「やっば…」
二体のオーガから目が離せない。離したら、即座に手痛い一撃を貰うことは確実だ。
予備動作一つ一つに気を付けながら、優先順位を考える。
逃げる。これは最終手段だ。もし逃げて、これが市街地に足を踏み入れようものなら…。考えるだけでも気が重い。
次に倒す。まあこれが最善手だ。一先ずはそれを目指して動いていこう。で、あれば、今、最も必要ないもの――邪魔となるのは、
「
与えられた能力を発動する。これで、保険は出来た。
『うーん。緊急事態だね!じゃあ皆、見えてるか分からないけど、実際に戦ってみるよ!』
出来るだけ明るく、
『敵は二体!私も初めてだから緊張するけど頑張るよ!まずは一つ目!』
オーガが、攻撃を始める。
『口だけじゃ伝わらないかもだけど、オーガが左足を下げた時、金棒を横に振り抜いてくるよ!飛んで避けるのは金棒の大きさ的にっ!!!不可能だから這いつくばろう!』
『次に――』
衝撃音と共にもう一体のオーガの金棒に当たる。体が飛び散るような感覚を感じながらも、傷一つつかない体で受け身を取る。
『ごめんごめん!二体は初めてだから避けられなかったよ…。うん。ちょっとだけ黙るね。二体に慣れようと思う!』
そうして、目の前の二本の金棒の隙間を縫って前に行く。
前足を突き出しながらの攻撃は絶対に燕返しのように切り返してくる。その動作中は明らかな隙であり、
指がピクリと動く。金棒を持たない手を横に振り払う前兆だ。包丁で迎え撃ってもいいが、その分の隙を叩かれる気しかしないので引く。
案の定、角が光った。
「ッ!!!」
鬼の目線の先に一直線で飛んでくるから、視線から全力で逃れる。と、そこに意識を割いていたら、転がった先にはオーガがいた。
「げうっ」
ヤバい。声出ちゃった。それはあまり良くない。
『アッ!へへ!変な声出ちゃった。気にしなくていいよ!』
そして、私の体を影が覆う。
え?
私の両目は確実に二体のオーガを捉えている。なら、この影は?
メキメキと幹が音を奏でる。
『騒音注意!』
潰されるのも覚悟でそれだけを伝える。こうすれば、潰されているとは思われないだろう。どうせ避けられないのだ。
まあここで放置されれば終わりだ。今、私の体は傷付かないだけで、超強化された訳では無い。最近無理な活動でついてきた筋肉が少しある程度なのだ。故に、大木を退かす手段などない。
でも、オーガに限らず、化け物は見逃すなんてことをしない。
雄叫びと共に、両手で金棒を空高く掲げる。角が光り、金棒が青白く輝く。それが二本。上半身と下半身でキレイに分断される形だ。
『今すぐイヤホンの人はイヤホンを抜くこと!音量は今すぐ下げて!!!!』
肺が圧迫される中でも、絞り出すように叫ぶ。
数秒後、青白い閃光と共に、周囲一帯が更地となった。
「あーーー、あー」
一瞬弾けた意識が戻り、視界は二体のオーガを視界に収めていた。距離はそんなに無いが、オーガは攻撃の反動で動けなくなっている。約5分間。オーガはあの攻撃の後動けなくなるのだ。
さて、ブラックジャックも包丁も消し飛んだ。拾うのは程々の大きさの石。これで撲殺すれば、終わりだ。
スマホが消し飛んだことが何よりも悲しい。だけど、救援が来る前にこうなったのは僥倖。比較的柔らかい顔面を、力強く抉り出していく。
私の能力である接続は、ゲーム的に言えば、ダメージ判定を接続した相手に押し付ける能力だ。だから、いくら私を攻撃しようと無事であったわけで、逆に、接続したオーガを殴ると私にもダメージがいく。
ただ、よくわからないのは痛覚。別に接続したオーガを殴っても、私には殴られたというような痛みが来ずに、ただ体が傷つく。そして、私の体を攻撃されれば、痛みはきっちりとあるけど、体は傷付かない。
うむ。不思議だ。
まあそれはともかく、だ。何故か私は後ちょっとで倒せるであろうオーガに執着してしまった。
故に、パラパラと鳴り響くヘリコプターの音に反応し遅れた。向こうからしてみれば、遠目から見れば金棒を振り下ろされる直前に見えるであろうこの状況は、救援の対象なのは間違いないだろう。
即座に接続を切ったけど、ちょっと遅くて。
腹部から真っ赤な血が流れ始めていた。
直接圧迫でかろうじて血を抑えて、傷口を対価に手に入れた魔石を抱えて逃げる。
「接続」
周囲の植物に当たり判定を渡す。植物には傷はついていないから、激痛が走ろうと傷口が悪化することはない。
こまめに対象を塗り替えていって、歩みを進める。自衛隊の静止の声は聞こえない振りを徹底する。
山から転げ落ちるように落ちれば、いくら自衛隊でもついてこれない。道中のゴブリンやスケルトン、オークはむしろ歩み続けるための
そうして、家の前に恵が見えた時、私は意識を投げ捨てた。
裏話
配信見ていた人の3割ほどの鼓膜が弾けた。(恵ちゃんはいい子なのでお姉ちゃんの指示には従うぞ!)