陰の実力者ってこれでいいのか? 作:ソフトクリーム
街を歩いていたらガンマの姿があった。
ガンマ~、お久~
「シャドウ様。こんにちは」
「こんちゃー。何してんの?」
「近いうちにお店を経営したいと思っていて、今日は他のお店の偵察です。何が売れていて、何が売れていないか、どうして売れていて、どうして売れていないかを学びに来ました」
おぉ、勉強熱心だ。目にも覇気を感じる。どうやら当面の目標を決めたらしい。ちなみに僕から借金返済云々の話はしないようになった。前に言った時から、ガンマの雰囲気がふんわりしたものから、急に冷たく鋭い刃物のような感じになったからだ。
もう借金は返済したのにね。なんで自分から借金を作ろうとしているのかなこの子は。そういう人種? 僕ってダメ男に見えるの?
「違います」
「何が?」
「…シャドウ様はこのあと時間がありますか? もしよければ私の見張りをしてほしいのです」
「見張り? 一緒に行くんじゃなくて?」
「はい。この先シャドウ様におんぶにだっこじゃいけませんから。私の働きぶりをその目で見て欲しいんです」
なるほど。見張りをつけて、ダレないようにしたいということか。そういえば僕も最近ガンマみたいに物の価値を考えるのはしていない気がするし、いいかも
「わかった」
「ありがとうございます。ではさっそくあのお店から…」
ガンマとお店を回って一休みをしていると、遠くには広場があり、そこで何かを発表している人達がいた。学会などで発表するのが通常だが、学会に来ない人の意見が時々参考になることがあるため、ああして一般人に発表し、自身の研究をしたいという人達だ。
「ああいう研究って一般の人には理解されにくいよね」
「そう思う方が沢山いますからね。全く興味の無い人達も暇つぶしに聞いているような感じですし」
聞いている人達は、暇つぶしに聞いてやるかーという空気を出している。まぁ、聞いてくれないよりはマシなのだろう。
「あれ、この研究…」
僕は聞いていた研究に興味を持った。転生前に読んでいた漫画の1つに道具を沢山使って、少年と日常を送る作品があったのだが、その発明の1つに似ているのだ。僕は発表している人の声に耳を傾ける
「…なるほど」
「シャドウ様これを」
ガンマは僕にジュースをくれた。思いのほか聞いていて面白い発表だった。しかし他の人達にとっては聞いたことの無い概念であるため、退屈であっただろう。僕は発表者の下に向かう。
発表していた人達は、エルフの男と女だ。2人に話しかける
「どうもー、とても面白い研究でした。あれって2人が思いついたんですか?」
「いえ。私達の娘の研究を発表していたのですよ」
「娘はいつも研究所に籠っていて、外に出るのも嫌がるほどでね…代わりに私達が発表したんです」
「なるほど。根っからの研究者なんですね」
とこんな感じで適当に話をしつつ、僕は本命を伝える
あの研究内容ですが、あれをあれして、こうしてみるのはどうでしょうか?
僕の話を聞いて、2人はとても驚いた顔をしていた。罵詈雑言かと思ったが、助言をくれるとは思ってもいなかったらしい。僕のいったことをメモすると、2人は去って行った。
「ガンマ、途中で放り投げてごめんね」
「シャドウ様が満足ならガンマも満足です。私はこれから用事があるので、ここで失礼します」
「うん。またね」
ガンマと別れて論文が提示されている館に入った。さっきのエルフ2人の論文が置かれており、それを見る。発表の時と違い、この世界の発想だなと感じた。1つ1つ軽く目を通すと、ある論文に目が止まる。僕と歳が近い子の論文だ。
名前はシェリー・バーネット。他の論文と比べると、人の手に取られた感じが多く、とても面白い。スラスラと読める。シェリー・バーネットの論文は以下の内容が書かれていた。
ある遺跡について研究された内容だ。その遺跡にあるアーティファクトは、起動者の記憶を下に、街や村を再現することができる。また、起動者があなたを選んだとき、そこは永遠の世界となる。その世界から脱出するには、アーティファクトを破壊しなければならないが、儀式をしている場合はこれだけでは脱出出来ない。儀式については詳しいことが分かっていない。もし儀式を済ませた状態であなたが脱出を望むなら、決してあなたの力だけでは逃げることはできない。
もし創造された世界にあなたが踏み込むことが出来たのなら、それは起動者の信念や信条があなたを受け入れたことになる。もしあなたが起動者のそれに当てはまらなければ、受け入れられない。
アーティファクトについては、どんな形をしているのか全く分からない。もしかしたら形ではない何かかもしれない。詳しいことは何も分かっていない。
とこんな感じなことが書いてあった。
へぇー
僕が関心を持った論文はシェリー・バーネットとさっきの発表だけだった。ふむ、ここは僕も何か書いてみようかな。
書こうと思っていた時期が僕にもありました。最初は良かったんだけど、途中からめんどくさくなってきて辞めたんだよね。ま、まぁまたやる気が出たら頑張ってみようかな。今は休憩しているだけだから。
この前来た広場に行くと、この前のエルフ2人に声をかけられた。どうも娘さんが、僕の発言に興味を持ったらしく、手紙を預かっているとのこと。手紙の内容は、技術や考え方について書いて欲しいというものだった。直接会いに来ないのかと聞いてみたら、娘は研究所から出たくないらしい。研究の佳境にでも入っているのかなと思いながら、僕は素直に質問の回答を書いていく。
ほい
「ありがとうございます。これで娘もきっと喜びます」
「喜ぶ?」
「はい。あなたの意見はとても珍しく、久しぶりに研究以外で興奮している姿を見ました。ありがとうございます」
「うちの娘は本当に研究以外に関心が無くて…。食事や睡眠を疎かにしがちなんですけど…。あなたは何か論文を書いていますか?」
「いえ、書いていないですね」
「もしよければ連絡先を交換しませんか?」
「いやー、その会ったばかりの人と交換するのは抵抗がありまして」
「そうですか…。それもそうですね。またここに来ることはありますか?」
「あります」
「そうですか。わかりました。また娘が質問するかもしれないので、その時はよろしくお願いします」
え、なんかいつの間にか協力することが前提になっているし。2人の目が逃がすつもりはないよみたいなことを言ってる。
そんで気がついたら手紙のやりとりが増えていた。この子の考えはとても面白く、向こうも僕の考えは新鮮で、研究のしがいがあるそうだ。20回くらい手紙のやりとりをすると、直接会って話をしたいらしい。時間と場所が書かれている。来れるなら来てと書かれていた。
直接か…。うーん、手紙を交わし続けた感じ、本当に研究以外に興味がないようで、かなりサイコパス感があった(ちなみにサイコパスとは、一般人と比べて著しく偏った考え方や行動を取り、対人コミュニケーションに支障をきたすパーソナリティ障害の一種で、サイコパスの主な症状として、感情の一部、特に他者への愛情や思いやりが欠如していることや、自己中心的である、道徳観念・倫理観・恐怖を感じないことをいう)。
つまり僕達は同類
これはかなり気が合いそうだ!
僕は書かれた場所に向かった
「どうも」
「…ん」
気だるげな返事をするのは、僕の向かいにいる黒茶色のロングヘアーエルフだ。適当に挨拶をしてからさっそく研究の話をしてきた。
彼女が話をして、僕が時々意見を述べる。これは研究者っぽい会話だ
周辺では日常を送っている人達の中に、さりげなく、喫茶店で研究者っぽい会話をする僕
決まった
もうやりたいことは出来たし、あとは適当に頷いていようかな
「そんなわけで…私の…実験台に…なってほしい」
「うん」
「ありがとう…。じゃあ…さっそく…頭を…」
「うん?」
「解剖…したい…えへへ」
「あの」
「何?」
「なんで解剖するの?」
「こんなに…面白い発想…頭の中…とても気になる」
「あー、でも解剖したら戻せないでしょ?」
「その心配…ない。ちゃんと…戻せる…ん」
「それは少し不安かなー。もう少しお互いのことを知ったらにしようよ」
「お互いを…知ったら…頭の中…見せてくれる?」
「うんいいよ」
「じゃあ…知ったら…解剖…する…ん」
彼女は大きなカップを両手で持って注がれている紅茶を飲んでいる。僕もジュースを飲みながら雰囲気に浸る。
話をしていると、腐敗についての話題になった。彼女の両親はなんでも腐敗を無くす研究をしているようだ。彼女はその手伝いをしている。ちなみに今の所腐敗を治された事例はないらしい。目撃情報では、少年が治している姿があるというものだが、記録上は残っていないらしい。
少年がねー。誰だろう…
また面白いことを教えてくれた。腐敗を治している少年を捕獲したら賞金が出ると。しかもかなりの金額。何が何でも見つけたいという強い意思を感じるようだ
「私…その少年…捕獲…したい。お金…足りない…」
彼女はお金が欲しいから、もし見つけたら連絡してほしいとのこと。その時は賞金半分分け合うそうだ。なるほど、僕もお金が欲しいけど、ガンマが会った時にくれるんだよね。なんでも儲かっているからあげると。僕は迷わずそれを手に取り、ありがとうと伝えると、とても嬉しそうにしていた。
僕もガンマも嬉しい。というかガンマ以外からお金を手に入れたら彼女少し不機嫌になるんだよね…。だから賞金は君が独り占めしていいよ。そういうと彼女は驚いた顔をしている。
「お金…本当…いらない? なんで?」
ここで僕にお金をくれる女の子がいるから
なんて言ったらどんな顔をするかな。この子のことだから、ほーんで終わりそうだな。ここはもう一度驚いた顔を見たい…ふむ
「僕は君の研究にとても興味がある。だからこの賞金で君の研究の行く先を見たい」
「…そう…変…でも…ん…いい…かも」
おぅ~けぃ~。その驚いた顔頂きます。
その子と別れて、僕は家に帰った。
おやすみ!