炎上する青炎を突き破るリュウガ。地面を転がった後に立ち上がり、体を軽く払う。外傷は見当たらず、この程度のダメージしか受けていないとアピールと挑発をする。
オーガはローブの右側面に付けられた鞘から剣を抜く。Cの形をした鍔に一対の短い金の刃が付けられた短剣。
オーガ唯一の専用武器であるオーガストランザー。
リュウガのドラグセイバーと比べると小さく頼りない武器に映るかもしれない。しかし、オーガは己が武器を堂々とリュウガへ突き付けた。
リュウガはオーガストランザーを突き付けられて初めて気付く。二つの刃の中央にある穴の存在に。
次の瞬間、金色の光弾がオーガストランザーから発射された。
「ふんっ!」
ドラグセイバーで斬り払うリュウガ。だが、すぐに後続の光弾が発射され、リュウガへ迫る。
リュウガはその場で立ち止まって光弾を斬り払うのではなく前進しながらオーガの光弾を弾く。
臆せずに自ら距離を詰めてくるリュウガの動きに少し驚くオーガ。オーガストランザーから光弾を連射するがリュウガは人外としか言い様がない反応で払い、或いは回避し、命中しないコースと判断すれば構えることなく突き進んでくる。
もしかすれば最上級のオルフェノクに匹敵するような動きをするリュウガに、オーガはリュウガの存在を改めて脅威と認識し、ドライバーにセットされてあるオーガフォンを外す。
『Burst Mode』
二丁拳銃の構えで先程の倍以上の光弾を撃ち出す。
単発威力のオーガストランザーに加え、一トリガーで三連射するオーガフォン。
リュウガはオーガストランザーの光弾を横薙ぎのドラグセイバーで両断。振った反動を利用しての回し蹴りでオーガフォンの光弾を蹴り弾き、そこから後ろ回し蹴りに繋げて二発目の光弾もまた蹴りで弾き、三発目の光弾は最初に戻ってドラグセイバーで防いだ。
攻撃の数を増やしても対応してみせるリュウガの驚異的な動き。しかし、これはリュウガにとってもリスクのある行動であった。光弾を弾いたリュウガの足からは白煙が上がっている。触れたのは一瞬だったが、高出力のフォトンブラッドは例え一瞬であってもリュウガの装甲を溶かしていた。万が一、失敗をしていたら足が使い物にならなくなっていただろう。凄まじい胆力、というよりも自らの生に対する無頓着さが感じられた。
だが、オーガの攻撃──否、オーガたちの攻撃は終わっていない。
リュウガがオーガの攻撃を捌き切った段階でオルタナティブ・ゼロはスラッシュダガーから青炎は放った。二対一という数での有利を惜しみなく利用する。
再びリュウガが炎に呑まれる──
『GUARD VENT』
──かと思いきや、いつの間にか抜いていたカードをブラックドラグバイザーにセット。空から飛んで来たドラグシールド。しかも、一枚ではなく二枚。リュウガはそれを手に装備するのではなく追加装甲のように両肩へ装着。左肩を正面に突き出すことでオルタナティブ・ゼロの青炎を受ける。今度は事前に攻撃もされていないので青炎を完全に防いでいた。
『ADVENT』
攻撃を防ぎながらカードを装填。その効果により上空からドラグブラッカーが飛来してくる。
ドラグブラッカーは咆哮を上げるとオーガ目掛けて青黒い火球を吐き出す。
オーガはオーガストランザーの光弾で火球を撃ち落とすことを試みるが、光弾は火球を貫くだけで完全に打ち消すには至らず、オーガは転がるようにその場から離れる。
地面に命中した火球は地面を砕き、圧縮されていた炎が上へ伸び上がる。すると、突如としてその炎は固まり、揺らいだ形のまま個体のような状態になる。砕いた地面の破片などを取り込み、文字通り火柱となっていた。
固まった火柱に驚くオーガ。驚いている暇も与えないように火球を連射するドラグブラッカー。オーガは射線や範囲を読んで火球を回避し続ける。命中すれば焼かれるだけでなく炎の柱の中に閉じ込められてしまう。
ただ閉じ込められるのか、それとも閉じ込められて焼かれるのか。どちらにしろ火球を受けた段階でドラグブラッカーの餌食になるという末路は変わらない。
オーガはオーガフォンをドライバーに再装填し、オーガフォンにセットされてあるメモリーカード──ミッションメモリーをオーガストランザーの鍔部分に挿す。
『Ready』
オーガストランザーの短刃が金の輝きを放ちながら伸び、刀身を形成。瞬く間に先端が二つに分かれた長剣になる。ミッションメモリーを装填されたことでモードが切り替わったのである。
その間にもドラグブラッカーは火球を発射。オーガは長剣モードに切り替えたばかりのオーガストランザーを一閃。ドラグブラッカーの火球は真っ二つに裂け、オーガの両隣を通り過ぎて行き、オーガの背後で二つの火柱を上げる。
「流石ですね。上の上の切れ味です」
オーガストランザーの性能に惚れ惚れするオーガ。データでは分かっているが、実戦となると違ってくる。ましてや、オーガはその存在を秘匿されているので実戦データは乏しい。使ってみて初めて分かる。まさに帝王に相応しい一品であり、相手を冥府に誘う為の剣であると。
黄金刃の切っ先をドラグブラッカーへ向ける。ドラグブラッカーは唸り声を上げて威嚇はしてくるが不用意に近付く前はしない。オーガストランザーの切れ味を警戒していた。
ドラグブラッカーによりオーガとオルタナティブ・ゼロを引き離すことに成功したリュウガは、オルタナティブ・ゼロへ一気に接近する。
「はあっ!」
オルタナティブ・ゼロの頭部を真っ二つに断つ為に振り下ろされた斬撃。オルタナティブ・ゼロはスラッシュダガーの刀身で受け、前に踏み込んで押し返すと反撃でスラッシュダガーを払う。リュウガは上半身を捻り、肩のドラグシールドで防ぐとその体勢のまま横蹴りでオルタナティブ・ゼロの腹を蹴る。
「ぐうっ!」
外装を貫いて内臓まで届く衝撃。体の内側が圧迫される苦痛をオルタナティブ・ゼロは味わう。しかし、持ち前の精神力で苦痛を捻じ伏せてスラッシュダガーを振るうが、痛みで動きが鈍くなっていることでリュウガにはあっさりと躱されてしまう。
回避した直後に出されるリュウガの斬撃。オルタナティブ・ゼロは辛うじてこれを受けるが、すぐにリュウガは別方向から斬撃を繰り出す。
リュウガの苛烈な攻めに対してオルタナティブ・ゼロは防戦一方。だが、リュウガは攻撃を繰り返しながら違和感を覚えていた。
何度も攻撃しているがオルタナティブ・ゼロにリュウガの刃は届かない。技術ではリュウガが上回っている筈なのだが、紙一重ではあるがオルタナティブ・ゼロは防いでしまう。
リュウガはオルタナティブ・ゼロに得体の知れないもの感じながら、オルタナティブ・ゼロの脇腹を狙いドラグセイバーを振ろうとする。その瞬間、スラッシュダガーが動いて脇腹の前に持って来られる。リュウガは読まれたことに驚きながらも既に動き出している攻撃を止めることは出来なかった。
結果、リュウガの攻撃は防御される。攻め切れない違和感の正体が分かった。オルタナティブ・ゼロが何かしらの方法でリュウガの攻撃を読んでいる。
このまま接近戦で戦い続けるのは得策ではないと判断したリュウガは、押し当てているドラグセイバーの背に掌打を打ち込む。オルタナティブ・ゼロは掌打の威力に押されて大きく後退をさせられた。
オルタナティブ・ゼロが下がっている間にリュウガはドラグセイバーを左手に持ち替え、デッキからカードを抜いてブラックドラグバイザーに挿入する。
『STRIKE VENT』
リュウガの右手に装備されるドラグクロー。両肩には二枚のドラグシールド。左手にはドラグセイバー。完全武装となるリュウガ。そして、ドラグブラッカーの頭部を模したそれからは既に口から黒炎が漏れ出ている。
リュウガはオルタナティブ・ゼロに向かってドラグクローを突き出す。開かれたドラグクローの口から黒炎が放射された。
オルタナティブ・ゼロもまたスラッシュダガーを突き出す。青炎が先端から放たれる。
黒炎と青炎が互いを喰らい合うように衝突。衝突地点では膨大な熱が生じており、地面が溶解して気化が始まっている。
高熱は二人にも届いているが、両者とも目を離すはしない。リュウガは倒すべき敵としてオルタナティブ・ゼロを睨み、オルタナティブ・ゼロはリュウガの全てを見逃さないようにその複眼を逸らすことをしなかった。
◇
アビソドンはノイズのような鳴き声を上げ、サイガをその牙で嚙み砕く為に空中を泳いで突進してくる。
『おっと』
アビソドンを飛び越えて回避すると背中に銃撃を行う。数十発一気に撃ち込んでも表面に傷が入る程度。少々のダメージは入るがそれだけ。相手を倒すには至らない。
擦れ違う間際、アビソドンは尾ヒレを振り上げてサイガを攻撃する。鋭い切れ味を持っていそうな尾ヒレの叩き付けをサイガは巧みな操縦で躱す。
『ははっ! ……はっ?』
反転したサイガは思わず笑いを呑み込み、代わりに困惑の声を吐いてしまう。アビソドンの口部側面にあった二つのパーツが左右に展開。サメからシュモクザメへと変わっていた。そして、展開されたパーツには三連砲が備わっており計六個の砲門がサイガへと向けられている。
『わーお……』
サイガが思わず苦笑してしまったタイミングに合わせて砲撃。サイガはフライングアタッカーの噴射孔を咄嗟に操作し、真横へ移動。アビソドンの砲撃が空中で炎の花を咲かせる。
爆風による衝撃と音で揺さぶられるサイガ。仮面の下で表情を歪めるが、アビソドンは容赦なく砲撃を繰り返す。
『最近のサメは進んでいるねっ!』
皮肉を言いながらサイガは空中を疾走。アビソドンもそれを追い掛けながら砲撃する。
アビソドンに背後につかれ、そこから砲撃を浴びせられるサイガ。左右に或いは上下に移動しながら砲撃を避けるが、そのせいでアビソドンを中々引き離せない。
『鬱陶しいなぁ!』
すると、サイガはフライングアタッカーの噴射を止め、空中で急停止。それに対処出来なかったアビソドンはサイガを追い越してしまう。
さっきとは逆にアビソドンの背後を取ったサイガは、銃口にフォトンブラッドを溜めて一気に撃ち抜こうとする。
『うぐっ!』
引き金を引こうとした瞬間、サイガの腕に強い衝撃と痛みが生じる。何が起こったのかと原因を探るサイガ。すると、地面に向かって落下していくベノサーベルが見えた。サイガの視線は自然と地面の方へ向く。こちらを見上げている王蛇と目が合った。
それだけで何が起こったのかすぐに分かった。王蛇がベノサーベルを投げ付けて妨害したのだ。
「俺のことを忘れていたのかぁ? 吞気だなぁ」
仮面越しでもニヤニヤと笑っているのが分かる、そんな含みのある台詞であった。
思いも寄らない攻撃に空中で動きが止まってしまったサイガ。すると、アビソドンは口部パーツを収納。今度は頭部に折り畳まれていたアーミーナイフとノコギリを組み合わせた巨大刃を展開。シュモクザメからノコギリザメに変わる。
サイガ目掛けて巨大刃をギラつかせて突進してくるアビソドン。サイガはまだ動かない。
巨大刃がサイガを貫く──少なくともアビソドンはそうイメージしていた。だが、すぐにイメージと現実に齟齬があることに気付く。
サイガを貫いた筈の巨大刃から何の感触も重みも伝わって来ない。
それもその筈。貫いたと思っていたサイガは、アビソドンの真下へ潜り込んでいた。限界まで引き付けての紙一重での回避だった為、アビソドンが貫いたと思ったのはサイガの残像である。
『Ready』
サイガは操縦桿を片方抜き、トンファーエッジとするとスロットにミッションメモリーを挿す。
『Exceed Charge』
サイガフォンのボタンを押すことにでトンファーエッジにフォトンブラッドが充填され、コバルトブルーの輝きを発する。
『はあああああっ!』
サイガはアビソドンの顎下にトンファーエッジを突き刺す。アビソドンは耳障りな鳴き声を上げる。
フライングアタッカーの噴射孔から炎が噴かれ、トンファーエッジを突き刺したまま空中を加速。アビソドンは顎下から腹にかけてトンファーエッジで斬り裂かれた。
一際大きい鳴き声を上げてアビソドンが落下し、地面へ叩き付けられて横たわる。大きなダメージは与えたが、息の根を止めるにはまだ不十分であった。
サイガはトンファーエッジとミッションメモリーを元に戻し、今度こそアビソドンにトドメを刺そうとするが──
『ADVENT』
その音声がサイガの耳に届くと、何処からか飛翔してきた火の鳥がサイガへと襲い掛かってくる。
『ちっ!』
攻撃を中断して火の鳥の突撃を回避するサイガ。すると、避けた先に斧を持った鳥──ガルドストームが振り下ろしの一撃を放ってきた。これもまた回避するサイガ。二度あることは三度あると言わんばかりに鋭い爪を見せびらかしながらガルドミラージュが強襲してくる。
『しつこい!』
上昇することでこれも躱すサイガ。折角のトドメを刺す機会を奪われたサイガはブースターライフルの銃口を向けるが、アビソドンと違って小回りが利く飛び方をしており中々照準が定まらない。
「楽しいか?」
間近に聞こえて来た王蛇の声。そちらの方へ目を向けると王蛇がアビソドンの背に乗って空中まで来ている。
「もっと盛り上げてやる」
『FINAL VENT』
火の鳥──ガルドサンダーの許に集うガルドストームとガルドミラージュ。三角形の陣形を組んで飛翔する三匹。すると、ガルドサンダーが纏う火が風を受けて強まっていき、やがて後方の二匹も呑み込む。
火の色が赤から銀へと変わったとき、空には一つとなった巨大な火の鳥が羽ばたいていた。
「死ぬ前に聞いてやる」
倒したと思ったら数を増やしてサイガの前に立ち塞がる巨大ミラーモンスター。王蛇は特権を生かしてサイガをじわじわと追い込んでいく。
「どっちが好みだ?」
深淵の巨大サメと銀火の鳳凰が殺意を以って咆哮を上げた。
ガルドサンダーたちもアビソドンと同じ理由で合体させてみました。
名は暫定的にガルドバーン(ガルド+ズィルバーン・銀のドイツ語)で