変わる世界で配信中   作:ありくい

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両親

朝、絶賛爆睡中の三春さんを置いておいて、恵と一緒にリハビリがてら外に出た。

 

ラフな格好で、でも、あんまり目立つのは好きじゃないし、フードで髪は隠している。

 

「んーっ!いい朝だね」

 

「うん。賑やかだね」

 

そう。今日は人類にとって待ちに待った、丸一日確実に化け物が出ない日なのだ。電気屋の小さなテレビは、海外はどうたらとかのニュースを流しているけど、皆、多分意図して見ていない。今は皆共通して、忘れてしまいたかったんだろう。

 

「お父さん!早く早く!」

 

「待ちなさい。危ないだろう」

 

「あらあら、走っちゃだめよー」

 

家族連れも多く見られる。危ないという理由で、家に閉じ込められた子供達にとっては、貴重な一日。親御さんもそれをわかっているから、拒むことなく、家族総出で遊びに行っているのだろう。どうせ、明日からはいつもの日々に戻るのだから。

 

「お父さん、お母さん、か…」

 

「お姉ちゃん…?」

 

おっと、ついつい釣られて零してしまった。覗き込むように恵が私の顔を見てくる。大丈夫、何も問題はない。

 

「そうだ。私達っていつ頃帰るんだっけ?」

 

「えーっとね…。確か、自衛隊の道路の確認がもう終わったらしいから、お昼ごろに約束してもらったスマホを受け取ってからかな。…それにしても良かったね。お姉ちゃん。サイコミールさんにその髪飾り貰えて」

 

恵がそう指すのは、私の髪に新たに付け加えられた髪飾り。今朝、エントランスでばったりと会ったサイコミールさんが私にプレゼントしてくれたのだ。これで、動画が取りやすくなるし、視点も増える。すっごく嬉しかった。

 

「うん。サイコミールさんには頭が上がらないよ…。期待に答えられるように、明日からも頑張らなくっちゃ…!」

 

お陰で、元気いっぱいだ。

 

そうして散歩を終えて、ホテルに戻り三春さんと朝食を共にすると、三春さんが切り出した。

 

「あの〜お父さんから帰ってこないか?と連絡があったので一旦戻ったら自宅に戻りますね〜」

 

「あー。うん。そうだね。帰る時は、教えてくれれば、迎えに行くからね」

 

「ありがとうございます〜。でも多分、お父さんに送ってもらうのでお気になさらず〜」

 

そんな会話の中、恵が突拍子もなく言い放った。

 

「お姉ちゃん。それなら、今日病院行かない?」

 

「えっ」

 

もしかして、私が気づいていない間に恵は怪我か病気にかかったのだろうか?顔色も体温も脈拍も、いつもとそう変わらないからてっきりなんにもないものだと…。

 

「うぅ。ごめんね恵。お姉ちゃん、気づいてあげられなくって…」

 

「え、何の話…ああ、違う違う」

 

微笑みながら、恵はパタパタと手を降り、

 

「お父さんとお母さんのお見舞いだよ。私、久しぶりに顔がみたいな」

 

自分の要求のようにしているけど、多分恵は、さっきの私の呟きを気にしてくれているのだろう。

 

「…うん。私も。一緒に行こっか」

 

しんみりとした空気は、決して重苦しいものでなく、むしろ居心地が良いものだった。

 

「ん〜、恵〜、デザートが欲しい〜」

 

「三春は空気ぐらい読みなさいよ…」

 

まあ、第三者からすれば良くなかったのかもしれないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほんの少し、前の話だ。ゴブリンという化け物に、多くの人類が蹂躙された日。私と両親は、朝早くから家を出ていた。理由は単純で、家通いにしては些か遠い高校と職場に間に合わせるため。基本的には、ニュースは電車でさらっと確認するため、誰も見ておらず、ゴブリンという存在を、私達は誰も知らなかった。

 

周囲には、同じような境遇の人がいる。皆、せかせかと足を動かして駅へ向かい、そして、惨状をひと目見て足を止めた。

 

余りにも酷い。血肉が飛び散り、血生臭いにおいがそこら中に染みついている。そして、その上を闊歩する未知の化け物。ニッタリと、赤黒い棍棒を持ち、笑っていた。

 

平和な色しか知らなかった私は、無様に腰を抜かして叫ぶ。そのせいで、私の両親は逃げられなかった。

 

ゴブリンとはいえ、一般人にとっては十分な脅威だ。火事場の馬鹿力とでも言えばいいのか、そんなものが都合よく出れば素手でも倒せるかもだけど、現実は非常で、

 

なすすべなく、両親は暴力の前に沈んでいった。私も暴力を受けたけど、無意識的に誰かと接続していたらしく、無傷ですんだ。最終的に、パトロール中のお巡りさんによってゴブリンは追い払われ、私達は病院に運ばれたのだが。

 

棍棒により滅多打ちにされたとして、駅内の被害者50人中23人死亡、14人意識不明、12人軽傷、1人無傷。

 

パンクしかけの病院は、私が無傷だとわかると両親を待たせずに帰らされ、それ以来、私も、なんなら恵はそれ以上、両親を見ていない。

 

 

 

 

 

 

そんな両親と、私達はひさしぶりの対面だった。寝たきりで、息をしているが意識はなく、話してはくれなかった。

 

「お父さん、お母さん―――」

 

それでも、私を守ってくれた二人に、小声でゆっくりと話しかけた。

 

これまでのこと、二人が目を開けなかった間に起こったことを恵と二人で話してみた。物語みたいに、微笑むことはなく、反応なんてなかったけど、それでも、何故か、少し楽しかった。

 

明日からは、また化け物が現れて、戦いが始まる。それに、長居は迷惑だから、そこそこで切り上げて、私達は病院を出た。

 

明日も、頑張ろう。

 

 

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