RIDER VS ー異形たちの見る夢ー   作:K/K

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帝王の加速

 どんどんと角度を増していく床。オーディンはゴルトセイバーを交差して構えたまま斜めになっていく床からずり落ちることなく平行を保ったまま床の角度に合わせて自らも傾いていた。

 強過ぎる力が衝突し合った結果、彼らの戦場であったスマートブレイン本社は、中間部分から折れ、上半分が断面から滑るように落ち、地面へ向かって行く。オーディンは、その落ちる上半分の屋上にいる。

 今も落下していることに対してオーディンは何も思っていない。彼が最も警戒しているのはオーガ。屋上から一階まで落としたオーガからの反撃によりスマートブレイン本社は真っ二つに折れることになった。まだ一階に居ると思われるが、いつ仕掛けてくるのかは分からないのでオーディンは気を張り続ける。

 そのとき、オーディンは見た。一階に居るだろうと思っていたオーガがスマートブレイン本社の中央部分、つまり折れた断面の階層に立っていることに。

 オーディンが気付くということはオーガも気付いているということ。

 

「……まさか、この手で私の会社を破壊する日が来るなどとは思ってもいませんでしたよ」

 

 オーガはオーガストランザーを掲げながら見る無惨に破壊されたスマートブレイン本社の姿に怒りと哀しみを混ぜた愚痴を吐く。

 ミラーワールドという虚構の中のスマートブレイン本社だが、それでも気分が良いものではない。

 

「代償を払ってもらいますよ……!」

『Exceed Charge』

 

 金のフォトンブラッドがオーガの表層を伝ってオーガストランザーに流れ込む。オーガストランザーは金色の光を発すると、その光は先端が二つに分かれたエネルギーの刃となり、長大化していく。

 オーガはオーガストランザーを前へと突き出す。オーガストランザーから繰り出されるオーガストラッシュが伸びていき、落ちていくスマートブレイン本社を串刺しにした。

 半分になっても巨大な質量であることに変わらないが、オーガストラッシュの光刃は立ち塞がる全てを圧倒的な高出力で融解を超えて蒸発させていき止まらない。

 薄紙を破るようにスマートブレイン本社を貫くと、オーガは腕を振り上げる。

 紙を裂くよりも抵抗を感じず、振り上げられた光刃は重力に逆らって昇っていき、やがて屋上にまで達し、オーディンが立っている位置を下から断つ。

 オーガの斬撃は凄まじいの一言であるが、同時に派手過ぎた。オーディンの視点からすればどんな攻撃が来るのか容易に予想が付く。

 光刃が屋上を裂いたとき、オーディンは既にその場所には居らず、事前に一メートル程横へ移動して難無く回避をしていた。

 オーガも一太刀では終わらない。斬り上げられた光刃は袈裟切りとなってオーディンを再び狙い、オーディンがそれを瞬間移動で回避するのなら即座に横薙ぎとなって軌跡の先にある物全てを斬り飛ばす。

 斬撃、斬撃、斬撃。オーガがオーガストラッシュを繰り出す度にビルは切り分けられていき、巨大な質量が無数の残骸と化していく。

 しかし、風を切りながら膨大な熱量を放つオーガストラッシュでもオーディンを捉えることは出来ず、オーガが斬撃を放つ度にオーディンは瞬間移動を行って回避し続ける。オーガはその度に直感で相手の位置を予測し、そこを狙うがオーディンの動きの方が速く、オーガはオーディンの残す金の羽根を斬ることしか叶わない。

 だが、オーガの行っていることは決して無駄な行為ではなかった。無数の斬撃によりビルは細かく刻まれていき、遂にはオーディンが立っていた屋上が崩壊する。

 オーディンは屋上であった残骸に移り、崩壊に紛れて身を隠す。オーディンにとっては落下していく残骸など風に舞う木の葉同然。巻き込まれて潰されるという恐怖など感じていない。

 オーディンの姿が見えなくなるとオーガはオーガストランザーを振るうのを止めた。攻撃を諦めたのではない。彼にとって思い描いた通りの展開となり、次の攻撃へ移る時が来たからだ。

 オーガには今まで開発されたライダーズギア全ての技術が内蔵してある。他のライダーがツールを使用して技を放つが、オーガはそれを介せずに技を放つことが出来る。

 今から行うこともまたオーガに内蔵されたツールの発動である。手札を相手に見せない為に使用を控えていたが、ここで確実にオーディンを倒すと決めた以上出し惜しみはしない。

 オーガはオーガフォンを開き、三桁の数字を押した後ENTERのボタンを押す。

 オーガの体に変化が生じる。全身にフォトンブラッドを巡らせるフォトンストリームの色が金から銀へと変わった。これは意図的にフォトンブラッドの出力を抑えたことによる影響。

 何故、自ら力を抑えるようなことをするのか。その答えはオーガの次の行動が示す。

 フォトンストリームの色の変化が完了すると、オーガは再びENTERのボタンを押し込んだ。

 

『Start Up』

 

 オーガが消える。少なくともオーディンの目にはそう映った。変身をした状態でローズオルフェノクのときの瞬間移動を使用したのか、という考えが過るが転移の気配を感じないことからすぐに違うことを見抜く。

 オーディンは視界の端に銀の残光を捉え、即座に視線をそちらへ向ける。だが、視線を向けたときには既に残光は消え、オーガの姿も見当たらない。すると、再び視界の端に残光が映った。

 今度は相手の移動先を予測し視界に捉えようとする。オーガを見つけることが出来なかったが、その代わりに銀の光が残骸の間を縫うように抜けていくのを見た。

 落下していく瓦礫を足場にし、オーガは銀色の光を残して離れて行ったかと思えば全てを置き去りにする程の速度で光が戻ってくる。

 オーディンの目を以てしても捕捉出来ないオーガの高速移動。何かが来るとだけ察したオーディンは、すぐに瞬間移動をする。

 オーディンが消えた直後に立っていた足場は真っ二つになり、尚且つ縦一直線にあった瓦礫が纏めて斬り飛ばされた。

 オーディンは瞬間移動によりオーガの攻撃を躱すことが出来た──と思われた直後、転移後のオーディンの横顔に衝撃が走る。

 殴られた、と理解すると同時に背中に打ち込まれる第二の衝撃。背中殴られて海老反りの体勢になった所に突き出された胸部に叩き込まれ三度目の衝撃。それにより、オーディンは落下する瓦礫の背中で砕きながら、残っているスマートブレイン本社の下半分の壁面を突き破って中へ突入していく。

 床を何度もバウンドした後、立ち上がろうとするオーディン。それを手伝うかのようにオーディンは下顎を突き上げられ、仰け反りながら強制的に立たされた挙句腹部に強烈な一発を貰い、壁に叩き付けられた。

 迫り来る殺気にオーディンは瞬間移動をする。だが、再び瞬間移動をした直後に攻撃を受け、先程叩き付けられた壁にまたも張り付けさせられる。

 ライダーギアの中でファイズのみがファイズアクセルというツールを使用し、形態変化することで可能とする高速移動。オーガには当然それも内蔵されておりファイズアクセル無しで高速移動を可能とする。

 ただし、今の技術では金のフォトンブラッドでの高速移動は暴走、自壊する危険性があるので敢えて出力を一段階落とす必要がある。パンチ力、キック力が一割程落ちるがその代わりに爆発的な加速力を手に入れられる。

 高速移動に対して瞬間移動で対抗したオーディンだが、このときばかりは裏目に出ていた。相手はオーディンと同じく瞬間移動能力を持つ。だからこそ、オーディンの移動先を予め予測でき先回りをしてくる。一方でオーディンは瞬間移動という能力の特性上どうしても一瞬だが相手の動きを見ていない時間が生じる。このせいで瞬間移動後の防御が甘くなってしまったのだ。

 オーディンの体に刻まれるΩの紋章。高出力のフォトンブラッドが体内に流し込まれ、細胞が焼かれる苦しみを味わっている──筈なのだが、オーディンは呻き声すら上げずそのような素振りを見せない。痛みなど感じていないかのように。

 実際にその通りなのか、それとも瘦せ我慢なのかは分からない。ならば、誰が見ても致命傷となる一撃を放つのみ。

 壁に磔状態になったオーディンに不可視の速度の斬撃が脳天へと振り下ろされた。

 1/1000秒後にはオーディンは真っ二つになる。だが、オーガは決着を焦るあまり一つのミスを犯した。

 壁に密着した状態のオーディンへ迫るオーガストランザー。その剣先が僅かに壁に触れた。頭上の壁が削られた瞬間にオーディンはオーガが何処を狙っているのかを察知し、交差させたゴルトセイバーを頭上へ掲げる。

 オーディンを二つに裂く筈であったオーガストランザーがゴルトセイバーによって受け止めようとする。

 

『Time Out』

 

 そのタイミングでオーガの高速化が解ける。オーガですらフォトンブラッドの出力を落した状態でも加速状態を維持するのは十秒が限度。それ以上は持たない。

 視認出来ない速度で振り下ろされていたオーガストランザーは、通常速度の世界に戻り待ち構えていたゴルトセイバーにより防がれる。

 剣戟音が鳴り響き、攻めるオーガと守るオーディンの力比べが発生する。

 銀色であったフォトンブラッドは金に戻り、低下していた力が元に戻るがそれでもオーガはオーディンを押し切ることが出来ない。

 逆にオーディンの方もオーガを押し返すことが出来ずにいた。オーディンは表面上はダメージ皆無のようだが、実際にはオーガには打ち込まれた打撃がオーディンの体を蝕んでいる。

 お互いに攻め切れない状態が続く中、ビルの外で鳴り響く轟音と震動。落ちていたスマートブレイン本社の上半分が地面に落下したことによる音と衝撃。想定していたよりも音と震動が小さいのはオーガによって細かく刻まれたからである。

 床に転がる瓦礫やガラス片が震動により跳ねる。ふと、轟音に混じって別の音が聞こえて来る。

 最初は小さく聞き間違いかと思われるようなものであったが、段々とはっきりと聞こえるようになってくる。

 空気を切り裂く音。噴射音。鳥の嘶き。それらがオーガとオーディンの頭上から聞こえる。

 オーガとオーディンは同時に空を見上げた。二人の目に映るのはもつれ合いながら高速で落下してくるサイガとゴルトフェニックス。

 サイガとゴルトフェニックスはビルの床を突き破って落下を継続。サイガたちが突き破ったことで床に無数の亀裂が生じ、次の瞬間には壊れて床が抜ける。

 

「むうっ!?」

 

 床の崩落に巻き込まれるオーガとオーディン。サイガたちは止まることなく最下層まで突き抜けていく。オーガたちもサイガたちを追うように穴の開いた床を落下し続けていく。

 その結果、辛うじて残っていたスマートブレイン本社の下半分はサイガとゴルトフェニックスの造った穴に吸い込まれるように崩壊。オーガとオーディンも崩れていく瓦礫の中へ呑み込まれていく。

 巨大な建造物であったスマートブレイン本社は、たった三人と一羽により完全に破壊されてしまった。

 瓦礫の山と化した元スマートブレイン本社。崩壊の衝撃により大量の土煙が舞う。一メートルも見えないよう覆い隠す。

 舞い上がった土煙が消え去るまでかなりの時間が必要になるかと思いきや、積み重なった瓦礫が内側から生じた爆炎により消し飛ばされ、土煙もまた衝撃波により彼方まで吹き飛してしまう。

 更地となったスマートブレイン本社。跡地に立つのは腕組みをしたオーディンとその背後で守護するように浮かぶゴルトフェニックス。

 ゴルトフェニックスが翼を震わせる。火の粉のような黄金の光が翼から零れ、オーディンへ降り注いだ。光の中でオーディンがこれまで付けられた傷が治っていく。時間にすれば数秒でオーディンは元通りの姿となった。

 オーディンの視界内にオーガとサイガの姿は無い。ゴルトフェニックスの反応も無し。少なくともオーディンたちが探知出来る範囲に二人は居ない。

 オーディンの視界を横切る薔薇の花びら。それを見ただけで何があったのかを察する。ゴルトフェニックスの赤い目が花びらを睨むと、薔薇の花びらは一瞬で燃え尽き、灰も残らない。

 崩壊のどさくさに紛れて身を隠したと二人をオーディンは探そうとはしない。オーディンには分かっていた。探さなくとも自らここへ来ることを。オーガもサイガもこの場所で決着をつけるつもりである。ならばわざわざ探しに赴く必要はない。

 激闘に次ぐ激闘に突如として訪れた束の間の静寂。オーディンは不動の姿勢のままその場で佇む。

 




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