思ったよりも長くなりました。
オルフェノクという存在は、何も日本にのみ存在する訳では無い。世界は広く、中にはオルフェノクの有用性に気付いている者たちも居た。
とある組織。表立って公表されておらず、裏の世界でのみ名が通っている。その組織は暗殺などの殺しを主な収入源にしており、個人或いは企業などが邪魔、排除したいと思っている人物を依頼により人知れず屠るのを仕事としていた。
オルフェノクは──その組織の中では別の呼び方をされているが──その組織に於いて特別な存在であり、人が次に行くべき新たな段階として神聖視されていた。殺しやオルフェノクを崇拝する様はカルト組織と言って差し支えない。
組織の構成員の殆どは年端も行かない子供たち。孤児や貧困などを理由に親から棄てられた子供たちを組織が拾い、構成員として育てる。
構成員に至る育成過程は過酷なものであり、死人が出ることはほぼ当たり前のことであった。ただし、この育成を過酷なものにしているのはわざとであり、組織は死んで復活した者がオルフェノクに成ることを知っていた。
育成の過程でオルフェノクとして覚醒するなら良し。スパルタを通り越した苛烈な試練を乗り越えて立派な構成員になっても良し。その過程で命を落としてもそれで良し。素質も素養も無い者は不要であり、代わりは幾らでも利くので組織にとっては何の問題も無かった。
そして、何よりも構成員自身がオルフェノクとして復活することを望んだ。組織の洗脳という名の教育もあるが、死亡してオルフェノクに成れば自動的に組織内に於いて高い地位に置かれる。地べたを這いずることしか知らなかった者たちが今まで経験したことがない数多の快楽を浴びるように得ることが出来るのだ。
オルフェノクに覚醒するにはオルフェノクの力を直接流し込む使徒再生という方法があることも組織は知っていた。組織はそれを『覚醒の儀』と呼んで月に一度希望者を募り、全ての構成員たちの前でそれを行っていた。
わざわざ公開するのはオルフェノクの一瞬にして人を灰にする強さと運良くオルフェノクとして覚醒した者が、オルフェノクとなる瞬間の神秘性などを構成員に刷り込むこと。毎回行う度に希望者は全滅し、一年の間に一人、二人出れば上出来という非情なものであるが、希望者は後を絶たなかった。
全ては教育の賜物であり構成員たちは自らの意思で死へと向かっていく。死してオルフェノクとして蘇る可能性が限りなくゼロに近いことを知っていても。自らが選ばれた者だと信じて。
何処へ行く当てもない彼らにとってこの組織こそが唯一無二の居場所であり『
そんな死と狂気のニオイが染み付く組織の中に産み落とされたのがレオ。組織にとってレオは特別な存在であり、産声を上げたときから彼の将来は決定されていた。
組織内で高い地位を用意されているということは当然ながらレオもオルフェノクであった。ただし、他のオルフェノクと違いレオは特異なオルフェノクである。
だが、特別な存在故にその教育には一切の妥協がされず、幼少の頃より常に死と隣り合わせであった。
世界の情勢を知る為にあらゆる言語を叩き込まれ、何か間違えれば意識が失う程の折檻。
体術や技術を教えられるときには文字通り体へ直接教え込まれる。年齢が一桁のときから成人男性相手に実戦さながらの訓練をさせられ、常に血と痛みが絶えない生活を送っていた。
普通ならばとっくに死んでもおかしくない生活を送っていたが、レオはそれに耐えた。それどころか超えてみせた。
教えられた言語を全てマスターしたときには今まで散々世話になった言語の教師を分厚い辞書で半殺しにした後に下顎を引き千切って二度と言葉を喋られないようにし、体術、技術の教師は訓練の最中に手足を全てへし折り、背骨を砕いて一生歩けない体にした。
そんな狂暴さ見せても組織の者たちは誰もレオを咎めなかった。寧ろ、流石は『選ばれし子』とそれを褒め称える始末。
誰も彼もがレオを肯定し、崇め、讃える。あらゆる賞賛の声を浴びる環境。
レオにとってそれは──最悪という言葉では足らないぐらいに劣悪なものであった。
レオは自分が居る組織が如何にトチ狂ったものであるか客観的に理解していた。狂気に満ちた世界の中で唯一の正気──もしかしたら、これも一種の狂気なのかもしれない──組織の色に染まらず、確固たる自我が生まれたときから備わっていた。
嫌悪しか抱かない組織。それを崇拝している構成員にも同様の感情しか持たない。いつの日かこの手で潰してしまいたい、そう思いながらも聡明な彼はそれが叶わぬ夢であることを理解してしまっていた。
レオは優れた力を持っているが、所詮は個。数による力の差は覆せない。もし、それを覆すことが出来るとすれば、誰も敵わない圧倒的な力を得る必要があった。
レオにはそれを手にする方法が無い。故に組織の中に縛られ、彼らが望むままに敷かれた道の上を歩くしかなかった。
賞賛する声は彼の魂を腐らせようとする。期待する声は可能性の幅を狭めようとする。
過ぎていく時間。近付いて来る確約された未来。レオはそれに焦燥しか感じない。だが、どれだけ焦りを感じても現状を打破する方法が思い付かない。
目の前の現実から目を逸らすようにレオは特訓と称した構成員との戦いにのめり込んだ。戦いの中の高揚感だけがレオから現実を奪ってくれた。
やがて、組織内で成人と認められる年に達したとき、レオに最初の仕事が与えられた。
要人の暗殺。レオはこれを単独且つオルフェノクに変身せずに人間の姿のままそれを為したことで組織内に於いてレオの評価は一層高まる。
オルフェノクに変身しない。これは名声を狙った訳でも仕事を舐めているからでもない。レオは純粋にオルフェノクとしての自分の姿が嫌いだったのだ。
初めてオルフェノクとなった自分を見たとき、レオの胸中に溢れたのは嫌悪と忌避と拒絶であった。レオはそれ以降オルフェノクの姿になっていない。
レオが人の姿のまま仕事をこなすことを疑問視する者たちも居たが、レオはそれを実力によって黙らせた。どんな姿であろうと仕事を成功させればそれで問題無い。
言われたまま組織の仕事を行う毎日。レオにとってそれは心が擦り減っていくような日々であった。
やがて、そんな擦り殺される日々に変化が訪れる。この日、レオに与えられた任務、それはスマートブレインの社長である村上峡児の暗殺。
急成長していくスマートブレインの存在に危機感を覚えた何処かの企業が、事故に偽装して葬って欲しいというのが依頼内容であった。
そして、これはレオにとって最後の依頼。これが終わればレオはある役目を正式に任命される。今までの実績から誰もがレオの成功を疑わなかった。
一方でレオは無関心であった。村上峡児という男もこの後の自分のことも。定められた道を歩くだけの人生に何の興味を抱けばいいというのか。
何事もつまらないぐらい普段通りに終わる──そう思っていた。
◇
「がはっ!?」
腹に火球のような青色のエネルギーを受けたレオは壁に叩き付けられた。その衝撃でコンクリートの壁に罅が入る。
レオは前のめりになって地面に倒れ込み、何度も咳き込む。
「おや? まだ生きていますか」
頭上から掛けられる声。空中に浮遊した村上が、両手に青い炎を宿しながら少々驚いたように言っている。
「いきなり命を狙われるなんてお姉さんこわーい!」
わざとらしい大袈裟なリアクションをするスマートレディ。
「でも、それだけ社長の名が有名になったってことですね?」
「名が広まるのは結構ですが、ちゃんとアポは取って欲しいものですね」
襲撃されているのに緊張感の無い会話。それだけの余裕があるということ。
暗殺相手がオルフェノクなのはこれが初めてという訳では無い。以前の仕事で護衛の一人がオルフェノクだったことがある。そのときも人の姿で倒してみせた。
だが、感覚で分かる。村上はオルフェノクとして今まで出会ったことがない格の違う相手だということが。組織の中でも恐らく敵う者が存在しないぐらいの。
「はぁ……はぁ……はぁ……ははは」
自然と笑いがこみ上げてくる。最高傑作などと謳われた自分が無様に地面に手足を着いている。その滑稽さと組織の者たちの見る目の無さ、そして世界の広さがレオに屈折した喜悦を与えてくれる。
「社長、笑っていますよーあの子」
「その元気があるということですね。どうやら彼は──」
立ち上がるレオ。その顔には紋様が浮かび上がっている。
「──オルフェノクのようですから」
今まで嫌悪していたオルフェノクの力をレオは解き放とうとしている。村上は強い。だからこそ、レオは後悔の無いように全力を出す。今ここで死んでも良いとさえ思っている。
全力の自分に勝つということは今まで自分を否定するということ。それは自分を育ててきた組織の否定へと繋がる。
レオは望んでいた。今ここに居る自分が間違っているという証明を。
「おおおおおおっ!」
咆哮を上げながらレオの姿がオルフェノクへ変わっていく。変身したレオを見たとき、村上とスマートレディは衝撃を受けた。
「まあっ!」
「これは……!?」
胴体に浮かび上がる獅子の顔。甲冑騎士のような頭部。後頭部には豊かな鬣が靡いている。ライオンをイメージにした姿。だが、普通のオルフェノクとは明らかに異なる特徴がある。
足や腕、胴体に巻き付くように浮かぶ鱗。首筋に喰らい付くように一体化している蛇の頭部。
通常、オルフェノクは一つの動植物をイメージした姿になるがレオのオルフェノク態はライオンと蛇の二体の動物が融合した姿となっている。
二つの獣が混ざり合った姿はまさにキメラ。
「すごーい! 初めて見ましたー!」
「異なる二つの要素……まさか……」
驚きながら拍手を送るスマートレディとレオの正体に気付き始める村上。
レオが特異な存在たる理由、それこそがこの姿。レオは恐らく史上初めてのオルフェノク同士から生まれた純血のオルフェノクであると同時に生まれながらのオルフェノクでもあった。
組織はずっと考えていた。より強力なオルフェノクを誕生させる術を。そこで導き出されたのがオルフェノクとオルフェノクとの間に子供を産ませること。
その過程の実験で多くの命が失われてきた。
まず前提として母体はオルフェノクであることが絶対であること。最初は生まれながらのオルフェノクを誕生させることを目的としており、オルフェノクと人間との子を創ろうとしていた。
その際に男性側がオルフェノクで女性側は普通の人間だった。女性は組織の期待通りに子を孕んだが、妊娠して三ヶ月が過ぎようとしたとき女性は突然灰と化した。灰の中に生まれる筈であった胎児が発見されたが、未熟過ぎた為に間もなく息を引き取った。
その後に何度か同じ事を試したが、多くの母体が灰となって死亡するという結果に終わった。中には無事に出産というものもあったが、産まれた赤子は全て人間であった。
母体の灰化の原因、それは胎児であった。犠牲となった女性たちが孕んだのは生まれながらのオルフェノク。二人を繋げる臍の緒を伝わり、胎児のオルフェノクエネルギーが母体へ徐々に流し込まれていきある日限界を迎えて灰化したというのが真相である。
オルフェノクの赤子を産み落とすには人間の体は脆すぎる。その失敗から学んだことを生かし、今度は母体もオルフェノクとすることとになった。しかし、オルフェノクは稀少な存在。当然母体の数は少ない。故に組織は悍ましい所業に手を出す。
身寄りのない女性などを拉致。使徒再生を施し、覚醒した者を無理矢理母体にしたのだ。
こういった所業を繰り返し母体を確保したが、それでも事は簡単には運ばない。オルフェノク同士の交配だと別の問題が生じる。
懐妊する確率の低下。一年続けた結果、子を妊娠する確率は一割にも満たない。更に妊娠したら妊娠したで新たな問題が出て来る。
オルフェノク同士の子はオルフェノクになるという訳ではなく、人間の子の場合が殆ど。生まれる前からそれが分かってしまう。何故ならば、人間の赤子であった場合母体の子宮の中で消滅してしまうからだ。
原因は前述したケースの逆。母体から発生したオルフェノクエネルギーが臍の緒から赤子へと注がれてしまい、耐え切れずに灰すら残らずに消滅する。これは制御出来ない問題であり、どうにもならない。
しかし、組織は何度も何度も失敗を繰り返しながら諦めることはせずに同じ過ちを繰り返した。そして、奇跡が起きた、起こってしまった。組織が追い求めていた純血のオルフェノク──レオの誕生である。
顔も名も知らない数多の兄弟たちの灰が積み重なった先に産み落とされた奇跡と祝福の子であり犠牲の果ての忌み子、それがレオの正体である。
レオは十数年ぶりに変身した己の姿を見る。否応なく吐き気が込み上げてくる。悍ましく、グロテスクな外見をしている訳では無いがレオはどうしても自分の姿に強い嫌悪感を覚えてしまう。本能が訴えかけてくるものなので自分でもコントロール出来ない。
獅子と蛇。父と母のオルフェノクとしての因子を受け継いだ証。父が誰かは知らないし、母も知らない。風の噂で聞いた話ではレオを産んだ後に処分されたという。顔も知らない両親との唯一の繋がりが、この忌むべき姿なのが皮肉としか言いようがない。
「どうやら貴方は特別な存在のようだ」
村上の目に興味の色が宿る。少々腕が立つ程度の暗殺者という認識を改めると、村上の姿がオルフェノクへと変わる。
薔薇の花弁が舞い、その中心に立つローズオルフェノク。両手を後ろで組み、余裕に満ちた態度でレオことキメラオルフェノクと対峙する。
『──全力を出すのは初めてだ』
「そうですか。それは光栄ですね」
薔薇の花弁が吹き荒れる中でキメラオルフェノクが咆哮を上げ、ローズオルフェノクへ飛び掛かった。
◇
「ふぅ……」
村上は乱れた髪と衣服を正し、口の端から流れていた血を拭う。
「──大したものですね、貴方は」
向けられた視線の先には大の字になって倒れているキメラオルフェノク。その四肢は村上により破壊され限界まで捻じ曲げられていた。
「ははは……」
キメラオルフェノクは変身を解き、レオの姿へ戻ると笑いを零す。世界の広さを知った。そして、自分如きがもてはやされていたあの世界が如何に矮小なものかを知った。
オルフェノクとは残酷なまでに素質の世界。レオのような特異な出生など関係無い。その者の背景や過去、過程など意味は無い。強い素質を持った者が強くなるという単純で分かり易い存在なのだ。
村上との戦いでレオはそれを確信した。分かっていたことだが、やはり組織の思想は滑稽であった。
「何かおかしいことでもありましたか?」
笑うレオに村上が訊く。
「彼奴らが否定されたのが嬉しいのさ」
絶対と思えた組織は絶対ではなかった。その事実だけでも負けた甲斐がある。塗り固められた思想はどれだけ脆いものなのかを知り、爽快な気分であった。
「ふむ……」
村上はレオを値踏みするかのように見る。
「殺りたければ殺ればいい……殺さないでくれなんて虫の良いことは言わない」
自分の最期を悟りながらレオは薄く笑う。
「それにもうあの姿にならなくて済む」
「お嫌いですか? 私たち本来の姿が?」
「花瓶に飾れそうなそっちと違って僕は見てくれが悪いんだ」
「──褒め言葉として受け取っておきましょう」
レオがオルフェノクの姿に強いコンプレックスを抱いていることを察する村上。このまま始末することは容易い。だが、村上はレオの強さに興味を持っていた。そして、レオのコンプレックスを知ったとき利用出来ると判断する。
「ふむ……貴方、スマートブレインに入りませんか?」
「……何だと?」
まさかの勧誘にレオは戸惑う。
「わぁー。この子、カッコイイからお姉さんは賛成でーす!」
スマートレディは吞気に村上の急な提案に賛同する。暗殺を仕掛けた相手だというのにこの態度。見た目通り常軌を逸した思考をしている。
「貴方は上の上──最上と評価してもいい。ここで死なせるのは惜しい。もし、スマートブレインに入ってくれるのなら、貴方に新しい力を授けましょう」
「新しい力……?」
「私が貴方を『変身』させてあげますよ」
『変身』。その言葉にレオは強く惹かれる。そしてレオは──
◇
組織の幹部たちはいつものように揉めていた。組織の長を継ぐことが約束されていたレオが仕事に向かってから一か月は経過しようとしているのに帰って来ず、連絡も無い。組織でも一、二を争う実力者であったが、暗殺に失敗して逆に殺害された、というのが幹部たちの見解であった。
長の有力候補であったレオが居なくなったとなれば次にやることは新たな候補者を選ぶこと。このときの幹部たちは目の色を変えて自分、もしくは息の掛かった者を候補者に推すという醜い権力争いを行っており、レオの死を悼む者は皆無であった。
そんな中で吉報──幹部たちにとっては凶報──が入る。レオが帰還したのだ。組織の者たちすぐにレオを出迎えるが──
「やあ、諸君」
──初めはそれが誰なのか分からなかった。見た目はレオであることは間違い無い。しかし、記憶の中のレオはこのような爽やかな笑みを浮かべたことなど無く、常に感情が見えない無表情であった。
そして、何故か腹部に機械で出来たベルトを付けており、手に持った携帯電話を放り投げてはキャッチするという手遊びをしている。
「突然なんだが、皆殺しになってくれないかな?」
爽やかな表情のまま物騒なことを言い放つレオ。組織の者たちはそれを冗談とは思わなかった。発したレオの声が本気であることを感じ取ったからである。
組織の者の何名かの顔に紋様が浮かび上がったのを見て、レオは手遊びを止め、携帯電話──サイガフォンに『3・1・5』の番号を入力。
『Standing by』
「──変身」
『Complete』
ベルト──サイガドライバーにセットし、填め込むことで青い光を発しながらレオは変身する。
村上に下ることで手にした新たな姿であるサイガ。しかし、後のサイガと比べるといくつか異なる点がある。
白い装甲が何箇所か欠損しており、その下にある機械部分が露出している。これはサイガのフォトンブラッドの循環がまだ不完全なものであり、熱が発生してしまうので排熱を促す為にしてある。
またフォトンブラッドの循環が不完全なせいで後に装備するフライングアタッカーへのエネルギーを十分に回せることが出来ないのでオミットされていた。
未来のサイガと比べると至って軽装。だが、レオからすればこれで十分であり、纏ったときに来た圧ですら心地良く感じる。
これがレオの新たな力、新たな姿。サイガの前身──プロトサイガ。
プロトサイガへの変身に組織の者たちは動揺するが、すぐにオルフェノクへ変身し、向かってくる。
プロトサイガはサイガフォンをフォンブラスターへ変形させ、番号『106』を入力。
『Burst Mode』
サイガフォンから放たれた青い光弾が立て続けにオルフェノクらを撃ち抜く。オルフェノクたちは光弾が命中すると同時に硬直、次の瞬間には全身から青い炎を噴き出し、灰となって崩れ落ちた。
「へぇ! 凄い威力だ!」
プロトサイガは一撃でオルフェノクを絶命させた光弾の威力に興奮を隠しきれない。そして、改めて村上を始めスマートブレインに敵わなかったことを理解する。既存の技術の数歩先を行く超技術。まともに対抗して勝てる筈も無い。
一方で組織の者たちは啞然としていた。絶対的な存在だと思っていたオルフェノクが呆気無く殺された。刻み込まれていた思想の根本が揺るがされる。
しかし、プロトサイガは彼らのそんな心情など気にする理由など無かった。
棒立ちになっている彼らを撃つ。撃つ。撃つ。オルフェノクである者やそうでない者も混じっているが撃ち続けることには変わらない。
皆殺しにする。その宣言通り相手を区別などしない。
フォンブラスターがチャージ切れを起こす。プロトサイガは番号を再入力。その隙に組織の者が武器を持って飛び掛かって来たが、蠅でも落とすかのようにプロトサイガが手を振ると、その手は頭部に命中し粉砕する。
武器でも力でもプロトサイガに対抗出来る者は居らず、瞬く間に組織の者たちは数を減らしていく。
構成員たちを屠りながら最奥を目指すプロトサイガ。誰もその歩みを止めるどころか、速度を変えることすら出来ない。
やがて、プロトサイガの足が止まる。組織の最奥──長のみに許された部屋。中に入ると中年男性がプロトサイガを待ち構えていた。
「まさか、貴様がこのような真似を──」
長である男が何かを喋っているが、プロトサイガの耳には入って来ない。後ろに手を回して腰にセットしてあるもう一つの武器を外す。
グリップのあるナックルガードのような一対の武器にプロトサイガはサイガフォンからミッションメモリーを外して上部にあるスロットに挿し込んだ。
『Ready』
音声の後、青い刀身が形成される。トンファーエッジと名付けられたそれを器用に回し、握り心地を確かめる。
「──ここで後悔しろ!」
丁度、長の長い話が終わりオルフェノクの姿へと変わる。
『Exceed Charge』
「話は終わり?」
プロトサイガは既に長の目の前に移動しており、その首に青く発光するトンファーエッジを交差させて当てていた。
長が声を発する前にトンファーエッジが長の首を通り抜ける。
間を置いて後に長の胴体から落ちる首。それが地面を転がっていく。
長の首を見ながらプロトサイガは独り納得する。
「そういうことか……」
純血のオルフェノクを何故誕生させようとしたのか。何故、自分が長の跡継ぎに選ばれたのか。長の亡骸──獅子のイメージが入ったオルフェノクを見て納得する。だが、今となってはレオにとっては全てどうでもいいことであった。
「さよなら、父さん」
灰の山と化した残骸にプロトサイガは何の感慨も無い別れの言葉を吐いた。
◇
スマートブレイン本社社長室。仕事を終えたレオを村上とスマートレディが迎える。
「ご苦労様でしたね、レオ」
「これで僕も晴れてスマートブレインの一員だね、ボス」
「おめでとー。お姉さんはレオ君を大歓迎しまーす!」
拍手を送るスマートレディにレオは爽やかに応じる。
「そして、これが正式に僕の物になった」
レオはサイガギアが収められたアタッシュケースを見せる。
「ええ。ですが、サイガはまだ調整が必要です。テストの為に色々と協力してもらいます」
「これでまだ未完成なんて恐ろしいね……完成したらどうなるんだろう?」
レオの高揚を隠し切れない笑みに村上は口の端を上げると窓の外を指差した。レオはその行動に疑問符を浮かべる。
「サイガは帝王のベルトであり天を司ります……完成した暁には、この空は君のものです」
何処まで果てしなく広がる青空。そこに君臨することを許された帝王──サイガ。
レオは興奮で身震いすることが止めらない。
「──最高だね」
過去を匂わせる要素が一切無いキャラなので、色々と設定を捏造して書きました。
次からは本編に戻ります。