ありふれた職業で世界最強 白騎士と創世の龍 作:Als_EX
数時間車を走らせ、俺たちはようやくハルツィナ大樹海の入り口までやってきた。
見た目は思ってたより普通の森だな。
「それでは、ハジメ殿、ユエ殿、リュート殿。中に入ったら決して我らから離れないで下さい。お三方を中心にして進みますが、万一はぐれると厄介ですからな。それと、行き先は森の深部、大樹の下で宜しいのですな?」
「ああ、聞いた限りじゃあ、そこが本当の迷宮と関係してそうだからな」
今兎人族の族長であるカムとハジメの話で出てきた"大樹"というのは、このハルツィナ大樹海の最深部にある超巨大な木で、亜人族には"ウーア・ウルト"と呼ばれ神聖視されて居るのだとか。
「ハジメ殿、リュート殿、できる限り気配は消してもらえますかな。大樹は、神聖な場所とされておりますから、あまり近づくものはおりませんが、特別禁止されているわけでもないので、フェアベルゲンや、他の集落の者達と遭遇してしまうかもしれません。我々は、お尋ね者なので見つかると厄介です」
「ああ、承知している。俺もユエも、ある程度、隠密行動はできるから大丈夫だ」
「任せろ」
そう言ってハジメは"気配遮断"を使用し、俺はその影に潜った。
「ッ!? これは、また……ハジメ殿、できればユエ殿くらいにしてもらえますかな?」
「ん? ……こんなもんか?」
「はい、結構です。さっきのレベルで気配を殺されては、我々でも見失いかねませんからな。いや、全く、流石ですな!」
ハジメの"気配遮断"は索敵能力が高いとされる兎人族ですら見失うレベルのものらしい。
「ところで…リュート殿はどちらに?」
「ここだよ」
ハジメの影から顔を出す。
カムはまるで怪異でも見たかのような顔をする。
「そ…それは少し控えていただいてもよろしいですかな?少々心臓に悪い」
「了解した」
"潜影"はダメか。
風纏ってどうにかなるかな?
「どうだろうか?」
「はい、そのくらいで問題ありません」
そうして一行は大樹を目指して樹海を進む。
定期的に魔物と遭遇するものの、ハジメとユエが全て瞬殺していく。
遠距離攻撃少なくてやることが無さすぎる。
そのまま数時間くらい歩いただろうか。
今までとは違う、つまり魔物ではない気配が俺たちをとり囲んだ。
俺以外の皆は見当がついているのだろうか。なにやら表情が変わった。
「お前達……何故人間といる! 種族と族名を名乗れ!」
そう言って草むらから出てきたのは虎の耳と尻尾のついたマッチョだった。
既に剣を抜き、こちらを睨みつけている。
亜人族は種族のほかに部族もあったのか、知らなかった…
「あ、あの私達は……」
カムが弁明を試みるが、その前に虎の亜人が白髪の兎人族──シアを見つけ、目を見開く。
「白い髪の兎人族…だと? ……貴様ら……報告のあったハウリア族か……亜人族の面汚し共め! 長年、同胞を騙し続け、忌み子を匿うだけでなく、今度は人間族を招き入れるとは! 反逆罪だ! もはや弁明など聞く必要もない! 全員この場で処刑する! 総員かッ!?」
ドパンッ!!
問答無用で攻撃しようとしてきた虎の亜人に対し、ハジメは頬を掠めるように銃撃を行う。
自身の理解の範疇を逸脱した攻撃に場は凍りついた。
「今の攻撃は、刹那の間に数十発単位で連射出来る。周囲を囲んでいるヤツらも全て把握している。お前等がいる場所は、既に俺のキルゾーンだ」
「な、なっ……詠唱がっ……」
詠唱無しの強力な遠距離攻撃、それを連射できる。さらに味方の位置まで把握済みであると告げられる。
その証明とでも言うのか銃口をある一点に向けた。そこはちょうど他の亜人がいる所だ。
「殺るというのなら容赦はしない。約束が果たされるまで、こいつらの命は俺が保障しているからな……ただの一人でも生き残れるなどと思うなよ。だが、この場を引くというのなら追いもしない。敵でないなら殺す理由もないからな。さぁ、選べ。敵対して無意味に全滅するか、大人しく家に帰るか」
「……その前に、一つ聞きたい……何が目的だ?」
ハジメは自分たちの目的と、現状最も大樹が怪しいことを告げる。
それに対し、虎の亜人は一つの判断を下した。
「……お前が、国や同胞に危害を加えないというなら、大樹の下へ行くくらいは構わないと、俺は判断する。部下の命を無意味に散らすわけには行かないからな。だが、一警備隊長の私ごときが独断で下していい判断ではない。本国に指示を仰ぐ。お前の話も、長老方なら知っている方もおられるかもしれない。お前に、本当に含むところがないというのなら、伝令を見逃し、私達とこの場で待機しろ」
この状況でこれだけ冷静な判断ができるとは。
この亜人割と優秀だな?
「……いいだろう。さっきの言葉、曲解せずにちゃんと伝えろよ?」
「無論だ。ザム! 聞こえていたな! 長老方に余さず伝えろ!」
「了解!」
少々考え込んだ結果、ハジメは提案に乗った。銃を仕舞い、警戒を解く。
今なら勝てるとでも思ったのか一部の亜人が臨戦態勢になるが、ハジメはしっかりと気付いて不敵に笑う。
「お前等が攻撃するより、俺の抜き撃ちの方が早い……試してみるか?」
「……いや。だが、下手な動きはするなよ。我らも動かざるを得ない」
「わかってるさ」
そうして、包囲こそそのままだが一段落ついたことがわかり、カムたちも安堵の吐息が漏れる。
まだあんまりハウリア族の状況を理解してない俺は黙りこくっているしかないのだった。
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