『はい。今日も今日とてやっていこうと思ったんですが…』
うう。心が痛い。本当に申し訳ないが、私には荷が重すぎた。
『ごめんなさい。今回は倒し方なんてものはありません。倒せはしましたが、あまりにも強すぎるので、カメラ固定で撮影なんて出来ません。本日は紹介するだけで、倒す等はお休みさせていただきます。また、今回に関しては問題ないと思いますが、私の情報を過信して命を無駄にすることがないよう気をつけてください。』
辛いが、仕方ない。練習含めて約三体。全てにおいて辺りがボロボロとなった。それに、数が少ない。ゴブリンやオークであればこの山なら数十体はいたのだが、オーガは5体ほど。他2体は一緒にいたので仕方なくスルーしたが、だとしても少ない。紹介には向いてないだろう。
『…それでは!切り替えてやっていきます!今回はオーガ!資料はこちら!』
そうして差し出した資料は、いつもよりクオリティが低い。
『文字が汚くてごめんなさい。疲れちゃって…』
とまあ、そういうことである。三体倒しただけで、全力疾走レベルの疲労感だったのだ。息を整えられただけ頑張っている。
『…まあそれでも!読めないほどではないでしょう!見た目はこんな感じ!後で魔石から死体を出します!ヤバめな部分はなるべく減らしますが、キツそうなら見ないでください!』
これまでは実戦出来たから使っていなかった魔石だが、今ではあってよかったなと感じた。
『攻撃方法は金棒を縦横無尽に振り回したり、屈強な体で殴る、蹴る、タックルなど様々です!…それだけなら私はある程度なんとかなるんですけど、何よりもおかしいのがこれ!』
下手な絵ではあるが、鬼が何かを手から出しているのは伝わるだろう。
『このオーガ。魔法を使います。威力としては、金棒や殴る、蹴るは丸太を大きく削るレベル。人が耐えられたものじゃありません。そして魔法は…ああ、あれ見てください』
そうして私は戦闘跡を見せた。
『見たとおり、木が抉れていますよね。これが、鬼の魔法です。見た目はなんというか、青い人魂みたいな、なんかです。引火とかそういうのはないですけど、威力が高いです』
これが、オーガ討伐が苦しかった一番の理由だ。受け止めるなんて論外なのは当然なのだが、固定カメラの方に魔法を撃たれれば終わってしまう。
『そして、速度ですけど、速いです。その代わり、一振りに対する隙が大きい。だけど、その隙を生かせないほどに硬いです。後で見せますけどブラックジャックで少し凹むレベルです』
『それでは!魔石を使っていこうと思います!流石にキレイに倒せるわけないので、気をつけてください!どうぞ!』
そうして出したのは、手足が程々にちぎれ、殴打された跡の残る大男。角は折れ、指はネジ曲がり、赤黒く染まった傷口が生々しい。これでも一番状態がいいものである。
『はい。では実戦ない代わりに部位ごとに主観を話していきます。まず足から。…うん。硬いです。ちょっと見ててね。
えいっ!』
ブラックジャックを振りかぶり、遠心力を活かした一撃を足にお見舞いする。その結果として、ベコっと足の一部が浅く凹んだ。
『はい。このレベルです。立っている状態で当てても、バランスをあんまり崩さないから、私より一撃が弱いなら狙うべきではないと思います。次、手』
拡大するのは、比較的きれいな方の手。それでもいくらかの指はぐちゃぐちゃなのだが。
『正直、狙い目はこの指かなって思います。金棒を持てなくなるだけでめちゃくちゃ戦いやすくなるし、この指は柔らかいです。こんなふうに…っと、包丁でも切れます』
さくっとオーガの指を切り落として見せる。戦闘中も何本か切り飛ばしたのでまあまあ脆い。
『次は胴体。これに関しては、何があっても狙わないほうがいいよ。見ててね』
そうしてブラックジャックを振りかぶると、カーンと音が鳴り響いた。うん。やっぱりおかしい。
『カッチカチ!おかしい!ふざけんなとしか思えません!…一応、こんなにもカッチカチなのは腹筋だけで、もう少し上とかにずらせばちゃんとダメージは受けます。でもやめましょう。はい。最後に顔です』
見るものを恐怖させるような、恐ろしい顔つきの化け物を映す。
『一応、ここは多分一番の急所です。私は最終的に全部顔面を殴って倒しています。そして、何よりも大切なことが一つ。ここの角。折れば魔法は撃てません。そして、魔法の予兆がここに出ます。詳細は…ごめんなさい。自衛隊さんにおまかせします』
腰からしっかりと頭を下げてお願いする。
『以上…です。本当にこの程度で申し訳ありません。最後にもう一度。今回のオーガに関しては、相性の良い、または強力な能力あってやっと一人で倒せるのだと思います。そして、素人が複数でもダメです。魔法もあるので、絶対に一人で戦おうとしないでください…それでは!本日はここで以上終わります!ありが―――』
「「グオオオオオ!!」」
爆音とともに、砂煙が舞った。
大きな振動とともにカメラとなるスマホもズレ、かなり見辛くなっている。しかし、ピントの合わないカメラの映像であっても、何が起こっているのかは分かった。
約3メートルもあろうかという巨体とその半分程しかない身長の子が向き合っている。当然、頭に伸びているように見える一本の長い角からして、その巨体はオーガである。それも、一体ではなく二体。二人の巨体が小さな身長の子を囲んでいる。
『嘘でしょ…』
金棒の振り落とされた振動で、スマホは何も映すことはない位置に落ちる。
音にならない叫びが轟いた。
【ご報告】
誤字修正ありがとう御座います。