陰の実力者ってこれでいいのか? 作:ソフトクリーム
普段はどこにでもいるモブAになりきり、1人の時間では日々修行に励んでいた。例えば、人気の無い花畑で裸になりながら踊ったり、ボクシングや柔道などを取組、滝に打たれながら瞑想したり、税金などの資金面を勉強したり、絵や音楽、料理や手芸なども学び、忍者のように足音を消すことや隠れるための訓練を行った。最初は苦戦ばかりであったが、少しずつやれることを増やし、出来ることも沢山増えた。
幼稚園生からぼんやりと考えていたものを、小学生には少しずつ形を決めていき、中学生には基礎的なところはマスターして、高校生には応用的なところも幅広く出来るようになっていった。思い描いていたことが実際に出来るようになっていき、僕は嬉しかった。
しかし、同時に少し焦りもあったのだ。
小さい頃は誰もが言ったことがあるであろう実力者。魔法使いになりたい、能力者になりたいと誰もが憧れていた光景を、誰もが否定していく。そんなことは時間の無駄、頭がおかしいと言うのだ。
それは当然の意見だろう。誰だって時間が経つと、それが空想であることに気が付く。
呪文を唱えれば雷が鳴るわけでもないし、箒に跨っても空を飛ぶことは出来ない、違う種族と満足に話すことも出来ない。そういった空想から目を覚まし、今日も現実を生きているのが普通と言えるだろう。自分以外の誰もが、そういう風になるのを見ていて、普段鍛えていることは本当に僕の目標、陰の実力者になれるのかという不安が出てくる時がある。
僕は陰の実力者になること以外のことを排除して生きてきた。友達付き合いもモブのように付き合う、何か聞かれたときはモブのように答え、いざという状況になったらあいつは誰だと思われながら場を自分の物にする実力者。そう、陰の実力者だ。これになるために生きていたが、そんな場面は中々やってこない。
表立って実力を示したいわけでもないので、実力を振るうことができない。じゃあ陰のように実力を振舞うとしても、深夜に暴走族をボコボコにするくらいしか出来ず、ストレスが溜まっていた。鉄パイプで暴走族の頭を殴りながら溜息を付く。攻撃を受けた暴走族は地面に転がり、頭を守るように手で覆っているが、僕は構わず鉄パイプを振るう。相手は動かなくなった。
「ダメだ、こんなのじゃ全然ダメだ」
もっと、何かこう、超次元的な何か、何か無いのか
例えばそう、魔力だ
魔力はどこだ
魔力が欲しい
暴走族を倒したあと、僕は修行に出た。人気の無い森林で裸になり、自然を全身で感じる。そして目の前にある尖った岩に頭を全力で降下させた。衝撃と当時に激痛が入るが
「魔力!」
もう一度頭をぶつける
「魔力!」
魔力と口にしながら頭をぶつけていると、頭がくらくらするのと同時に高揚感が出てきた。これはあれだ、ハイになってきたやつだ。視界がぼやけており、額から頬に血が流れているのを感じる。
この調子なら魔力が見えるかもしれない!
そう思った僕は、頭を大きく振り被って
「魔力!!」
ぶつける!
するとどうだろう、視界の隅に何か淡く光っていることに気付く。しかもそれはゆっくりとこちらに向かってきているようだ。気付いた僕は、その場から立ち上がり、砂漠にオアシスを見つけた人のように両手を万歳して奇声をあげながら走った。
目の前に長年望んでいたものがある。そのときのワクワク感は、人生1位になると思う。魔力に突っ込んだ僕は訓練で受けた衝撃よりも遥に強い衝撃を全身で受けた。少し痛かったが、魔力が目の前にあるのだ。しかも2つもある。これを離してはダメだと思った僕は、全身の痛みに耐えて、立ち上がろうとする。
しかし立ち上がることができない
なぜか立とうとすると激痛が走る。視界も暗くなってきた
あぁ! 魔力がなくなっちゃう!!!
「魔力魔力魔力魔力魔力魔力魔力魔力魔力!!!!!!」
ダメだ、僕を置いていかないで!
声に出して呼び止める。声だけじゃ届かないから、痛みに耐えて全身をバタバタさせながら魔力と連呼した。それでも明かりは遠くなっていく。
何やら声のようなものが聞こえる。それが次第にこちらに近づいている
やった! 魔力が僕に気付いたんだ!
倒れた状態でもできることはある。さっきよりも大きな声で魔力と連呼しながら頭を振り続け、海からあげられた魚のように全身をジタバタする。さっきよりも声が大きくなった気がした
僕はここだよ!
そう思いながら魔力と叫び続けていたが、どうやら身体の限界が来てしまったようで、視界が魔力があっても暗くなっていく。とても冷たい。海中に沈んでいた修行を思い出す。あのときよりも寒い。
そこで僕の意識はなくなっていた。
目を覚ますと、そこは知らない光景だ
しかも何か光っているものが見える
周囲には大人の男女が喜んでいるようで、少し遠くに小さな女の子もいた。黒色のロングヘアーだ。何が何だか分からないでいると、何やら大人の男女が不思議そうにしている。
「あなた、この子泣かないわ」
「本当だな…産声をあげないのは変だな」
まずい。今の僕は赤ん坊のようだ。ならやることは1つ
「うおぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
「あなた!? この子急に野太い声で産声をあげたわ!?」
間違えた!!! 変声の修行で出来るようになったおじさんの叫び声を出してしまった
「おぎゃーおぎゃー!」
「あぁ良かったわ貴方! しっかりと泣いているわ!」
「本当だ! 良かったなお前! なんか少し棒読みのような感じもあるが気にすることはないな!」
「そうねあなた!」
「おぎゃーおぎゃー!」
こうして僕はよく分からない世界に転生したようだ
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