カンカンカンと、控えめながら警戒を促す鐘の音に目が覚める。寝過ぎたかと思ったけど、まだ日が出たばかりで、太陽は全身をまだ出せないでいた。
「ん…お姉ちゃん…?」
「ん、おはよう。ゆっくりしてなね」
優しく恵の金色の髪を撫でると、私はテントを出た。恵が可愛かったので朝食抜きでも元気いっぱいだ。ゴブリンの方向に走り出した。
辿り着くと、やはり、ゴブリンの侵攻が再度始まったみたいだった。昨日の昼間の主戦力が休んでいる分、崩れている場面が多いが、すぐに自衛隊のカバーが入り、危機を免れる場面が多く見られる。凄いな。やっぱり、長期戦を予測して戦力を残していたのだろうか。
私も、自衛隊さんの邪魔にならないように、そして、皆のカバーを中心に立ち回った。
(あ、あの人深く行き過ぎてるっ!)
どういうわけか、一人集団から孤立してしまっている人がいる。持ち前の能力…あれは、岩、だろうか。大量のゴブリンが押し潰された。それで前方のゴブリンへは無類の強さを示しているが、背後は駄目なようで。
「ガッ…糞がぁ!」
背中を打たれた。ゴブリンはアレでも生身の人間には相当キツイ威力を持つ。しかし、カーンと心地いい金属音が響くあたり、何かを入れているみたいだ。
自衛隊は、助けようとはしていない。見てはいるので認識はしているはずだ。でも、そこに集中すると総崩れする。それが分かっているのだろう。
助けられるのは、私だけだ。
ウォーミングアップと言わんばかりに、ゴブリンを倒していく。決して速くはない。でも確実に一歩一歩進んでいく。
「ちょ…て、あ」
自衛隊の一人が声をあげようとしていたが、すぐに引っ込めた。多分止めようとしていてくれたのだろう。
シャと、身体が切れる感覚がして、声を出した。
「いっ…今行きますからね!!」
「グッ…スマン!助けてくれ!」
苦しそうな声。これは時短しないと。地面を見ればいくらでもあるゴブリンの魔石を空へ投げて、道を作り、ゴブリンを一掃した。
道が開け、希望の光に満ちた視線がこっちに向いた。しかし、その瞳には、背後で力強く棍棒を握る一万の将ゴブリンは映らない。
駆け抜けて、男を庇って棍棒を見に受ける。吹き飛ぶ、けど、大量のゴブリンのお陰で抑えられた。勢いが無くなれば、障害は身体に響く痛みのみ。オーガに比べれば無視できる範囲だ。
「ちょ、て、貴方は!?」
庇われた男は、私に気を取られ過ぎる事なく、ちゃんと将ゴブリンを切り刻みこっちに来た。出された手を取り、逆に引っ張って全員と合流する。
「ひ、陽菜様!も、申し訳御座いません!」
え、何その口調
「え、なにその口調」
おっと、つい口が滑ってしまった。でもこの人さっき糞がぁ!って叫んでいたのに…。
「貴方のお陰で人生に希望が持てたんです!ゴブリン共によって娘も妻も殺されて、生きる希望を失っていたところで貴方が戦い方を教えてくれた!もう私のような人が出ないように頑張ろうと、貴方の姿勢を見て思えた!貴方に救われたんです!」
「あ、ありがとうございます…?」
悲しい事があったんだと分かったけど、凄い勢いで言われたからちょっと狼狽えてしまった。多分お礼してくれてるんだよね…?
「君!戻ってきたのなら休みなさい!もう8時間は経過しているぞ!深手も追ったはずだ!」
「陽菜様を見て活力が湧きました!まだまだいけます!」
「えっ、あの、無理はダメ…だよ…?」
8時間ということは、徹夜組ということだろうか。そんなに頑張ってくれて、ありがたいけどそれで無理されたらたまったもんじゃない。
「分かりました!少し休んですぐに復帰します!」
スタタタタと一瞬で戻っていった。…え?怖い。
そんな事がありながらも、恵と合流しゴブリンを倒していると、呼び出しを貰った。
ひとまずそれを皆に伝えて、抜けさせてもらう。案内されたテントには、わたし達の他に剣さん、さっき助けた男の人、後なんか派手な女の人、そして、高校生の女の子がいた。
ピンク色の髪に高い背丈。それに念入りにメイクされていて、人に魅せることを意識した派手な服装をしていた。そこには隙という隙がなく、まるでモデルさんみたいな女の人だった。
そして、何処かの高校の制服に身を包んでいる女の子。長髪の黒髪に特にこれといった特徴はないけど、静かな、大和撫子みたいと言うのだろうか。とってもかわいい。恵には敵わないけどね、ふふん。
「あ、サイコミールさんと風野楓さんだ」
恵がそう零す。誰だろう。有名人なのだろうか。はてと頭を傾げるけど、もしかしたら剣さんの時他に言われていた子だろうか。剣さんのを見ているだけで時間が過ぎちゃったから見れなかったけど、剣さんと同格なのだろうか。
「へぇ〜っ!あなた陽菜ちゃん?カワイイ〜!!!隣の子もいいわね〜!!!!それ地毛?触ってみたい〜!!!」
「どうも」
「あ、こんにちわ」
サイコミール…凄い名前だな。サイコミールさんは好意的な様子だ。そして、風野さんは、私には興味ないのかな?とてもクールな様子だ。
すると、上座にいた、なんか偉そうな人が声をあげた。
「それでは、これよりゴブリンの王討伐会議を始めます」
この中では最長年、私の2倍は人生を生きていそうな高官は、難しい顔でそう言った。