RIDER VS ー異形たちの見る夢ー   作:K/K

37 / 49
しばらくの間、プライベートが忙しくなるので投稿速度は落ちます。


金色の蛇

 足早に移動する浅倉。昂る気持ちがそのまま歩みに出ている。

 ここへ来る前に突然神崎が浅倉の前に現れ、彼にこう言った。

 

『ここへ来い。お前の望んでいる戦いがある』

 

 体よく浅倉を使う腹積もりなのだろうが、浅倉も神崎が自分を利用しようとしているのは分かっている。しかし、浅倉にとっては些末な事。行った先に戦いさえあれば浅倉は何も気にしない。

 どんな相手が、どれほどの数待ち受けているのか期待を抱きながら人目の無い道を突き進むが──

 

『あー』

 

 ──不意に聞き覚えのある声が浅倉の耳に入り、彼は足を止める。周囲を見回すが声の主は見つからない。

 すると、ミラーワールド固有の音が漏れ出す。

 

「ちっ」

 

 浅倉は舌打ちをしてカードデッキを取り出す。折角の戦いの高揚感がミラーモンスター如きに水を差され、一気に不機嫌になり苛立ちが加速的に募っていく。

 しかし、浅倉にとって予想もしなかったことが起こる。

 近くにあるガラス窓から飛び出て来る人──それは、浅倉が探していた因縁の相手である北崎であった。

 

「やだなぁ……こんな所に居たの?」

「お前……北崎か?」

「あれ……? 名乗ったっけ? ……まあいいや」

 

 北崎を認識した瞬間、今までの不機嫌さは一気に吹き飛び、浅倉は獰猛な笑みを浮かべる。

 

「探しても見つからない癖に、こういうときには現れるのか……」

 

 わざわざスマートブレイン本社まで乗り込んでも会えず、オルフェノク狩りをしても出会えず、北崎の名が記憶の片隅に追いやられたタイミングで再会したとなれば、運命というものに皮肉の一つも言いたくなる。

 北崎の方も村上に頼まれ、花鶏周辺を適当に歩き回っていた。ミラーワールドでも現実世界でもどちらでも良いのでライダー、もしくはミラーモンスターが出現したら排除するのが村上の依頼である。

 その頼みを聞いて散歩のようにミラーワールドを歩き、中々ミラーモンスターが出て来ないのでそろそろ飽きて帰ろうとしたところで偶然浅倉を発見した。

 最初の邂逅が偶然ならば再会も偶然。しかし、会うべくして会ったとも言えるかもしれない。

 二人が出会ったことでスマートブレインと神崎士郎、ひいてはオルフェノクとミラーモンスターの戦いの引き金となった。

 戦いの火蓋を切ったのが二人ならば、再戦は全ての決着をつける今日という最後の日に相応しい。

 

「会いたかったぜぇ……! 北崎ぃ……!」

「ふーん……僕にそんなこと言うのは君が初めてだなぁ」

 

 常に恐怖と畏怖の視線を送られてきた北崎にとって執念深く、好戦的な目で見られるのは初めての経験であった。しかも、北崎のことを何も知らない訳では無い筈なのに。新鮮に感じられるが、同時に生意気にも思う。

 北崎の中に対等という言葉は存在しない。自分が最強であり王。それが北崎にとっての絶対であり真理。幼稚で傲慢と一蹴するのは簡単だが、質の悪いことにそれに説得力を与える強さを北崎は持っている。

 だからこそ、強く再戦を望む浅倉がひどく鬱陶しく映った。まるで対等のような口振りが癇に障った。全く恐れていないことが目障りだった。

 

「──ここで消してやる」

 

 間延びした喋りを捨て、冷酷な殺意を吐き捨てる。北崎の変化に浅倉は驚くことはせず逆に笑みを深めた。

 浅倉は近くの反射物にカードデッキを映し、Vバックルを装着。その流れで変身するかと思いきや急に手が止まる。

 

「おい……前のやつはどうした?」

 

 浅倉の視線は北崎の腹部を指している。北崎が装着しているのはスマートブレインのロゴが入ったミラーワールドを行き来する為だけの簡易デッキ。以前、浅倉のときに使用したデルタのベルトではない。

 

「前のやつ……? ああ、あの玩具? 飽きたから返しちゃった」

 

 てっきりデルタとの再戦だと思っていた浅倉は、飽きたから返したという言葉に一瞬呆ける。すぐに呆けた分が苛立ちと憤怒で埋め尽くされようとするが──

 

「別にいいでしょ? あの玩具よりも僕の方が強いから」

 

 ──絶対的自信に満ちた北崎のその言葉に鎮火する。

 

「ほぅ……?」

 

 怒りは一転して好奇心と期待へ変わる。浅倉からすれば手応えのあるのならば何の文句も無い。

 

「なら、確かめさせてもらうぞ……」

 

 浅倉はカードデッキを翳しながら構えをとる。

 

「変身っ!」

 

 カードデッキがVバックルに装填され、浅倉は王蛇へと変身。そして、すかさずベノバイザーのスロットを開けてカードを挿し込む。

 

『SWORD VENT』

 

 音声が鳴り終わる前に王蛇は駆け出し、北崎目掛けて跳躍。降下するタイミングで鏡面から飛び出してきたベノサーベルを掴み、落下と共に北崎へ振り下ろす。

 北崎は邪な笑みを浮かべた顔に紋様を重ね、その姿をドラゴンオルフェノクへと変えた。

 北崎のオルフェノクとしての姿を初めて目撃する王蛇。その恰好は気に入らないがそれなりに手応えがある、とあるライダーを彷彿させ、ベノサーベルを握る手により力が入る。

 ドラゴンオルフェノクの脳天を叩き割ろうとするベノサーベルの一撃だったが──

 

「軽いなぁ」

 

 ──掲げられた竜頭の籠手がそれを軽々と受け止めてしまう。

 どんなに押し込もうとドラゴンオルフェノクの腕は微動だにしない。

 

「えい」

 

 ドラゴンオルフェノクが軽く腕を払う。ベノサーベルが弾かれるだけでなく王蛇自身も腕の一振りによって弾き飛ばされ、壁面に衝突──するかと思いきや壁にあった反射物の中へ入ってしまい、そのままミラーワールドまで飛ばされる。

 地面を転がっていく王蛇。入った場所から十数メートルも転がされてやっと止まった。

 

「くっ……!」

 

 王蛇はベノサーベルを突き立てて体を起こす。顔を上げた彼が見たのはミラーワールドに侵入してきたドラゴンオルフェノク。

 

「なぁーんだ。思ったより非力だね……」

 

 ドラゴンオルフェノクの影に北崎が映し出され、見下しと嘲りを込めた台詞を吐く。

 

「イライラさせてくれるな……!」

 

 戦いで解消される苛立ちよりも湧き上がる苛立ちの方が勝り、王蛇はベノバイザーに新たなカードを入れる。

 

『STRIKE VENT』

 

 掲げた右腕に装着されるメタルゲラスの頭部の形状をした武器──メタルホーン。両手に武器を装備した王蛇は雄叫びを上げながら駆け出す。

 

「懲りないなぁ」

 

 先程の攻防で力の差を思い知った筈なのに全く臆する様子の無い王蛇にドラゴンオルフェノクは呆れる。そして、同時に小さな苛立ちを覚えた。

 メタルホーンによる振りかぶりの一撃。モーションが大きく、避けてくれと言わんばかりの大振り。しかし、ドラゴンオルフェノクは敢えてその場から動かない。

 メタルホーンのドリル状の角がドラゴンオルフェノクの胸部に打ち込まれる。だが、角が胸部を貫くことは無かった。硬過ぎるドラゴンオルフェノクの体皮はメタルホーンの刺突力と王蛇の腕力を掛け合わせた一撃でも通すことを許さない。

 

「効かないよ」

 

 ドラゴンオルフェノクを嘲笑と共に王蛇の顔面を殴り付ける。ドラゴンオルフェノクはこの戦いの勝利条件を決めていた。それは王蛇に圧倒的差を見せつけて勝利すること。

 最初に戦ったときから感じていたが、ドラゴンオルフェノクは王蛇のことが嫌っている。王蛇の言動全てがドラゴンオルフェノクの存在を否定するかのように畏怖していない。

 何よりも自分が上だという傲慢な考えの下、王蛇の心を完全にへし折られなければ勝った気になれないのだ。

 ドラゴンオルフェノクのそんな内心に唾吐くように王蛇は殴られた状態のままベノサーベルをがら空きになったドラゴンオルフェノクの脇腹へ叩き付けて反撃する。

 比較的防御の薄い箇所だが、ドラゴンオルフェノクからすればむず痒い程度。しかし、抵抗する王蛇の様に苛立たしさを覚える。

 

「無駄なことばっかりしてぇ……」

 

 ドラゴンオルフェノクは両手を組む。そして、鉄鎚と化した両腕を王蛇の背中に振り下ろした。

 鈍い音の後に王蛇の体は地面に勢い良く叩き付けられ、地面を砕く。それだけは留まらず王蛇の体は跳ねて宙に浮く。そこへドラゴンオルフェノクの前蹴りが入り、王蛇は縦に回転しながら蹴り飛ばされた。

 縦回転する王蛇の体の何処かが地面に触れるが、飛ばされる威力を殺すことが出来ずバウンドする。王蛇は数度それを繰り返した後に壁面を突き破って建物の中に入っていった。

 圧倒してその心を壊すつもりで攻撃したが、それよりも先に死んでしまってもおかしくない。少し加減するつもりであったが、苛立ちのせいで力の制御を誤ってしまった。

 生死を確認する必要が出て来る。

 

「面倒くさいなぁ……」

 

 自分でやったことだが、その為に労力を使うのは非常に無駄なことのように思えてくる。自分が一番強い、一番凄いという結果は分かり切っていること。少しムキになってしまったが、結果を見れば自分の圧倒であった。

 このまま帰ってしまうことも簡単だったが、ドラゴンオルフェノクはその場で佇んだ後に王蛇を追って建物へ向かう。

 破壊された壁の瓦礫を蹴飛ばしながら入ったドラゴンオルフェノクが見たのは、今まさに立ち上がろうとしている王蛇。

 

「しつこい……」

 

 半ば殺したと思っていただけにまだ動ける王蛇を見たドラゴンオルフェノクは、感情をはっきりさせた声でうんざりしていた。

 王蛇は、そんな彼を無視して膝を震えさせながら立ち上がるろうとし、苦戦していた。何か体を支える物があれば良かったが、壁面を突き破った衝撃でベノサーベルもメタルホーンも手放してしまっていた。

 ドラゴンオルフェノクがすぐ近くまで来ているが、王蛇はそちらを向こうとはしない。余裕──などでは断じてない。王蛇はドラゴンオルフェノクの存在に気付いていないのだ。

 

(あぁ……イライラが消えた……)

 

 頭の中身がかき混ぜられたかのようなぼやけた思考。だが、無限に湧き続けるものだと思っていた苛立ちが今だけは感じなかった。

 ドラゴンオルフェノクの殺意の籠った一撃は、確かに王蛇へ届いていた。過剰な暴力により王蛇の脳は脳内物質を大量に分泌し、王蛇に陶酔感を与えている。それは裏を返せば命の危機に瀕しているということ。しかし、王蛇はそんなことなど気にせず脳内麻薬が生み出す制限時間付きの平穏な精神に浸っていた。

 夢見心地のまま立ち上がった王蛇は、そのまま棒立ちとなる。

 それを見て訝しむドラゴンオルフェノク。何か行動すると思っていたが、それに反して呆けたように立っているだけ。実際、呆けているのだがドラゴンオルフェノクにはそんな心情など読めない──元々、他人の気持ちなど慮る性格ではないので尚更である。

 

「気持ち悪いなぁ……」

 

 何もしてことない王蛇に得体の知れないものを感じるが、王蛇の方はドラゴンオルフェノクを見向きもしない。そんな王蛇の態度にドラゴンオルフェノクは苛立ちを覚える。王蛇の癇癪で伝播したかのように。

 

「いつまでそうしている訳?」

 

 声を掛けてみたが王蛇はやはり反応しなかった。ドラゴンオルフェノクは溜息を吐くと──

 

「もういいや」

 

 ──最初の方針をあっさりと捨て、王蛇を殺すことを決める。

 ドラゴンオルフェノクが一歩踏み出す。すると、重厚感のある外装が灰のように剥がれ、その下から軽装となった龍人態が飛び出し、一瞬で姿が見えなくなる。

 目視出来ない速度で移動するドラゴンオルフェノクは、いつまでも佇んでいる王蛇の顔面を高速移動したまま殴り付けた。

 真横へ折れるように王蛇の体が傾くが、殴られたときと同じくらいの速度で体を起こす。

 ドラゴンオルフェノクは足を止めることなく王蛇の全身を殴打。十秒も満たない間に百を超える拳を打ち込まれる。

 殴られ続ける王蛇であったが、命の危機に瀕しているせいもあり殴られる度に頭の中身が脳内物質に浸っていく。痛みは無い。それどころか多幸感すら感じる。

 しかし、いつまでも殴られ続けている訳にはいかない。このままではそう長く掛からずに死ぬ。その事実を王蛇は他人事のように思っていた。

 死ぬことに恐怖は無い。それよりも一方的に攻撃され続けて死んだら、この楽しい時間が終わることの方が嫌だった。

 王蛇は陶酔した頭で抗う方法を考える。王蛇の速度ではドラゴンオルフェノクに追い付かない。それどころか攻撃を掠らせることすら不可能。まともな手段ではドラゴンオルフェノクに攻撃を当てられない。

 ならば簡単な話である──まともな方法をとらなければいい。

 王蛇は殴られながらデッキからカードを抜き取り、ベノバイザーへ挿し込もうとする。その間もドラゴンオルフェノクの攻撃は止まない。しかし、王蛇もまたドラゴンオルフェノクの攻撃で動きを止めない。

 

『ADVENT』

 

 告げられるカード名。ドラゴンオルフェノクには聞き覚えがあった。あのカードを読み上げられた後に巨大な蛇──ベノスネーカーが襲撃してきた。

 王蛇から一旦距離を取り、周囲を警戒する。しかし、どういう訳かベノスネーカーは姿を現さない。

 不発というのは考え難いことだが、何かしら妨害が発生した可能性もある。神崎士郎が創り出したライダーとの戦闘経験が浅いので何が起こったのか正しい分析が出来ないが、迷うよりも先に自分の強さへの絶対的自信によりドラゴンオルフェノクはすぐに警戒から攻撃へ切り換える。

 ドラゴンオルフェノクの姿が消え、独り高速の世界へ飛び込む。何もかもがスローに動く中でドラゴンオルフェノクのみが自由自在に動く。

 

(これで終わりだよ)

 

 ドラゴンオルフェノクは五指を揃え、手刀の形をとる。手刀が青い炎に覆われた。次の一撃で王蛇の心臓を貫くつもりである。使徒再生など行わない。殺すと決めたからには確実に命を断ち、亡骸を灰に変える。

 手刀を構えたドラゴンオルフェノクは一直線に王蛇へと向かう──そのとき、視界の端で何かが通過していくのが見えた。

 反射的に目でそれを追う。小さな雫がゆっくりと地面へ落下していく。最初はただの水滴だと思った。だが、よくよく見てみるとその雫は透明ではなく黄土色をしている。

 黄土色の液体に目が行ってしまったドラゴンオルフェノク。視線が逸れている間に別の雫が肩の前に落下してきていること見逃してしまっている。

 それに気付くことなくドラゴンオルフェノクの肩が雫に触れる。高速で動いていることで雫は飛散し、肩回りに付着。液体であろうと高速で衝突すれば生身の方が傷付く。一定の高さから水に飛び込めば水面がコンクリート並の硬さになると言われているように。

 しかし、ドラゴンオルフェノクは例外であった。彼の肉体は音速に耐え切れる。高速移動中に何かに接触しても傷など負わない──筈であった。

 最初に感じたのはむず痒さ。やがて、痒みはヒリヒリとした痛みへと変わり、やがて耐え難い激痛と化す。

 

「ぐぅぅっ!」

 

 思わず立ち止まるドラゴンオルフェノク。見ると肩回りから白煙が立ち昇り、音を立てて外装が溶け出していた。それは先程、高速移動中に雫が接触した箇所。そのとき、背中に液体が触れた感触がした。

 まさかと思い、ドラゴンオルフェノクは頭上を見上げる。見上げた先には長い尾を建物の梁に巻き付け、こちらに大口を開いて見下ろしているベノスネーカー。

 頭上に居るベノスネーカーの口から毒液が雨のように吐き出される。範囲の外にいたドラゴンオルフェノクは毒液の雨を免れ、床に付いた毒液は床を溶かしていく。

 ドラゴンオルフェノクが高速で動いている中で呼び出されたベノスネーカーが頭上から毒液を吐き出すことでドラゴンオルフェノクすらも回避し切れない範囲攻撃と化した。

 王蛇の指示か。ベノスネーカーの本能か。それとも単なる偶然なのかは分からないが、ドラゴンオルフェノクは深手を負うことになる。

 

「っつ!」

 

 ドラゴンオルフェノクは龍人態から魔人態へ形態を変える。体の厚みが増し、軽装甲が重装甲になる。しかし、未だに毒液による溶解は止まらない。殆どの攻撃を弾くドラゴンオルフェノクの体でもミラーモンスターの持つ未知なる毒液に対しての耐性を持っていない。

 

「ああああっ!」

 

 ドラゴンオルフェノクは叫び、外装を脱ぎ捨てて再び龍人態へ変わった。溶かされている体を膨張させ、毒液が付着した箇所ごと剥がすことで無理矢理毒液の浸食を止めたのだ。

 久しぶりの痛みにドラゴンオルフェノクの心情は穏やかではない。普段は感情が薄い彼の腹の中では徐々に熱のような怒りが溜まり始める。

 それをぶつけようと王蛇を見たとき、ドラゴンオルフェノクは絶句する。何故ならば王蛇の体からも毒液による白煙が出ているからだ。

 まき散らされた毒液を正確にコントロールする芸当などベノスネーカーには出来ない。だから、王蛇ごと巻き込んで攻撃した。一歩間違えれば王蛇が死ぬかもしれない方法だったが、ベノスネーカーは特に躊躇はしない。餌の運び役が居なくなったら、今度は好きに食べるだけのこと。両者の信頼関係の無さが為す凶行であった。

 

「あぁ……」

 

 溶解する装甲。そんな中で浮き上がって来るのは苛立ち。先程まであった陶酔感が苛立ちにより塗り潰されていく。尽きぬことなく湧いてくる苛立ちの前には一時の解放にしか過ぎない。

 

「イライラする……! もっとだ……もっと俺と戦えっ!」

 

 ドラゴンオルフェノクは王蛇のことが理解出来なかった。ドラゴンオルフェノクにとって戦いとは自分が最も強いことを証明する手段だ。だからこそ、ドラゴンオルフェノクにとって負けることは有り得ないことであり、一番強くなければドラゴンオルフェノクの存在意義が無くなる。ドラゴンオルフェノクにとって死と敗北は同義であり忌避すべきもの。

 死ぬことすら恐れず、それどころか積極的に死へ向かおうとする王蛇のことが心の底から理解出来ない。

 王蛇にとって全てが自分のイライラを消す為の手段にしか過ぎない。暴力を振るい、暴力を振るわれる間だけはイライラを忘れられる。故にそれを何度も繰り返す。

 死にたがっているようにも見えるかもしれないが、王蛇にとって死などどうでもいいこと。結果としてそうなるだけであり、それよりも今あるイライラを消すことだけしか考えていない。

 傍から見ればドラゴンオルフェノクと王蛇は狂人だが、二人の考え方は全く異なるのだ。

 王蛇は無限に続くかと思える苛立ちに身心蝕まれながら、カードデッキからカードを抜き取る。

 ドラゴンオルフェノクは、これ以上王蛇との戦いに付き合ってられないと内心で吐き捨てながらそれを妨害しようとするが──

 

「ぐっ!」

 

 ──カードから放たれる金色の閃光により動きが止まった。

 王蛇が持つカード。不死鳥の胴体が描かれたそれからは、絶えず黄金の光が放たれ続けている。

 これが王蛇にとって最後の切り札であり、神崎士郎が王蛇に渡した最終手段でもある。

 光の中でベノバイザーが変化。ベノヴァイパーの横顔を模した、ブラックドラグバイザーツバイと同系統の武器へと進化。

 王蛇は新たなベノバイザーツバイの口を開き、その中へカードを収める。

 

『SURVIVE』

 

 読み上げられるサバイブの名。前回のカードの疾風のサバイブカードとは異なる別のサバイブ。それは仮面ライダーオーディンと同じ力であり、オーディンの根幹となる力──無限のサバイブカード。

 ベノバイザーツバイの変化に続き、王蛇の装甲も変わる。胴体の装甲はベノスネーカーの頭部を模した形状をし金九割、紫一割の配色のものとなる。脚の装甲も紫から金に変化。

 頭部には金のサークレットのようなパーツが追加され、顎に金の牙の装飾も加えられていた。

 金色の光が収まる。ドラゴンオルフェノクにとっては一瞬の出来事であったが、光が消えた後に立つ王蛇の別の姿──王蛇サバイブに動揺する素振りを見せる。

 

「……何それ?」

「どうでもいいだろ、そんなことは」

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。