RIDER VS ー異形たちの見る夢ー   作:K/K

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やり過ぎた描写があります。


禁忌の獣神

 建物が一瞬有り得ない程膨張する。内部で発生した風、エネルギーなど原因である。建物を固定する部品などが内側からの圧により弾け飛んで行く。やがて、限界まで達すると建物は内側から爆ぜた。

 内包されていたものが一気に解放され、凄まじいことになる。巨大な竜巻が倒壊した建物の破片を周囲にばら撒いたかと思えば、それに混じって黄土色の液体が広範囲に飛び散っていく。

 爆発音により建物の周辺に居た通行人や住民らは足を止めて、反射的に身を屈めてしまう。それから少し経って空から液体が落ちてきたことに気付く。

 雨かと一瞬考えたが、空は晴天であり雲一つ無い。間も無くして降ってきた液体が雨でないことを身を以って知ることとなる。

 

「う、うわあああああ! 腕がぁぁぁぁぁ!」

「痛い! 痛いぃぃぃ!」

「溶ける! 体が! 溶ける! 溶ける!」

「何よこれ!? 家が!?」

 

 飛び散ったベノヴァイパーの毒液にかかった一般人らが絶叫を上げ、パニックを起こす。人だけでなく住宅なども溶けているのでより一層混乱を煽る。

 人々が混乱の渦に叩き落される中で爆心地である建物跡では、我関せずという態度で喧騒を無視して睨み合う王蛇サバイブとエラスモテリウムオルフェノク。

 相手を殺すつもりで放った攻撃は、結果として痛み分けであった。

 王蛇サバイブの装甲の一部には罅が入り、ベノヴァイパーは片方の車輪を破壊されて横たわっている。エラスモテリウムオルフェノクも外装の半分が剥がれ落ち、残った部分も毒液により溶解させられている。

 しかし、かなり消耗している二人だが、戦意は全く衰えていない。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……はははっ!」

「ふぅ……ふぅ……ふぅ……害獣がっ!」

 

 王蛇サバイブは仮面の下で愉し気な笑みを浮かべ、エラスモテリウムオルフェノクは影に映し出される人間の姿が怒りのまま悪態を吐く。

 

「イライラが消える……やっぱり戦いは最高だな」

「一人で浸っていろ……!」

 

 エラスモテリウムオルフェノクは同意を示さない。戦うことを目的としている王蛇サバイブの頭の中身など心底理解出来なかった。

 

「そうやってお前は自分勝手に暴力をまき散らすのか……!?」

「それがどうした?」

 

 オルフェノクよりも精神が異形となっている王蛇サバイブにエラスモテリウムオルフェノクは嫌悪感しか覚えない。人の中で生まれたことが間違いとしか言えない怪物。

 

「スマートブレインの奴らはまだまだ楽しめるなぁ。お前の次は、あの白い奴だ。その次は村上って奴にするかぁ」

 

 王蛇サバイブにとっては戯れ程度の意味しかない話であったが、受け取るエラスモテリウムオルフェノクにとっては違った。

 

「……今、何て言った?」

「あぁ?」

 

 口調は静かなものであった。だが、エラスモテリウムオルフェノクの体からは火の粉のようにオルフェノクエネルギーが舞い始めている。抑制出来ない力が内から外へ零れ出ている。

 

「お前のところの社長を殺る。そう言っただけだ」

 

 王蛇サバイブはエラスモテリウムオルフェノクの変化に気付いて尚、敢えて逆鱗に触れた。わざとやる理由など一つしかない。その方がより戦いを愉しめそうだからだ。

 

「ふざ、けた、ことを……!」

 

 怒りが湧き過ぎて呂律が回らなくなっている。挑発程度の言葉で感情が昂り過ぎだと思われるかもしれないが、エラスモテリウムオルフェノクにとって村上の存在はそれ程までに崇高なもの。エラスモテリウムオルフェノク自身が盲目的に信奉していることもあった、彼女からすれば神に等しい。

 そんな神に等しい存在を殺すと宣う。しかも、下から数えた方が早い下賤で野蛮で獣と変わらない脱獄囚如きが。侮辱や唾を吐く行為を通り越している。

 エラスモテリウムオルフェノクの感情に呼応し、舞っていた火の粉は炎と変わり、更には天上を焼き尽くすような業火になる。王蛇サバイブのファイナルベントと衝突したとき以上のオルフェノクエネルギーを放出させている。

 

「ああああああああああっ!」

 

 蒼炎の業火の中でエラスモテリウムオルフェノクは声帯千切れんばかりに叫ぶ。すると、業火の中で彼女に変化が起こる。

 音を立てて体を膨張していく。二倍、三倍などという生温いものではない。瞬く間に十メートルを超えてもまだ大きくなり、最終的には体長十五メートルという巨体と化す。

 その大きさになると体を二本脚で支えられなくなり、手を地面に着いた四足の体勢になるが、手足もまた巨体を支えるのに相応しい太く逞しいものになる。

 エラスモテリウムオルフェノクの胸から下は膨張する過程で前へ突き出していき、大きな裂け目が幾つも出来る。更に膨れていく中で裂け目が大きく開く。最も大きな裂け目が開くと中には牙がずらり並ぶ。その裂け目は口となる。二番目に大きな裂け目が上下に開く。そこには灰色の眼球。左右に三対ずつ対称的に並ぶ。最も小さな裂け目が開くとそこから荒々しい呼気が聞こえる。その裂け目は鼻孔であった。

 新たに創り出される獣の顔。その獣の頭頂部にはエラスモテリウムオルフェノクと同じく太く長い角が生えている。その角に埋め込まれるように一体となっているエラスモテリウムオルフェノクの上半身。彼女の体そのものが角となっていた。

 オルフェノクの中には体の形態を変化させる能力を持つ者が居る。モチーフとなった動物の特徴を主に下半身に反映させ、馬がモチーフならば下半身が馬の四足に、鶴がモチーフならば翼と鳥足に変化させるなど。稀に姿そのものを全く別のものへ変えるオルフェノクも存在する。ただし、エラスモテリウムオルフェノクが変化した姿はその二つとは異なるものであった。

 オルフェノクの中には極限まで感情が昂ったとき、自身を次なる姿へ進化させるという現象がある。素質なのか、精神的な理由なのかまだ解明されていない。それ程までに症例の少ない現象で、その時が来るまで変身者自身も分からない。

 激情態。そう名付けられたオルフェノクとして更なる進化を遂げた姿。エラスモテリウムオルフェノクは古代のサイ──エラスモテリウムをモチーフとしているが、激情態となったことでよりらしい姿へと変わった、或いは戻ったと表現すべきなのかもしれない。

 

「何が起きた……?」

 

 流石の王蛇サバイブも少々困惑する。ヒステリックに叫んだかと思えば見上げる程の巨体と変わった。王蛇サバイブもここまでデカい相手と対峙するのは初めての経験である。

 

「大した変わりようだな。──化粧でもしたのか?」

 

 小馬鹿にした冗談に返って来たのは獣の咆哮。

 激情態とは文字通り激情に何もかも支配された状態。人の頃にあった理性など激しい感情の渦にとっくに呑み込まれている。エラスモテリウムオルフェノク激情態の頭の中にあるのは王蛇サバイブを殺すという思考のみ。

 王蛇サバイブを獣と罵った彼女もまた獣同然に堕ちるのは皮肉としか言いようがない。

 エラスモテリウムオルフェノク激情態が王蛇サバイブに顔を向ける。すると、鼻孔から無数の針を飛ばす。

 一メートル前後はあり、人の指よりも太い針がマシンガンのように連続して撃ち出される。

 

「ふん!」

 

 王蛇サバイブはベノブレードを振るい纏めて一気に弾き飛ばすが、すぐさま後続の針が迫っていた。刃を返して同じように弾くが針の連射は止まらない。

 

「ちっ」

 

 王蛇サバイブは横方向へ走り出し、針を躱す。エラスモテリウムオルフェノク激情態は首を動かして王蛇サバイブを追いながら針を飛ばすが、王蛇サバイブの走る速度の方が速い。

 王蛇サバイブは走りながらベノブレードを振る。先端が伸び、エラスモテリウムオルフェノク激情態へ飛んで行く。歯牙に似た刃先がエラスモテリウムオルフェノク激情態の顔側面に当たった。しかし、傷一つ衝かない。体格だけでなく硬さも格段に上がっている。

 エラスモテリウムオルフェノク激情態は蚊に刺された程にも感じず、針を飛ばすのを止めて直接潰す選択に映る。

 トンは軽く超える巨体が、自動車を超える速度で走り出す。それだけで大地は割れ、地響きが起こる。

 見た目よりも俊敏な動きをするエラスモテリウムオルフェノク激情態に対し、王蛇サバイブは退くことはせず、ベノブレードを振り回して弾かれた刃先を動かし、柱のようなエラスモテリウムオルフェノク激情態の角に巻き付ける。そして、その状態から鞭の部分を収納。すると、王蛇サバイブは自らエラスモテリウムオルフェノク激情態の方へ飛んで行った。

 王蛇サバイブが巨大な角に激突する。しかし、最高速度に達する前であったので衝撃はある程度軽減出来た。王蛇サバイブは角にしがみついたまま視線を下ろす。エラスモテリウムオルフェノク激情態の角には本体が一体化している。王蛇サバイブの狙いはそこであった。

 だが、相手もまたそれを狙っているのに気付いており、王蛇サバイブを振り払う為に首を左右に動かす。

 

「ちっ!」

 

 しぶとくしがみつく王蛇サバイブはそれでも離れないと今度は上下の動きが加わった。エラスモテリウムオルフェノク激情態が跳び上がる度に地震に匹敵するような揺れがこの一帯を襲う。

 離れれば巨大な足で押し潰されることは目に見えているので、王蛇サバイブは巻き付けたベノブレードを緩めない。

 業を煮やしたのかエラスモテリウムオルフェノク激情態は獣の鳴き声と女性の悲鳴を掛け合わせたような声を上げると、角に王蛇サバイブを張り付けたまま走り出す。

 途端、凄まじい風圧が王蛇サバイブを襲う。しかし、エラスモテリウムオルフェノク激情態の狙いは風圧で王蛇サバイブを振り落とすことではない。

 走り続けるエラスモテリウムオルフェノク激情態は、そのまま近くにあった建物に頭から突っ込む。

 重機がスポーツカー以上の速度で突進したようなものであり、建物がエラスモテリウムオルフェノク激情態の大きさでくり抜かれる。当然、中に居た人々は助かることが出来ず、何が起こったのか分からないままエラスモテリウムオルフェノク激情態の足に踏み潰され、それを運良く免れた者も通り過ぎた後の建物の倒壊に巻き込まれて圧し潰される。

 オルフェノクの存在は人々に殆ど知られていない。知られれば何かと面倒が起きることが分かっているからだ。それ故にオルフェノクの姿を知られたとき、知ってしまった相手は大概がこの世から消されることとなる。

 

「な、何だありゃあ!?」

「怪物だぁぁぁ!」

「何だよ!? さっきから!?」

 

 衆目の前に自らを晒すというエラスモテリウムオルフェノク激情態の行為は愚行としか言いようがない。しかし、今の彼女の思考は王蛇サバイブを倒すことのみ。周りの目など全く気にしてない。八つの目があっても極端な程に狭い視界をしていた。

 酸の雨で阿鼻叫喚となっている所へエラスモテリウムオルフェノク激情態の暴走。惨劇が更なる地獄へと発展する。だが、エラスモテリウムオルフェノク激情態は感情のまま走り続け、建物を何件、何棟も破壊していく。

 

「く、ぐお……」

 

 王蛇サバイブも何度も建物に叩き付けられ、限界を迎えようとしていた。それでも持ち前の執念でしがみついていたが、エラスモテリウムオルフェノク激情態は突如急停止をする。

 

「うおっ!?」

 

 慣性により遂に角から手を離してしまった王蛇サバイブは吹っ飛ばされ、地面を跳ねて転がっていく。エラスモテリウムオルフェノク激情態は、激情に支配されながらも本能により最適な行動をとったのだ。

 ようやく鬱陶しく張り付いていた王蛇サバイブを落とすことが出来たエラスモテリウムオルフェノク激情態は、とどめを刺す為に後退し突進の威力を最大まで高めようとする。

 エラスモテリウムオルフェノク激情態がとどめを刺すことを考えているのと同じく王蛇サバイブもまた決着をここで付けることを決めた。

 

『UNITE VENT』

 

 ベノバイザーツバイに装填されるユナイトベントのカード。あの密閉された空間とは違い周囲には建物や家が並んでいる。鏡面に成り得るものは事足りる。

 最初に呼び出されたのはベノヴァイパー。かなり消耗しているがユナイトベントの強制効果で召喚された。続いてエビルダイバーとメタルゲラスが民家の鏡から飛び出してくる。

 これでジェノサイダーに必要な数は揃ったが、王蛇サバイブはそこで止まらない。今ならば行けるという確信が王蛇サバイブにはあった。

 エラスモテリウムオルフェノク激情態の近くにあったガラスから飛び出るブーメランと十字手裏剣。投擲されたそれが目の付近に当たり、エラスモテリウムオルフェノク激情態は怯む。

 跳ね返ったそれをキャッチしたのは二体のミラーモンスター。ヤモリの特徴を持つゲルニュートとカミキリムシの特徴を持つゼノバイダー。

 怯んだエラスモテリウムオルフェノク激情態を追撃する複数の火球。放ったのはガルドサンダー、ガルドストーム、ガルドミラージュの三鳥。

 エラスモテリウムオルフェノク激情態の横顔を撃つ水流と砲撃。それを吐き出すのはアビスラッシャーとアビスハンマー。

 効いてはいないが度重なる攻撃に怒りが沸き立ったエラスモテリウムオルフェノク激情態は、纏めて粉砕しようと突撃を開始しようとするが、直前に現れた回転する三色の塊がぶつかったことで地団駄を踏む結果に終わる。

 赤、黒、黄の蜂の特性を持つバズスティンガーホーネット、ワスプ、ビーの三位一体の防御によるもの。

 これにより十三体のミラーモンスターがこの場に召喚される。そして、ユナイトベントの効果によりベノヴァイパーを中心にして一つに集い、融合する。

 集まったミラーモンスターたちが重なり合い、発光。そして、生み出された融合ミラーモンスターは筆舌に尽くし難い醜悪且つ冒涜的な姿をしていた。

 ベースとなっているのは三体融合のジェノサイダーだが、背部にガルドサンダーたちの翼が追加されている。ただし、翼の配置は上下の位置も合っていない左右非対称で右と左で枚数も異なる。

 腹部にはゲルニュートとゼノバイダーが押し込められるように混ぜ合わされ、顔の形がそのまま残り、脇腹からは複腕として二体の手が生えていた。

 巨体となった体を支える為にメタルゲラスの両脚に溶け合わさって補強するアビスラッシャーとアビスハンマー。

 ジェノサイダーの右腕と一体化し、三位一体を示すかの如く螺旋状に融合して右腕そのものとなるバズスティンガーたち。

 倫理という言葉が虚しく聞こえる程に無秩序な融合を果たした姿。しかし、こうなるのも仕方のないこととも言える。

 まだまともな外見になるのはせいぜいミラーモンスター三体まで。ジェノサイダーが良い例である。内包する力は強いがベノスネーカーやメタルゲラスのように地を駆けることが出来ず、エビルダイバーのように空を飛べない。出来ることといえば固定砲台の役割がせいぜい。

 特色の違う生き物を混ぜるということはこういうことである。海最大の生物である鯨と陸最大の生物である象を融合させても最強の生物にはならない。海にも陸にも適さない生物が誕生するだけである。

 そして、この融合ミラーモンスターもまたそんな生物。継ぎ接ぎだらけのバランスの悪い体と自重のせいでその場から一歩も動くことは出来ない。

 まさに不完全な存在──になる筈だったのだが、それらを全て帳消しにするぐらいの途方も無い力をこの融合ミラーモンスターは内包している。

 それこそ神と呼ぶに相応しい力を。

 王蛇サバイブは不動の融合ミラーモンスターの足元でこの戦いを終わらせる最後の一枚をベノバイザーツバイへ入れた。

 

『FINAL VENT』

 

 獣帝ジェノサイダーを超える融合ミラーモンスター──獣神ジェノサバイバーは複数の声を合わせた鳴き声を上げながら天に顔を向け、口を開く。

 ジェノサバイバーの中で生成される未知なる物質。まだ名すら付けられていないその物質はジェノサバイバーの口内で集められ、拳大程の白い球体となる。

 エラスモテリウムオルフェノク激情態の本能が危険を察知し、行動を阻止する為に王蛇サバイブ諸共葬ろうと突進を開始するのだが──ジェノサバイバーの行動が完了するのが一歩早かった。

 白い球体がジェノサバイバーの口から飛び出す。一メートル程上がった瞬間、溜め込まれていた力が解放された。

 何が起こったのかエラスモテリウムオルフェノク激情態は理解出来なかっただろう。何故ならば力が解放されると同時に白い光がドーム状に広がり、エラスモテリウムオルフェノク激情態が白い光に触れると同時に塵一つ残さず消滅した。

 光の広がりはエラスモテリウムオルフェノク激情態を消しただけでは収まらず、半径数キロメートルまで広げられていく。この間、その範囲に入っているものは建物だろうと人だろうと跡形も無く消滅していく。

 後日、このことはニュースで大々的に報道されることとなる。死者は0人に対し行方不明者数千人を超える。それは死亡したと思われる人々の痕跡が何一つ残っていなかったからであった。

 




・獣神ジェノサバイバー AP15000~
十三体のミラーモンスターをユナイトベントで融合させることで誕生するミラーモンスター。戦闘能力は皆無ではあるが恐べき能力を秘めている。
十三体以上の融合も可能

・ファイナルベント『????????』 AP0000
ジェノサバイバーの体内で生成された未知の物質による攻撃。
広範囲に物質を広げ、触れたものを消滅させる。現状防ぐ手段は無いのでAPの数値化が出来ない。
これの真価はミラーワールド内で発揮される。
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