目覚めると、既に朝日は登り、なんならお昼時を時計が知らせていた。
「あ、起きた?」
恵がにっこりとほほえみながら挨拶してくれた。あぁ、癒し…。
「じゃなくてっ!もー!それは私がやるって言ってるのに」
「お姉ちゃんの役に立ちたいの。…だめ?」
上目遣いでそんなことを言われてしまっては、頭をなでなでする以外無くなってしまう。
(。-ω-ヾ(>᎑<`๑)<メグミ~
「で、お姉ちゃん。これ見て」
恵はわざわざ目の前のパソコンじゃなくてスマホで動画を見せてきた。私が映っているので、配信の切り抜きのスライム編だ。
「わ。もう作ってくれたの」
「うん。でね、自称自衛隊とか自称海外の軍人の情報にこんなのがあったの」
恵の手を追うと、確かにそれらしきコメントがあった。
『我々は火炎放射器で対処した。そんな方法があったとは素晴らしい!』
なんか翻訳が怪しいけど、これは海外の人だろうか。
『…ハハハ。自衛隊では色々と総出で実験したけど意味なかったみたいだ。強塩基を使ったりしたんだがなぁ』
「おお〜〜」
「ね?もう一々お姉ちゃんが全部やろうとしなくてもいいんだよ?だからさ、これからはもっと自分の体を大事にしない?」
「…ううん。こんなに沢山の人が協力してるのに、私だけが楽をするなんて絶対だめだよ。むしろ元気出ちゃった!」
こんなにも多くの人、それに軍人さんや自衛隊さんと言うベテランさんが手伝ってくれるなら百人力だ。
「頑張ろう!」
「はぁ…」
恵が何故か凄く残念そうだった。お姉ちゃんそんな顔してほしくないよ?
恵のめちゃくちゃ美味しいご飯を食べた後、ふと自分の動画チャンネルを見てみた。
「…っ!?!?」
チャンネル登録者数が凄いことになっている。いや、それ以上に配信の後の恵が作った動画が意味が分からない程に伸びている。これもう世界全員が見ているのでは…?
気になったのでクリックしたら、恵はものすごい良く纏めてくれていた。スケルトンの動画のコメント欄には
『編集者変わったよね?』
『めちゃくちゃ見やすいです!』
まさに称賛の嵐。驚くと同時に恵が褒められている気がして嬉しかった。あ、でも。確か、オークかゴブリンの時のコメントに、
『貴方が簡単そうに倒すから息子が無茶をした』
というコメントがあり、それからは注意喚起を毎回繰り返していたので、それをこの動画に追加してもらいたいな。お願いしとこう。
「よし。じゃあ行こうかな」
それは後でにして、そろそろ出発だ。いつも通りの準備は出来たし、早めに行かないと、12時までに山に着かない。
「…お姉ちゃん。もう行くの?」
「え?うん。そうだね。ついでにここら辺の化け物も倒してくるよ。自衛隊さんも楽できるだろうしね」
一般市民は外に出られない世の中だが、生活に必要なものは全部自衛隊さんを経由して届けてもらえるのだ。だから、生活に困るというようなことは今のところない。まあ、それもいつまで続くかわからないんだけどね。
「…気をつけてね。最近お姉ちゃんの影を追ってなのか似たようなことをしようとする人が増えてるから、もしそれっぽい人と出会っても無視してね」
「え…。どうして?」
協力した方が早く成果が得られると思うんだけど…。それに、一般市民が無茶してやってるなら危ないだろうし…。
「そういう人に混ざっておかしい人もいるからだよ。最近だと、こんな世の中なのに人を襲う人もいるからね」
「え〜?そうなんだ。分かったよ」
「絶対!絶対だよ!あとはい!お弁当!」
まあ、恵がこんなにも言ってくれるなら、素直に忠告を受け取ろう。戦いになったら多分何もできないだろうし。
「じゃ、行ってくるね。お弁当ありがとう!」
「本当に気をつけてね!行ってらっしゃい!」
「は〜い」
そして、私はいつもの場所にたどり着いた。
「はぁ〜。…怖いなぁ」
時間が少しずつ12時に近づくにつれてどんどんと恐怖が増していく。私の能力からして、別に不安がる必要はないのだけども、必要がなくても怖がってしまうのは仕方ないのだ。
バサバサと、周囲の木々が風に煽られてざわめく。やはり、山奥の広場は風が強く、静かだ。私の能力は人によっては嫌うだろうから、他の人にはバレたくない。だから、わざわざこんな場所で情報収集を始めるのだ。
「後5秒」
「4」
「3」
「2」
「1」
「0」
…何も、起こらない。が、これはいつものことだ。ここから、奴等が己を主張するのだ。
「グオオオオオ!!」
眼の前が砂煙に包まれる。何かが空から落ちてきたらしい。そして、煙を切り裂くように、一本の金棒が振り下ろされた。それを避けることは叶わず、もろに食らって吹き飛ぶ。
人型で、一本の大きな角を生やした筋肉質の化け物。
創作物ではオーガと呼ばれる化け物が、金棒を地面にたたにつけていた。