変わる世界で配信中   作:ありくい

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《恵視点》


相談

私は、お姉ちゃんと離れて、ホテルのエントランスへ行き、受付の人に聞いた。

 

「あの、すいません。サイコミールさんってどちらにいますかね…?」

 

「いや、そういった情報はお伝えできません。連絡でなら、承っております」

 

あー。確かに、プライバシーやなんやらの事を考えれば当然とも言える。…そういえば配信者の中には記者気取りをしている人もいた。多分、そういう人への対策だろう。この調子ならマスコミの方にも牽制していそうだ。安心安心。

 

「あ、それなら――」

 

「あら?恵ちゃんじゃな〜い!!」

 

明るい声が響いた。誰だとか言うまでもなく、サイコミールさんである。

 

「あっ!サイコミールさん。お疲れ様です。その、ありがとうございました」

 

エントランスの受付の人にお礼を言ってから、サイコミールさんと向き合う。

 

「お疲れ〜。恵ちゃんはもう動けるの?身動きすら出来ないっぽかったけど」

 

「え?…あぁ、カメラ越しに見られてましたか。確かに身体はちょっとボロボロですけど、動けます。それに、お姉ち…姉よりはマシですので」

 

一度言葉を切り、失礼のないように消毒もした髪飾りを渡した。

 

「これ、返すのが遅れてしまって申し訳ありません、姉が、とても助かりました。ありがとうございますと言っていました」

 

「あらあら。いい子ねぇ。どういたしまして。えっと、陽菜ちゃんは大丈夫なのかしら?」

 

「姉は、手足は動かせませんが、今治療を受けていて、6日後には治るそうです」

 

「…っ!そうなのね…」

 

何か思うところがあったのか、サイコミールさんは深く考え込んでいた。その内容を聞きたくはあるが、その前に相談を投げかけた。

 

「あの、お考えのところ申し訳ないのですが、相談に乗ってほしくて…」

 

私は、今の状況を話した、のだが。

 

「…ふふっ。そんなの、自衛隊さんに言ったら解決するわよ。すぐに新しいカメラを用意してくれると思うわ」

 

「えっ、そうなんですか?」

 

「そうよ?国は今回の戦いで失われたものの補填は一定金額以下であればしてくれるわ。特に、戦いに参加した人が優先的にね。あとそうねぇ…。私からお願いしたいことがあるのだけれど」

 

そんな制度があったなんて…全く知らなかった。一応ニュースは軽く目を通していたんだけどなぁ。と、それは置いておいて、サイコミールさんからのお願いは出来るだけ聞きたい。お姉ちゃんがお世話になったのだから当然だ。

 

「何でしょうか」

 

「ゴブリンの村に同行してもらえないかしら」

 

「はい?」

 

ゴブリンの村?

 

「それって、あの、森のことですか?」

 

「ええ。明後日にはモンスターが湧き始めるでしょう?それまでに一度、調査を済ませたいのよね。そ・れ・に〜!」

 

彼女は大きな目でパチンとウインクして、

 

「配信者たるもの、撮れ高は見逃せないわ!!!」

 

「…それって、私を動画に出すぞってことでいいですか?」

 

「動画じゃないわ!配信よ!」

 

この人、私が一応お姉ちゃんのチャンネルでは顔を出していないことを知っているのだろうか…。あれ?どうだっけ。ゴブリンの戦争辺りはちょっと怪しいかも。

 

「まあどっちにしろ…」

 

「ちょっと待ちなさい!断りそうな雰囲気がしたわ!でも聞いて!ゴブリンの村には異世界の技術。つまり、私達の、人智を超えた物がある可能性があるわ!」

 

「はぁ…」

 

別に断るとは言ってないんだけど…

 

「もしかしたら、陽菜ちゃんを一瞬で治療出来るおくすりがあるかもしれないわよ!!!」

 

…!

 

「行きます!」

 

元々行くつもりではあったが、その条件があるなら尚更行き得だ。

 

「良かったわ!これで配信の華が一輪増えたわね!じゃあ、恵ちゃんはなんていう名前で配信に載せてほしい?」

 

「姉が本名なのでそのままでいいですよ」

 

この時代に良くないでしょと思ったけれど、既に手遅れだったのでもう気にしていない。無事きっちりと特定までされた。ホント、ちゃんと話し合えば良かった…。

 

「…わかったわ。それと、今回は視聴者には秘密なのだけれど、もう一つの目的があるの」

 

「目的、ですか?」

 

「えぇ。剣さんの捜索ね。まだ彼見つかっていないのよ」

 

「あ、そうなんですね。…彼には幾度となく救われているので、是非見つけたいです」

 

戦力としてはかなり大きいし、何より、救われた恩がある。

 

「じゃあ決定ね!向かいましょう!あ、そろそろ日が暮れるから急ぐわよ!」

 

「えっ」

 

そうして、準備する暇もなく、私とサイコミールさんはゴブリンの森へ向かった。

 

 

 

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