ありふれた職業で世界最強 白騎士と創世の龍 作:Als_EX
俺達は今、【オルクス大迷宮】の入口の前の広場に集合している。
洞窟みたいな薄暗い入口をイメージしてたが、なんというか博物館とかみたいな感じになってる。
ここでステータスプレートを確認し、出入りを記録することで、死亡者の数を把握しているらしい。
広場は露店が並び、人も多く、お祭りのようだ。
この迷宮、浅い層は良い稼ぎ場所として人気が高いらしく、そのため人がどんどん集まってくる。
多分そういう人達を狙ってるんだろう。
俺達はキョロキョロ周りを見ながらメルドさんについて迷宮へと入っていった。
中は外とは全く違い、とても静かだった。
壁に埋まっている緑光石という鉱物のおかげで明かりがなくても割とよく見える。
この【オルクス大迷宮】は、本来緑光石を掘る為の坑道だったんだとか。
隊列を組みながらしばらく進むと、大きな広間に出た。
しばらく周りを見渡していると、壁の隙間から灰色の大きな毛玉が出てくる。
「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ! 交代で前に出てもらうからな、準備しておけ! あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」
ラットマンは灰色の体毛に覆われたムキムキで二足歩行のネズミである。
ただし、胸筋と腹筋の部分は毛が生えていない。
迎撃には俺と天之河、坂上、八重樫、白崎、恵里、谷口とあと女子2人が行う。
前衛の4人が前線を抑え、後ろの数人が魔法で吹き飛ばすシンプルな作戦だ。
ラットマンを後ろに行かないようしばらく適当にあしらっていると、魔法の準備ができたみたいだから少し下がる。
「「「暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、灰となりて大地へ帰れ――〝螺炎〟」」」
3人が同時に放った魔法でラットマンがどんどん燃えていく。
気付いた時には広間のラットマンは全滅していた。
「ああ~、うん、よくやったぞ! 次はお前等にもやってもらうからな、気を緩めるなよ!」
想定以上だったのか、メルドさんは苦笑いを浮かべている。
「それとな……今回は訓練だからいいが、魔石の回収も念頭に置いておけよ。明らかにオーバーキルだからな?」
そうだった。ちゃんと覚えとこ。
そこからは特に問題もなく、交代しながら戦闘を繰り返していった。
そして、一流か否かを分ける20階層に到達した。
俺達は戦闘経験はほとんどないが、ステータスで軽くゴリ押してきた。
というのもあるが、実際には騎士団の人達が誘導してくれているのが大きい。
この迷宮、即死級のトラップがあることもあるらしい。
そんなトラップの有無を騎士団の人達が確認してくれているおかげでここまで早く、安全に来られたのだろう。
「よし、お前達。ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくる。今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するなよ! 今日はこの二十階層で訓練して終了だ! 気合入れろ!」
よく響く声でメルドさんが発破を掛ける。
しかし、特に何も起こらず順調に進んでいく。
小休止に入り、白崎とハジメがラブコメみたいなことしてるのを眺めながら出来る限り体を休める。
しばらくして、また20階層の探索を再開する。
とは言っても既に47階層までマッピングは終わっており、特に何かが起きることはない。
20階層の1番奥の部屋。鍾乳洞のような複雑な地形をしたこの部屋の先に21階層への階段があるらしい。
そこに着けば今日の訓練は終了となる。
ん……?
何か居る。
取り敢えず武器を構える。
「擬態しているぞ! 周りをよ~く注意しておけ!」
この辺りの階層で擬態する魔物は…ロックマウントか?
と、前方の壁が変色し、動き出した。
当たりみたいだな。
「ロックマウントだ! 二本の腕に注意しろ! 豪腕だぞ!」
坂上が飛びかかってきたロックマウントを抑え込んだので、天之河、八重樫と一緒に囲もうとするが、足場が悪く、上手くいかない。
坂上を突破できないと判断したのか、ロックマウントは後ろに下がる。
そして、体をのけぞらせ、大きく息を吸った。
その直後、
「グゥガガガァァァァアアアアーーーー!!」
ロックマウントから強烈な咆哮が放たれた。
「ぐっ!?」
「うわっ!?」
「きゃあ!?」
「っ……!」
ロックマウントの固有魔法“威圧の咆哮”。
魔力を乗せた咆哮で、一時的に相手を麻痺させることが出来る。
俺はギリギリ耳を塞げたからよかったものの、他の3人は皆モロに食らったようで、一瞬動きを止めた。
ロックマウントはその隙に突進……ではなく、そばにある岩を後衛組に向かって投げる。
白崎達後衛は魔法で迎撃しようとするが、衝撃的なものを見て、動きを止めてしまった。
実はロックマウントが投げた岩、これもまたロックマウントだったのだ。
驚いて魔法の詠唱を止める後衛組。
マズイ…!
他の3人より早く動けた俺は投げられたロックマウントの対処に向かう。
走っても追いつかない…
それなら!
俺は持っていた槍を地面に向け、詠唱を開始する。
イメージは……バルファルク!
槍の先から風属性の魔法を放ち、一気に加速する。
そのままの勢いで、腰に下げていた剣でロックマウントを切り裂く。
「大丈夫!?」
「う、うん」
流石にキモかったのか、顔が青ざめている。
「貴様……よくも香織達を……許さない!」
何故かキレている天之河に呼応するように、聖剣が輝きだす。
あ、あんの馬鹿野郎!
「万翔羽ばたき、天へと至れ――〝天翔閃〟!」
「あっ、こら、馬鹿者!」
メルドさんの声も無視し、天之河は剣を振り下ろす。
聖剣の光が、そのまま斬撃となって放たれ、ロックマウントを切り裂き、ついでに奥の壁もぶっ壊した。
キラキラした笑顔で振り向き、何か言おうとした天之河に、メルドさんが拳骨を入れる。
「へぶぅ!?」
「この馬鹿者が。気持ちはわかるがな、こんな狭いところで使う技じゃないだろうが! 崩落でもしたらどうすんだ!」
申し訳無さそうに縮こまり、謝罪する天之河。
そこに他の面子が寄ってきて天之河を慰める。
「……あれ、何かな? キラキラしてる……」
白崎が呟き、指を指す。
その方向に全員が顔を向ける。
青白く発光し、花のように壁から生える鉱物。
水晶のようなその見た目に、女子はうっとりとした表情をする。
「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」
大雑把に言えば宝石の原石。この鉱石を加工した指輪にイヤリング・ペンダントなどは、贈り物として人気が高く、求婚の際に選ばれる鉱石トップ3のうちの一つなんだとか。
「素敵……」
メルドさんの説明を聞き、さらにうっとりとする白崎。
今白崎がハジメの方をチラ見したのは気のせいではないだろう。
「だったら俺らで回収しようぜ!」
そう言って突然動き出し、どんどん壁を登っていく檜山。
「バカ!さっさと戻れ!」
「こら! 勝手なことをするな! 安全確認もまだなんだぞ!」
流石に度を過ぎている行為に戻ってくるよう叫ぶが、全く聞き入れず、遂には鉱石までたどり着いてしまった。
「団長! トラップです!」
「ッ!?」
警告は一歩遅かった。
檜山が鉱石に触れたとたん、鉱石を中心に魔法陣が一瞬で部屋中に広がる。
「くっ、撤退だ! 早くこの部屋から出ろ!」
メルドさんの言葉に、急いで部屋から出ようとするが、間に合わず部屋が光に包まれた。
一瞬の浮遊感の後、空気が変わる。
なんとか尻餅を付かずにいられた俺は辺りを警戒して見回していた。
俺達が転移したのは大きな石造りの橋の上その中間地点。橋の下は何も見えないくらいの大穴が空いていた。落ちたらひとたまりもないだろう。
橋の両側には奥への通路と上への階段が見える。
「お前達、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」
だが、そう簡単にはいかなかった。
階段の方に魔法陣が現れ、そこから大量の魔物が湧き出てくる。
さらに反対側にはとてつもなく巨大な影が姿を現した。
――まさか……ベヒモス……なのか……
今回もありがとうございました。
誤字、脱字報告お願いします。