陰の実力者ってこれでいいのか?   作:ソフトクリーム

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黒髪エルフと出会う

 

~~~♪

 

鼻歌を歌いながら街を歩く僕は誰でしょう? 

 

そう、僕です

 

なんか最近ある小説家の話が街中で噂になっている。なんでも、同じ人が作ったとは思えない作風、とても綺麗な銀髪のエルフ、青い瞳が綺麗、買いに行ったのにすぐに売り切れて買えなかったなどなど。僕もどんな小説なのか気になり、一冊買ってみた。読んでみると、とても面白かった。そしてその小説の主人公が、今みたいなセリフをよく言うので、真似て見たが

 

「二番煎じ感が…。もっと僕だけのセリフはないかなー。うー-ん」

 

やはりオリジナルを考えるのは大変だ。今日はオリジナルセリフを考えながら街を歩いていると、ある賭場にたどり着く。そこでは、何やら賭けが行われていた。どうも、身体が腐敗した子を攻撃して、誰の攻撃で動けなくなるかを掛けているらしい。ちなみに、攻撃する人は、自分の攻撃で動けなくなったら、腐敗者を引き取ることが出来るようだ。

 

なるほど、ストレスをぶつけるにはいい機会なのか

 

この世界には、転生前のゲームセンターのようなボクシングパンチだったり、デジタルでの対人ゲームがない。直接力を振るう機会があるとしたら、何かの武道系の大会や練習に出るか、殺し合いかのどちらかしかない。しかし、ただ憂さ晴らしをしたいがためだったら、自分が攻撃される可能性を0にしたいと考えるのは自然なことだ。そして世間が悪とされる、腐敗した人を攻撃することで、正義感にも酔えるというおまけ付き

 

食いつかない人間がいないはずがなかった

 

でも僕には興味ないからねー。ごめんね、腐敗さんたち。僕は盗賊を斬り殺して解消しているから、苛立ちはないんだ。さよなr…

 

僕はある腐敗者に目を向ける

 

あの子…

 

ふむ

 

僕が見ている腐敗者は、とてもとろい。腐敗しているから動きがトロくなるのも当然のことだが、それにしてもトロすぎる。今までアルファやベータやデルタの腐敗姿を見たが、その3人でもトロイ。殴られて弱っているのもあるが、それでもトロイ。

 

これは興味深いぞ

 

あそこまでトロイと一周回って興味を持った

 

僕はその賭場に殴りこむ。もちろん、魔力を身体につけて顔や体格を少し変えている。具体的には太っている人に見えるだろう。

 

はいはーい、僕は3番目ね! おら、さっさと前2人やって引いてねー

 

2人は満足したら僕の出番だ

 

その子の顔は腐敗しているから、どんな顔をしているのか分からない。しかし、もう何も反応しなくなっている。現実逃避をしているのだろう。その現実逃避、僕が続けてあげるね。

 

拳で殴る。しかし直で殴らない。インパクトの瞬間にその子の全身を魔力で覆い、すぐに拳を引き戻す。すると、その子は倒れたまま動かなくなった。

 

よし、上手く入った

 

はいはいー。これでいいんでしょ。じゃあ僕はそういうことでー。さらば!

 

付けていた魔力を落として、元の姿に戻る。担いだ子を解呪すると、綺麗な女の子が出てきた。その子が目を覚ますと、僕を見つめる。しかし、その目には力が無い。視線自体は僕と交わっているが、僕を見ていない。どこかをぼんやりと見ている。

 

もう何もかもどうでもいい

 

私を殺して

 

どこかにそう言っているように見えた

 

「君は僕の…僕の…」

 

僕の何にしようかな。咄嗟にそう言ってしまった。ここは重要だぞ。

 

…そうだ

 

「君は僕に借金がある。だから返してもらおう」

「……借金ですか」

「あぁ」

「私は…お金を持っていないので…どこにでも売り飛ばしてください」

「違うんだな。借金といっても、通貨の借金じゃないんだ」

「…?」

「君は僕につまらない顔を見せている。それが借金だ」

「つ…まら…ない?」

「僕は君の笑っている顔が見たくて君を助けた。だから君が僕に返さないといけないのは、心から幸せを感じている顔だ」

「笑う…心…幸せ…」

「そうだ。君はこれからガンマと名乗りなさい」

「ガンマ…」

 

ガンマは訳が分からないという顔をしていたが、それでもさっきよりは瞳に生気を感じる。少しはこちらを見ているようだ。いいぞ、こっちを見るんだガンマ。

 

「でも…私…幸せに慣れるのでしょうか?」

「?」

「身体が腐敗してから…誰にもゴミクズのように扱われ…家族や友人にもあっさりと見捨てられ…幸せだと思っていたものが…ぐすっ」

 

ガンマは話しながら涙を流した。鼻水も啜っている。僕はそっと取り出したスライムティッシュでガンマの顔を拭く。その際、魔力で彼女自身を覆う。役割としては全身でお風呂に入っているような感じだ。清潔にする理由もあるが、身体を物理的に温めることで心にゆとりを持たせたい。

 

その理由は、以前僕が修行している時、風呂に入る時間すら勿体ないと感じていたことがあった。そんな時間があるなら、修行に当てたい。しかし、風呂に入らないと悪臭がして、モブになりきることができない。だから3分だけシャワーを浴びていたが、ある日風呂に入ると、修行で苦戦しているあの苛立ちや焦りはなくなったのだ。風呂は心の洗濯とはよくいったものだ。

 

ガンマの中に溜まっていた、不安と恐怖を少しずつ洗い流していく。彼女の話にうんうんと頷きながら、時々顔を拭く。それから、言いたいことを全部言い終えたのか、また泣き始めた。僕は無言で彼女の隣にいた。

 

落ち着いたようだ。僕は話を続ける

 

「ガンマ。僕の名前はシャドウだ」

「シャドウ…様」

「いや呼び捨てでいいよ?」

「いえ。シャドウ様と言わせてください」

 

うーん。どこぞのフィギュア製造銀髪エルフと同じ呼び方だが、今回は大丈夫だろう。だってガンマは僕に借金があるんだし。うん、大丈夫だな!

 

「好きにしていいよ。それよりさっきの借金についてだけど」

「…笑ってる顔、幸せな顔ですか。シャドウ様のおかげに少しは落ち着きましたが、今は不安の方が大きいです。この先、どう生きて行けば良いのか…わからなくて」

「そこで」

「はい?」

「僕が君に生きるのに必要なことを教えるよ」

「といいますと?」

「もちろん、狩りや採集、文字や通貨、戦闘なども教える」

「い、いいんですか!?」

「もとからそのつもりだよ」

「で、ですが! お手を煩わせるかと…」

「安心してガンマ」

 

ガンマの目を見つめる。うん、今度はしっかりと僕を見ている

 

「しっかり教えるから」

「…本当ですか? 途中で投げませんか?」

「投げない。教える」

 

さっき洗いざらい気持ちを吐いたときに聞いた話だ。僕がトロイと感じていたように、彼女の周辺も彼女のことをトロイと感じていたようだ。最初の方は良かったが、何度も繰り返している内に、暴言を言われ、治そうと練習したが改善される兆しすら見えず、負のスパイラルにハマっていた。それで途中から、指導する側も適当になり、悪口も言われていたらしい。家族や友人は庇っていたようだが、彼女の姿が腐敗した瞬間に、今までの庇いが嘘のように、暴言を言われたらしい。

 

「君は僕に借金があるんだよ? 忘れないでガンマ。債務者は債権者から逃げることは出来ない。だから、僕はガンマのことを逃がすつもりは無いよ」

「…債務者と債権者とは?」

「債務者がお金を借りる人、債権者がお金を貸す人だね」

「それの期限は…」

「さっき言った通り。ガンマが心から幸せを感じる顔、笑顔を見れたと僕が感じたときだね。ちなみに時間が経つごとに返す負担が増えるから、1回や10回笑顔を見せたくらいじゃガンマの借金返済は完了したとはいえないよ」

「…」

「つまり、この先ずっと笑顔でいられるように僕が鍛えてあげる。どう?」

 

ガンマは僕の目を見ながら涙を流していた

 

しばらく見つめ合うと、彼女はティッシュで自分の涙を拭う。自分でも泣いていることに気付かなかったみたいだ。

 

「わ、分かりました! シャドウ様には返さないといけないものがありますからね! ガンマ、めげずに頑張ります!」

「そうそう、そんな感じ」

 

なんか良い感じに気持ちをすっきりさせる僕、決まった! ん~、これはオリジナルにしてもいいかもしれない! 適当に話したけど、自分でもおぉと思ったものがあるし! 

 

えっと…あれ、なんだっけ???

 

適当に話したから、何を話したのか忘れてしまった

 

目の前にいるガンマはさっそく修行したいと申し出た

 

えぇい! そのうち思い出すだろ。そんなことよりガンマを育てよう!

 

「ぴぎゃ!」

 

ガンマは立ち上がったと同時に転ぶ

 

え、今のどうやったの???

 

あまりのことに、僕は反応することができなかった

 

この僕が…

 

反応できなかった?

 

 

……ふっふっふ

 

いいねぇ! 僕にも反応できないものがまだあったんだ!

 

本当に良い拾い物をしたよガンマ!

 

これからお互い頑張ろうね!

 

倒れたガンマを起こして、傷の手当をしてから修行を始めた。

 




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