ありふれた職業で世界最強 白騎士と創世の龍 作:Als_EX
ここからまたなんとかペース戻して行けたらなと思います。
あれから1時間くらい経っただろうか。
近付いてくる気配を察知し、場に緊張が走る。
さっきまでのゆるさが嘘みたいだ。
霧の奥から数人の亜人が姿を現した。
その中でも特に目を引くのが金髪碧眼の初老くらいの男。
耳が尖っている。つまり森人族、俗に言うエルフだ。
「ふむ、お前さん達が問題の人間族かね? 名は何という?」
「白浪リュートです」
「ハジメだ。南雲ハジメ。あんたは?」
「私は、アルフレリック・ハイピスト。フェアベルゲンの長老の座を一つ預からせてもらっている。さて、お前さんの要求は聞いているのだが……その前に聞かせてもらいたい。〝解放者〟とは何処で知った?」
「うん? オルクス大迷宮の奈落の底、解放者の一人、オスカー・オルクスの隠れ家だ」
解放者の方なのか、目的じゃなく?
やっぱよくわかんないな。
諸々全部ハジメに任せておくか。
「ふむ、奈落の底か……聞いたことがないがな……証明できるか?」
「証明っつってもなぁ…」
「……ハジメ、魔石とかオルクスの遺品は?」
「ああ! そうだな、それなら……」
ハジメは手を叩き、"宝物庫"から地上ではありえない質の魔石を取り出してアルフレリックに渡す。
「こ、これは……こんな純度の魔石、見たことがないぞ……」
「後は、これ。一応、オルクスが付けていた指輪なんだが……」
そう言ってハジメが取り出したのは一つの指輪。
その指に刻まれた紋章を見たアルフレリックが目を見開いた。
「なるほど……確かに、お前さんはオスカー・オルクスの隠れ家にたどり着いたようだ。他にも色々気になるところはあるが……よかろう。取り敢えずフェアベルゲンに来るがいい。私の名で滞在を許そう。ああ、もちろんハウリアも一緒にな」
その発言に対し、周りの亜人たちから抗議の声が上がる。
そりゃそうだろう。本来なら人間族は入れないのだろうから。
「彼等は、客人として扱わねばならん。その資格を持っているのでな。それが、長老の座に就いた者にのみ伝えられる掟の一つなのだ」
どういうことだ?
『この樹海に隠れ家を持つ解放者は亜人族だからね』
なるほどな
っていうか今までどうしてたんだ?なんも喋ってなかったけど。
『疲れて寝てた』
そうだったのか、すまん。オルクスじゃかなり頼りっぱなしだったからな。
『いいよいいよ。私も無理難題押し付けたみたいな所あるし』
「待て。何勝手に俺の予定を決めてるんだ? 俺は大樹に用があるのであって、フェアベルゲンに興味はない。問題ないなら、このまま大樹に向かわせてもらう」
「いや、お前さん。それは無理だ」
「なんだと?」
「大樹の周囲は特に霧が濃くてな、亜人族でも方角を見失う。一定周期で、霧が弱まるから、大樹の下へ行くにはその時でなければならん。次に行けるようになるのは十日後だ。……亜人族なら誰でも知っているはずだが……」
え?そうなの?
チラッと案内役のカムを見てみると……
「あっ」
今まさに思い出したと言わんばかりの表情で立っていた。
「カム?」
「あっ、いや、その何といいますか……ほら、色々ありましたから、つい忘れていたといいますか……私も小さい時に行ったことがあるだけで、周期のことは意識してなかったといいますか……」
そう言い訳をするカムだったが、ハジメとユエのジト目に耐えきれず、遂には逆ギレをしだした。
「ええい、シア、それにお前達も! なぜ、途中で教えてくれなかったのだ! お前達も周期のことは知っているだろ!」
「なっ、父様、逆ギレですかっ! 私は、父様が自信たっぷりに請け負うから、てっきりちょうど周期だったのかと思って……つまり、父様が悪いですぅ!」
「そうですよ、僕たちも、あれ? おかしいな? とは思ったけど、族長があまりに自信たっぷりだったから、僕たちの勘違いかなって……」
「族長、何かやたら張り切ってたから……」
逆ギレするカムに、更にシアが逆ギレし、他の兎人族たちもさりげなく責任をなすりつけていく。
「お、お前達! それでも家族か! これは、あれだ、そう! 連帯責任だ! 連帯責任! ハジメ殿、罰するなら私だけでなく一族皆にお願いします!」
「あっ、汚い! お父様汚いですよぉ! 一人でお仕置きされるのが怖いからって、道連れなんてぇ!」
「族長! 私達まで巻き込まないで下さい!」
「バカモン! 道中の、ハジメ殿の容赦のなさを見ていただろう! 一人でバツを受けるなんて絶対に嫌だ!」
「あんた、それでも族長ですか!」
だめだこりゃ。
ハジメを恐れての責任の押し付け合い。
だいぶ収拾がつかなくなってきた。
「……ユエ」
「ん」
その光景を見て額に青筋を浮かべたハジメは、ユエに声をかける。
その言葉を聞いてユエは一歩前に出て右手を掲げる。
それに気付き、ハウリア達の顔が引き攣っていく。
「まっ、待ってください、ユエさん! やるなら父様だけを!」
「はっはっは、何時までも皆一緒だ!」
「何が一緒だぁ!」
「ユエ殿、族長だけにして下さい!」
「僕は悪くない、僕は悪くない、悪いのは族長なんだ!」
ギャーギャー騒ぎ続けるハウリア達に対し、薄く笑みを浮かべ、ユエは静かに呟いた。
「〝嵐帝〟」
―――― アッーーーー!!!
空へ舞い上がるハウリアの面々。
同胞を攻撃されているはずなのだがこちらに敵意を向けることは無く、それどころか呆れた顔で空を眺めている。
コイツらに案内任せて大丈夫なのか……?
『もしもの時は私が案内するよ』
出来るの?
『この世界を創ったのは私だからね』
そりゃそうか。
じゃあその時は任せた
『うん、任せて』
そんな話をしながら俺も空を舞うハウリア達を眺めていた。
あの後ハウリア達が落ちてきてから、虎の亜人に先導されながら移動を始めた。
それから1時間と少し歩いていると、いきなり霧が晴れた。
正確には霧によってトンネルのようなものが作られている。
アルフレリックによると、道の端についている青い結晶、フェアドレン水晶と言うらしいのだが、何故かその水晶には霧も、魔物でさえ寄り付かないのだとか。
それからしばらく歩くと、巨大な門が見えて来る。樹と樹が絡み合ったアーチに木製の両開きの扉が付いている。
天然の樹によって防壁が形成されており、森の国って感じがする。
ギルの合図で門が開かれる。
その先には───
直径が数十mはありそうな樹がそこかしこに生え、その幹の中に住んでいるのか、ランプの灯りが幹に開けられた窓から漏れ出している。
さらに、それに見合った太さの枝が絡み合って、空中回廊が出来上がっている。
エレベーターのようなものや、水路もあるようだ。
「ふふ、どうやら我らの故郷、フェアベルゲンを気に入ってくれたようだな」
「ああ、こんな綺麗な街を見たのは始めてだ。空気も美味い。自然と調和した見事な街だな」
「ん……綺麗」
「なんというか…言葉が出ないな」
純粋な称賛に、亜人族は勢いよく尻尾を振っている。
尻尾は基本的に動物とそこまで変わらないみたいだな。
俺たちはフェアベルゲンの住人達の、さまざまな感情のこもった視線を浴びながらアルフレリックが用意した場所へ向かった。
見ていただきありがとうございました。
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