変わる世界で配信中   作:ありくい

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恵視点


必要なこと

ピンポーン

 

お昼の12時頃。お姉ちゃんと三春が起き始めて、お昼ごはん(朝ごはん)を食べるくらいの時間だ。ハムエッグをはむはむ食べているお姉ちゃんを眺めていると、インターホンが鳴った。

 

「ん?ん!(自衛隊さんじゃない?)」

 

「うん。私もお姉ちゃんがさっき言ってた自衛隊さんだと思う」

 

「通じ合ってますね〜」

 

まあ自衛隊である確率が高いとはいえ、今朝お姉ちゃんが襲われたばかりである。無警戒で扉を開けるのは馬鹿のすることだろう。インターホン越しにってこの人…。

 

「どちら様ですか?」

 

『失礼します。自衛隊の近藤と申します。こちら、柏木陽菜さんのお宅でよろしいでしょうか』

 

「はい。少々お待ち下さい」

 

近藤さんって、ゴブリンイベントの時にいた偉そうな人だよね?それほど大事なことなのか。それとも何かがあって位が下がったのか。もしかしたらこちらから顔が分かる人を派遣しているのかな?…まあ、何でもいいか。

 

「んれー?」

 

「近藤さん。ゴブリンイベントの時の偉そうな人。通しても大丈夫?」

 

私達はまだ食事中だ。通す方が失礼かもしれないし玄関で待ってもらってもいい。

 

「うん。大丈夫だよ」ゴックン

 

「そんな無理して飲み込まなくても…」

 

まあ可愛かったのでヨシ。お水をあげてから玄関へ向かう。

 

ガチャッとドアを開ける。その先には、近藤さんと部下と見られる自衛官さん。近藤さんは、私を確認するやいなや、部下から書類らしきものを受け取っていた。

 

「おお、これは恵様。お久しぶりです。本日はよろしくお願いします」

 

「…はい。お久しぶりです。皆さんも中にどうぞ」

 

目の前の近藤さんは見た目だけでわかるほど、かなり年上で、更には偉い人。なので、敬語や名前の呼び方が慣れない。

 

「ああいや、部下は警戒に当たらせますのでお気になさらず」

 

「あ、そうなんですね。わかりました」

 

最近は化けガエルが家に侵入してくることも分かったし、人が原因の犯罪もぼちぼち出てきたわけだから、この対応もおかしくない。是非とも、オーガやダークナイトの攻撃誘導をミスすることによって我が家が破壊されないことを祈るばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

「協力?」

 

近藤さんの眼の前で堂々と朝食を片付け、お皿を洗い、三十分ほど待たせてから本題に入る。乾拭きした机に書類を広げられ、じっくりと説明された。

 

「はい。この先に起こるであろう情勢に対応するには、現状の戦力ではどうしても無理があるだろうと上が判断したため、一般人の方々にも戦闘訓練を積んでほしいと考えています。その協力をお願いしたいのです」

 

「なるほど…」

 

お姉ちゃんが書類にゆっくりと目を通し始める。お姉ちゃんが応対している間に私がさっと読んだ感じ、戦闘訓練というのはそんなに無理があるような内容ではなかった。

 

自衛隊が護衛を務めながら、弱めの化け物や弱らせた化け物を倒し、経験を積んでいく。オークやスケルトンといった弱めの化け物を中心に、能力によっては、オーガなどの強力な化け物にも挑戦していく。ただ…

 

「あの、お姉ちゃんのお休みが…」

 

前にも言っていた私と三春の戦闘訓練。あれもそうだけど、夜にかなり疲れそうなことをしているお姉ちゃんからすれば、こっちの戦闘訓練もきついんじゃないかな?

 

「はい。そちらに書いてある通り、配信等の手伝いをすることで、負担の軽減というのを考えています。もちろん、ご要望があれば出来る限り協力させて頂きます」

 

「…お姉ちゃんのネームバリュー的なのが欲しいって感じですか?」

 

「…はい、そうです。もちろん、多くの方に参加して頂きたいため、この情勢で活躍されている他の方々にも似たような提案はしています」

 

「お姉ちゃ「いいですよ。やります」

 

うん。だよね。

 

「いいの?お姉ちゃん」

 

わかってはいたが、一応確認する。

 

「うん。自衛隊さんがいたほうが配信の質も速度も良くなると思う。情報発信は早いほうがいいと思うからね」

 

「そっか。でも無理はしちゃダメだよ。毎日じゃなくて、2日とか3日とか間隔を開けても…大丈夫ですよね?」

 

「あ、はい。初日以降はそのようにしていただいても構いませんが、事前にお教えしてくださると助かります」

 

よし。これなら休め

 

「いえ、全部行こうと思っているのでお気になさらず」

 

「お姉ちゃん!?」

 

ほんとに大丈夫なの?きつすぎない?と心配していると、お姉ちゃんが私を見て、笑いながら言う。

 

「大丈夫。無理はするつもりはないよ。流石に、夜の配信も慣れてきてたし」

 

「…慣れたからって体と心が大丈夫とは限らないからね。疲れを感じにくくなってるだけで、絶対に疲労は蓄積するからね」

 

ぐっと念押しする。

 

「…ありがとう。気をつけるね」

 

こちらで会話が終わったことを確認した近藤さんは、説明用書類をファイルにまとめ渡してきた。そして、契約書の方にサインを、と言い、よく目を通してからお姉ちゃんはサインした。見た感じ、休みも取れそうで一安心だ。

そして、新しく別の書類を取り出し始めた。

 

「じゃあ次に、恵様につ「それはダメです」

 

お姉ちゃんが即答した。内容すら聞かずにである。

 

「まあまあ〜。お話は聞きましょうよ〜」

 

「でも、恵も三春さんも中学生だよ?戦闘訓練とかであっても危ない場所に行く歳じゃないよ」

 

確かに。正直私にもお姉ちゃんみたいな役割が振られるかなと思っていたが、お姉ちゃんの言うことを考えれば妥当だ。

 

「ん?だとしたらお姉ちゃんもおかしいよ。高校1年生だよ?」

 

「それでも、中学生よりはマシでしょ。一応私はアルバイトとかは出来るんだから」

 

「あの〜、もしかしたら違うかもですし〜ちゃんと聞かないとお互いに納得はできないですよ〜」

 

それもそうかといった顔で、お姉ちゃんは近藤さんに軽く頭を下げて、続きを促した。近藤さんはちょっと気まずそうな顔で…

 

「…その、戦闘訓練の参加は中学生以上を対象としています。恵様の能力は強力なため、もし参加する場合は、こちらのクラスで参加して頂きたいというお知らせです。あと、こちらは三春様の方のクラスで、最低限の護身術と、後方支援を中心とするクラスです」

 

おお、言い切った。なんか凄い言いづらそう。お姉ちゃんがやんわりと三春と私の書類を横から取った。

 

「あの、これって同伴者がいても大丈夫ですよね?」

 

「はい」

 

「なら、私が休みの時に一緒に行こうか。ね、恵、三春さん」

 

「うん。わかった」

 

「はい〜」

 

「…それでは、私共からのお話はここまでです。質問はございますか?」

 

おっ、待ってた!

 

「はい!今日お姉ちゃんを襲った犯人について教えてください!」

 

これを待ってた。ずっとずっと知りたかったけどわからず、むず痒い思いをしていたのだ。

 

「…申し訳ありません。まだ出来ていることは少なく、現在はお伝えすることはありません。何かあれば、そちらに連絡いたしますのでご容赦ください」

 

「は?」

 

「あ、じゃあ。自衛隊さんがあの変な人を消したのってどうやったんですか?」

 

「あー、あれは、自衛官の能力の中に触れた人か自分自身をワープさせるというのがありまして、それを使用いたしました。ワープ先には複数の自衛官が控えていますので、即座に拘束する手筈となっています」

 

「へー、ありがとうございます」

 

「いや、さっきの質問!どういう…」

 

「恵。私は別にどうでもいいし、そんなに気にしなくていいよ。それに、あんまり時間もたってないんだからわからないことがあってもしょうがないよ」

 

「うっ」

 

お姉ちゃんにそう言われれば、私は何も言えなくなる。あくまで、被害者はお姉ちゃん。お姉ちゃんがいいと言うなら私は…

 

「ならせめて、どういう能力だったのか教えてもらえませんか?」

 

自衛隊には、創作上での鑑定みたいな、相手の能力を知れる人がいる。お陰でお姉ちゃんも私も能力について自衛隊にはバレている。それを、犯罪者に適応しないわけがない。

 

少なくとも、拘束したら真っ先にそれをするはずだ。

 

「それでしたら。簡易的なことしかわかっていませんが、この能力は爆発に関係するものらしいです」

 

「爆発?」

 

「はい。まだ詳細な情報はわからないので、お待ち下さい」

 

そこまでで、もう話すことはなくなった。最後に、お姉ちゃんの配信を手伝う自衛官の連絡先を確認したり、まさかの明後日から始まる戦闘訓練での事項を確認したりして、近藤さんは部下を引き連れ帰っていった。

 

知りたいことは知れなかったし、収穫は少なかった。やっぱりもっと、自分達でなんとかしないといけないのだろうか。

 

「お姉ちゃん!」

 

「どうしたの?」

 

トントンと、資料を纏めているお姉ちゃんに質問する。なんだかんだ、時刻は6時。もうすぐご飯である。

 

「ご飯食べたら、少し外を散歩しない?今日と明日で、少しは戦闘訓練しよ?」

 

「え〜〜。恵ちゃん〜。明後日にしましょうよ〜」

 

「いや、今日!というか元々は9時からする予定だったでしょ」

 

「う〜。自衛隊さんのお話で有耶無耶になったと思ったのに〜」

 

ショックを受けたかのようにソファに縋り付く三春。でも、お姉ちゃんは微笑んで。

 

「わかった。じゃあ、散歩の道、ちょっと考えとくね」 

 

快諾してくれだのだ。

 

「ありがとう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




訓練(実戦)

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