RIDER VS ー異形たちの見る夢ー   作:K/K

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13ALTERNATIVE RIDERS

 十二のガトリングガンが目に入った瞬間、リュウガは即座に上半身を捻って肩を前に出す。そして、しゃがみ込んで体がドラグシールドの裏側になるべく入るようにした。

 次の時にサイコローダーⅡ・タイプAたちがガトリングガンを一斉発射する。

 轟音と化す発砲音。雨という比喩すら生温い数の弾がリュウガへと浴びせられる。

 ドラグシールドでガードし尚且つ被弾面積を最小まで抑え込むが、相手の弾数は桁違いであり僅かにはみ出ている腕や脚などに弾が掠めていく。

 更に被弾のときの衝撃はかなりのものであり、ドラグシールドが弾かれないように注意しながらリュウガは防御に徹する。

 外れた弾が地面に当たり、削る。瞬く間にリュウガの周囲が抉られていく。

 鼓膜が麻痺しそうになるぐらいの大音量の中、リュウガは発砲音に異音が混じっていることに気付く。同時に若干だが盾に伝わる圧が弱まったように感じた。

 常人ならば気付くことも出来ないが、戦闘に長けたリュウガは微かな変化も見逃さないし、聞き洩らさない。そのすぐ後に何故かガトリングガンの一斉発射が止まる。

 不自然に思い、被弾を覚悟でリュウガは盾から顔を出す。相変わらずサイコローグⅡ・タイプAは一列に並んでいるが、数えて見ると一体足りない。

 ハッとしリュウガは反射的に視線を上げた。居なくなっていたサイコローグⅡ・タイプAが背中に折り畳んでいた後輪を水平にし、それをファンとして回転させることでフライトユニットとして空中に浮かんでいる。

 サイコローグⅡ・タイプAはリュウガを見下ろすと顔面に開いた穴から小型のミサイルを連続して発射。破壊力未知数の小型ミサイルがリュウガへ複数飛来する。

 ガトリングガンの発射を止めた理由をリュウガは理解した。命中する前に小型ミサイルを撃ち抜く可能性があったからだ。

 リュウガが小型ミサイルの発射を確認すると同時に移った行動は、回避ではなかった。ドラグセイバーの鍔元をドラグクローで嚙ませる。鞘に納めたような状態からリュウガはドラグセイバーを一気に引き抜いた。

 引き抜く過程でドラグクローが吐く黒炎が刀身に宿り、黒く燃えるドラグセイバーをそのまま振り抜く。

 弧状の幅広い黒炎が斬撃の勢いに乗って飛ばされる。黒炎の斬撃は小型ミサイルらに接触するとそれらを真っ二つに裂く。直後に小型ミサイルは爆発。他の小型ミサイルも爆発に巻き込まれて誘爆を引き起こした。

 爆煙によりリュウガの姿が覆い隠される。サイコローグⅡ・タイプAらはガトリングガンを構えるが、対象を視認出来ないので発砲しない。

 そのとき、空から咆哮が聞こえる。サイコローグⅡ・タイプAたちは視線を同時に上げた。空から飛来するはドラグブラッカー。サイコローグⅡ・タイプAたちに向けて黒い火球を連続して放つ。

 あるサイコローグⅡ・タイプAは空に逃げ、あるサイコローグⅡ・タイプAは走ってその場から離脱。直後に着弾し黒い火柱が出来る。ドラグブラッカーの強襲によりサイコローグⅡ・タイプAらは分断された。

 駆け付けたドラグブラッカー。リュウガはアドベントのカードを使用していない。契約者の危機を察知して自らの意思でやって来た。契約者であるリュウガとは一蓮托生の関係。リュウガの死は己の死へと繋がる。故にカードの効果で無くともドラグブラッカーはやって来る。

 爆煙の中で半身とも言える己の契約モンスターの咆哮をリュウガは聞いた。ドラグブラッカーがオルタナティブたちを引っ掻き回してくれておかげで、形勢逆転とまでは行かないが戦況はリュウガにやや傾く──と思っていた。

 次の瞬間、煙を突き破った黒い拳がリュウガの顔面へ迫る。

 スラッシュダガーではなく素手による攻撃にリュウガは一瞬動揺し、回避が遅れてしまう。

 

「っ!?」

 

 仕方なくリュウガは、咄嗟にドラグセイバーの側面で拳を受けるが、痺れるような衝撃が手に伝わってきた。重い拳。スラッシュダガーなどの武器を受けたときと殆ど変わらない。

 リュウガは受けていた拳を押し返し、反撃の袈裟切りを繰り出す。煙を裂くドラグセイバーの斬撃。しかし、相手を斬った手応えは無かった。

 今の一撃で煙が晴れる。視界を取り戻したリュウガは自らの状況を確認する。

 リュウガの危機に駆け付けたドラグブラッカーはサイコローグⅡ・タイプA相手に手古摺っている。複数体のサイコローグⅡ・タイプAは遠距離から銃撃やミサイルなどで攻撃をしては引くヒットアンドアウェイの戦い方を徹底しているので、ドラグブラッカーがサイコローグⅡ・タイプAの一体を狙うと他のサイコローグⅡ・タイプAらの集中砲火を浴びせられるので積極的な攻撃が出来ず翻弄されている。

 ドラグブラッカーの援護を今は期待出来ないと判断し、リュウガは目の前のオルタナティブたちに意識を集中させる。

 リュウガの四、五メートル前に立つ三人のオルタナティブ。他のオルタナティブたちと比べると明らかに体格が良い。

 リュウガはその三人を見て正気を疑う。三人とも共通して武器を持っていない。素手の状態でリュウガの前に立っているのだ。

 無謀か、余程の自信があるのかのどちらかである。

 リュウガは三人のオルタナティブたちの背後を見た。オルタナティブ・ゼロと残りのオルタナティブらがスラッシュダガーを構えて待機している。武器を持っている者たちが後方、前に居る三人の近接戦を信頼している様子。

 リュウガの意識が三人のオルタナティブたちから少し離れたときであった。三人の内の一人が前に出る。その踏み込みの速さは尋常ではなく、一足でリュウガとの距離を詰めたことで瞬間移動でもしたかのように見える。

 額の高さまで持ち上げていた左拳が消える。リュウガは反射的に首を傾ける。頬を掠めていく衝撃。触れて初めて殴ってきたことを認識する。

 

(速い……!)

 

 リュウガも驚く拳の速さ。明らかに何か格闘技を学んでいる者の動き。

 シッという短く鋭い呼気と共に連続して繰り出される左の連打。直線という最短を最速で放たれる。一発、二発は辛うじて回避出来たが三発目が頬に命中する。

 

(この動き……! ボクシングか!)

 

 左ジャブを受け、相手がボクサーであると確信したリュウガ。ボクシングを使う三番目に選ばれたオルタナティブ・ツーは、再び左ジャブを出そうとする。

 相手の動きを先読みし、リュウガは先手でドラグセイバーを振り下ろす。だが、オルタナティブ・ツーはそこから一歩踏み込んでリュウガの腕を肩で受けたことでドラグセイバーの刃を届かせない。

 

「シッ!」

 

 上半身を全て連動させ、そこから生み出されるエネルギーを右手に込め、密着状態から右フックをリュウガの脇腹へ捻じ込む。

 鋭く突き抜けていくのではなく重く残る衝撃にリュウガの動きが止まる。オルタナティブ・ツーはそこから追撃するのではなく、何を思ったのかしゃがみ込んだ。

 背後からオルタナティブ・ツーの頭上を通過する影。リュウガは反射的に両腕を前方でL字に曲げて防御を固める。

 リュウガの両腕に叩き付けられた影、それは足。オルタナティブ・ツーの背後に立つ七人目オルタナティブ・セブンが放った上段回し蹴り。

 内まで染み込む衝撃と共にリュウガは蹴り飛ばされ、空中を五メートル以上飛ぶ。

 鍛錬を重ねた者のみが繰り出すことが可能とする重い蹴り。空中を飛びながらリュウガはオルタナティブ・セブンの動きは空手を習っている者の動きだと判断する。

 一、二秒間の空中浮遊を終えたリュウガの足が地面に着く。曲げていた腕がリュウガの意思とは無関係に下がる。オルタナティブ・セブンの蹴りの威力を物語っていた。

 大きく後退させられたリュウガ。だが、相手の追撃の手は緩まない。

 横から伸びてきた大きな手がリュウガの胸元を掴み、引き寄せる。

 リュウガを掴んでいるのは、オルタナティブたちの中で最も大柄の者。

 リュウガは引き剥がす為にドラグクローで突き、ドラグセイバーで斬り付けるが相手はそれを意に介していない。

 大柄のオルタナティブ──十人目であるオルタナティブ・テンはリュウガの右腕を両手で掴みながら素早く反転。同時にリュウガの足を払って彼の体幹を崩す。

 オルタナティブ・テンの動きは柔道のもの。リュウガを地面に叩き付けるつもりである。

 リュウガすら抗うことが出来ない力。このままでは投げられると思った彼は、止むを得ず右手のドラグクローを外す。

 ドラグクローが外れたことで、それを掴んでいたオルタナティブ・テンの片手も抜けて掴みが緩くなる。その間に右腕を引き抜き、オルタナティブ・テンの背中を強く突くことで投げから抜け出した。

 次の瞬間、リュウガは側面から強烈な一撃を受ける。それを入れたのは六人目であるオルタナティブ・シックス。

 オルタナティブ・シックスは跨っているバイク形態のサイコローグⅡ・タイプAの後輪でリュウガを殴っていた。モトクロス選手という肩書き持つ彼はバイクを体の一部のように操ることが出来る。

 リュウガの顔面に密着した後輪が高速で回転。仮面の装甲を削り火花が散る。そのままバイクを巧みに操り、リュウガを殴り抜く。

 顔面に数百キロの重さの物体を叩き付けられたことで、流石のリュウガも意識が飛び掛ける。

 リュウガにとっては危機的状況。裏を返せばオルタナティブ・ゼロたちにとってこれ以上無い程の好機であった。

 

『ACCELE VENT』

 

 多重に鳴り響くスラッシュバイザーの音声。この瞬間を狙って待機していたオルタナティブ・ゼロたちは姿を捉えきれない黒い影となって四方八方からリュウガに襲い掛かる。

 乱れ斬るスラッシュダガー。リュウガの全身を切り刻んでいく。両肩に装着されたドラグシールドの接合部を狙われ、ドラグシールドがリュウガから離れて行く。左腕を斬り付けられたことで手からドラグセイバーが抜け落ちる。背中を斬られ、前のめりになるが胸を斬られ、無理矢理姿勢を正されるが、次の瞬間には膝裏を斬られて立つことすらままならなくなる。

 一人に対して徹底した集中攻撃。リュウガの全身に深い傷が刻まれていく。

 リュウガの危機にドラグブラッカーは黒炎を乱れ吐き、纏わりついているサイコローグⅡ・タイプAらと離そうとする。しかし、大雑把な攻撃は反って隙を生むだけであり、黒炎を回避したサイコローグⅡ・タイプAたちはガトリングガンと小型ミサイルによる一斉発射でドラグブラッカーを集中砲火。

 身を捩って苦しんでいる所へ飛び込んできたサイコローグの拳がドラグブラッカーの顔面を捉え、空中から叩き落す。

 リュウガが倒れ伏すのとドラグブラッカーが地面に落ちるのはほぼ同じタイミングであった。

 

「ぐっ……」

 

 うつ伏せになって倒れているリュウガが呻く。オルタナティブ・ゼロたちによる連続攻撃を受けてもまだ意識は保たれている。だが、ダメージの方は深刻であった。

 

(これほどとは……!)

 

 オルタナティブ・ゼロの性能は知っていた。量産されたオルタナティブの性能も大体予想がつく。しかし、数の差はあるとはいえここまで圧倒されるとはリュウガにとって信じ難いことである。

 他のオルタナティブたちの変身者が長けた能力の持ち主であった為に追い詰められてしまった。

 何処でどうやって見つけたのか、オルフェノクたちにより目となっていたミラーモンスターたちを潰されていたリュウガにとって彼らの情報は全く無い。

 オルタナティブ・ゼロは他のオルタナティブたちを一旦後退させる。

 ここまでは上出来と言うしかない。全ての要素が上手く嚙み合っていた。量産したオルタナティブの性能は満足出来るものだが、それよりも変身者たちの技能が優れている。

 オルタナティブを量産する一方で香川が密かに仲村へ命じていたのはオルタナティブの変身者の確保であった。当初は清明院大学の中で候補者を探そうとしていたが、スマートブレインのバックアップを得られたのでより優れた人材を探す為に大学の外まで候補を広げた。

 選ぶ上で決められた条件は一つ。親しい者をミラーモンスターによって奪われた、というもの。

 ミラーワールドを閉じるということは苦しい戦いが待っている。その戦いを途中で投げ出さない信念、執念を持つ者が必要である。例えそれが復讐心であったとしても。

 そんな者たちを探すと簡単に見つかった。香川が憤りを覚えるぐらいにあっさりと。

 家族が理由なく謎の失踪をしてしまった者。恋人が行方不明になった者。恩師や恩人が鏡の中へ消えたのを目撃してしまった者など。

 傍から見れば事件性はあるかもしれないという失踪。ミラーモンスターを目撃しても信じて貰えなかったということもある。彼らは心に喪失感を抱えたまま死んだように日々を過ごしていた。仲村が齎す真実を知るその日まで。

 この場に居るオルタナティブたち全員が復讐者。ミラーワールドとミラーモンスターに大切な者を奪われた者たち。

 因果応報。全ては神崎士郎が撒いた種が芽吹いた結果。彼は自分が行った罪により罰を下されようとしている。

 しかし、事は全て思った通りには進まない。相手はリュウガ。罪を罪と思わない神崎士郎の代行者である。

 

「うっ……うぅ……!」

 

 リュウガの呻きが唸りへと変わり始める。リュウガが自分という存在を認識してから今に至るまで経験したことがなかった屈辱、焦燥、敗北感。

 心の底から湧き上がる渇望。オルタナティブ・ゼロたちに勝ちたいという暗い熱意と殺意。

 

「うぅぅぅ! あぁぁぁぁ!」

 

 傷だらけの体でリュウガは立ち上がる。オルタナティブ・ゼロたちはすぐに彼を攻撃しようとしたが、突然噴き上がる黒い炎によりそれを阻まれる。

 

「これは……!?」

 

 オルタナティブ・ゼロも初めて見る現象。黒い炎はリュウガを守るように彼の周囲で燃え上がっている。

 リュウガはデッキからサバイブ烈火のカードを引き抜く。カードに描かれている黒い炎は今まで以上に激しく燃えており、リュウガの心情を表しているかのようであった。

 

『SURVIVE』

 

 進化したブラックドラグバイザーツバイにサバイブ烈火のカードが装填され、黒い炎の中心でリュウガの姿がリュウガサバイブへと強化される。

 ただ一点以前のサバイブ形態と違う点があった。リュウガサバイブの体の各部から黒い炎が噴き出しているのである。まるで彼の心とシンクロしたかのように憤怒と殺意の黒炎が尽きぬことなく噴き続ける。

 

「──殺す」

 

 使命も役目も全て忘却し、ただオルタナティブ・ゼロたちを殺すことのみ殺意を燃やす。

 




本編では書くことの無い各オルタナティブの設定です。

オルタナティブ・ゼロ 香川

オルタナティブ・ワン 仲村

オルタナティブ・ツー 二十代の男性、プロボクサー。長年支えてくれた恋人をミラーモンスターに食われたことへの復讐

オルタナティブ・スリー 三十代の男性、警察官。同僚をミラーモンスターに食われたことへの復讐。

オルタナティブ・フォー 十代の男性、大学生。弟をミラーモンスターに食われたことへの復讐。

オルタナティブ・ファイブ 二十代の男性、大学生。父と母をミラーモンスターに食われたことへの復讐

オルタナティブ・シックス 二十代の男性、モトクロスレーサー。恩師をミラーモンスターに食われたことへの復讐。

オルタナティブ・セブン 四十代の男性、空手家。妻子をミラーモンスターに食われたことへの復讐。

オルタナティブ・エイト 三十代の男性、土木作業員。子供をミラーモンスターに食われたことへの復讐。

オルタナティブ・ナイン 二十の男性、元自衛隊員。兄をミラーモンスターに食われたことへの復讐。

オルタナティブ・テン 四十代の男性、柔道家。教え子五人をミラーモンスターに食われたことへの復讐。

オルタナティブ・イレブン 二十代の男性、消防士。祖父母、父、母、弟、姉をミラーモンスターに食われたことへの復讐。

オルタナティブ・トゥエルブ 二十代の女性、体操選手。双子の妹をミラーモンスターに食われたことへの復讐。

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