変わる世界で配信中   作:ありくい

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ゴブリンの騎馬兵

一瞬、脳を駆け巡る情報に、全員が動揺する。そこで、久し振りに守備が崩れた。

 

「恵!ちょっと抜け…」

 

カバーするために恵に任せようとして、狙っていたのか、土煙とともに巨体が迫るのを確認した。

 

「皆ごめん!カバーできない。あっちを止める!!」

 

多少の攻撃は無視して、強引にゴブリンの集団から飛び抜ける。そして、迫りくる巨体――乗馬しているゴブリンの前に立つ。道中のゴブリンの死体一体や二体を蹴飛ばせても、これは無理に決まっている。

 

一つの魔石を正面に、大量の魔石を固めて両端に投げた。

 

「最後のっ!オーガ!」

 

重いオーガを、寸前まで近付けてから死体へ変える。質量と頑丈さと大きさには定評があるオーガは、壁として乗馬したゴブリンを弾いている。狙い通り、前線の数匹は後方からの馬に押し潰された。

 

そして、横にズレた乗馬したゴブリンには、魔石から出た死体が地面の障害物となる。馬については素人だが、ここまで凸凹なら一体くらいは、

 

「ヒヒン!」

 

「ギッ!?」

 

転び、ドミノのように後続を巻き込んでいく。そこまでやっても、全員には程遠く、手前の騎馬兵を止めたに過ぎない。

 

でも、そこまでやれば、

 

「よくやった!陽菜ァ!」

 

「陽菜様!お手伝い致します!」

 

右にズレた騎馬兵は一閃。左にズレた騎馬兵は突如巨大化した魔石に潰された。

 

遠くでは、暴風にゴブリンが馬から振り落とされたり、瓦礫に押し潰される様子がみられる。少し遅れて、他の魔法もぶつかり、騎馬兵の足止めは完了。

 

そのうちに、自衛隊による立て直しが行われた。

 

「下がってくれ!こっちはもう大丈夫だ!」

 

自衛隊のその号令に、私達も下がる。そうして、ゴブリンの集団に目を向けた。

 

「…あれ?騎馬兵は?」

 

数が少ない。何より、奴等のリーダー。1万規模の将ゴブリンのような、一回り大きなゴブリンがいない。昨日、飛び出したあたりにはもう来ているので見えないということはないはずだ。

 

と、いうことは、

 

横から来たぞ!!!!

 

誰かが叫び、人の流れが傾いた。そこには、一つ飛び抜けた巨体と、それに続くゴブリンの騎馬兵。

 

「ああああ!!!!」

 

「助けて!!!」

 

不意をついた騎馬兵による一撃は、横から私達を蹂躙する。止まる素振りは見せず、騎馬兵に飲まれた仲間達は、もう帰ってくるとは思えない。

 

「ダメ!」

 

特に、力強い攻撃を加えることの出来ない私では、余りにも無力。それでも、誰かの身代わりにはなるかもしれない。

 

「オラァ!任せろやぁ!」

 

「これでどうだ!」

 

決定力の高い二人は、騎馬兵を次々と落としていく。ああ、本当に頼もしい。何か私に、出来ることは…!

 

ひとまずは、逃げ遅れそうな人を助ける。

 

「うわあああああ!!!!」

 

「そらっ!」

 

馬の上から突き出されている槍を、短刀で弾く。

 

「あ、ありがとう!」

 

「早く逃げて!」

 

目の前の馬の足に傷をつけて、動きを止める。すぐに身体を蹴られたけど、多少吹き飛んだだけで済んだ。幸運だ。すぐに別の人の元へ走る。

 

「大丈…夫」

 

「…うぅ」

 

グチャっと、足が潰れている人がいた。

 

「ごめんなさい。すぐ助けます」

 

「あ、ありがとうっ!いや、逃げてくれ!」

 

男の人が叫ぶ先には、少しでも私達を荒らそうとする騎馬兵を倒そうと放たれた魔法弾、その流れ弾だ。

 

私が避ければ、この人はこれに当たるしかない。距離はあれど、潰れた足では、逃げれるものも逃げられない。

 

やることは一つだ。

 

「這いつくばってでも逃げて!」

 

魔法に向かって身を投げる。熱くて寒くて痛くて気持ち悪くて変な気分で、吹き飛ばされて、私は地面を見た。

 

(良かった。私でちゃんと消せたみたいだ)

 

安堵を魔法の勢いそのままに私は飛ばされていく。元々は、これは騎馬兵を狙ったもの。それが高度が足りずに私達に向かってきたんだ。私は、それに当たって吹き飛ばされた。

 

つまり、

 

「陽菜!?」

 

「陽菜様!?」

 

「…うん。接続!」

 

吹き飛ばされて外れた接続を剣さんに繋ぎ直した。きっと、剣さんならなんとかしてくれるはず。

 

そうして私は、騎馬兵の波に飲まれた。

 

 

 

グチャグチャと、身体が永遠に踏み潰されていく。私の身体は潰れてもすぐに戻るから、一瞬沈み、すぐに戻るを繰り返す。お陰で、たま〜に馬の足が乱れる。

 

私が出来ることなんてそれくらいだ。今は、ズタズタと身体が踏み荒らされるのを意識が飛ばないように必死に耐えるだけ。もし意識が飛べば、接続は切れて、身体は弾けてバラバラだ。

 

実際に身体が影響を受けるわけではないから、毎回初めてのような潰される激痛が私に来る。まあそんな感じでずっと新鮮だから、その分意識が途切れる事はない。

 

はぁ。いつ終わるのやら。

 

 

 

 

 

 

 

 

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