変わる世界で配信中   作:ありくい

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ゴブリンの王

さて、時間も時間。最前線に配置される人達は、緊張を漂わせている。

 

「さて、12時まで後5分といったところですが、現在のお気持ちは?」

 

「えーっと、―――」

 

やはり、言い方は悪いが一大イベントのような物なので、当然、取材を受けている人―――取材!?

 

マスゴミ到来かと凝視していると、気付いた。よく見るようなテレビではない。あれは個人業…まあ要するに、配信者というくくりなんじゃ無いだろうか。しかし、自分も参加するのにこれとは、肝が据わっているなぁと思えばよいのか。

 

「えっと、お姉ちゃん。配信ってどうする?」

 

「え、いや、しな―――」

 

周りを見渡してみると、20人に一人くらいはカメラをつけている。…なんで?馬鹿なの?

 

「しないけど。…ねえ恵?あれって録画しているってことでいいのかな」

 

「ううん。今の時代は凄くてね、あの小さなカメラ単体で配信が出来ちゃうんだよ。特殊な回線で、料金は結構するみたいだけど」

 

へぇー。ていうことは、今の私もカメラをつけている人からしたらいいネタなのかもしれないね。ちょうどオフだし。アハハ。

 

「待って恵。じゃあさっきから一向に視線が減らないのは?」

 

「お姉ちゃんが有名すぎるから、映すだけで撮れ高だよ。感謝している人も沢山いるだろうからね」

 

…恥ずかしい。キュウ

 

「丸まらないでお姉ちゃん!今そんなことしている場合じゃないんだよ!後30秒!」

 

「あうう…」

 

恵に強引に立たされながら、気持ちを整える。大丈夫。オフが見られたからって関係ない。うん。恥ずかしい以外にはなんのデメリットもない。

 

うやうやうやと心と格闘していると、地響きがした。

 

なんだどうしたと、叫ぶものは一人もいない。即座に、全員が自分が生き残るための手段を考え始める。そのために、注目するのは、一番目立つ巨大な扉。

 

00:00:00と言う文字が浮かんでいる扉は、まだ、固く閉ざされている。しかし、変化はあった。

 

扉の縁ふちから、緑のフヨフヨとしたものが滲み出ている。オーラ?とでも言えばいいのか、なんとも異様な光景である。カメラ越しに見ている人はどう感じるのだろうか。

 

オーラは徐々にこちらへと広がって来る。飲み込まれまいと全員が下がる中、自衛隊がドローンを飛ばす。偵察には持ってのこいだ。

 

フラフラと、飛んでいくドローンは、オーラに触れて、そして、弾かれた。

 

驚愕に目を見開く中、ついに、オーラの中に一匹のゴブリンが沸いた。

 

「ゴ、ゴブリンの王?」

 

「あ、ああ?」

 

誰かが叫び、誰かが反応するものの、その応答疑念に満ちていた。無理もない。そのゴブリンは、普通のゴブリンとは対して変わらない。違いといえば、頭に乗る小さな王冠と一本の杖だ。

 

それは王であることを表しているのに、あまりにも体格が小さく、そうは思えない。そんなゴブリンは、体を折り畳み、唸り始める。

 

「グウウウウウ」

 

瞬間、全員が悟る。

 

「総員。撃て!!!!」

 

迅速に判断した自衛隊の先制攻撃に続き、後ろの部隊の人が、各々、できる範囲で攻撃をしていく。前衛組は、対して何か出来るわけではない。邪魔にならないよう見ているだけだ。

 

だから、一番はじめに気付いた。

 

「…効いていない?」

 

すべての攻撃が緑のオーラに弾かれる。いくら攻撃を重ねようと、意味はなく、そして、じっくり30分程が経過した頃。

 

 

 

 

ウオオオオオオオオオオオ!!!!!!!

 

 

 

 

叫びは、周囲の建造物を粉塵に変え、小さなゴブリンの王の周りは更地になる。そして、一つの玉座が現れた。足の一本一本がビル以上の巨大なそれは、到底あの小さきゴブリンには似合わない。いつの間にか、その上に立っていたゴブリンは、手を振った。

 

 

扉が、開く。

 

 

その先には、もう一つの世界。城や家らしき物が見えるが、それと同時に、大量のゴブリンの兵士が並んでいた。当然の如く、それは全てが装備付き。剣に弓、盾に馬。まるで、中世の軍隊だ。

 

空中を描く階段が、軍隊を迎え入れるように伸び、ゴブリン達を導く。終わりの見えないゴブリンの軍は、揃った足跡を響かせて、地上に降り立った。

 

王のゴブリンは、杖を一本振るう。

 

そうして、緑のオーラはいっきに王のゴブリンへ集結した。みるみるうちに体は膨らみ、玉座に相応しい身体となった。王冠も杖も、その体に合わせて膨らんでいる。

 

もう、攻撃は通る。

 

実際に、数十体のゴブリンは、オーラが消える直前に撃たれた銃弾を腹に受け地面に倒れている。だというのに、

 

誰も、自分から動こうとはしなかった。

 

誰もが、勝つイメージを、失っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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