変わる世界で配信中   作:ありくい

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《恵視点》


イベント

 

通知。

 

動画サイトやメッセージアプリなど、よく見るそれは機械越しに受け取るもの。決して、頭の中で受け取るような物ではない。

 

つまり、人智を超えた何かによるものであり、その通知の内容は、一本の動画が投稿されたという物であった。

 

『イベント開催のお知らせ』

 

元々起きていた私は兎も角、お姉ちゃんは傷付いた体であり、能力が効いているのにもかかわらず跳ね起きた。

 

普段なら文句を言うところだ。「そんな体で無茶しないで」とでも心配をしていたところだろう。でも、そんなことをしている場合では無かった。

 

登録しているチャンネルからその動画を探し出す。視聴数は既に可笑しくなっていたが、それでもスムーズに見ることが出来た。

 

『過去に5体のモンスターが出現したため、記念に○月☓日から五日間にかけてイベントを開催致します』

 

ゴブリン、オーク、スケルトン、スライム、オーガ。確かに、5体現れている。

 

『タイトルは、ゴブリン王国』

 

ゴブリンは、初めに出てきていた敵で、軍による討伐数は最多であり、未だ被害数も最多の化け物。

 

『様々なゴブリンによる侵略劇をお楽しみください』

 

人類すべてを、特に、被害を最も受けたアジア、オセアニア州の人間の神経を逆撫でするような文言を述べる。

 

『つきましては、明日より、ゴブリン以外のモンスターを消去致します。また、ゴブリンの出現率を大幅に上げるのと同時に、ゴブリンに新たな仕様変更を加えます』

 

『ゴブリンは無数のゴブリンと群れを作ることが出来るようになりました。また、群れを率いるゴブリンは10人以上、100人以上、1000人以上、10000人以上の順で強くなっていきます。一度、その位に上がると、下がることはありません』

 

以前までは最大でも10人程しか確認されていなかったのに、その上限が増えるということである。

 

『また、最終日にはゴブリン王国の王であるゴブリンが現れます。各国一体のみの出現となりますのでお気を付けください』

 

動画は、そこで終わった。

 

 

……。

 

「恵」

 

「待って。お願いだから、何でもするから」

 

「でも、今回はそうはいかないでしょ?」

 

「…」

 

言い返せない。お姉ちゃんの能力は、未知数の相手には何よりも有効。今回は最後のゴブリンの王は勿論、化け物を率いるゴブリンの力も未知数だ。

 

それに、今回に至っては過去1以上の被害が想定される。お姉ちゃんの動画により一般人でもある程度倒せるからこの国はまだ回っているのであり、既に自衛隊だけではいっぱいいっぱいだ。故に、協力を呼びかける声や田舎など人が少ないところの人を固めるような政策も進んでいる。

 

そんなときに、数で来るのである。しかも、明日から。国の上層部は今頃真っ青であろう。

 

「…分かった。でも、これだけはお願い」

 

「何?」

 

「私も着いていく」

 

「えっ!」

 

お姉ちゃんは、酷く驚いたような顔をして、私を止めようとしてくる。

 

やれ命は大事にしなさいだとか、危険な場所に行かないでとか、一体どの口が言うのだろうか。…いや、それを除いても、(足手まとい)が着いていくことはデメリットになりかねない。

 

それでも、五日後を想定するのであれば、必要なことなのだ。たった四日間。それでも、既に億を超えた視聴数を持つこのチャンネルを立ち上げたメリットを早速活かすときが来た。様々な交渉は済ませ、準備は進めていた。

 

「お姉ちゃん。私ね、ネットを介して色々な人と話し合ってきたんだ。それでね、武器も作ってもらったから、それを取りに行きたいの」

 

1つ目は、武器。お姉ちゃんの動画の趣旨にはあっているとはいえ、包丁とブラックジャックでは流石に限度があると思った。それに、今回のは能力によって作られる武器。確認したところ、時間があれば同じのはいくらでも作れるらしいし、その点で見れば、いつかは普及するだろう。

 

「っ!!それなら!場所を教えてくれたら取りに行くから!!」

 

「あのね、注文したのはお姉ちゃんだけじゃなくて私のもなんだよ?」

 

「どうして!」

 

「お姉ちゃんだけだと、絶対にパンクするから。実際、お姉ちゃんの能力は皆をいっぺんに守れるものでもないでしょ?私もそうだから、少しでも手を大きく広げるために手伝いたいの。それに、配信も出さないとやる意味が薄れるし、それならサポートもいるでしょ?」

 

「っ…」

 

実際、お姉ちゃんは配信してゴブリンのことを伝えようという目論見だったはずだ。しかし、お姉ちゃんの配信は基本一人。もし、ゴブリンが大量発生するとしたらカメラ片手に戦うしかなく、それであれば、満足に情報を伝えられないだろう。よって、撮る役が必要なのだ。

 

「それだけじゃないよ。実はね、新たな仲間を見つけたの」

 

「…仲間?」

 

「そう。どっちかと言うと武器よりこっちがメインかな。私の友達なんだけど、能力は回復系なんだ」

 

お姉ちゃんの容姿を知っていた友達から連絡が何件も来て、その中にいた逸材だ。お姉ちゃんの能力の()()()()()使()()()のことを考えれば、いたほうがいいなんてもんじゃない。必須だ。

 

「しばらくは迷惑になるけど、よろしくお願いします」

 

「…命に換えてでも、恵は絶対に守る」

 

姉妹揃って、似たようなことを考えるなぁと、しみじみ思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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