「ギィ!(この先がこの森の外だぞ!)」
「あ、ありがとうございます」
「ギィギィ?(俺達はこれ以上外には行けないからな。後は大丈夫か?)」
「はい。お世話になりました」
ゴブリン達に森の外へ運んでもらい、一応お礼を言っておいた。複雑な思いが無いわけでは無いけど、こういった礼式は大事だ。それに、あの声が発したのも気になった。
『良好な関係』
少なくとも、好意を無下にするとか、敵対行為は良くないのがわかる。でも、良好な関係と言われれば、ちょっと悩む。人ならまだしも、ゴブリンに喜ばれる行為は分からない。
「お姉ちゃん、行こっか」
「うん。あっ、ファンさん。ごめんなさい」
「ああいえ、構いませんよ」
私は身動きがとれないので、全身を預ける形だ。本当に申し訳ない。
「あの、ファンさん。もう遅いと思われるかもですけど、お名前は…」
「…いや、大丈夫です。陽菜様に呼ばれるなんて、というよりは、私はもう故郷に帰って、妻の家族を守ろうと思いますので、わからないほうがいいかなと」
確かに、私の発言は結構広まってしまう。うん。それも、一つの選択なのだろう。
「お名前を伺えないのは残念ですけれど、わかりました。ありがとうございました」
「こちらこそ、感謝はいくらしてもしたりませんよ」
「はいそこまで。さっさと行きますよ!!」
恵に急かされて、私達はゴブリンの森を出た。
「こちらへどうぞ」
森を出たあと、自衛隊さんに迎えられ、少し離れたホテルに案内された。なんでも、今回のゴブリンの侵略によって、少し道路の確認作業が必要らしい。それに、
「ごめんね、祖谷さん」
「いえいえ〜、恵にはいつも助けられていますから〜」
出来るだけ体を傷付けないようにしたつもりだけど、それでも、手足が一切動かないレベルには傷付けた。だから、治してもらわないといけない。
…あの時、ここまでしたのは確実性が欲しかっただけじゃなくて、祖谷さんがいたからと言うのが大きい。本当に自己中で申し訳ない。
「そんな顔しないでくださいよ〜。そもそも、恵もそのつもりで私を連れてきたんですから〜」
「あ…バレてた?」
「うん。バレバレ〜。お姉ちゃんのこと大好きだもんね〜」
ものすごい失礼な気がするけど、見た感じは特に気にしていなさそうだ。掘り返すのもあれだし、好意に甘えよう。
「うぅ。…一緒にいてくれたら、家事でも洗濯でも何でもするから」
「そう〜?じゃあお菓子も食べたい〜!」
「…はーい」
仲睦まじく、二人がじゃれ合っている。あー。そういえば、友達にまったく会ってないや。元気かな…。
「それでさ、お姉ちゃん。これからなんだけど」
恵は、恐る恐るスマホを出した。画面どころか、全体がバッキバキに割れて、見ていられない。
「ごめんね。もう録画とか配信とか出来ないかも」
一応、パソコンなら家にもある。けど、配信やらなんやらは全部スマホでやっていた。だからこそ、今のままでは活動が、それに、パソコンもないから、皆に報告すら出来ない。
「いや、恵は悪くないよ。というか、仕方ないよ。うん」
「あの〜。ちょっといいですか〜?」
祖谷さんが声をあげた。
「三春?どうしたの?」
「いや〜、これ〜。もしかしてカメラつけっぱだったりしませんか〜?」
「へ?」
「あのですね〜?その髪留め、同じの持ってるんですけど〜。なんかレンズ見えませんか〜?それで映像撮ってたんじゃないんですか〜?」
………あ、
「ヤバいよ恵!!!カメラどうしよう!」
「え?なんのこと?って待って?ほんとにその髪飾り誰からもらったの?え?え?いつの間に?」
あ、そう言えば恵にはまだ話していなかった。カクカクシカジカとあったことを話した。
「あ、なんだ。ε-(´∀`*)ホッ それはともかく、それは返さないとないとだね…あっ」
恵が、ハッとしたように目を見開いた。
「サイコミールさんって配信者だよね…。なら、もしかしたら…。よし。お姉ちゃん。私が返してくるよ」
「えっ、いや私が…行けなかったね。なら、お礼を言っておいて欲しいな」
サイコミールさんには感謝しかない。あの人には沢山助けられたし、サポートもしてもらった。恵はうんと頷き、
「ねえ三春。それって何日ぐらい?」
「ん〜。6日だね〜」
「じゃあそこらへんの話も自衛隊さんにしておくね!」
そう言って、恵は出ていった。
「…行っちゃいましたね〜」
「そうだね」
祖谷さんと二人きりだけど、特に話す話題が無い。自然と、二人揃って、治療の光をぼーっと眺めていた。
そして、うとうとしてきた頃。
「ふと思ったんですけど〜、サイコミールさんにこれまでの会話全部聞かれてたりしませんかね〜」
「…ありえそうで怖いね」
ぱっちり目が覚めてしまった。