ありふれた職業で世界最強 白騎士と創世の龍   作:Als_EX

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途中で切ると違和感があるので今回滅茶苦茶長いです。


13話 会議

「……なるほど。試練に神代魔法、それに神の盤上か……」

 

今俺たちはアルフレリックと話をしている。

内容としては、解放者や神代魔法のこと、自分たちが異世界から来ているということ、七大迷宮を攻略することで元の世界に帰れるかもしれないということ等だ。

 

アルフレリックはこの世界のことを聞いても特に顔色は変わらなかった。曰く、「この世界は亜人族に優しくはない、今更だ」だそうだ。

 

ひと通り話を聞いたあと、アルフレリックは長老に代々伝わる掟について話し出した。

 

この地に七大迷宮の紋章を持つ者が現れたらたとえどのような人物であろうと敵対しないこと。

そしてその人物を気に入ったのであれば望む場所へ連れていくこと。

 

というかなり抽象的なものだった。

 

ハルツィナ大樹海の大迷宮の主、リューリティス・ハルツィナが自身が解放者であることと仲間の名前と共に伝えたのだという。

七大迷宮の紋章については大樹の根元の石碑に記されているのだとか。

 

「それで、俺は資格を持っているというわけか……」

 

人間である俺たちをここまで招き入れたことの理由がわかった。だが、それを長老しか知らないのならその他の亜人族との対応について話す必要があるだろう。

 

ハジメとアルフレリックが話を詰めようとした時、下の階から騒がしい音が聞こえてきた。

階下にはハウリア族が待機していたはず。

どうやら誰かと争っているようだ。

ハジメとアルフレリックは顔を見合わせ、立ち上がった。

俺もそれについていく。

 

階下では、熊、虎、狐、羽根付き、毛むくじゃらの小人といった亜人たちがハウリアを睨みつけていた。

部屋の隅で縮こまっており、カムがシアを庇っている。

既に殴られているようで、2人とも頬が腫れている。

 

「アルフレリック……貴様、どういうつもりだ。なぜ人間を招き入れた? こいつら兎人族もだ。忌み子にこの地を踏ませるなど……返答によっては、長老会議にて貴様に処分を下すことになるぞ」

 

熊の亜人が拳を震わせながらそう言った。

人間はどうあっても憎い敵なのだろう。

そういえばハウリアはなんで虐げられてるんだ?

ハジメに聞いとけばよかった…

 

『シアって子が原因だね』

 

そうなのか?

そんな悪いやつには感じなかったけど…

 

『彼女は忌み子なんだ。亜人族は本来魔力を持たないんだけど、あの子はそれを持っている。あまつさえ魔力操作もできて、固有魔法もある。

これが魔獣のようだと忌み嫌われているんだ』

 

『ハウリアはそれを匿った。それが原因で罪人として扱われ、一族皆あんな仕打ちを受けることになったって感じだね』

 

なるほど。

ありがとう。

 

「なに、口伝に従ったまでだ。お前達も各種族の長老の座にあるのだ。事情は理解できるはずだが?」

「何が口伝だ! そんなもの眉唾物ではないか! フェアベルゲン建国以来一度も実行されたことなどないではないか!」

「だから、今回が最初になるのだろう。それだけのことだ。お前達も長老なら口伝には従え。それが掟だ。我ら長老の座にあるものが掟を軽視してどうする」

「なら、こんな人間族の小僧が資格者だとでも言うのか! 敵対してはならない強者だと!」

「そうだ」

 

おそらくここにいるやつらが今の長老なんだろう。

だが、掟についての認識が一致していないらしい。

アルフレリックはその掟を重視しているが、その他は「眉唾物」の発言の通り、ろくに信じていないようだ。

 

信じられないものに従う意味もない。

それより人間族や罪人がここにいるのが許せない。

そんなところだろうか。

 

「……ならば、今、この場で試してやろう!」

 

そう言って熊の亜人がハジメへと殴り掛かった。

その剛腕がハジメへと振り下ろされる。

 

……が、その腕は途中で止まっていた。

もちろん、ハジメが受け止めたのだ。

 

「……温い拳だな。だが、殺意を持って攻撃したんだ。覚悟は出来てるだろ?」

 

そうしてハジメはどんどん力を…いや、義手で受け止めたので魔力を込めていく。

 

「ぐっう! 離せ!」

 

腕を引き戻そうとするが、ハジメはビクともしない。

ハジメは無言で魔力を込め続け、握力を一気に高めていく。

 

バキッ!

 

「ッ!?」

 

熊の亜人の腕から音が鳴った。

おそらく折れたのだろう。

 

そのままハジメは懐へ飛び込み、左腕を引く。

 

「ぶっ飛べ」

 

ドパンッ!

 

肘に搭載されていたショットガンの勢いも乗せた突きが熊の亜人の腹に突き刺さる。

熊の亜人はくの字に体を曲げ、壁を突き破って吹き飛んでいった。

悲鳴が聞こえたので無事なんだろう。

 

「で? お前らは俺の敵か?」

 

 

 

 

 

そのあとアルフレリックがなんとか執り成し、その場を治めることに成功した。

 

現在、当代の長老衆である虎人族のゼル、翼人族のマオ、狐人族のルア、土人族(いわゆるドワーフ)のグゼ、そして森人族のアルフレリックが、ハジメと向かい合って座っていた。

ハジメの傍らにはユエとカム、シア、あと俺が座り、その後ろにはその他のハウリアが座っている。

 

「で? あんた達は俺等をどうしたいんだ? 俺は大樹の下へ行きたいだけで、邪魔しなければ敵対することもないんだが……亜人族・・・としての意思を統一してくれないと、いざって時、何処までやっていいかわからないのは不味いだろう? あんた達的に。殺し合いの最中、敵味方の区別に配慮する程、俺はお人好しじゃないぞ」

 

ハジメのその言葉に長老たちが体を強張らせる。

 

「こちらの仲間を再起不能にしておいて、第一声がそれか……それで友好的になれるとでも?」

 

土人族のグゼが呻くように呟く。

 

「は? 何言ってるんだ? 先に殺意を向けてきたのは、あの熊野郎だろ? 俺は返り討ちにしただけだ。再起不能になったのは自業自得ってやつだよ」

「き、貴様! ジンはな! ジンは、いつも国のことを思って!」

「それが、初対面の相手を問答無用に殺していい理由になるとでも?」

「そ、それは! しかし!」

「勘違いするなよ? 俺が被害者で、あの熊野郎が加害者。長老ってのは罪科の判断も下すんだろ? なら、そこのところ、長老のあんたがはき違えるなよ?」

 

「グゼ、気持ちはわかるが、そのくらいにしておけ。彼の言い分は正論だ」

 

気持ちが昂り、立ち上がりかけたグゼをアルフレリックが諌める。

その言葉に顔を歪め、音をたてながら座り込む。

 

「確かに、この少年は、紋章の一つを所持しているし、その実力も大迷宮を突破したと言うだけのことはあるね。僕は、彼を口伝の資格者と認めるよ」

 

狐人族のルアがそう言い、周りを見渡す。

翼人族のマオ、虎人族のゼルも思うところはあるようだが、同意を示した。

代表してアルフレリックがハジメにその意を伝える。

 

「南雲ハジメ。我らフェアベルゲンの長老衆は、お前さんを口伝の資格者として認める。故に、お前さんと敵対はしないというのが総意だ……可能な限り、末端の者にも手を出さないように伝える。……しかし……」

「絶対じゃない……か?」

「ああ。知っての通り、亜人族は人間族をよく思っていない。正直、憎んでいるとも言える。血気盛んな者達は、長老会議の通達を無視する可能性を否定できない。特に、今回再起不能にされたジンの種族、熊人族の怒りは抑えきれない可能性が高い。アイツは人望があったからな……」

「それで?」

「お前さんを襲った者達を殺さないで欲しい」

「……殺意を向けてくる相手に手加減しろと?」

「そうだ。お前さんの実力なら可能だろう?」

「あの熊野郎が手練だというなら、可能か否かで言えば可能だろうな。だが、殺し合いで手加減をするつもりはない。あんたの気持ちはわかるけどな、そちらの事情は俺にとって関係のないものだ。同胞を死なせたくないなら死ぬ気で止めてやれ」

 

「ならば、我々は、大樹の下への案内を拒否させてもらう。口伝にも気に入らない相手を案内する必要はないとあるからな」

 

虎人族のゼルのその言葉に、ハジメは訝しげな表情を向けた。

そもそも案内はハウリアに任せるつもりでフェアベルゲンの手を借りる気は無かった。

 

「ハウリア族に案内してもらえるとは思わないことだ。そいつらは罪人。フェアベルゲンの掟に基づいて裁きを与える。何があって同道していたのか知らんが、ここでお別れだ。忌まわしき魔物の性質を持つ子とそれを匿った罪。フェアベルゲンを危険に晒したも同然なのだ。既に長老会議で処刑処分が下っている」

 

なんか変だなと思ったらそういうことか。

 

「長老様方! どうか、どうか一族だけはご寛恕を! どうか!」

「シア! 止めなさい! 皆、覚悟は出来ている。お前には何の落ち度もないのだ。そんな家族を見捨ててまで生きたいとは思わない。ハウリア族の皆で何度も何度も話し合って決めたことなのだ。お前が気に病む必要はない」

「でも、父様!」

 

シアは土下座して寛恕を請うが、ゼルに容赦はなかった。

 

「既に決定したことだ。ハウリア族は全員処刑する。フェアベルゲンを謀らなければ忌み子の追放だけで済んだかもしれんのにな」

 

シアは泣き出し、カムたちがそれを慰める。

 

「そういうわけだ。これで、貴様が大樹に行く方法は途絶えたわけだが? どうする? 運良くたどり着く可能性に賭けてみるか?」

 

 

 

「お前、アホだろ?」

「な、なんだと!」

 

まぁそうなるよなぁ…

 

「俺は、お前らの事情なんて関係ないって言ったんだ。俺からこいつらを奪うってことは、結局、俺の行く道を阻んでいるのと変わらないだろうが」

 

ハジメは長老達を睨みつけながら泣き続けるシアに近づき、その頭に手をのせる。

 

「俺から、こいつらを奪おうってんなら……覚悟を決めろ」

「ハジメさん……」

 

堕ちたな。

 

「本気かね?」

「当然だ」

「フェアベルゲンから案内を出すと言っても?」

「何度も言わせるな。俺の案内人はハウリアだ」

「なぜ、彼等にこだわる。大樹に行きたいだけなら案内人は誰でもよかろう」

 

アルフレリックの言葉に面倒そうな表情をしつつ、シアをチラッと見る。

 

「約束したからな。案内と引き換えに助けてやるって」

「……約束か。それならもう果たしたと考えてもいいのではないか? 峡谷の魔物からも、帝国兵からも守ったのだろう? なら、あとは報酬として案内を受けるだけだ。報酬を渡す者が変わるだけで問題なかろう。」

「問題大ありだ。案内するまで身の安全を確保するってのが約束なんだよ。途中でいい条件が出てきたからって、ポイ捨てして鞍替えなんざ……」

 

ハジメは一度言葉を切り、ユエの方を見る。

ユエはハジメを見ており、目が合うと僅かに微笑む。

それに苦笑し、肩をすくめながらハジメはアルフレリックに向き合い、言った。

 

「格好悪いだろ?」

 

ハジメに引く気は一切無いと悟ったのか、アルフレリックは深くため息を吐いた。

他の長老達はどうするのかと顔を見合わせる。

しばらくして、なんだか疲れたような顔をして、アルフレリックが提案した。

 

「ならば、お前さんの奴隷ということにでもしておこう。フェアベルゲンの掟では、樹海の外に出て帰ってこなかった者、奴隷として捕まったことが確定した者は、死んだものとして扱う。樹海の深い霧の中なら我らにも勝機はあるが、外では魔法を扱う者に勝機はほぼない。故に、無闇に後を追って被害が拡大せぬように死亡と見なして後追いを禁じているのだ。……既に死亡と見なしたものを処刑はできまい」

「アルフレリック! それでは!」

 

とんでもない屁理屈だ。

他の長老たちも驚きの目を向ける。

 

「ゼル。わかっているだろう。この少年が引かないことも、その力の大きさも。ハウリア族を処刑すれば、確実に敵対することになる。その場合、どれだけの犠牲が出るか……長老の一人として、そのような危険は断じて犯せん」

「しかし、それでは示しがつかん! 力に屈して、化物の子やそれに与するものを野放しにしたと噂が広まれば、長老会議の威信は地に落ちるぞ!」

「だが……」

 

2人の議論に他の長老も加わる。

既に決定したことを後から捻じ曲げようとしているのだ、そう簡単にはいかない。

 

「ああ~、盛り上がっているところ悪いが、シアを見逃すことについては今更だと思うぞ?」

 

空気を読まないハジメの言葉に、長老たちの議論がピタっと止まる。

 

ハジメはおもむろに袖を捲り、魔力操作を行う。

皮膚の内側に赤い線が浮かぶ。

ついでに腕にスパークが走る。

 

「俺も、シアと同じように、魔力の直接操作ができるし、固有魔法も使える。次いでに言えばこっちにいるユエとリュートもな。あんた達のいう化物ってことだ。だが、口伝では〝それがどのような者であれ敵対するな〟ってあるんだろ? 掟に従うなら、いずれにしろあんた達は化物を見逃さなくちゃならないんだ。シア一人見逃すくらい今更だと思うけどな」

 

ハジメの腕を見てしばらく固まっていた長老たちだったが、やがて顔を見合わせ話し始める。

しばらくして結論がでたのか、アルフレリックが深々とため息をついて決定を伝える。

 

「はぁ~、ハウリア族は忌み子シア・ハウリアを筆頭に、同じく忌み子である南雲ハジメの身内と見なす。そして、資格者南雲ハジメに対しては、敵対はしないが、フェアベルゲンや周辺の集落への立ち入りを禁ずる。以降、南雲ハジメの一族に手を出した場合は全て自己責任とする……以上だ。何かあるか?」

「いや、何度も言うが俺は大樹に行ければいいんだ。こいつらの案内でな。文句はねぇよ」

「……そうか。ならば、早々に立ち去ってくれるか。ようやく現れた口伝の資格者を歓迎できないのは心苦しいが……」

「気にしないでくれ。全部譲れないこととは言え、相当無茶言ってる自覚はあるんだ。むしろ理性的な判断をしてくれて有り難いくらいだよ」

 

ハジメの言葉にアルフレリックは苦笑する。

他の長老たちも少しやつれているように見える。

そんな様子を見て肩をすくめ、ハジメは俺たちに立つよう促して立ち上がった。

 

ユエはずっとボーっとしていたが、話は聞いていたのか何も言わずに立ち上がった。

 

なんか丸く治ったようでよかった。

そんなことを思いつつユエに続いて立ち上がる。

 

しかし、ハウリアの面々はまだ現実を理解できていないのか呆然として立ち上がる気配がない。

そりゃそうだ、死ぬ覚悟してたのに死ななくて良くなったんだから。

 

「おい、何時まで呆けているんだ? さっさと行くぞ」

 

その言葉に、ハウリアたちはあたふたしながら立ち上がり、ハジメの後を追う。

アルフレリックたちも俺たちを門まで送るようだ。

 

シアがオロオロとしながらハジメに尋ねる。

 

「あ、あの、私達……死ななくていいんですか?」

「? さっきの話聞いてなかったのか?」

「い、いえ、聞いてはいましたが……その、何だかトントン拍子で窮地を脱してしまったので実感が湧かないといいますか……信じられない状況といいますか……」

 

他のハウリアたちもそんな感じらしい。

皆そろって困惑した表情を浮かべている。

そんなシアにユエが呟くように話しかける。

 

「……素直に喜べばいい」

「ユエさん?」

「……ハジメに救われた。それが事実。受け入れて喜べばいい」

「……」

 

その言葉にシアがそっと隣のハジメを見ると、ハジメは前を見ながら肩をすくめて言った。

 

「まぁ、約束だからな」

「ッ……」

 

完ッ全に堕ちたなコレ。

 

その予想は当たっていたのか、シアはハジメに全力で抱きつく。

 

「ハジメさ~ん! ありがどうございまずぅ~!」

「どわっ!? いきなり何だ!?」

「むっ……」

 

涙で顔をグシャグシャにしながらしがみつき、ハジメの肩に顔を押し付ける。

その様子を見てユエが不機嫌そうに呻るものの、特に何もせず反対側の手を取る。

 

シアの姿を見て命拾いしたことを実感したのか、ハウリアが皆で喜び合っている。

 

反対に長老衆は複雑そうな表情をしている。遠巻きには負の感情を向けている亜人族もいる。

 

またしばらくは、面倒事が続きそうだ。

 

そんなことを思いながら、俺はハジメの少し後ろをついていった。




読んでいただきありがとうございました。

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