「剣さん!お願いします!」
「ほいさぁ!」
少し…というより、かなり奥深くまで私達は潜り込んでいた。本当はもっと手前でも良かったのだけれど、味方の魔法と銃の遠距離攻撃の邪魔になることを恐れての事だ。それに、当たれば剣さんはひとたまりもない。いくらそれを切れても、消せるわけじゃないのだから。
結果的に、将ゴブリン一体のみの処理は全て剣さんに任せている。というのも、私だと時間がかかり過ぎる。オーガの魔石で一発はそうなのだけれど、魔石に戻して回収がこの乱戦の中だと厳しい。後それをするなら雑魚を一気に倒したほうがいい。
というわけで一刀両断で殺れる剣さんが適任だ。流石に、複数の場合は私も倒すけどね。
「前にいますけど…先に後ろの方やりましょう」
「まあそやな」
基本的に、こっちへ来るゴブリンより逃げるゴブリンを優先する。そのほうが、全体的な労力は減るはず。…多分。
「あっ!めっちゃ迂回してます!一万!」
やはり、ちゃんと頭は回るようで、私達の存在を見て、ゴブリン達は大きく迂回を始めた。乱戦の中から大きく抜け出し、乱戦の中央にいるお陰で私達では止められそうもない。
「あっ、どうしよう…!」
「!?なるほどぉ!そういうことか!」
何かに気付いたように、剣さんはこちらへよってきて、声を張り上げた。
「集団から抜け出したゴブリン達をやってくれい!」
―――数秒後。
数多の銃弾と魔法により、ゴブリン達は魔石へ変わる。
「お嬢ちゃんはこういうことを予測してたんかぁ!ハァー!よくやるもんやわ」
確かに、あの遠距離部隊の人達が見ている確証もないのに、よくこんなことが出来るなと思う。何か仕込んでいたりしていたのだろうか?
「あっ、百」
そんなことを考えながら、近くにいたゴブリンを切った。
「…一旦ここで止まろか」
剣さんは、ある程度進んだところでそう言った。まだまだ追い切れていない将ゴブリンは沢山いて、だというのに何故と、疑問に思ったが目の前の存在を見て理解した。
「もしかして、もうすぐアレの射程範囲内ですか?」
アレとは、言うまでもなくゴブリンの王。まだまだ余裕そうにふんぞり返っている。しかし、余りにも大きな巨体に、油断は出来ない。
「おう。そやな。それに、そろそろ日が暮れる」
言われて気付く。微かに、空の端はオレンジ色に変わっていた。
「ここいらで挟み込んで、ゴブリン一掃して一旦合流しよか。周り見えんと、流石にキツイ」
ごもっともな意見。そして、この戦いが一日で終わらないことを、考えていなかった自分がいた事に気付いた。うん。剣さんから学べることはまだまだありそうだ。
「剣さん。凄い体力ですね」
「陽菜がそれ言うか。まあ、この能力やと斬る時に力が要らんからな。やりやすいわ。それに多分、ゴブリン倒す度にちょっと息が楽になる気もするしなんかあるんやろ」
まだ仮説に過ぎないそれだが、よく言われているしなんなら私も信じている。だって私の体力おかしいって一番思ってるもん。深夜から4時間近くやり続けて疲れる程度なんておかしい。確信出来ないから、誰も堂々と言いづらいんだけどね。
「じゃあ、こっちから逆に進みますか?」
「んー、背中を斬るのはありやけど、みんなの迎えを待とうか。俺らが背中を斬られたらしゃーないし、それに、ちょっと怖いのがおる」
そうして剣さんが目線で示すのはまだ動かないとあるゴブリンの集団。これまで歩兵オンリーだったのだが、そこには馬に乗ったゴブリンがいる。
「あの馬が普通の馬とも限らんし、それに立ち位置的には精鋭兵やろ。アレ」
確かに、馬含めて彼等は全員装備付き。それに、私達の世界には中々いないサイズの馬もいる。乗っているのは…一万規模の将ゴブリンか。多分アレを逃せば馬とともに復活するんだろうなという予想が出来る。
「一応アレに目を光らせとこ。俺らが目を背けているうちにアレに荒らされたら溜まったもんじゃない。残りは仲間に任せようや」
それに従い、私達はその場で逃げてくるゴブリンを倒し、向かってくるゴブリンも同時に捌いていった。
―――そうして、
何事もなく私達は合流した。
太陽はもう隠れ、月明かりのみが街を照らす。そこまで行くと、ゴブリン達の侵攻は止まった。ひと悶着あったが、流石にゴブリンの王からは離れようと、少し下がり、いつの間にか準備されていたキャンプ地で休むことになった。
周りを見渡せば、見慣れない顔がいくつかある。それは、恵によると追加で来た人達らしい。各々、好きな配信者の活動に当てられたみたいで、その人たちを中心に夜の警備は任される事となった。
ゴブリンイベント最終日となる筈だった五日目は終わり、延長の六日目へと突入した。