「あぁ……」
王蛇サバイブは首を回しながら己の状態を確認した。
先程まであった痛みはすっかりと治まった。明らかに傷が治っている。無限のサバイブカードには傷を治す効果があるのかもしれない。思い返せば、エラスモテリウムオルフェノク戦にて負傷と失血死寸前まで血を流していたが、神崎士郎に助けられたときには完治していた。あれもまたオーディン、即ちサバイブの力によるものなのかもしれない。
陶酔感はすっかり失せてしまったが、代わりに全力で戦うことが出来る。それはそれで王蛇サバイブにとって悪くない。
「まだ余裕はあるよなぁ? たっぷり遊ぼうぜぇ……」
手招きにてドラゴンオルフェノクを挑発する。
「少し派手になったくらいで偉そうに……調子に乗るなよ?」
ドラゴンオルフェノクが一歩踏み込む。次の瞬間には王蛇サバイブの目の前に移動しており、更には瞬時に魔人態へ変化。毒液による攻撃を二度も喰らわない為に装甲に厚みのある魔人態になり、仮に毒液が付着してもすぐに脱ぎ捨てられるようにする。
そして、魔人態の圧倒的な力で王蛇サバイブ捻じ伏せ、二度と生意気な口を叩けないようにするつもりであった。
龍頭の籠手が王蛇サバイブに突き出されるが、王蛇サバイブは踏み込みから移動までの全ての動作を目で追っており、更には反応も出来ていた。故にドラゴンオルフェノクが籠手で突こうとする直前に軌道線上にベノバイザーツバイを置いていた。
ベノバイザーツバイの中央部に折り畳まれていた刃が展開。その直後に金属音が鳴り響く。
「ははっ……」
「馬鹿な!?」
王蛇サバイブは嗤い、ドラゴンオルフェノクは驚愕する。ドラゴンオルフェノクの籠手がベノバイザーツバイの刃により受け止められている。当然、ドラゴンオルフェノクはその状態から押し込もうとするが、前に進まない。先程まで圧倒していたドラゴンオルフェノクの力は今では王蛇サバイブと互角──否、徐々にだが籠手が押し返されているのでそれ以上。
「見た目の割には案外非力だなぁ?」
「ふざ、けるな……!」
王蛇サバイブの挑発。ついさっきまで一方的に嬲られていた立場だというのにサバイブで強化された途端に減らず口を叩く様は、余計にドラゴンオルフェノクの感情を逆撫でする。
強者としての絶対的な自信故にドラゴンオルフェノクは刃と籠手の鍔迫り合いを継続させ、王蛇サバイブが嗤った力で彼を捻じ伏せようとするが──
「うおらっ!」
──それはドラゴンオルフェノクの都合に過ぎず、王蛇サバイブはがら空きになっているドラゴンオルフェノクの脇腹を膝で突き上げる。
「ぐぅ!」
漏れ出た声と走る痛み。最強と誇っていた体に王蛇サバイブの攻撃が通った証。それはドラゴンオルフェノクにとって信じ難い事実。
ドラゴンオルフェノクの体が横に傾いたことで鍔迫り合いの方も王蛇サバイブへ大きく傾く。王蛇サバイブが一気に押し込み、ベノバイザーツバイの刃がドラゴンオルフェノクの額に触れそうになる。
「ふざ……けるなっ!」
怒号と共にドラゴンオルフェノクの両角が発光。そこから1万ボルトの雷が発生し、ドラゴンオルフェノクを通じて王蛇サバイブへ流れ込む。
雷に打たれ王蛇サバイブの体が仰け反る。しかし、反った体がバネ仕掛けのように前へ倒れ込んだ。
「いいぞぉ! 良い刺激だっ! イライラが吹っ飛ぶっ!」
雷を浴びるのは王蛇サバイブにとって新鮮な衝撃であり、募り始めていた苛立ちが感電のショックでリセットされる。
「もっと来いっ!」
おかわりを要求しながら王蛇サバイブは刃を叩き付ける。暴力という言葉を体現したかのような乱暴な振り下ろしがドラゴンオルフェノクの籠手に深い傷を付け、ドラゴンオルフェノクの巨体を一歩後退させる。
「おおおおっ!」
型など無い本能を剥き出しにした刃の振り回し。何某に刃物という言葉があるが、正にそれを証明するかのような危うい剣戟の嵐。
上下左右あらゆる角度から力任せに振るわれる刃に対し、ドラゴンオルフェノクは防戦一方を強いられてしまう。
ドラゴンオルフェノクの足元に映し出される北崎の幻影が憤怒の形相で歯嚙みしている。いつだって攻撃するのは自分で相手はそれに翻弄されるだけ。それが彼の中での絶対であった。
しかし、今その絶対が覆されている。ドラゴンオルフェノクは王蛇サバイブの攻撃に翻弄され続けているのだ。
並外れたプライドの高さを持つドラゴンオルフェノクにとっては憤死してもおかしくない程の屈辱。彼の絶対が穢された。
重そうな籠手を素早く動かして王蛇サバイブの斬撃を防ぐ。見た目に反して巧みな防御を見せるが、これもまたドラゴンオルフェノクにとっては不愉快。ドラゴンオルフェノクの籠手は敵を粉砕することが目的であり、防御はおまけ程度の認識しかなかった。それが今では籠手らしく身を守る為に使われている。守るということが徹底的に合わないドラゴンオルフェノク。フラストレーションが溜まる。
一方で王蛇サバイブは心の底から気持ちよさそうにベノバイザーツバイを振り回していた。衝動に任せたまま振るう刃は苛立ちを消してくれ、爽快感を与えてくれる。
「はっはっは!」
最高に機嫌の良い笑い声を上げ、王蛇サバイブは渾身の力でドラゴンオルフェノクの胸部中央を突き刺す。
万事休すかと思いきや、直前にドラゴンオルフェノクは脱皮するように魔人態の背中から飛び出す。抜け殻となった体は一突きの後に灰となって崩れた。
龍人態へ形態を変えるとドラゴンオルフェノクは特色であるスピードを生かし、王蛇サバイブが反応する前に顔面を殴り抜ける。
回避も防御も間に合わず、王蛇サバイブの首が傾く。だが、その態勢からベノバイザーツバイを振り抜く。
「いいぞ……! その調子だ……!」
一方的に振るう暴力で苛立ちを忘れられる。振るわれる暴力であっても苛立ちを忘れられる。互いに互いを傷付け合う戦いならばもっと苛立ちを忘れられる。王蛇サバイブはつくづく戦いが無ければ生きていけない性を背負っていた。
「うおらっ!」
何とか視認出来るドラゴンオルフェノクの動き。動く瞬間に合わせてベノバイザーツバイを振り下ろすが、大きく空振りをして地面をバターのように裂く。見てからの動きは、ドラゴンオルフェノクが相手だと遅過ぎた。
大きく空振りした王蛇サバイブの無防備な胴体や背中にドラゴンオルフェノクの高速の拳打が叩き込まれる。
一秒間に打ち込まれる数十の拳。だが、王蛇サバイブは拳を浴びながらも体を動かしており、攻撃を受けながら半円を描くようにベノバイザーツバイを横薙ぎにする。
ドラゴンオルフェノクは攻撃の手を止めると同時にベノバイザーツバイが振り抜かれる前に刃の間合いの外まで後退をする。しかし、退いたドラゴンオルフェノクは胸に微かな違和感を覚えた。
胸を見ると僅かに刻まれた一文字の傷。避けたと思ったが、ほんの少しだがベノバイザーツバイの刃はドラゴンオルフェノクに触れていたのだ。
ドラゴンオルフェノクは軋み音を立てるぐらいに両拳を強く握る。
王蛇サバイブの身体能力の向上は分かっていたが、同時に装甲の防御力も上がっていた。あれだけの攻撃を浴びせても王蛇サバイブの動きからキレが無くなっていない。それは魔人態の攻撃では王蛇サバイブを仕留め切れないことを意味している。加えてかなり長時間触れていたが、灰化も起こっていない。王蛇サバイブはとことんドラゴンオルフェノクを虚仮にする性能をしていた。
「はぁ……どうした? 疲れたのかぁ? まだ始まったばかりだぞ?」
仮面越しでも王蛇サバイブの目がギラギラとした光を宿しているのが伝わって来る。それぐらい危うい眼光を放っていた。
戦いを求める飢餓。王蛇サバイブは更なる戦いを求めている。一方でドラゴンオルフェノクは王蛇サバイブとは逆に解消されることのない苛立ちが溜まり続けていた。
何もかもがドラゴンオルフェノクの想う通りに行かない。それがドラゴンオルフェノクにとって強烈なストレスになる。
今まで横暴に生きて来て強さ故に何もかもが許されてきた。普段の言動が幼いように彼自身の精神も子供、というよりも未熟である。情緒が発達するような事柄は全て彼の手により灰にされてきたので当然のこととも言える。
「この、俺がっ……!」
一人称も変わる程にドラゴンオルフェノクから冷静さが奪われる。激昂したドラゴンオルフェノクは王蛇サバイブに高速で接近し、すかさず殴った。
王蛇サバイブの顔が僅かに横を向くがそれだけ。王蛇サバイブもドラゴンオルフェノクの攻撃に徐々に慣れつつある。
「どうしたぁ! その程度かぁ!」
王蛇サバイブは吼えながらベノバイザーツバイを振り下ろす。だが、振り下ろす前にドラゴンオルフェノクは横へ移動していた。ドラゴンオルフェノクの攻撃は王蛇サバイブに通じ難くなっているが、ドラゴンオルフェノクの速さはまだ通じる。
体ごと投げ出すような王蛇サバイブの全力の一撃を避け、再び距離を開けるドラゴンオルフェノク。
王蛇サバイブはドラゴンオルフェノクをジッと見ていたが、何を思ったのかベノバイザーツバイの刃の下に手を添え、展開していた刃を折り畳む。
王蛇サバイブは金色に変わったカードデッキからカードを抜くと、ひらひらと振ってドラゴンオルフェノクを挑発する仕草をする。
「そんなに逃げるのが好きか? だったら手伝ってやる」
ベノバイザーツバイ側面にあるスロットへ引き抜いたカードを装填。
『SHOOT VENT』
音声の後、王蛇サバイブの背後に巨影が落下。今まで傍観していたベノスネーカーもとい無限のサバイブカードで進化したベノヴァイパー。疾風のサバイブカードで強化された形態と差異は無い外見であった。
王蛇サバイブはベノバイザーツバイを横向きに構え、ドラゴンオルフェノクと向き合わせるようにする。まともな構え方ではなく何処か気怠さを感じさせるポーズであった。
ベノバイザーツバイのトリガーが引かれると、金色の光弾がベノバイザーツバイから発射。光弾を照準にしてベノヴァイパーは大質量の毒液を吐き出す。
光弾を追従する毒液の塊。ドラゴンオルフェノクは先に迫って来ている光弾を回避。中々の速度であったが、避けられない程では無い。
ドラゴンオルフェノクが射線状から離れることで外れた光弾は壁を貫く。壁に空く拳程の大きさの穴。そのすぐ後にベノヴァイパーの毒液が壁に着弾。液体の塊なので光弾のように綺麗に貫通することはなく、着弾の衝撃で毒液が周囲に飛び散った。
ベノヴァイパーに進化したことで毒液にも変化が生じる。まず毒液の溶解性が増した。触れた壁は瞬時に形を保てなくなり、液体化して毒液に混じる。地面に落ちた毒液は延々と地面を溶かし続け、底の見えない穴を幾つも作り出す。
次に毒液の粘度が強くなった。ベノスネーカーのときの毒液はほぼ水と変わらなかったが、ベノヴァイパーの毒液は液体というよりはスライム状の物質であり、壁に付いた毒液はゆっくりと垂れながら壁を高速で溶かしていた。触れれば払うことは不可能であり、付着した箇所を切り離すなどしなければ逃れられない。
ドラゴンオルフェノクもベノヴァイパーの毒液の危険性を理解し、出来る限り離れる。しかし、王蛇サバイブはそれを許さない。
「ははっ」
王蛇サバイブは笑いながらベノバイザーツバイの銃口をドラゴンオルフェノクへ向け、即発射。少し遅れてベノヴァイパーも毒液を吐き出す。
ドラゴンオルフェノクは舌打ちをし、先程のように射線状と毒液の範囲外まで移動する。そこへすかさず撃ち込まれる次なる光弾。ドラゴンオルフェノクは同じ行動を取らざるを得なかった。
「ははははははっ!」
王蛇サバイブは哄笑しながら狂ったように引き金を引き、光弾を乱射する。ドラゴンオルフェノクは立ち止まることすら許されず、絶えず動き続けるしかない。
最早、ちゃんと狙うことなく無茶苦茶に撃ち続ける王蛇サバイブ。それを回避するのも厄介だが、後に続くベノヴァイパーの毒液は更に厄介。光弾のように彼方へ飛んでいることもなく、あらゆる場所へまき散らされていく上に残るのでドラゴンオルフェノクの逃げ道が徐々に潰されていく。
また、王蛇サバイブが無秩序に乱射し続けるせいでベノヴァイパーも後に続くことが出来なくなっており、王蛇サバイブとベノヴァイパーの攻撃にズレが生じていた。これが意図せず時間差攻撃となっており、光弾を避けた後に移動先に毒液が来る、またはその逆が起こり、ドラゴンオルフェノクを追い詰めていく。
強みであるスピードで何とか躱し続けるドラゴンオルフェノクであったが、突然急停止をしてしまう。
進路方向にある毒の粘液。コンマ数秒気付くことが遅かったら、片足をそれに突っ込み足を失っていただろう。
ドラゴンオルフェノクは方向転換しようとしたが、毒液に気を取られてしまっていたせいで一瞬だが王蛇サバイブに無防備な姿を晒してしまっていることを忘れていた。
「はははっ!」
獲物が遂に動きを止めた瞬間を狙い、王蛇サバイブが牙を剝く。ベノバイザーツバイから放たれた光弾がドラゴンオルフェノクの脇腹を掠める。
「っ!?」
焼き付く痛みにドラゴンオルフェノクは硬直してしまう。大きくなった隙に今度はベノヴァイパーの追撃の毒液が吐かれた。
脇腹から生じる引き攣るような痛み。このまま動かずにじっとしていたくなる。だが、溶かされて殺されることは死んでも御免だと強く思ったドラゴンオルフェノクは、痛みを押し殺して体を動かした。
掠めて抉られた傷が悪化する。しかし、それでもドラゴンオルフェノクは一筋の糸のような脱出ルートを見つけ出し、地面に広がる毒液を避けながら回避することに成功。
迫り来る死から逃れたことでドラゴンオルフェノクは刹那、気を緩ませる。
「はっ」
ドラゴンオルフェノクは気付くべきであった。迫る死が一つだけでないことを。
王蛇サバイブはベノバイザーツバイから再び刃を展開。何を思ったのかその場でそれを振り抜く。間合いの外から剣を振るっても無意味──かと思われた。
王蛇サバイブがベノバイザーツバイを振り抜くと同時に展開していた刃が伸びる。伸びた刃は生物のようなしなやか且つ柔軟な動きでドラゴンオルフェノクへ伸びていき、胴体に絡み付いていく。
「えっ!?」
油断をしていたドラゴンオルフェノクは、蛇のように巻き付いてくる刃に驚き、すぐに解こうとするが巻き付いた刃は締まり、剥がす隙間すらない程に密着。
「ぐぅぅ!」
胴体が絞られ、ドラゴンオルフェノクは苦しむ声を出させられる。
巻き付いた刃の先端がドラゴンオルフェノクの肩に突き刺さして固定。その様は蛇に捕食される獲物。ドラゴンが蛇に喰われようとしている構図は皮肉としか言いようがない。
肩に刃が刺さっているせいで片腕が上がらない。ドラゴンオルフェノクはもう一方の手で巻き付いている刃の部分に触れ、自身の持つ灰にする力で拘束の解除を試みる。
しかし、巻き付く刃はこの世に存在する如何なる金属とも異なる性質を持っている為かすぐに灰化しない。時間をかければ灰化は可能だっただろうが、今のドラゴンオルフェノクにその時間を待つ猶予は無かった。
「はあっ!」
王蛇サバイブがベノバイザーツバイを振り上げる。ドラゴンオルフェノクの体が地面から離れ、宙へ放り投げられる。そして、天井へと叩き付けられた。
「ああああっ!」
振り上げたベノバイザーツバイを今度は振り下ろす。天井に埋もれていたドラゴンオルフェノクは地面へと叩き付けられる。
天地を高速で行き来したドラゴンオルフェノク。重装甲の魔人態ではなく軽装甲の龍人態であった為にダメージは大きい。
地面に四肢を着く。ドラゴンオルフェノクにとって味わったことのない屈辱の経験。頭の中の血管が切れそうになるぐらいの怒りを覚えるが、その湧き立つ怒りに反して体が思い通りに動かない。それがドラゴンオルフェノクを更に怒らせる。
王蛇サバイブはそろそろ決着の時だと察する。毒液が満ちた地面に敢えて叩き付けなかったのは、毒液で終わるという呆気無い結末を避ける為。この手で相手を殺らなければ意味が無い。
手応えのある相手が消え、戦いが終わるのは多少惜しい気もしないでもないが、だらだらと戦いを長引かせるのは反って苛立ちが増すだけ。
殺れるときは即座に殺る。
元々抑えつけるつもりもない衝動のままに王蛇サバイブはデッキからカードを抜く。だが、そのカードを見たとき王蛇サバイブは動きが止まった。
「あぁ?」
一枚だけ抜いたつもりなのに王蛇サバイブの手には二枚のカード。内一枚は王蛇サバイブの記憶に無いものであった。
自らの尾を噛む蛇。円となった蛇の中心には時計の長針と短針が描かれている。
何のカードかは分からなかったが、試しにそのカードをベノバイザーツバイに装填してみた。
『──』
しかし、どういう訳かカードを読み取らず、効果名も告げない。スロットを空けてみると入れた筈のカードは消失していた。
「無駄な時間だったな……」
意味不明なカードに若干の苛立ちを覚えつつ、本命のカードをベノバイザーツバイに入れる。
『FINAL VENT』
ベノヴァイパーが咆哮を上げ、その体をバイク形態へと変化。金色の光を発し、搭乗者を乗せないまま自走。立ち上がろうとしていたドラゴンオルフェノクを轢き飛ばす。
ドラゴンオルフェノクが錐揉みしながら宙へ打ち上げられる。縦や横に回転軸を何度も変えながら落下していき、最後には背中から地面に激突。
「うぅ……」
呻くドラゴンオルフェノク。見れば王蛇サバイブがこちらを見下ろしている。その手に刃が展開したベノバイザーツバイを持って。
王蛇サバイブはドラゴンオルフェノクに刃を突き刺す。一度では終わらず何度も何度も。
「はははははははっ!」
一度刺しても、二度刺しても、三度刺してもドラゴンオルフェノクはまだ絶命しない。
「終わるな! まだ終わるなっ!」
繰り返し突き刺しながら相手が息絶えないことを強く願う王蛇サバイブ。矛盾した願いと行為。しかし、王蛇サバイブは止まらない。
「まだ終わるなぁぁぁぁぁ!」
ドラゴンオルフェノクの額に刃が突き立てられ、その体が跳ねるとドラゴンオルフェノクの体は灰に──
『TIME VENT』
「……あれ?」
四肢を着いて立ち上がろうとしているドラゴンオルフェノクは、奇妙な既視感を覚えていた。さっきも同じような事があった気がするのだ。
『FINAL VENT』
変形したベノヴァイパーの突進によりドラゴンオルフェノクは宙を舞う。痛み、衝撃、そのどちらにも既視感がある。
落下した後にこちらを見下ろす王蛇サバイブ。何度も突き立てられる刃。
「まだ終わるなぁぁぁぁぁ!」
『TIME VENT』
「……あれ?」
四肢を着いて立ち上がろうとしているドラゴンオルフェノクは、奇妙な既視感を覚えていた。さっきも同じような事があった気がするのだ。
『FINAL VENT』
変形したベノヴァイパーの突進によりドラゴンオルフェノクは宙を舞う。痛み、衝撃、そのどちらにも既視感がある。
落下した後にこちらを見下ろす王蛇サバイブ。
そして、自分の体には何度も刃が突き立てられ──
「っあああああ!」
──寸前、ドラゴンオルフェノクは魔人態となり籠手から伸びる牙で王蛇サバイブの心臓を貫く。だが、同時に王蛇サバイブの刃もドラゴンオルフェノクの額に突き刺さっていた。
相討ち。どちらの命も間もなく尽きようとする。
「まだだ……まだ終わるな……!」
死の寸前に王蛇サバイブが願うのは戦い。故に──
『TIME VENT』
「……あれ?」
既視感。既視感。既視感。痛みも苦しみに生じる既知。
何かがおかしい。何かが起こっている。
『FINAL VENT』
閉ざされた時の中、ドラゴンオルフェノクは違和感と既視感に苦しみ、王蛇サバイブはただ戦いを愉しむ。
・タイムベント 王蛇サバイブVer
発動を始点にし、使用者がやり直しを強く願うとタイムベント使用時まで時間が戻る。
範囲も効果も限定されているのでオーディンのタイムベントの劣化版だが、浅倉の願いもあって浅倉とは非常に相性が良い。
時間を戻す前のことは既視感として残るが、時間が戻ったという認識は無い。
解除方法は二つ有り、一つは浅倉がタイムベントの解除を強く願うことだが、浅倉自身タイムベントを使用しているという自覚が無いのでこちらの方法は実質不可能。
もう一つの方法は──