「あ、すいませ〜ん。お願いしていた陽菜です」
『おっ、来たか。いらっしゃい』
インターホン越しに好意的な声が寄せられ、しばらくすると扉が開けられた。穏和そうなお爺さん。とても、武器を作っているとは思えない。
「ふぉっふぉ。不思議そうな顔をしとるのぉ。まあ無理もない。儂自身は何もしなくていいじゃし」
それは、どういうことなのだろうか。話によれば、ここには武器を貰いに来たはず。それなのに…。
「まあまあ!話はお茶でも飲みながらでいいじゃろう。さあ、奥にきんしゃい」
「は、はぁ」
「わかりました!じゃあ遠慮なく〜」
少し呆気に取られてしまったが、恵が入っていくもんだから、私はそれに続いていった。
「クエスト、ですか」
結構しっかりとした和菓子とお茶を頂き、お爺さんからお話を伺った。なんでも、お爺さんの能力は物を作るのではなく、物が貰えるクエストを発注するというものらしい。
「そうじゃそうしゃ!と、そこの金色の子には伝えたんじゃが、あんた…陽菜さんかな?は知らなかったようじゃな」
「あっ。ごめんね。お姉ちゃん」
「なんで…いや、後でいいや。それよりも、そのクエストってどんなものなんですか?」
「ふぅ〜む。なら待ってくれ。今出して見るから」
そうして、お爺さんが少し目を瞑ると、お爺さんの片手が怪しく光った。
「武器が必要なのは二人ともだったかの?なら、別々か同時にかどっちがいい?」
「あ、はい!そうです!それなら同時にでお願いします!」
恵がハキハキと答えた。うん。これは多分恵は全部知ってたんだろうな。前々から決めていたみたいだ。
「難易度は上がるが…ほいっ!」
お爺さんの指が宙を描き、文字が表される。
『クエスト 専用武器の入手
ギルドマスターの能力を持つ者を護衛し、指定地点へ送った後、再びこの場へ戻れ。
成功 専用武器×2 失敗 クエスト受注者の死』
「え」
「えっ〜と、失敗は…死!?」
恵が素っ頓狂な声を出す。良かった。流石にそれは知らなかったんだ。そうじゃなければ恵の正気を疑うところだった。
「ほお…。なるほどな。失敗は儂が死ぬことであろうから、儂をおいて逃げないようにということじゃろうな」
ふむ。確かに、戦況が不味くなってお爺さんが置いてかれたらたまったもんじゃない。そう考えると、失敗のデメリットも妥当、か。というか…
「あ、ちなみに、このギルドマスターって…」
「ああ、儂じゃな。この能力はギルドマスターと言うらしいの」
やっぱりそうか。本当にゲームみたいだ。護衛任務とかこれまでゲームならちょっとはやって来たけど、だいたいレベルが足りれば出来て足りなければ出来ない。今回だと戦力が足りれば、といったところかな。
「あの、恵だけクエスト解除とかは…」
「いや、やめたほうがいい。そうしても失敗となるからの」
あぁ、後戻りできないタイプ…!…恵を危険な目には合わせたくないのに…。
「…お姉ちゃん。流石にわかってるよね?ここで別れるほうがだめだよ?」
「わかってるよ…」
もし、私とお爺さんで行ったとして、私がゴブリンに足止めされている間にお爺さんが殺されてしまえば、私も、恵も死んでしまう。だから、生き残るには着いてくるのが一番いいのだ。
「…しかし、儂が直接関わるのは初めてじゃ!血が滾るのぉ!」
お爺さんなんでそんな好戦的なの?
「ほぉ~。これは凄いのぉ。で、ざっと1キロ先が指定地点じゃな」
お爺さんの言う通り、1キロぐらい先に黄色い柱が立っている。明らかに前には無かったものだ。
「じゃあ行きましょう!」
「あ、前は私が行くから」
前に出ようとした恵を抑えて前を歩いて、その指定地点というものへ向かう。ここへ向かいながらゴブリンを倒していたので、それもあって結構楽な道のりだ。
「お姉ちゃん。前に後ろっ!」
「大丈夫だよ」
恵に接続しているので、後ろから殴られようと痛みはない。ゴブリンは通常の攻撃だと怯むような物はないし、我慢すれば体も動かせる。
「はぁ…。流石、話題の配信者と言ったところじゃの。しかしあれはどうなっておるんじゃ?あんな細身で怪我をしないなんて」
「お爺さん危ない!」
そんな声と共に、恵がゴブリンを叩き潰した音がした。あーやっちゃった。
「ごめん!」
「もう!お姉ちゃんばっか無理しないでいいの!」
そうは言ってもなぁ。恵に万が一にでも危険があったら嫌だし…。
と、そうこうしていると、場所に辿り着く。すると、お爺さんの指が再度動き始めた。
『指定地点に到達しました。戻ってください』
「よし!じゃあ戻ろー!」
「ふ〜む。思ったより安全そうで安心じゃが…物足りないのぉ」
「あの、流石に勘弁してくださいね」
だからお爺さんなんでそんなバーサーカーなんだよ。
そうして、切り返したその時、
「助けてくれぇー!!!!!!!」
叫び声が響く。
「お姉ちゃん!今は――」
「ごめん!恵!」
「ふぉっふぉっふぉっ!!面白い!それでこそ若者じゃ!」
私は、無謀にも走り出した。
えーなんと、誤字報告のお礼をした回で誤字報告を頂きました。頭があがりません。ありがとうございます。m(_ _)m