『ここが、この村の入口ですかね。ここから見える建物だけでも、すっごい大きいですね…禍々しいです』
一つ一つの建物の規模がかなり大きい。窓や扉はあり、それが建物だと認識はできるけど、もしなければそう認識するのはかなり難しいだろう。
『じゃ、じゃあ入って行きましょう!』
ゴブリンが達が私に襲いかかることは、万が一つにでも存在しない…と思う。恐らく、ゴブリンが自らに課した制約と人類への忠誠は、かなり関わってくるのではないだろうか。
『おおう。壮観ですね。楽しいです。あれは…多分八百屋ですかね?売ってる野菜も見たことないやつだ…。すいませ〜ん』
実際、見ているだけじゃ視聴者も楽しめないと思う。お姉ちゃんのためにも、未知は積極的に明らかにしていきたい。
『すいません。ここの野菜って、どうしたら買えますか?多分、日本円は使えませんよね?こういう物なんですけど』
日本円をゴブリンがわかるかわからないので、持っていた千円札と百円をみせてみる。
「ギィギィ?ギィギィギィ(日本円?それなら、これとこれは買えるよ)」
『えっ、使えるんですか!?』
ゴブリンが指で指しながら教えてくれる。値段も書いてはあるが、読めないのでそれを配慮してくれたのだろう。今の御時世だとこのお金の信用もどれほどか分からないのに、使えちゃうのか…。お姉ちゃんが言っていた、ゲームみたいというのも納得できそうだ。
『あ、じゃあお願いします!…あの、追加で払うので、少しお話を伺ってもよろしいですか?』
とにかく下手に出て、機嫌を損ねないように。そして、野菜?を受け取りながら、追加のお金を渡して交渉する。出来たらここでゴブリンの文化を知りたい。
「ギィギィギギィ(おっ、アンタわかってるじゃないか!何でも聞きな。お得意さんには良くしないとね)」
『ありがとうございます!』
ふと気になり一度チラリとコメントを見てみたけど、私達のこの態度には賛否両論だ。ゴブリンが嫌いな人達が時折荒らしコメントを投げているのは置いておいて、それでも、人類に忠誠を誓っているんだからもっと上からでもいいだろとか様々だ。
とはいえ、これまでの正否は、これから答え合わせがある。
『じゃあ、まず教えてほしいんですけど、お名前からいいですか?』
「ギィ?ギッwww!ギギィギィギギィ(名前…?アハハハハ!それは偉い人だけで、この村のゴブリンはどれも名前なんてないんだよ)」
ほう。なるほど?
『あの、それならどうやって皆さんを呼びわけているんですか?』
「ギィギィ?ギギィギィ?(どうやって?って、そりゃ、名前なんてなくても誰が誰を呼んでいるかなんてわかるだろう?)」
なるほど。
『どうやら、私達とは別の感じ方があるかもしれないようですね。じゃあ本題なんですが』
「ギ、ギィギィギギ、ギギィ。(ちょっと待ちな、アンタ何も知らないようだからね、長く話すだろうから椅子持ってくるよ)」
わお。ちゃんと私の分も持ってきてくれた。しかも座り心地ヨシだ。もしかしたらあの八百屋ゴブリンの分だけかもと思ってたからお礼が遅れてしまった。
『あ、ありがとうございます!この椅子いいですね』
「ギィ。ギィギィ(そうだろう?私が作ったんだからいいに決まってる)」
お、嬉しそうだ。好感度アップかな?
『じゃあ、改めて。私達人間は貴方達の事を知りません。なので、貴方達のこだわりとか、嬉しいこととか、嫌なこととか教えてほしいです』
「ギィ?ギィギィギィ――(そうさねぇ…例えば―――)」
聞いた話を纏めると、まず、ゴブリン達が最も嫌がるのは、作ったものを否定されること。ゴブリン達の価値観では、もしそれが気に入らないなら、何も言わずにそれを使わない。わざわざ否定するのは、争いの元になるとのことだ。
個人的には、改善にもなるから否定の意見も悪くないとは思うんだけど、まあ人それぞれだ。コメントでも意見が別れていた。
逆に最も喜ぶのは、作ったものを褒められること。まあこれは誰だって嬉しいだろう。
一時間ほど話した頃だろうか。そろそろ切り上げようと思い、会話を締める。
『ありがとうございました。とても貴重な時間でした』
「ギィギ、ギギィ(いやいや、こういうのは助け合いだからね)」
そうして立ち上がろうとすると、
「ッッッ!!!!」
がくりと、体から力が抜けた。
『ギィ!?ギギギィッ!(だ、大丈夫かい?今すぐ薬をもってくるよ!)』
「あ、ありがとうございます」
あっ、そうだ配信中。
『あ、皆ごめんね。ちょっと体が痛くて…。力が入らないんだ』
ああ、放送事故かもって、なんかジンジンしてきたな…。体の各部位が熱いし、多分無理しすぎたんだ。確かに、やけに痛くなかったけど、それはショックで抜けていたからなのかも。
「ギィ!ギギギギィ!(ほら早く!これを飲みな!)」
『恵ちゃ〜ん。おまた…せ?』
八百屋ゴブリンが助けに来てくれたのと同時に、サイコミールさんが合流してきてくれた。一瞬、サイコミールさんが勘違いするかもと思ったけど、私のところに来た辺り配信を確認していたはずだし大丈夫だろう。だからこのまま、意識を―――。