ありふれた職業で世界最強 白騎士と創世の龍   作:Als_EX

7 / 17
そういえば、恵里の一人称って「ボク」じゃなくて「僕」だったんですね。


6話 喪失

"ベヒモス"

 

数多のRPGにおいて登場し、主人公達の壁となるモンスター。

それと同じ名を冠するその魔物は、その名に恥じない体躯と強い殺意を持って俺たちの前に姿を現した。

 

反対側からはトラウムソルジャーと言う名の骸骨が湧き出てくる。

Traum(殺到する)の名の通りどんどん増えていく。

もう100は超えただろうか。

 

ベヒモスは65層に生息し、昔最強と言われた冒険者が一切歯が立たずに負けたと言われる正真正銘の化け物。

今の俺たちで勝てるはずがない。

 

「グルァァァァァアアアアア!!」

「ッ!?」

 

---だめだ。

あんなのと戦っても死ぬだけだ。

嫌だ。

死にたくない…

 

俺は退路を確保するという言い訳をしてトラウムソルジャーに向かっていった。

幸いトラウムソルジャーはさほど強くなく、一撃で倒せる。

だがいかんせん数が多い。

それに皆混乱して連携もクソもない。

こういう時に使えるヤツは実力差を考えずベヒモスに突っ込んでった。

 

どうする…どうすればいい……

 

その時、甲高い音とともに騎士団の人達が張っていた障壁が砕け散った。

その音に驚き騎士団の方を見た。

 

「ハジメ……!?」

 

最前線にハジメがいた。

あの4人はまだベヒモスとやり合うつもりらしい。

 

天之河の〝神威〟が直撃した。極光が辺りを塗り潰す。

光が収まったそこには、無傷のベヒモスが佇んでいた。

 

頭を振り上げたベヒモスのその頭が赤く染まっていく。

そのままベヒモスはその巨体から考えられないほど飛び上がり、天之河に向かって落ちていく。

なんとか避けたが衝撃で吹き飛ばされたようだ。

どうやら限界のようだ。

 

今度はメルドさんを狙ってベヒモスが飛び上がる。

ギリギリで避け、魔法で瓦礫を散らしてほぼ無傷で凌ぐ。

その攻撃で頭が橋に刺さって抜けなくなったベヒモスにハジメが飛びついた。

錬成で足止めを行っているらしい。

 

その隙に騎士団の人達とあの4人が撤退してくる。

 

ようやくなんとかなりそうだ…

 

天之河の〝天翔閃〟でトラウムソルジャーが薙ぎ払われる。

 

「皆! 諦めるな! 道は俺が切り開く!」

 

そんなセリフを吐きながら天之河は〝天翔閃〟を再び放つ。

少しずつ皆が活気づいてくる。

 

「お前達! 今まで何をやってきた! 訓練を思い出せ! さっさと連携をとらんか! 馬鹿者共が!」

 

メルドさんの声でパニックがほぼ収まった。

白崎がサラッと使った魔法の効果もあるのかもしれない。

 

騎士団の人達も参戦し、完全に戦況がひっくり返った。

魔法陣による召喚が間に合っていない。

 

「皆! 続け! 階段前を確保するぞ!」

 

そのままの勢いで階段へたどり着く。

だが、登ろうとしない騎士団の人達に皆は怪訝な顔をする。

 

「皆、待って! 南雲くんを助けなきゃ! 南雲くんがたった一人であの怪物を抑えてるの!」

 

皆の頭に?が増える。

そりゃそうだ。皆からしたらハジメは"無能"なのだから。

だが白崎の言ったことは事実だ。

 

「なんだよあれ、何してんだ?」

「あの魔物、上半身が埋まってる?」

 

「そうだ! 坊主がたった一人であの化け物を抑えているから撤退できたんだ! 前衛組! ソルジャーどもを寄せ付けるな! 後衛組は遠距離魔法準備! もうすぐ坊主の魔力が尽きる。アイツが離脱したら一斉攻撃で、あの化け物を足止めしろ!」

 

指示に従い、俺はトラウムソルジャーとの戦闘に入る。

視界の端に映り込んだ檜山のほの暗い笑顔を見なかったことにしながら。

 

 

 

 

 

しばらくして、ハジメの魔力が尽きたのか、ベヒモスが起き上がった。

ベヒモスがハジメを狙って飛び上がろうとしたその時、あらゆる属性の魔法がベヒモスに向かって放たれる。

ダメージはそこまで無いようには見えるが、足止めにはなっている。

 

ハジメが走ってくる。もう30mくらいは離れただろうか。

 

これで皆無事で済んだな…

 

そう思った時だった。

ベヒモスへと放たれたはずの魔法の一つがハジメに向かって軌道を曲げたのだ。

直撃こそしなかったものの、衝撃でベヒモスの方へ吹き飛ばされてしまう。

 

フラフラと立ち上がったハジメに、ベヒモスが追撃を入れようとする。

ハジメはギリギリ避けられたが橋の方が限界だった。

今までの戦闘で入っていたヒビが広がり、大きな音を立てて橋が崩れだした。

 

ハジメがマズい!

 

俺は無我夢中で飛び出した。

 

ロックマウントとの戦闘で使ったアレはぶっつけ本番で制御が効かないから使えない。

 

限界突破ッ!

 

限界突破は自身のステータスを3倍に引き上げる技能。

使用後は体にとてつもない負荷がかかるが、この際そんなこと気にしてられない。

 

俺は全力で走った。

 

だが、間に合わなかった。

目の前でハジメが掴んでいた場所が崩れ落ちた。

底の見えない奈落へ真っ逆さまに落ちて行く。

 

その瞬間、限界突破の制限時間がきて俺は意識を失った。

 

 

そうして俺は大切な親友を失った。




読んで頂きありがとうございました。

誤字、脱字報告などよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。