RIDER VS ー異形たちの見る夢ー   作:K/K

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暇な時間が出来たので早めの投稿です。


笑う蛇と不機嫌なΔ

「はぁっはー!」

 

 ベノサーベルを押し込みながら王蛇は歓喜の叫びを上げる。渾身の力を込めてもデルタの銃──デルタムーバーはその場に固定されたように動かない。これだけで相手が強敵なのが分かる。手応え皆無の雑魚の後に手応えのある敵が来たことで溜まっていたイライラが一気に解消されていく。

 

「ねぇ。どうして、そんなに面白そうに笑うのか教えてよぉ」

 

 デルタの声は王蛇とは対照的に平坦且つ無感情であった。殺し合いをしている最中なのに全く心が動いていない。王蛇とは異なる異常性を見せる。

 

「知りたいかぁ?」

「うん」

「ライダー同士の戦いは面白いからだっ!」

 

 ベノサーベルにもう一方の手を添え、全身を投げ出すような勢いでベノサーベルを振り抜く。

 

「おっと」

 

 その勢いに押されてデルタは数歩後退させられた。王蛇が距離を詰めようと駆け出す寸前、デルタムーバーから光弾が撃たれる。

 顔面目掛けて放たれた光弾をベノサーベルで防ぐが、反射的に足が止まってしまう。そこへすかさず避け難い胴体への光弾が数発来る。

 

「ははぁっ!」

 

 王蛇は後方へ宙返り、空中に居る間に光弾は通過。着地と同時にベノサーベルを構え、デルタはデルタムーバーのトリガーに指を掛けていたが命中しないと思ったのか、追撃は止めてしまった。

 

「いいぞ、お前の戦い方。奴と似ている」

「奴って誰?」

「俺を楽しませたりイラつかせたりする男だ」

「へぇ……」

「お前はどっちだ!?」

 

 デルタがこれといって興味が無い様子の相槌をした後、王蛇はデルタへ突っ込んでいく。

 足止めの光弾を連射させるデルタだが、殆どがベノサーベルによって防がれる。最後の一発は外れたが、王蛇の顔面スレスレを通っていったが王蛇は走るスピードを全く緩めなかった。

 普通なら立ち止まっていてもおかしくない筈だが、王蛇という男には恐怖の類のブレーキが無い。故に動き出した王蛇は簡単には止まらない。止まるときは自分が壊れるか相手が壊れるかのどちらかである。

 デルタも段々と王蛇の異常性を理解し始めていた。デルタの中の少年はそれほど長く生きて来ていないが、その短い人生の中でも王蛇の人格は類を見ないもの。

 少年を前にすれば大抵の相手は恐怖に屈服して命乞いをする。そういった連中を何の迷いも無しに灰にするのが少年だが、王蛇からは自分に向けての恐怖を一切感じない。

 少年にとって未知なる存在との邂逅は楽しく感じる。しかし──

 ベノサーベルの振り下ろしをデルタは一歩下がって回避。空振りしたベノサーベルが地面を勢い良く叩き割る間に二歩前に踏み出し、王蛇の顔を殴り付ける。

 

「はっはっ!」

 

 王蛇は殴られながらも膝でデルタの脇腹を突き上げて反撃。

 

「っつ」

 

 デルタは声を出すようなことはしなかったが、突き上げられた衝撃で短く息を吐き出させられる。だが、デルタもすかさずデルタムーバーの銃底で王蛇のこめかみ部分を殴り付けた。

 

「おあああっ!」

 

 ぐらりと頭が傾いた直後に咆哮を上げた王蛇の頭突きがデルタの額に打ち付けられる。なりふり構わない王蛇の戦い方は、デルタにとって慣れない戦いであり不意を衝かれる形で受けてしまった。

 デルタが後ろへよろめく。王蛇はベノサーベルを振り上げるが──

 

「ふん!」

 

 ──デルタは途中で足を止め、がら空きになっている王蛇の胴体に横蹴りを放つ。

 

「うっ!」

 

 防御が間に合わず蹴り飛ばされてしまう王蛇。地面を転がっていくが止まるとすぐにベノサーベルを突き立てて体を起こす。

 

「あぁ……いいな、お前。イライラが消えていく……!」

「へぇ……しぶといんだね。君、面白いけど……面白くないなぁ」

 

 デルタは自分が世界で一番強い、最強であると冗談ではなく本気で思っている。傲慢なまでの自信であるが過信ではない。事実、彼の周りではそれを否定する者はいなかった。最強故に中々楽しいこと、面白いことに巡り合えない。王蛇との戦いは楽しさと面白さを感じさせるものだが、王蛇の態度が気に入らない。自分と対等に、互角に戦っているということが気に入らない。

 彼の中では彼こそが最強。遊び相手は欲しいが、同じ目線の遊び相手は要らない。

 傲慢で幼稚、だが強い。それが少年の質の悪さでもあった。

 一方で王蛇の方は戦いを楽しんでいる。彼は戦うことを至上の娯楽としている。勝ち負けも気にしてない訳では無いが、それよりも戦うという過程が面白いのだ。

 

「そうかぁ? 俺は面白いぞ……? もっと面白くしてやる」

 

 王蛇はデッキからカードを抜き、蛇型の杖──ベノバイザーのスロットへ挿し込む。

 

『ADVENT』

 

 デルタはその音声の後に耳障りな音と何かの視線を感じる。直後に近くのガラスから巨大な紫の影が飛び出してきた。

 

「へぇ……大きいね」

 

 出現したのは巨大な紫のコブラ。ミラーモンスターの共通であるメタリックな外見を有し、左右に広がる楕円形の頭部側面からは四枚の刃が対称的に生えている。

 王蛇と契約しているミラーモンスターであり、彼のライダーとしての力の根源であるベノスネーカーは赤く、長い舌を伸ばしながら風が鋭く抜けていくような鳴き声を上げて威嚇。

 デルタも威嚇するようにデルタムーバーの銃口をベノスネーカーに向けた。ベノスネーカーはデルタの行動に即座に反応し、口から黄緑色の液体を吐き出す。

 黄緑色の飛沫。蛇が吐いてくる液体など悪いイメージしかなかったのでデルタはその場から後ろへ跳躍する。デルタが立っていた地面に液体が付着。すると、煙を上げて地面が溶け出す。強力な融解性を持つ毒液であった。

 

「汚いなぁ」

 

 毒液の融解性よりも吐かれたものを掛けられそうになったことに嫌悪を示すデルタ。お返しの光弾をベノスネーカーへとお見舞い。長い胴体や頭に着弾し、ベノスネーカーは出て来たガラスの中へ逃げ込む。

 あっさりと退散したことに拍子抜けするデルタであったが、王蛇が余裕のある態度でこちらを見ていることに気付いた。その直後にデルタの傍にあったガラスからベノスネーカーの金色の尾先が飛び出し、デルタを鞭のように打つ。

 

「うっ!」

 

 油断していたデルタだが、持ち前の反射神経で咄嗟に防御。ダメージは軽減出来たが、殴り飛ばされて壁を突き破って廃工場の中へ入ってしまう。

 

「痛いなぁ」

 

 体に付いた埃を払いながらデルタは立ち上がる。台詞とは裏腹に全くダメージがあるように見えなかった。

 ベノスネーカーは入って来ない。否──デルタの耳には未だにあの不快な音が鳴り続けている。

 視界を動かす。廃工場に張られたガラス窓、或いは金属などの反射物。その中にベノスネーカーは存在した。

 デルタは知らないが、ミラーモンスターは現実世界には存在出来ない。ミラーモンスターはミラーワールドでのみ生きることを許された怪物故。ミラーワールドの外に出られるのも極めて短い時間である。

 だが、逆にそれが奇襲性を高める。ベノスネーカーはミラーワールドの中からデルタの隙を伺い続けている。

 デルタも流石に鏡の中のベノスネーカーは撃てない。

 

「面倒くさいなぁ……」

 

 攻撃出来ないことに強いストレスを覚えるデルタ。それを挑発するように王蛇が高笑いをしながら廃工場内へ入って来た。

 

「楽しんでるか……?」

「全然」

「そうかぁ。なら、もっと盛り上げてやる」

 

 すると、新たなカードをベノバイザーへセット。

 

『ADVENT』

 

 窓ガラスからベノスネーカーとは違う紅色に緑の目を持ったエイが飛び出し、刃のような体でデルタに体当たりを仕掛けて来る。

 身を屈めて回避するデルタ。エイは反射物の中へ潜行する。

 

「まだいるのぉ?」

 

 紅のエイ──エビルダイバーの追加にデルタはウンザリした様子で言う。

 そんな彼に王蛇は手の中のカードをひらひらと見せる。

 

「もう一枚あるぞ?」

『ADVENT』

 

 荒々しい鳴き声と共にデルタへ突撃してきたのは二足歩行のサイに似たミラーモンスター。鼻先からは槍のような角、甲冑のような皮膚が頭部や胴体、手足を覆っている。

 横から不意打ちのように出現したので逃げ遅れたデルタはサイのミラーモンスター──メタルゲラスは鉤爪の生えた両腕で掴まえたデルタの胴体を締め上げる。

 本来ミラーモンスターはライダー一人につき一体である。しかし、王蛇は例外として三体のミラーモンスターと契約していた。

 メタルゲラスとエビルダイバーは元々王蛇の契約モンスターではない。彼が倒したライダーの契約モンスターであり、契約者を倒されて復讐に燃えるミラーモンスターをカードの力で再契約したことで奪ったのだ。

 この二体のミラーモンスターは王蛇の無慈悲さと強さを兼ね合わせた象徴である。

 

「はははは! どうする?」

 

 捕らえられたデルタに王蛇が試すように言う。鏡面ではベノスネーカーが這い回り、エビルダイバーが飛翔しながら待機をしていた。

 デルタは締め上げられながらデルタムーバーのグリップを口許に寄せる。

 

3821(スリーエイトトゥーワン)

『Jet Sliger Come Closer』

 

 番号を音声入力した後、デルタムーバーの銃口をメタルゲラスの目付近に押し当てた。

 

「調子に乗るなよ」

 

 冷たく言い放つと同時に引き金を引く。光弾が零距離で炸裂し、厚い装甲を持つメタルゲラスも怯んでデルタを放してしまう。

 その瞬間、壁を突き破って巨大な何かが突っ込んで来た。

 

「何だ?」

 

 王蛇が見ている前でそれはデルタに添うようにしてUターン。巨体でメタルゲラスを撥ね飛ばしながら停止する。

 停まったそれを最も近い表現をするのならばバイクであった。ただし、車体は既存のバイクの数倍あり、前輪と後輪も一回り以上大きい。車体の側面に噴射孔が設けられており、後部には戦闘機を思わせるようなブースターが装備され、乗り物よりも兵器に近いかもしれない。

 デルタは呼び出したそれに搭乗する。先程の番号はこれを呼び出す為のものであった。彼というよりもデルタの為に用意されたアタッキングビークル、その名はジェットスライガー。

 

「ほぉ……面白そうな玩具だな」

 

 ジェットスライガーの造形に興味を惹かれる王蛇。もしかしたら、自分も乗ってみて戦いたいと思っているのかもしれない。

 

「あげないよ」

「なら奪えばいい」

 

 天井付近の窓ガラスからベノスネーカーが頭を出し、毒液を吐きかける。

 デルタはグリップ式になっている一対の操作レバーを捻る。前輪と後輪のタイヤが九十度向きを変えると共に車体側面の噴射孔が火を噴く。

 ホバー移動により毒液を回避すると移動した先を狙ったエビルダイバーが突っ込んで来る。今度は後部のノズルを噴射させて急加速し、一瞬でエビルダイバーを突き放した。

 急旋回して王蛇を視界に収めるデルタ。すると、進路上にメタルゲラスが立ち塞がる。ジェットスライガーに撥ねられたことで怒り心頭という様子で両腕を何度も開閉していた。

 

「単純だなぁ」

 

 その様子に呆れたデルタはジェットスライガーを動かし、望み通りと言わんばかりに真正面からメタルゲラスへ挑む。

 メタルゲラスは両腕でジェットスライガーのフロントカウルを掴み、抑え込む。ジリジリとメタルゲラスの足は後ろへ下がっていくが、ジェットスライガーの力にほぼ拮抗してみせた。

 

「ご苦労様」

 

 力勝負に興味の無いデルタは、デルタムーバーでメタルゲラスの顔面を撃った。射撃の衝撃により力が緩み、メタルゲラスは再び撥ねられる。

 足元まで転がって来たメタルゲラスを王蛇は無慈悲に蹴飛ばして前に出る。

 

「本当に楽しいなぁ。ライダーの戦いってのは!」

 

 王蛇は心底楽し気な様子でデッキからカードを抜く。

 

「これを使えば、もっと楽しくなるかぁ?」

 

 ベノバイザーにセットされたカードが、その効果を告げた。

 

『UNITE VENT』

 

 ベノスネーカー、エビルダイバー、メタルゲラスが一箇所に集い、光を放つ。光は一つとなって異形の怪物が誕生した。

 胴体はメタルゲラスだが、首から上はベノスネーカー。尾もまたベノスネーカーのものとなっている。ベノスネーカーの頭部はメタルゲラスの頭部と合体しており、顔の上半分はメタルゲラスのものとなっている。エビルダイバーは背中に張り付き、ヒレの部分を変形させて両翼となっていた。

 三体のミラーモンスターを文字通り融合(ユナイト)させたキメラ。複数のミラーモンスターを使役している王蛇だからこそ使える特権──獣帝ジェノサイダー。

 

「うわぁ……気持ち悪いなぁ……」

 

 彼には珍しく素直な嫌悪を吐く。異なる生物が無理矢理一つにされた様に本能的な忌避を抱いていた。

 

「気持ち悪いから……消しちゃお」

 

 デルタはジェットスライガーの操縦席でパネルを操作する。すると、フロントカウルが左右に展開する。展開されたそれは発射装置となっており大量の小型ミサイルが設置されていた。

 

「愉快な玩具だなぁ」

 

 大量のミサイルに狙われている状況でも王蛇は笑う。同時に大量の火器を使うことで、やはりデルタは例の人物と似ていると再認識する。

 

『ADVENT』

 

 ジェノサイダーのアドベントカードをベノバイザーへセット。ミラーモンスターを召喚する効果のカードを既に召喚されているジェノサイダーに使用するのは無意味に思えるかもしれないが、これにより王蛇が許可しない限りジェノサイダーはミラーワールドへ帰れず現実世界に召喚され続ける。

 

「バイバイ」

「やれ」

 

 ジェットスライガーからミサイルが一斉発射。ジェノサイダーは毒液ではなく半透明のエネルギー波を吐き出す。

 ミサイルとエネルギー波が接触したとき、異なる力が混ざり合って大爆発を引き起こす。

 結果、廃工場の天井は突き破られ、空に向かって巨大な火柱が上がった。

 




初戦から大盤振る舞いしてみました。
次はどんな戦いになるのかお楽しみに。
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