変わる世界で配信中   作:ありくい

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痛みの次には恥ずかしさ

「はい。お姉ちゃん、大丈夫?」

 

私の足に包帯を丁寧に巻きながら、恵が覗き込むように話しかけて来る。なんというか、恥ずかしい。じくじくと痛む足が意識を強引に保たせるけど、出来るなら気絶したい。そして、痛みに悶えていた頃の私の行動を忘れるんだ…。

 

「う、うん。ありがとうね」

 

「…ねえお姉ちゃん。ほんとは休ませてあげたいんだけど、先に教えてほしいことがあるんだ」

 

「な、なに?」

 

恵が真剣味を増した声で尋ねてくる。恥ずかしさに悶えていた私は、少し声が上擦ってしまった。

 

 

「あの男の特徴を教えて」

 

 

あの男、とは、まあ誰のことかは分かる。

 

「ん〜、そうだな…」

 

ここで教えるべきなのか。きっと、優しい恵のことだから、見つけて私に謝らせようとか、そういうことを考えているんじゃないかな。でも、それは別に求めてはいない。

 

「実はね?私ちょっとだけ覚悟してたんだ。あんなにも簡単に囲まれて、それに顔にカメラみたいなのつけてて、後先考えない人なのかな〜って思ってた。まあ流石に、途中まで見ているだけの癖して、装備付きゴブリンだけ倒すとは思わなかったけど」

 

物音も特に聞こえなかったので、逃げてくれたと思いこんでいたのだ。そのせいでこうなっちゃったけど…。

 

「まあ、勉強代ってことにしておくよ。だから、恵は気にしないで。それで恵に傷つかれる方が私はいやだよ」

 

たはは、と笑ってみせれば、恵は渋い顔を作る。そして、私に顔をぐいっと近付けてきた。

 

「お姉ちゃん。そういうの、もう絶対に辞めてね。私はお姉ちゃんのことを心配してるの。わかってる?」

 

「う…ごめんなさい」

 

「わかればよろしい」

 

「ん。じゃあ落ち着いたかの。それじゃあ、クエスト達成としようか」

 

むふっと頷く恵をよそに、お爺さんがそう切り出した。

 

「あっ、はい。お願いします。実はね、お爺さんにクエスト達成とするのを待ってて貰ってたの!」

 

「はぁ…。包帯とか、消毒とか、何から何まで本当にお世話になります」

 

なんとも頭が上がらないや。これほどまでに良くしてもらえるとは。

 

「いいんじゃよ。こういうのは助け合いじゃ。それに、人生の先輩としては当然のこと。それでは、クエスト達成っと」

 

光る指で空間をなぞり、ある時まで行くとそれが一際強く光った。

 

「わぁ」

 

恵が感嘆の声を漏らす。お互いの目の前に武器が現れたのだ。

 

私の目の前には、銀色の刀身と金の装飾がついた柄を持つ短刀が。恵の目の前には、漆黒の刀身と不思議な模様が刻まれた長身の刀が浮いていた。

 

空中に佇むそれに手を伸ばせば、掌に馴染むように柄の形が変化する。そして、頭の中に文字が浮かんだ。

 

『専用武器 自決の短刀

自身の肉体を望んだように切れる』

 

へー…。え?

 

呆然としていると、短刀が体に吸い込まれるように消えていく。でも、すぐに取り出せるんだなっていうのはわかった。多分、ちょっと集中すればまた取り出せる。

 

まあそこはどうでもいい。いや、どうでも良くないけど、今はそこじゃない。

 

め、恵。どんな専用武器だったの…?

 

共感を求めて尋ねてみると、恵は、見惚れたように漆黒の刀身を眺めていて、聞こえてはいなさそうだった。でも、それって良かったってことだよね…?嘘でしょ…?

 

「――っあ、お姉ちゃんごめんね!どうかしたの?」

 

「ナンデモナイデス」

 

これでその格好いい刀を褒められでもしたら私はメンタルがポキるかもだから聞けなかった。

 

「うん。じゃあ専用武器も確認したところで、お姉ちゃん。お休みなさい」

 

「え?」

 

突然恵に抱き着かれ、私は眠気に包まれた。

 

 

 

 

 

 

____________________________

《恵視点》

 

お姉ちゃんを、多少無理矢理だけど眠らせた。

 

「おん?お前さん何をしたんだ?」

 

「…私は人を眠らせる能力があるので、それで眠ってもらいました」

 

お爺さんの疑問に、正直に答える。そして、その流れでお爺さんに頭を下げた。

 

「お願いします。お姉ちゃんをもう少しだけここに置かせてください」

 

「それは別に構わんが…。そんな話をするのなら、眠らせる必要はなかったんじゃないか?」

 

そうだ。もしそれだけならごもっともな話なのだが、本題は別の所である。

 

「お姉ちゃんが疲れているのもありますけど、私は、今から友達を呼びに行こうかなと思っています。それで、帰ってくるまでの間、お姉ちゃんをお願いしたいんです。帰ってくるまで、お姉ちゃんが無理をしないよう見張っててくれませんか?」

 

友達というのは、この前お姉ちゃんに話した回復系の友達のこと。この話は、お姉ちゃんなら一人で行くなと絶対に反対する。だから眠ってもらったのだ。

 

「ふむ…。儂としては、別に構わん。だが、生きて帰ってこれるのか?」

 

心配されているのだろうか。いや、それとは違う…?まあでも、

 

「私は絶対に帰ってきます」

 

お姉ちゃんを悲しませることはしたくない。それだけで、私が生きる理由には十分だ。

 

「わかった。じゃあ、ちゃんと止めておいてやるさ。行ってくるといい」

 

「ありがとうございます!今日中には戻ります!」

 

時刻は15時を過ぎた頃。お爺さんに充電させて貰った携帯で一本のストーリーを表示する。

 

「私は許さない」

 

 

 

 

 

 

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