときに魔石を持っている人なんていないだろうし、まあ、恵から教えてもらった配信者さん達とか、自衛隊さん達にこういう使い方もあると知ってもらえればいいかな。皆知ってるかもだけど。
『あっ。そうだ!最終日の王様の奴はもちろん参加します!それまでは、ひたすらにゴブリン退治を続けるよ!と、じゃあ、ちょうどゴブリンも減ってきたから、千人ゴブリンの倒し方をやっていこうかな』
昨日から今日にかけて魔石の扱いがかなり上達したと思う。お陰で効率よく指導者である将のゴブリン以外をほとんど倒すことが出来た。後は取り巻き…まあ無視してもいい範囲かな。
『はい。今のところ全部の将のゴブリンとは相手できてないけど、10000人のやつ以外は相手したから、その話をするね。と言っても、多分違いは戦術くらいだね。基本的なスペックは一体一体そんなに変わらなかったよ』
割とこれに尽きる。ゴブリンの使い方が多少違うだけで、本体の行動はだいたい一緒だ。違うのは力と、ゴブリンの装備の性能だ。でも、倒し方にはあんまり力は関係ない。
『普通のゴブリンなら突進を狩るって前教えたと思います!でも、将のゴブリンは突進してきません。駆け寄ってきても、それは通常のゴブリンの突進とは違って、ちゃんと止まれるし曲がっても来ます。だから、普通のゴブリンとは思わないでね』
一回だけそれをやってしまって、恵が泣いたのは秘密だ。
『じゃあ、その倒し方なんだけど…えっとね、どっか物陰に隠れればいいよ』
まあ、これはこれでどうなのかと思わなくはないが、正直これに尽きる。
『じゃあちょっと…め、カメラさん。着いてきて』
そして、将のゴブリンの視線から姿を隠す。恵にカメラだけ出してもらって、映像を視聴者にお届けだ。
『うん。そろそろかな』
「グウウウウウ」
『はい。こうなったとき、ゴブリンは動けなくなります。というわけで…』
そして、歩いて近づいていってブラックジャックで叩き潰した。
『さて、皆不思議に思ったんじゃないかな。見た感じこれを紹介している人いなかったから紹介したけど、これはね、仲間を呼ぼうとしているんだ!』
そう。一見意味不なこの行動は、召喚の儀である。
『あの状態で何分か経つと、ゴブリンの仲間が戻っちゃうんだ。だから、もしこれを使うなら、絶対に倒してね!そうじゃないと、苦労が水の泡だよ!』
これはたまたま高いところからゴブリンを見ていたときに気付いた現象だ。ぽんと湧いた装備をしたゴブリンが、唸ったかと思えば仲間を呼び出す。だが、この唸りの時間が長すぎるので、その隙に倒せてしまうという話である。ちなみに、召喚するゴブリンが多ければ多いほど時間がかかる。
『じゃあ、こっからは…いや、ごめんね。皆。今日はこれからやることあるから、ここで終わります!それでは!』
「……ありがとうね。恵」
恵が手を上げたのを確認してから、お礼を言う。ああ、恵に見られるならまだしも、恵に撮られながらだと凄く恥ずかしい。配信中は赤面は隠せていただろうが、今は無理だろう。
「まあ、辞めてほしいけど、私が着いてきた理由の一つでもあるからね。別にいいよ」
寛大な御心に許された。良かった。
「で、そろそろだよ。お姉ちゃんって、言わなくてもわかるか」
「うん。流石にあれはね…」
恵が指差したのは、ネオンライトに輝く看板をつけたお店。
最近はめっきり見なくなったネオンライトは【ロッド工具店】と
いう文字を強調していた。