RIDER VS ー異形たちの見る夢ー   作:K/K

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天地を超えた先の無限

『はぁ……すまない、ボス』

 

 肩を貸していたレオを適当な場所へ座らせる。

 サイガの耐久はスマートブレイン本社に落下したときに限界を迎えてしまい、変身が解除されてしまっていた。レオは運良く落下の衝撃によりゴルトフェニックスから離れることが出来たが、今度は崩れ行くスマートブレイン本社に押し潰されそうになってしまった。

 オーガは咄嗟の判断で変身を解除。そのままローズオルフェノクとなり、レオと共に瞬間移動をして崩壊を免れた。

 ついでに体勢を立て直す為にオーディンからなるべく離れた。似たような能力を持っているので探知出来ない距離も凡そ分かる。

 

「随分と追い詰められたみたいですね……貴方程の実力者が」

 

 ゴルトフェニックスがどれ程相手か、レオの疲労した顔色を見れば一目瞭然であった。

 

「感謝しますよ。貴方が引き付けておいてくれたおかげで対等に戦えました。もし、あのミラーモンスターと一緒だったのなら、今頃こうして私は貴方と話をしていないでしょう」

 

 ローズオルフェノクのプライドは高い。しかし、そのプライドの高さで目を曇らせ、事実から目を背けるような愚か者ではない。オーディンとゴルトフェニックスならオーガの方が分は悪い。

 

『……ボス、もしあの鳥と戦うなら必ずオーガになった方が良い』

「オルフェノクとして戦うべきではないと?」

『ああ。サイガだからこそあの程度で済んだ。あの鳥の能力の詳細は分からないが、僕の本能が訴え掛けるんだ。『オルフェノクとして戦うな!』って』

 

 レオの言っていることは直感的なものに過ぎない。しかし、右腕として信用しているレオの言葉だからこそ信じるに値する。

 

「そうですか。戦った甲斐がありましたね、レオ」

『情報一つ程度持ち帰っただけじゃ、皮肉っぽく聞こえるなー』

 

 成果を出していないとレオは思っているのでローズオルフェノクの言葉を素直に受け取れない。

 

「貴方は生きて戻ってきた。……そう、生きてこそですよ」

 

 ローズオルフェノクの言葉には含みがある。

 オルフェノクは人間としての死を経験し、オルフェノクとして生を受け、第二の人生をオルフェノクとして生きることで人間であったときの価値観をオルフェノクの価値観へ染め直す。

 しかし、その過程でどうしても歪さを抱く。大半のオルフェノクはオルフェノクとして生きて来た長さよりも人間として生きて来た方が長い。一から価値観を変えるとなるとどうしても歪んでくる箇所が生じる。

 レオの視点からしてもローズオルフェノクはどちらかと言えばまだまともな方であるが、時折だが歪みを感じさせる。

 生まれながらのオルフェノクという特異な存在であるレオにとって、そこに人間であったときの名残を強く感じてしまう。尤も、それを口に出すことはない。言えばきっとローズオルフェノクは怒り狂う。

 

「……この戦いは命懸けのものになります」

 

 近くの壁面にローズオルフェノクの影が映る。影に浮かぶ村上の姿。真剣さと緊張を混ぜ合わせた表情をしている。

 村上風に言えばオルフェノクとして上の上である彼にとって、オーディンは明確な格上の相手。オーガの力を以ってしても迫ることは出来るが差を埋めることは叶わない。

 オルフェノクとなり村上は死とは無縁の生き方をしてきた。死んだ経験が死を遠ざけるのことになるのは皮肉としか言えない。そんな彼に訪れる死の予感。

 村上の顔にある緊張感は迫る死への恐れの表れ。死を恐れるのは人としての感覚か、それともオルフェノクとしての感覚なのか。

 

「──そうだね」

 

 レオは影の中の村上から目を逸らしながら答えた。村上は完璧に隠していると思っているが、レオには村上の表情の奥底にある恐れを感じ取っていた。そのことに対して臆病だとは思わない。当然の感覚と言える。寧ろ、表面上は一切出していないことを称賛したい程であった。

 

「レオ、貴方は命懸けで戦えますか?」

 

 村上の問いに対し、レオは不敵な笑みを浮かべる。村上は、レオのふてぶてしい態度を見て安堵を覚えた。少なくとも死への恐怖で臆しているようには見えない。

 

(すまないね、ボス)

 

 人間らしい反応をする村上にレオは心の中で詫びる。今のレオは村上の心情に共感が出来ない。何故なら、レオはこの戦いに強い高揚感を覚えていた。

 未知なる強敵。喉元に突き付けられた死。死の陰が濃く見える戦い。そのどれもがレオの闘争本能を強く刺激してくれる。

 オルフェノクという存在は生と死が曖昧な灰色の存在。故に変身する者によってどちらかへ傾く。

 土壇場で村上とレオとの間に大きな差が生じる。人間を嫌悪しながらも人間であったときの価値観──生を捨て切れない村上。オルフェノクを嫌悪しながらも誰よりもオルフェノクという種──死に染まったレオ。

 オーディンという強敵と戦うことを決心しながらも二人の心情は大きく異なる。

 

「──行きましょう」

『OK』

 

 相手が何を思っているのか分かる筈も無く、互いに交わした言葉だけを真実として二人は戦いの場へ赴いた。

 

 

 ◇

 

 

 更地に立つのは彫像のように微動だにしないオーディン。その頭上ではゴルトフェニックスが翼を羽ばたかせることなく浮いている。

 彼らはただ待っていた。敵がこの地にやって来るのを。追おうとはしない。無駄な労力と消耗を抑える為に。不動であることが敵に対して最大限の警戒を抱いていることを表している。

 オーディンの顔が僅かに動く。動かなかったオーディンが動いたということは──

 

「お待たせしました」

『やあ。身嗜みを整えるのに時間が掛かってしまったよ』

 

 ──倒すべき相手がやっと来たことを示す。

 

「……」

 

 オーディンは腕を組んだまま二人を無言で見詰める。もしかしたら、睨んでいるのかもしれないが、オーディン自身感情が希薄なので読み取り難い。

 村上とレオは腹部に帝王のベルトを巻いたまま人の姿をオーディンの前に晒す。変身してから来ても良かったが、二人はそれを敢えてしなかった。

 素顔を晒すのは敵に対する彼らなりの敬意。これから自分を倒す者たちの顔をその記憶に刻み込む為である。

 

「……お前たちが足掻こうと無駄だ」

 

 それはオーディンが発した言葉ではない。いつの間にかオーディンの傍に現れた神崎が発したものである。

 

「おや? 居たのですか? てっきりミラーワールドの隅に隠れていたと思っていましたよ」

『飼い犬の様子でも見に来たのかい?』

 

 実質的ミラーワールドの支配者である神崎に村上は嫌味を込めて、レオは表面上にこやかながらも村上と同じく嫌味を吐く。

 二人の敵意と毒を浴びせられても神崎は表情一つ変えることはなく、相変わらず死人と区別出来ないような生気の無い無表情を保ち続けている。

 

「お前たちオルフェノクが、ライダーの力を用いたとしてもオーディンが負けることはない」

 

 それが確固たる事実だとして淡々と語る神崎。感情が見えない神崎だが、オーディンに対して絶対的な自信があることだけは伝わって来る。

 

『そんなことを言われると、逆にやる気が出てくるじゃないか』

 

 レオは意を介さず、好戦的な様子でサイガフォンに番号を入力する。

 

「その力が上の上なのは認めましょう……しかし、私たちはそれ以上です」

 

 村上もまたオーガフォンのボタンを押す。

 

『Standing by』

『変身!』

『Complete』

 

 二人はベルトにオーガフォン、サイガフォンを挿し込む。金と青の光が発せられ、オーガとサイガ、天と地の帝王が並び立つ。

 神崎は変身した二人を見た後、オーディンの方へ視線を向け、一言。

 

「……許可する」

 

 告げられたオーディンは無言で頷いた。神崎は言うべきが済んだのか、オーディンにもオーガたちにも背を向けて去って行く。

 オーガたちはそれを止めることが出来ない。立ちはだかるオーディンによって。

 オーディンは組んでいた腕を解き、左手で空を握る。空の手の中で金色の光が伸び、光はゴルトバイザーと成る。

 ここまでは特別驚くようなことではない。カードを装填し、新たな武器を取り出すのかという若干の警戒を二人に与える程度。

 違ったのはここから先であった。

 オーディンは徐にゴルトバイザーを持ち上げ、柄頭で地面を突く。ゴルトバイザーの先端にある翼を閉じた不死鳥の装飾が、それにより翼を左右に広げた。

 翼に隠されていたのは三つのカードスロット。その内の中央にあるスロットには不死鳥の胴体部分が描かれたカードが既に収められている。

 これこそがオーディンの力の根源である無限のサバイブのカード。オーディンはこの力により常時サバイブの状態を維持していることが出来る。

 本来ならばゴルトバイザーの内部に隠しておく必要があるもの。オーディンにとって無限のサバイブを見せることは自身の弱点を露出するに等しい。しかし、オーディンが本気──否、本来の力を発揮するにはゴルトバイザーを展開しなければならない。

 オーディンは上向きにした掌を掲げる。何処からか飛んで来る赤と青の光。二つの光はオーディンの手の中でカードの形となる。それはリュウガともう一人のライダーに与えていた烈火と疾風のサバイブのカード。

 神崎が所持していたカードであり、元々はゴルトフェニックスの分けられた力。強制的に回収することは容易い。無論、奪われた所持者たちがどうなろうと気にもならない。

 二枚。オーディンが持つカードがたった二枚増えただけに過ぎない。しかし、それだけのことなのにオーガとサイガは背中に伝わる悪寒を止めることが出来なかった。

 サバイブがどんなカードであり、どのような効果があるかなどオーガたちは勿論知らない。だが、サバイブのカードに描かれた揺らぐ炎と渦巻く風は二人の本能の死を予感させてしまう。

 オーディンが何かをする前に止めなければ。オーディンの動向を傍観などしていられない。一つでも行動が始まる前に潰す必要がある。

 オーガとサイガは前に飛び出そうとし──直感が二人の足を止めさせる。

 

『!?』

 

 眼前を通り抜けていくのは烈火。オーディンの周囲が烈火が生む出す高熱により溶解していく。足を止めた二人に見えない圧が掛かる。吹き荒ぶ疾風がオーガとサイガを踏み止まらせるどころか押し返してくる。

 どちらもサバイブのカードが生み出す副次効果。オーディンはまだカードの使用すらしていない。

 そこには不可思議な現象が起こっていた。オーディンを守るように燃え盛る炎と敵の行く手を阻む突風。炎と風は互いに干渉することはなく、強風が吹き荒れている状況の中でも消えるどころか揺らぐことなく燃え続けている。

 超常的力の共存。オーディンが自身の力を完璧にコントロールしている故に起きている。

 オーディンはサバイブのカードを掲げる。カードはオーディンの手から離れ、ゴルトバイザーのスロットへ浮遊していく。

 

「くっ!」

 

 オーガはすぐにでも止めたかったが、風が壁のように押し返してくる。オーガとサイガの装甲金属は頑丈さと軽さを両立させ優れた金属だが、それでも百キロ前後の体重がある。しかし、それでも二人は前に進むことが出来ない。倒れないようにするだけでも精一杯であった。

 

『──』

 

 サイガの口から普段は出ない汚い罵声が零れ出た。目の前にいるのに辿り着くことが出来ない現状に対し酷く苛立っている。飛ぼうとしてもサイガは纏わり付く風のせいで姿勢制御が困難になり、無理にでも飛ぼうとすれば別方向へ飛ばされてしまう。

 オーガとサイガが仮面の下で顔を憤怒と悔しさで歪めている中でオーディンのゴルトバイザーに三枚のサバイブがセットされる。

 

『SURVIVE』

 

 三枚のサバイブを収めたゴルトバイザーが天上の輝きを放つ。

 全てを焼き尽くす烈火が、あらゆるものを吹き飛ばす疾風が、オーディンへ吸収されていく。

 ゴルトフェニックスは歓喜のような鳴き声を上げ、その身から放つ黄金の光を更に強める。

 オーガとサイガはオーディンが放つ光のせいでその場から動くことが出来ない。燃え盛る業火があるわけではなく、押し返してくる風の壁があるわけでもない。まるで聖域のような立ち入ることを許されない領域がオーディンの周りに展開され、オーガとサイガは無意識にその領域へ踏み込むことを拒んでいた。

 光の中で滞空していたゴルトフェニックスが降りてくる。オーディンの背にその足を伸ばすと、足がオーディンの背中に沈み込んでいく。

 ゴルトフェニックスの下半身はオーディンの体内へ取り込まれ、一体と化す。

 黄金の輝きに満ちた空間内でオーディンはゴルトフェニックスの翼を広げた。オーディンとゴルトフェニックスは融合し、その翼は最早オーディンのものである。

 サバイブで強化されたミラーモンスターは共通してバイク形態へ変形する力を得る。そこにライダーが搭乗することで人獣一体となり無類の力を発揮する。

 オーディンの三枚のサバイブは更にその上を行く。仮面ライダーとミラーモンスターの完全融合。仮面ライダーでありミラーモンスターである存在となり、どちらの力も百パーセントを引き出せる。

 ゴルトフェニックスと一体となったオーディンは、全身から金色のオーラを放つ。右翼に埋め込まれた青い宝珠、左翼に埋め込まれた赤い宝珠が眩しいまでに輝く。

 

「──準備万端、といったところでしょうか?」

 

 結局阻むことが出来なかったオーガは悔し気に呟く。

 

『何というか……言葉が見つからないね。くっ』

 

 サイガはオーディンが放つ圧倒的な強者の存在感に畏れを通り越して失笑してしまう。ここまで来ると最早笑うしかない。しかも、これからそんな相手に挑むという。自分たちの無謀さが滑稽に思えると同時に否が応でも闘争心が燃え上がる。

 

『勝算はあるかい? ボス』

「やるべきことは一つしかありません。小細工無しで正面から破る。それが最も無謀で、最も勝率の高い方法です」

 

 逃げるという選択肢は早々に潰されている。あれを前に逃げ切れる気がしない。

 

『何とも無謀だね……ワクワクしてきたよ!』

 

 サイガは絶体絶命な状況下でも笑う。元より自分の命に頓着していない。燃え尽きて灰になる時が来たのならば、それを全力で楽しむだけ。

 

「貴方を傍に置いて良かったのやら、悪かったのやら」

 

 感性にはついていけないが、強敵を前にしてはこれ以上無いぐらいに頼もしい。

 

「──帝王のベルト、その名に相応しい力を見せつけてあげましょう」

『了解!』

 

 サイガはフランイングアタッカーを噴射させ、空目掛けて急上昇。天の名が示すように上空から攻撃を仕掛けようとする。

 一方でオーガは手に持っていたオーガストランザーを投げ捨てた。オーガストランザーはオーガにとって最強の武器ではあるが、最強の技ではない。

 オーガたちが動いたタイミングでオーディンもまた動き出す。オーディンのカードデッキから手で触れることなく何枚ものカードが飛び出していく。

 ソードベント、アドベント、ガードベントといったオーディンをサポートするカード群。本来ならば契約したミラーモンスターによって与えられるカードが決められているが、オーディンは特権として全てのカードを所持している。

 カードデッキから飛び出したカードは、空中で∞の軌跡を描く。軌跡の中のカードは速度を上げていき、最後にはスピードの中に形を溶かし、∞の形そのものとなる。

 空中で描かれた∞は黄金の光を放つと消え、いつの間にかオーディンの左手には一枚のカードが握られていた。

 全てのカードが合わさることで誕生するオーディンにとって真のファイナルベントカード。描かれているのは翼を左右に広げた不死鳥の紋章。サバイブのカードを三つ並べたときの姿である。

 オーディンは真ファイナルベントのカードをゴルトバイザーに挿し込む。

 

『FINAL VENT』

 

 ゴルトバイザーがカードの効果を読み上げた次のときにはゴルトバイザーに罅が生じる。罅は一か所だけでなく次々と発生していき、最後にはゴルトバイザーが粉々に砕け散った。

 カードを読み込むだけで内包するエネルギーに耐え切れなくなり召喚機が壊れた。これによりオーディンはもう他のカードを使用出来ない。しかし、オーディンにとっては些細なこと。

 次など来ない。今からオーディンが繰り出すのは終焉の一撃。如何なる存在だろうと倒す文字通りの必殺でありデウスエクスマキナの具現化。

 神の顕現に対し、オーガとサイガがやることは一つ。

 

『Exceed Charge』

 

 サイガは空高く飛んだ後、フランイングアタッカーのライフルの銃口をオーディンへ向け、チャージした青のフォトンブラッドを発射。そして、発射の後、それを追い掛けて全速力で降下を開始。

 ラインを伝わりオーガの両足に金のフォトンブラッドが充填されると、オーガは地を駆ける。

 最高速度に達するとオーガは跳躍。空中で両足裏をオーディンに向ける。オーガの足裏にはポインターが内蔵されており、そこからフォトンブラッドがオーディンへ放たれた。

 オーガ、サイガ共に射出した二つの光弾は、途中で一つに合わさりオーディンの眼前で円錐状に展開──巨大なポインティングマーカーとなる。

 金と青のポインティングマーカーにより二重の拘束を受けるオーディンだが、やや動きがぎこちなくなるだけで、完全に動きを止められない。

 オーディンは両手を左右に広げる。オーディンの全身が内から溢れ出る黄金の、燃えるような光に包まれていき、その形を変えていく。

 オーディンは見る者の目を二つの意味で奪う、神々しく、激しく、光り輝きながら燃える不死鳥の姿となった。

 オーガは跳躍の勢いのまま両足からポインティングマーカーへ、サイガはフライングアタッカーで最高速度を維持したまま片足からポインティングマーカーへ突入。

 天と地から繰り出される二つのキックが不死鳥に突き刺さる。

 

「はああああっ!」

『たああああっ!』

 

 不死鳥は、その身を貫かれながら抱擁するように翼を畳み、そして──

 

 

 

 ◇

 

 

 オフィス街。多くの人々が仕事の為に、或いは恋人とのデートで、または家族と一緒に歩いている。

 誰が何を考えているのか、それは分からないが誰もが今日を当たり前の一日だと思っていた。次の瞬間までは──

 

「──うん?」

 

 最初に気付いたのは誰だったかは分からない。その人物は不意にガラス窓に罅が入ったことに気付いた。思わず罅が入った箇所をまじまじと見つめてしまう。

 そのとき、ガラス窓が突然光り、砕け散った。

 

「うわっ!」

 

 反射的に仰け反る。その拍子で尻餅をついてしまう。

 

「いたた……え?」

 

 違和感を覚えた。視線の先に何かがある。初めは揃えられた長靴だと思った。しかし、よくよく見ると長靴ではない。履き口から青い炎が噴き出したそれは人の両脚。なら、その持ち主は誰なのか。

 

「あれって──」

 

 答えを察する前に体から青い炎を噴き出し、灰となったこの人物は幸せだったのかもしれない。

 何故ならば、これは今から起こる地獄のほんの前哨。地獄の本番はここから始まるのだ。

 連鎖的に引き起こる大規模なガラスや鏡、鏡面がある物体の発光と破壊現象。

 

「いやああああああっ!」

「きゃあああああああ!」

「うわあああああああっ!」

 

 次に起こるのは青い炎による人体発火現象。ガラスなどから発せられた光を浴びてしまった者たちが次々と青い炎を発火し、灰となって崩れ落ちていく。

 日常は一瞬で崩壊し、地獄のような光景が出来上がる。

 一瞬で灰になれたのならまだ幸せ。中には体の一部だけが灰となって失い、体を青い炎で焼かれる苦しみを味わっている者たちが大勢いる。

 そんな彼らの苦しみを嘲笑うかのように地獄は次なる段階へと進む。

 阿鼻叫喚と化した地獄のオフィス街から逃れようとする者。そんな彼らの目に映ったのは空から舞い散る異常現象。

 

「光る……雪?」

 

 雪のような何かが空から降って来る。青白く発光するそれが人体に触れた瞬間──

 

「うああああああっ!」

 

 ──青い炎となって人間の体を蝕み出す。

 オーディン、オーガ、サイガの激突の際に生じたエネルギーは、最早ミラーワールドで納め切れるものではなかった。

 溢れ出したエネルギーは、ミラーワールドから鏡面を通じて現実世界へ飛び出していく。

 雪のように見えた青白い発光体は、劣化したフォトンブラッド。高出力を誇るオーガとサイガの大量のフォトンブラッドが、オーディンとの衝突によりミラーワールドを通じて現実世界へ大量にばら撒かれる。

 




・ファイナルベント『真・エターナルカオス』 AP0000
全てのサバイブのカードを使用することで可能となるオーディンのファイナルベント。
APが0なのは絶対に防ぐことの出来ない必殺の一撃なので数値化出来ないから。
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