陰の実力者ってこれでいいのか? 作:ソフトクリーム
ベータの下から去り、久しぶりにアルファと出会った。アルファは僕に気付くと、少し驚いた顔をした後に、近づいてきた。
「久しぶり、どうだい進捗は」
「久しぶりシャドウ。最近基礎部分はマスターして、今は応用部分の触りをしているところよ」
アルファは料理人を目指すことにしたらしい。理由は聞いても教えてくれなかったが、頼むよ頼むよ~と何度もお願いすると、ボソッと小さな声であの時の気持ちを誰かに伝えたいからと答えた。
はて? あの時の気持ち? なんだろうか? まぁいっか!
僕と別れてから、少しずつ街に出歩く機会を増やして仕事先も見つけたらしい。どこで働いているのかと聞いてみたら、働いている姿を見られるのは恥ずかしいから、呼べるときに呼ぶと言われた。因みに戸籍とかなんかそういう難しい所はどうしたのかと聞いたら
「シャドウは知らなくて良いことなのよ」
本人が大丈夫と言っていたし、問題ないな!
会った時は料理を振舞ってくれる。とても美味しい。毎回僕はうま~!と頬を緩めながら、完食する。その間アルファは僕をジィーっと見ていることが多い。一緒に食べる時もあるが、どちらかというと、僕を見ている時間の方が多いのだ。お互いに会ったことを話をしていると、何やら遠くからガサガサと音が聞こえる。会話を止めて音のする方を見ると、そこには獣人の子がいた。身体の6割くらいが腐敗している。
アルファは最初は不機嫌そうにしていたが、腐敗部分を見ると、すぐにその子に駆け寄る
「今治療するから大人しくして」
そう言って獣人に近づくと、牙をアルファに向ける。間一髪で避けたが、アルファは不機嫌を通り越して真顔になっていた。
「今あなたを蝕んでいる物から解放してあげる。黙って大人しくして居なさい」
ガルルルル
「あぁ?」
きゃん!
その子はさっきまで、牙を向けて威嚇していたのに、腹をこちらに見せて背中を地面に付けている。これは降参や服従の意味を表している。
「ここは私が解呪するわ」
僕が行動するよりも早く、アルファは解呪を試みる。あっという間に腐敗していた部分は正常に戻った。ちなみに僕よりも僅かに早い。本気モードの僕の解呪よりも、アルファの解呪の方が早くなっているのだ。空いた時間で戦闘や解呪といった訓練も行っていたが、アルファはとても呑み込みが早い。他のことも教えたが、今では僕より洗練された物が少しずつ増えているのだ。
昔自分が苦戦してやっと出来たものが、すぐに出来るようになっている人を見ると、落ち込んでしまうだろうが、僕は違う。
この子はとてもいい子だ。将来が楽しみだな~
師匠ポジションではなく、観客ポジションで見ているからだ。隣にいすぎると、相手のことを客観的に評価することが時々困難になることがある。それを防ぐために、いくつかの部分では距離を取ることが大事なんだと思うんだ。
さて、僕がふふっと笑いながらアルファを見ていると、彼女は獣人の子と話をしていた。何を話しているのかなと近づいて話を聞く。どうやら、その子は腐敗が進行して群れから追い出されたらしく、ここまで走ってきたらしい。しかし途中で力尽きて死にそうになっているところを僕らに助けられたとのこと。ちなみに名前はデルタ。アルファに名づけられたようだ。
「こっちがシャドウ。私達の主よ」
「主? アルファがボスじゃないのですー?」
「えぇ。シャドウがボスよ。見れば分かるでしょう? 彼とても強いのよ?」
「…きゃう!」
今までアルファと話をしていたから忘れていたようで、僕と視線が合うと、デルタはまた腹を見せてきた。綺麗で鍛えられた腹筋だ。少し触ってみたい。
「触っていい?」
答えを聞く前に触ってみる。おぉ…これは中々…いいねぇ! 僕も鍛えているけど、この筋肉の付き方は戦いで覚えないとつかないタイプの付き方だ。意識を指先に集中する。感じろ、僕の鍛えた犬をモフモフにするテクニック。
モフモフモフモフ
「くすぐったいのです! あはは!」
デルタは身をよじりながら笑っている。さっきまでの睨み顔が嘘のようだ。満足してモフモフ攻撃をやめると、デルタは息を整えていた。
「デルタ。私達の役に立てば、今みたいにシャドウが褒美をくれるわ。私達の仲間になりなさい」
「うん! デルタ強い群れに入る! ボス! デルタを仲間にして!」
「いいよー」
「やったのです! アルファ、よろしk」
「あぁ? なんで呼び捨てなのかしら?」
「きゃう!!」
「さっき教えたわよね? 私のことは?」
「あ、アルファ様」
なぜかデルタがびくびくしている。尋常じゃない怖がり方だ
「そう。よく出来てわねデルタ」
「はいなのです!」
デルタの頭を撫でるアルファ。とても嬉しそうだ。彼女が嬉しいなら僕も嬉しい。僕とアルファとデルタはニコニコ顔だ。
みんな笑顔で幸せだね!
シャドウが去った後に、デルタと2人きりになった。
「ボスはどこにいくのですー?」
「彼はやることがあるから。それよりデルタ、私が教えたルールが覚えたかしら?」
「はいなのです! ボスに危害を加える奴は殺す! 腐敗した人を見つけたらアルファ様に報告する! その辺の縄張りはデルタの物にする!」
「良く出来たわね」
デルタの頭はよしよしすると、デルタは嬉しそうにしっぽを振る
「はい。よく出来たご褒美におやつをあげる」
「ありがとなのです! これは…なんです? 初めて見るです」
「食べてみなさい」
デルタはそれを口にする
「~~~~!」
目をパチッと見開くと、もう1個、またもう1個と無言でおやつを食べ終える。手を伸ばすが、もうおやつはなくなってしまった。うぅ~と唸るデルタ。食べ終わった後に食べていたことに気付くほどの味だ。
「アルファ様! これ美味しいです! どこで手に入るのです!?」
「秘密よデルタ。私とシャドウの役に立った時にあげるわ」
「わぁ! デルタ頑張るのです!」
「えぇ。じゃあ私のアジトに案内するから付いてきなさい」
「はいなのです!」
暗闇の中、2人はどこかに去って行った。