変わる世界で配信中   作:ありくい

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戦闘前

5日目の朝、異様な静けさが街を包んでいた。

 

これまで、防音性の低い家に住む人が苦しんでいたゴブリンの足音が何一つ聞こえない。早朝をつげるカラスの鳴き声が懐かしい。

 

「お姉ちゃん。もしかして…」

 

恵の顔には緊張が貼り付いている。多分、私もだ。良かったねと、そう言える状況ではあるが、同時に、ゴブリンの王の存在が、どれほどのものなのかを知らしめている気がする。

 

要するに、

 

ゴブリンの王は、単体でこれまで以上の被害を出せる。

 

と、私達は考えてしまうのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、世界から一時的に化け物が消えてから、関東は騒然としていた。当然だろう。

 

関東は、今回の主戦場。避難は昨日から進められていたものの、迫りくるゴブリン相手に非戦闘員を運ぶには空を使うしかなく、進まなかったのである。

 

車を持つものは車で、持たないものはヘリコプターが縦横無尽に飛び、関東地方の人間を拾い続けている。しかし、関東地方の人口は首都があるだけに膨大だ。故に、彼等には焦りが生まれる。

 

渋滞を起こす高速。

 

乱闘騒ぎ。

 

混乱に乗じて犯罪に手を染める者達。

 

そんな問題がありながらも、着実に関東圏から人は流れていく。

 

 

 

そして、反対に入ってくるのは、無謀にも、戦いを選択した者達。一般人だけで100人以上もの人が、ここに集結した。そして、さらに一万人程の自衛隊もいる。

 

即座に、自衛隊は集まった者達をまとめ始めた。()()()のみテキパキと役割を判断し、割り振る。

 

当然、私達もちゃんと従った。少し悩んだが、プロの判断を信じようと、能力を打ち明ける、前に、私と恵は最前線に、三春さんは後方へ配置された。能力云々は?と思ったのだが、自衛隊の一人のお偉いさんが前へ出てきて、小声で教えてもらった。

 

どうやら、自衛隊には鑑定のような能力持ちがいるらしい。有名なあまり、もう既に調べられていたようだ。しかし、直接見ないと行けないらしく、いつ、と思ったが、そう言えば、オーガの時に自衛隊と遭遇していた。あの時だろう。

 

…まあ、恵は流石にもっと後ろだと思うのだが、恵が必死に抵抗したため、従わない者として無視したらしい。

 

周囲には、当然見知らぬ顔ばかりだ。ただ、周りの人は全員私を見ている。ひそひそと話す人もいるのだが、表情からして悪口を言っている様子はない。なのに、誰も寄ってきてくれない。

 

「だ、大丈夫だよお姉ちゃん!というか、お姉ちゃんは有名すぎるから当然だよ!有名人には話しかけづらいでしょ?」

 

あぁ、そう言われればそうかもしれない。自分が有名人だなんて信じられないけど、あんなに動画は見られているのだから知られててもおかしく無いか。

 

まあ、真相が分かったからって緊張は薄れない。

 

と、そうしていると、人混みを掻き分けて、見たことのある人が出てきた。

 

「…へぇー」

 

黒髪に、青白い顔と細い手足を持ち、着物を纏う男性。手を顎に当て、見定めるように目を細めていた。

 

「えっと、剣さんですか?」

 

「…おお。陽菜さんに知られとるとは、光栄ですわ」

 

そう言って、剣鋼(つるぎはがね)は握手を求め手を差し出してきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど!凄いですね!」

 

「せやろせやろ?スパスパスパーン!ちゅうてな!あのにくっきオーガも一刀両断よ!」

 

剣さんは凄い。病弱そうな見た目ではあるが、私じゃどうしても手こずってしまうオーガをものともしないらしい。私なんかよりよっぽど貢献していて、尊敬の念が耐えない。

 

「でも、能力がいくら強いとしても、今でも生き残っているのはやっぱり経験の為せる技ですよね!不意打ちとか食らう場面も多いだろうに凄いです!」

 

「おおーっ!陽菜はよくわかってんなぁ!そうそう。もう俺くらいとなると何処から来るかなんて余裕でわかっちまうからなぁ!」

 

そんな剣さんの能力は、なんでも切れる。見せてもらった刀は軽さを追求していて、重さはそこまでだった。能力のお陰で鍔迫り合いが起こらないから、質量はいらないらしい。

 

「むぅ…。お姉ちゃん」

 

「あ、ごめんね恵。恵も話したいよね。でももうちょっとだけお話してもいいかな?」

 

「んん〜!!そうじゃなくて!!」

 

へ?そうじゃないってどういう…?

 

「あはは。というか、あんたら姉妹なんか?」

 

「あ、はい」

 

「そうですけどっ!」

 

何故か恵は剣さんに当たりが強い。少し睨んでいるようにも見えた。

 

「ほぉー、髪色は…いや、スマンな。忘れてくれ。それよりも、えっと、恵、だったよな、お嬢ちゃん」

 

「そうですけど、なんですか」

 

「お嬢ちゃん。刀を扱った事あるやろ。しかも、結構上手いな?」

 

「「!?!?」」

 

恵がびっくりしている。私もびっくりした。どういうことだろうか。確かに恵は刀を持っているけど、どうしてそれがわかったのだろう。

 

「おっ、当たりみたいやな。ただの勘よ、勘。なんとなく雰囲気がそう見えてな。ところで、是非生き残ったら模擬戦せんか?やってみたいんや」

 

「嫌です。面倒くさい」

 

即答で容赦なく断った。流石に剣さんも驚いている。

 

まあ、恵が危険な目にあってほしくないからそれを咎めるつもりはないのだけれど。

 

「アッハッハ!そこまで容赦なく断るか!まあいい!戦いが終わったらまた申し込むさ!」

 

そう言って、剣さんは去っていった。

 

「死亡フラグ…」

 

「辞めなさい」

 

不吉な事を言うんじゃありません!

 

そんな悶着を経て、12時は目前にせまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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