RIDER VS ー異形たちの見る夢ー   作:K/K

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最強たちの戯れ

 逃走した浅倉を追うサングラスの男と黒髪の美女。しかし、相手は謎の力によって透明化しており目では探せない。

 二人はすぐに立ち止まると耳に意識を集中させる。すると、彼らの耳に数十メートル先の走って遠ざかっていく足音が聞こえる。優れたオルフェノクである彼らは人間の状態でも超人的な能力を行使出来る。この異常な聴力もその一つである。

 幸いこの建物内は限られた者しか出入りを許されていないので、足音の主が浅倉であると断定するには十分な理由になる。

 すぐに浅倉の追跡を開始する二人だったが、暫く走った後に足を止めてしまう。

 

「……」

「コソコソと鬱陶しい……!」

 

 サングラスの男は周囲に鋭い視線を巡らせ、黒髪の美女はイラつきながら吐き捨てる。明確な敵意を込められた視線が二人を刺す。しかも、周囲には鏡やガラスなどの反射物が置かれてある。視線の主がミラーワールドからこちらを見ているのを二人は既に認識している。

 曇り一つない大理石の柱から楔を繋ぎ合わせたような形をした一対の鞭が伸び、黒髪の美女に巻き付く。

 

「来たか……!」

 

 サングラスの男はすぐに助けようと動くが、その直前に鏡から何かが複数飛び出してきたので反射的に足を止める。飛来物は羽根であり、それが石造りの床に突き刺さっている。

 浅倉の追跡を妨害する為のミラーモンスターの刺客が送り込まれたのを察すると二人は即座にオルフェノクへ姿を変える。

 エラスモテリウムオルフェノクに巻き付いた鞭がミラーワールドに引き込もうとしてくる。

 

「お前が──」

 

 しかし、エラスモテリウムオルフェノクは床が踏み割れる程足に力を込めて抵抗し、鞭を掴む。

 

「こっちへ来い!」

 

 逆に引っ張って鞭の主をミラーワールドから引き摺り出してしまうエラスモテリウムオルフェノク。

 ミラーワールドから出て来たのはインディアンを彷彿とさせる民族衣装のような格好をした白と赤の配色が目立つ鳥の怪人。両腕が手甲のような形状をしており、肘側の方へ長く伸びている。エラスモテリウムオルフェノクに巻き付いていた鞭はその怪人の尾羽であった。

 鏡から手裏剣のように羽根が飛ぶ。今度の狙いはエラスモテリウムオルフェノクであった。

 引っ張り出された仲間を救う為の攻撃だったが、エラスモテリウムオルフェノクに命中する前にバットオルフェノクの二丁拳銃により全て空中で撃ち落とされてしまう。

 バットオルフェノクは鏡に向けて指招きで挑発する。『この程度でどうにかなるとでも思ったのか?』『やるなら直接来い』というメッセージが込められている。

 その挑発に乗ったのか、それとも遠距離攻撃では埒が明かないと思ったのかもう一体の怪人がミラーワールドから出て来る。

 そのミラーモンスターもまた先に出て来た鳥の怪人と似た特徴を持っている。

 民族衣装のような姿だが、こちらは頭部が扇形に広がっており、そこにバットオルフェノクたちに投げつけた羽根が飾られている。手には戦斧を持っており、それで威嚇するように構えている。

 エラスモテリウムオルフェノクに尾羽を巻き付けている怪人──ガルドサンダーが鳴く。

 

「クェー!」

「威嚇のつもりか? 鳥風情が……!」

 

 エラスモテリウムオルフェノクは拘束されている両腕を力任せに広げていく。ミチミチという音が鳴ったかと思えば、一瞬にしてガルドサンダーの尾羽の片方が千切れ飛んだ。

 

「クェッ!?」

 

 ガルドサンダーは驚きと苦痛の混じった鳴き声を上げる。

 

「三分でこいつらを始末する。手を抜くな」

 

 エラスモテリウムオルフェノクがバットオルフェノクに告げると彼は異論は無いと頷いた。

 高い知能を有しているのか、エラスモテリウムオルフェノクの言葉を理解し、もう一体の怪人──ガルドストームは強い殺気を放つ。バットオルフェノクは浴びせられる殺気を余裕を以って受け流し、二丁の銃口をガルドストームを狙う。

 怪人たちの二対二の殺し合いがこうして始まった。

 

 

 ◇

 

 

「ふんっ!」

 

 ローズオルフェノクが繰り出した掌打をオーディンはゴルトセイバーの腹で受ける。細身の見た目からは想像も付かない重い一撃であり、オーディンは手の痺れを感じた。

 防御したオーディンはすぐにもう片方のゴルトセイバーで反撃をしようとするが、ゴルトセイバーはローズオルフェノクではなく別方向に振るわれる。

 無数の光弾がゴルトセイバーの一振りにより弾かれる。ローズオルフェノクが攻撃をしたタイミングでサイガもまた銃撃を行っていた。

 オーディンの視線が僅かにサイガへ向けられるとローズオルフェノクは手を掲げる。オルフェノクの力が青い炎となってローズオルフェノクの掌の上に集まり、大きな火球と化す。

 ローズオルフェノクはそれをオーディンへ投げ放つ。だが、その前にオーディンは瞬間移動によりその場から移動。火球は床に命中して爆発を起こす。

 黄金の羽根と共に姿を現すオーディン。その眼前でバラの花弁が舞う。

 

「はっ!」

 

 いつの間にか移動していたローズオルフェノクの拳がオーディンの胸部を打ち、オーディンは一歩ではあるが後退させる。

 オーディンは反撃をせずローズオルフェノクを凝視する。その視線には何故瞬間移動先にローズオルフェノクが居たのか問うような意思が込められている。

 

「不思議ですねぇ。何となくですが分かるんですよ、貴方の移動先が」

 

 空間の揺れと表現すればいいのだろうか。ローズオルフェノクはオーディンが消えると同時に離れた場所でそれが起こっていることを感じ取っていた。最初は違和感のようなものであったが、オーディンが瞬間移動を繰り返す度にそれが起こっていたので、その空間の揺れこそが現れる前兆であることを確信した。これは、同じく瞬間移動能力を持つローズオルフェノクだからこそ把握出来た感覚である。

 後はその感覚に従い、ローズオルフェノクも瞬間移動をすればいい。そして、移動後の無防備な所へ今のように攻撃をする。

 動きが読まれたことに動揺しているのかオーディンはその場で佇んでしまっていた。それを見逃すサイガではない。

 

「余所見かい?」

 

 挑発と共に発射される光弾。攻撃に気付いてコンマ数秒程遅れてオーディンはゴルトセイバーを振るう。着弾と同時にオーディンの手からゴルトセイバーが弾かれた。

 

「むっ……」

 

 ゴルトセイバーを握っていた手が微かに震えていた。着弾の衝撃で手が痺れている。

 サイガも考え無しに何度も攻撃をしていた訳では無い。オーディンの動きを見て、動作の速さや剣の振りの速度を覚えていた。先程の射撃はゴルトセイバーの刀身と柄の境目を狙ったものであり、ゴルトセイバーを振り抜くことが出来ずサイガの光弾に力負けをしてしまった。

 片手の武器を失ってしまったオーディンに追撃の手は緩まない。ローズオルフェノクは両手に拳を作り、側面を合わせる。合わせた拳を左右に広げると間には光で出来たバラの蔓が作り出された。ローズオルフェノクはそれを鞭として扱い、オーディン目掛けて振るう。ローズオルフェノクの鞭はゴルトセイバーの柄ごとオーディンの手に巻き付く。

 光の蔓が絡まるのを見て、オーディンは力任せに引っ張って引き千切ろとする。すると、鞭は途中であっさりと切れてしまった。呆気無く切れたことに違和感を覚えるオーディン。その考えは正しかった。オーディンの手に絡まる蔓からバラの花が咲く。咲いたバラは一瞬で花弁を散らした。そして、散った花弁は爆発する。

 

「ぬぅ!」

 

 近距離の爆発によりオーディンの手からゴルトセイバーが飛んで行き、天井へと突き刺さる。オーディンの手からも白煙が上がっているが、頑丈さ故指が吹き飛んでいるということはなかった。

 武器を失ったオーディンをローズオルフェノクの手刀が狙う。突きが入る直前にオーディンは瞬間移動にて躱す。すると、ローズオルフェノクもすぐさま瞬間移動を行い、消えたオーディンを追跡。姿を現したところにすかさず攻撃を繰り出すが、一度不覚をとったオーディンはこれを防ぎ、二度目の不覚をとらない。

 オーディンの手が高速で動く。その反撃をローズオルフェノクもまた瞬間移動にて躱すが、ローズオルフェノクがやったようにオーディンもまたローズオルフェノクの移動先に出現し、再度攻撃を行う。

 それすらも瞬間移動にて回避するが、オーディンはそれを追う。

 羽根とバラが散り乱れる瞬間移動の繰り返しによる攻防が始まる。

 現れては消え、現れては消えの繰り返し。その度に攻撃と防御が入れ替わっていた。

 一度に移動する距離はそこまで長くは無いが、それを連続して行っているのであちこちにオーディンとローズオルフェノクがいる錯覚を覚える。

 同じ能力を持つ両者故に中々勝負のつかない状態となっていた。

 離れた場所で攻撃の隙を窺っているサイガもこうも瞬間移動を繰り返されては狙いを定められない。下手をすればローズオルフェノクを誤射してしまう可能性もある。

 

『全く……もう少し大人しくしてくれよ』

 

 どちらに向けて言ったのかは不明であるが、瞬間移動合戦に愚痴を零すサイガ。傍観者に成り下がっていることへの不満もあるようであった。

 そのとき、サイガは気付いた。ローズオルフェノクが戦いながら時折こちらへ視線を送っていることに。少なくとも助けてくれというメッセージではないことは分かる。村上という男はそんな軟なプライドの持ち主ではない。

 何かしら意図を以って視線を送っているのは分かる。しかし、それが何を意味するのか。部下としての真価が問われる場面でもあった。

 ローズオルフェノクがバラの花弁を残して瞬間移動をする。瞬間移動の直後にローズオルフェノクはサイガを見た。ローズオルフェノクの正面に追って来たオーディンが出現し、その場で素早い貫手と手刀の応酬が始まる。

 

『──そういうことか、ボス』

 

 今の動きでローズオルフェノクの視線の意図を察したサイガ。そうなるとサイガはやるべきことは一つ。

 フライングアタッカーをブースターライフルモードから通常形態へと戻す。そして、ベルトに収まっているサイガフォンを開き、ENTERと描かれたボタンを押す。

 

『Exceed Charge』

 

 ベルトと繋がっている左右のラインに青い光が流し込まれる。青い光はラインを辿ってサイガの両手へ注ぎ込まれた。

 サイガの行動を見てローズオルフェノクもまた行動を起こす。

 オーディンの横薙ぎの手刀をローズオルフェノクは肩部に敢えて受ける。

 

「くっ」

 

 軽く呻くローズオルフェノク。正直、演技をするつもりであったがオーディンの攻撃が想像以上に重く、鋭いせいで演技ではなくなってしまった。改めてまともに相手にするべきではないと認識する。

 攻撃を受けた箇所を押さえながらローズオルフェノクは一瞬だけ視線を動かす。サイガはその動きを見逃さなかった。

 そして、ローズオルフェノクはオーディンと距離をとる為に瞬間移動を行う。すると、オーディンはすかさずローズオルフェノクの後を追って瞬間移動をする。

 ローズオルフェノクの移動した先にオーディンが転移したとき、待っていたかのようにサイガがフライングアタッカーに全速力を出させて突っ込んできた。

 

『貰ったよ!』

「ぬうっ!」

 

 瞬間移動後という無防備な状態で最大速度のサイガを避けることは出来ず、オーディンは苦し紛れで両腕を交差させ防御の構えをする。その上から叩き付けられるサイガの水平に揃えられた両拳。弾頭ミサイルの如き突進から生じる衝撃と青い閃光が炸裂。その際にサイガを示すΨの紋章が浮かび上がる。

 質量と速度とエネルギーが掛け合わせることで生まれる破壊力は、不意を衝かれたオーディンを殴り飛ばすには十分過ぎる程であった。

 ローズオルフェノクが移動した先にオーディンも現れる。前以ってサイガに見せていたおかげで絶妙なタイミングで命中させることが出来た。二人の連携による一撃でである。

 飛ばされるオーディンだったが空中で消え、別の場所へ現れたときには体勢を立て直していた。しかし、サイガの両拳──スカイインパクトを受けた腕は装甲がひしゃげ、そこから青い炎が立ち上っている。しかもそれだけはない。オーディンの体から粒子のようなものも発生している。

 

「──ここまでか」

 

 オーディンは時間切れを悟り、仕方なくゴルトバイザーを取り出す。そして、カードをそれに装填した。

 

『ADVENT』

 

 オーディンを逃がさない為に動くサイガとローズオルフェノクだったが、突如として室内が黄金の光によって満たされる。

 

「これは……!?」

 

 凄まじい光量の中で辛うじて目を開けたローズオルフェノクが見たのは、光の中に浮かび上がる不死鳥の輪郭。

 オーディンが呼び出したそれは翼を一度だけ羽ばたかせる。室内に竜巻のような風が巻き起こり、ローズオルフェノクとサイガは壁面へ叩き付けられた。

 黄金の光が消えるとオーディンもまた姿を消していた。捕らえるつもりであったがまんまと逃げられてしまった。

 

「……手強いね、彼」

「ええ。捕まえるとなると骨が折れそうです」

 

 ローズオルフェノクとサイガは人の姿へと戻る。

 オーディンを捕獲することが一番手っ取り早かったが、それでも得た情報も多い。

 

「神崎、ミラーワールド、この情報を使ってすぐさま調べさせます」

 

 スマートブレイン社の金と人と情報網を使えば集められない情報は無い。

 

「あれぇー? もう終わっちゃったんですかぁ? 社長? レオ君?」

 

 ボロボロになったレストラン内にスマートレディが戻って来る。いつの間に居なくなっていたのかレオすら気付かなかった。

 

「せっかく持って来たのにぃ。お姉さん、急いだのにぃ」

 

 不満そうに唇を尖らせるスマートレディ。その手にはアタッシュケースを持っていた。

 

「申し訳ない。相手が引き際を弁えていたようです。……ですが、寧ろ見せなかったのは都合が良かったかもしれませんね。相手の知らない手札は一枚でも多い方が良い」

 

 村上はスマートレディからアタッシュケースを受け取り、開く。中身を見たときレオは瞠目した。

 

「ボス……それって……!?」

「ああ、貴方は見るのは初めてでしたね」

 

 アタッシュケースに収まるのは黒と金に彩られたベルトと携帯電話。

 

「貴方の持つ『天のベルト』と対を為すもう一つの『地のベルト』──オーガです」

 

 

 




取り敢えずオーガは名前だけ出しました。本登場は次の機会に。
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