RIDER VS ー異形たちの見る夢ー   作:K/K

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大神対帝王

 オーガストランザーから繰り出される光の斬撃──オーガストラッシュは、エネルギーであるフォトンブラッドが供給され続ける限り理論上は無限に射程を伸ばせる。伸ばせるのは刃の長さだけでなく刃の幅も対象となっており、縦にも横にも広がったオーガストラッシュはオーディンの視点からすれば壁そのもの。

 攻撃の為に放った黄金の羽根はオーガストラッシュに直接触れる手前で蒸発している。フォトンブラッドは出力により色を変える性質を持つ。金はその中で最上である。質も量も最高でありオーディンの小手先の攻撃など歯牙にもかけない。

 膨大なエネルギーと熱を放出しながらオーガはオーガストランザーを振り抜いた。あれだけ巨大な光の刃を生成してもオーガの腕に伝わる重みはオーガストランザーの分のみ。オーガからすれば羽毛を振るうに等しかった。

 オーガストラッシュが通り過ぎた後の屋上は、オーディンが立っていた場所のコンクリートは蒸発して無くなっており、下の階層が見えている。今の一振りで左右対称であったビルの一部が欠けてしまい非対称になってしまう。

 

「鏡像とはいえ自分の会社を傷付けるのは心が痛みますね」

 

 自分の野心と成功の象徴であるスマートブレイン本社を歪な形にしてしまったことに少々申し訳ない気持ちになってしまう。これが別の誰かだったのなら容赦無く消し去れるのだが、自分でやってしまっただけに行き場の無い気持ちが残ってしまう。

 ビルを犠牲にして薙ぎ払ったがオーガはオーディンを倒した、という手応えを感じていなかった。光に呑まれる姿を見たが、それでも倒したと思わないのはオルフェノクとしての直感が囁いているからである。

 オーガは屋上の縁に立ちすぐさま周囲を見渡す。オルフェノクの感覚に加えてオーガの視覚器官による機械のサポートがありとあらゆるものを見通す。

 

「──見つけましたよ」

 

 間もなくしてオーガはオーディンを発見。数百メートル先の別のビルの屋上に移動しており、見た目からして無傷。オーガストラッシュの光に消滅させられる前に瞬間移動で逃げ延びたと思われる。

 オーディンとはローズオルフェノクのときに瞬間移動による攻防を行っていたが、短い距離の転移の繰り返しであった。あの距離まで転移出来るのをオーガは初めて知る。ローズオルフェノクの形態でも数百メートル以上の瞬間移動は出来ない。

 ゴルトバイザーを持って佇むオーディン。数百メートル離れていてもオーディンとオーガは目が合う。

 

「かなり離れましたが……私にとってはゼロに等しい」

 

 オーガは再びオーガフォンを開いてボタンを押す。

 

『Exceed Charge』

 

 オーガストランザーに充填される金のフォトンブラッド。先端が二又となった光刃となる。今度は長さのみに重点を置き、光刃を伸ばす。オーガはその状態からオーガストランザーを振り上げた。

 

「ふんっ!」

 

 掲げていたオーガストランザーを振り下ろす。光刃の長さは一瞬にしてオーディンの立っているビルの屋上にまで届き、そのまま袈裟切りにする。

 オーガストラッシュの光刃は屋上付近から入り、ビルの中層辺りから斜めに抜けていく。数秒の間を置いた後に光刃抜けた箇所がズレ、袈裟切りにされたビルの上層部が地面へ滑り落ちていく。やがて、凄まじい轟音を鳴らして地面に落ち、膨大な粉塵を巻き上げる。

 ビルを一刀で斬り裂くが、オーガには紙を裂いた程度の手応えしかない。圧倒的な切れ味を見せつけるもののオーガは不満気な様子。

 

「──また逃げましたか」

 

 オーディンが瞬間移動をした感覚をオーガは感じ取っていた。どんなに凄まじい一撃であっても当たらなければ意味が無い。

 オーガはすぐにオーディンの居場所を探す。そして見つけた。先程のビルから少しは離れた場所にある別のビルの屋上に居た。

 オーガは発見と同時にオーガストランザーを振り、今度はオーディンの脳天目掛けてオーガストランザーを振り下ろした。

 数十メートル程の高さがあるビルの頂点から根本まで一振りで真っ二つとなるが、オーガはそこで止まらない。

 手首を返し、刃を横に向ける。そこからオーガストランザーを横薙ぎにし、視界に映る建物全てを光刃にて斬り倒す。

 現実世界ではまず出来ないビル群、建物群の薙ぎ倒し。ミラーワールドだからこそ出来る暴挙。建造物がひしめき合う凹凸の土地がオーガによって平たんに変えられていく。

 全てはオーディンの逃げ場所を奪う為である。

 何十という建造物が倒れたことで地震のような揺れが生じる。スマートブレイン本社にもその揺れは伝わっていた。

 

「綺麗になりましたね」

 

 まだ土煙が舞っているが、高いビルが粗方無くなったことで広がる空間を見て、オーガは一種の爽快感を覚えていた。

 しかし、それに浸る暇は無い。オーガの感覚が敵の接近を伝えている。

 振り向き様にオーガストランザーを一閃。その斬撃は甲高い金属を打ち鳴らす。

 オーガの背後に現れたオーディンは、オーガストランザーをゴルトセイバーで防いでいた。ゴルトセイバーは一対の双剣。オーガの攻撃を防ぎながらもう一方のゴルトセイバーでオーガを斬ろうとする。

 オーガの腕が動くがゴルトセイバーが振り下ろされるのが先であった。ゴルトセイバーの刃がオーガの肩に打ち込まれる。

 

「うっ……」

 

 オーガは呻き、体が傾く。しかし、ゴルトセイバーの刃はオーガの装甲に僅かに食い込むだけで中まで達していない。だが、衝撃まで完全に防ぐことが出来ずに声を洩らしてしまった。ゴルトセイバーの斬れ味は凄まじいが、それを振るうオーディンの力も桁外れであった。

 打ち込んでいたゴルトセイバーを振り上げ、同じ箇所を斬り付けようとする。オーガの装甲でも何度もオーディンの斬撃を受けられない。

 掲げられたゴルトセイバーの刃が光を反射し、煌めきを放ちながら振り下ろされ──

 

『Single Mode』

 

 ──その風切り音を打ち消す電子音声が鳴るとオーディンの体が後方へ飛んで行く。オーディンの腹部から伸びる金の光線、それはオーガが握るオーガフォンへと繋がっていた。

 フォンブラスターモードとなったオーガフォンによる銃撃。しかも、それは神崎のライダーの共通の弱点であるカードデッキに当てられていた。

 高出力のフォトンブラッドの熱がオーディンのデッキを貫く為に一点照射し続ける。しかし、カードデッキに変化が起こる前にデッキと光線の間にゴルトセイバーを挿し込まれてしまう。黄金の刃によって金の光線が弾かれていく。

 それを見たオーガはすぐにトリガーから指を離した。まだ光線を撃ち続けることは出来るが、ゴルトセイバーの刃を貫くには時間も威力も足りないと判断して早々に中断した。

 オーガはオーディンのデッキを凝視する。オーガフォンの光線を数秒間撃たれ続けていたのだがデッキに傷や溶けた痕など見当たらない。

 

(やはり、並の攻撃ではびくともしませんか)

 

 そう評価するが、オーガフォンの光弾一発で通常のオルフェノクならば灰になる。決してオーガフォンの光弾が弱いのではない。カードデッキが頑丈なのだ。

 並の攻撃──オーガ基準で──が通じないのであれば、残された方法は限られてくる。オーガストランザーによる斬撃、もしくはフォトンブラッドを充填して放つ必殺技。隙を見てそれを叩き込む必要がある。

 

(……その隙を生むのが難儀なのですけどね)

 

 村上が生きてきた中でオーディンは間違いなく最強の敵であると断言出来る。オーガの全てを出し尽くさなければ敗北は免れない。

 オーガは素早い指さばきでオーガフォンに新たな番号を入力した。

 

『Burst Mode』

 

 バースト射撃を行う形態に切り替わった。これで一度に三発連続で発射出来る。無論、倒す為のものではなく牽制の意が強い。

 オーガフォンの銃口をオーディンに向ける。オーディンは胸の前で腕を交差する構えをした。

 オーガが引き金を引く直前、オーディンの姿が消える。

 

(瞬間移動!? いや、違う!)

 

 オーディンはオーガに真っ直ぐと向かって来ている。あまりに速い踏み込みのせいで瞬間移動かと錯覚してしまったのだ。これによりオーガは銃撃のタイミングを失う。銃口の向きを修正している間にオーディンが間合いに入って来てしまう。

 オーガはすぐに銃撃から剣戟へと切り替え、相手のタイミングを狂わせる為にオーガの方から一歩前へ踏み出した。

 この一歩とオーディンの接近により両者の間合いが重なる。しかも、このときオーガは踏み込みながらオーガストランザーを水平に構えて横薙ぎに払う準備が出来ていた。

 

(私の方が一手早い……!)

 

 間合いが重なると同時にオーガストランザーが振り抜かれる。オーガが思っていたとおり、オーガの攻撃の方が速かった。

 

「ぬぅ!?」

 

 だが、オーガストランザーにオーディンを斬った感触が伝わって来ない。斬ったのは空のみ。

 左右どちらにもオーディンの気配は感じられない。残された選択は──

 

「上か!」

 

 ──オーディンが真下を見下ろしながら逆さまの状態でオーガの頭上にいる。オーガはオーディンを見つけるといなや真横に振ったオーガストランザーを上に向けて切り返す。

 オーディンはゴルトセイバー一本でオーガストランザーを受け止める。オーガはすぐにオーガフォンを向け、発射。一度に三発の光弾がオーディンを狙うがオーディンはこれをもう一方のゴルトセイバーの側面で弾く。光弾は命中すれば良いという考えでバラバラに飛んでいくが、オーディンはどれも正確に防ぎ、尚且つ三発目は剣の角度を変えることでオーガへ跳ね返してくる。

 跳ね返された光弾がオーガの顔を掠めていく。ほぼ零距離での射撃を全て防がれた挙句にそれを利用されて反撃を貰う。屈辱的な行為であるがオーガは心を乱さずオーガストランザーとオーガフォンで攻撃を続ける。

 斬撃と銃撃のコンビネーション。オーディンは一対の剣を巧みに操り、それら全てを防御する。その間オーディンは宙に浮いたままの状態で、足が空中にある見えない床に張り付いているかのようであった。

 近距離戦はほぼ互角。互いに攻撃が掠ることはあるが致命傷、動きの阻害にならないと判断して見過ごしているだけのこと。そういった取捨選択が出来なければ大きなダメージを負ってしまう。

 オーガフォンのトリガーを引く。しかし、銃口から光弾は発射されなかった。弾切れである。再充填するにはもう一度番号を入力しなければならないが、そんな暇は無い。

 空撃ちをしてしまったことで攻撃に間が出来てしまった。オーディンは両腕を交差させて双剣を同時に斬り付けようと構える。オーガはそうはさせまいとオーガストランザーを突き出した。

 オーガストランザーの突きが、刃を重ね合わせているゴルトセイバーに命中。オーディンの攻撃を事前に防いだ──かに思われた。

 交差した双剣が光を発する。青と赤、オーガはその光に既視感を覚えた。オーディンが使役するゴルトフェニックス、その翼と同じ輝き。

 しまった、と思ったときには遅かった。オーディンはオーガの攻撃を防御しているのではない。その構えこそが攻撃体勢であったのだ。

 疾風の青、烈火の赤が混合され一つの力となる。烈火の如き炎が疾風に押し出されることで猛火の風となりオーガを喰らう。

 ただでさえ高温の炎が絶えず供給される風により熱を高めていき、結果として屋上床が溶解。炎の勢いに押されて炎の中のオーガが下へ落ちていく。

 オーディンは攻撃の手を緩めない。既にオーガの姿が見えないが、送り込む猛火の風は更なる勢いを増す。

 屋上から下の階層を貫いてオーガを下へ下へ落としていく。

 このままオーガは何も出来ずに最下層まで叩き付けられるのかと思いきや、放つ猛火を押し返す力をオーディンは感じ取る。

 オーガは炎に呑まれ、落下しながらもオーガストランザーをオーディンに向け、オーガストラッシュを放っていた。

 スマートブレイン本社の中層部分で二つの力が衝突。烈火の赤と疾風の青、フォトンブラッドの金の力が拮抗することで衝突の際に発生した力がスマートブレイン本社を揺るがし、外壁を突き破って外へ漏れ出す。

 互いに押し返す力はやがて限界に達し、暴発。凄まじい爆発が生じ、オルフェノクたちの象徴とも言えるスマートブレイン本社は真っ二つに折れた。

 

 

 ◇

 

 

 何一つ障害物の見えない無限に広がっているようにさえ見える空。限られた者しか辿り着くことが許されないその空間でサイガとゴルトフェニックスは文字通り羽を伸ばして戦闘を繰り広げていた。

 

『ははははっ!』

 

 高揚した笑い声を上げながらサイガはブースターライフルから光弾を連射する。

 ゴルトフェニックスの動きの先を読んで発射しているが、ゴルトフェニックスの飛行速度はサイガの予測よりも速く、撃ったときには既に着弾地点を通過。サイガはその度に修正をして撃っているがゴルトフェニックスに命中しない。

 青空に揺れる二本の青い紐。連射しているサイガの光弾が左右に射線を変えていることで描かれている。

 

『──これはダメだな』

 

 今のやり方では命中させられないと判断したサイガは、即座に戦法を切り替える。ライフルモードのフライングアタッカーを飛行形態へと戻し、最大速度を以てゴルトフェニックスへ突撃を開始する。

 最高速でゴルトフェニックスの後を追うサイガ。徐々に距離は詰められていき、追い付きそうになる。

 すると、ゴルトフェニックスは急遽反転。サイガと向き合う。そして、両翼を羽ばたかせて燃え盛る炎の渦を放った。

 炎の渦がサイガを覆う刹那、サイガはフライングアタッカーを再びライフルモードに切り替えて銃口を炎の渦へ向ける。

 その直後にサイガは炎の渦の中へ閉じ込められた。超高温がサイガの全身を焼き尽くそうとする。

 だが、次の瞬間には炎の渦が膨張し出し、破られると同時に青い光が球体状に広がる。

 

『Exceed Charge』

 

 青い球体から飛び出したのは全身から白煙が立ち昇るサイガ。

 どんな相手だろうと攻撃の直後が最も大きな隙を晒す。サイガは敢えてゴルトフェニックスの攻撃を受けた。そして、チャージした光弾により内側から炎の渦を破壊すると同時に次なる技へと繋げていたのだ。

 飛び出してきたサイガにゴルトフェニックスは咄嗟に反応出来ない。そのゴルトフェニックスの顔面にサイガの両拳によるスカイインパクトが炸裂する。

 

 




次回は外伝で完全捏造のレオ過去回となります。
色々とオリジナルの要素が出てきます。
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