RIDER VS ー異形たちの見る夢ー   作:K/K

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長くなりそうなのでとりあえずここまで。


無限の中で

 ドラゴンオルフェノクが泣き喚き始めたとき、戦う気が一気に失せたが今はそれを上回る程の歓喜が王蛇サバイブの内に起こっている。

 新たな姿へ進化したドラゴンオルフェノク激情態が、今まで以上の剥き出しの殺意を放ちながらこちらへ飛んで来ている。その事実がこれ以上無い程に楽しい。

 王蛇サバイブはベノバイザーツバイを振り抜く。蛇腹状の剣が伸び、鞭となってドラゴンオルフェノクを襲う。剣としての切れ味を維持したまま鞭の速度の一撃。命中すれば当たった箇所は無事では済まない。

 ドラゴンオルフェノク激情態は、迫ってきているベノバイザーツバイの刃に気付いていた。しかし、飛翔する速度を落とすことはせず自分から接近していく。

 ベノバイザーツバイの刃がドラゴンオルフェノク激情態の眉間を貫こうとした刹那──

 

「ふん」

 

 ドラゴンオルフェノク激情態は虫でも払うかのように刃は竜頭の籠手で弾く。籠手に傷が出来たが、その程度。ドラゴンオルフェノク激情態の体の硬度は、王蛇サバイブの想定を遥かに上回っている。

 ドラゴンオルフェノク激情態は、刃を弾いた反対側の籠手を王蛇サバイブへ向ける。籠手の内部から火球が発射され、王蛇サバイブへ飛んで行く。

 

「ちっ」

 

 王蛇サバイブは素早く腕を引いて弾かれた刃を戻すと同時に横へ飛び込み、火球を回避。だが、火球が着弾すると凄まじい爆発を起こし、王蛇サバイブは爆風で吹き飛ばされる。

 背中を強打されるような衝撃を受け、王蛇サバイブは受け身も取ることが出来ず地面を数度バウンドしていく。

 

「ぅぅ……」

 

 低い唸り声を出しながら王蛇サバイブは地面から体を起こそうとしたとき、その体が跳ねるように起きる。

 王蛇サバイブが地力で立ったのではない。ドラゴンオルフェノク激情態の竜頭の籠手が王蛇サバイブの両腕に嚙みついて引っ張り上げていた。

 

「離せっ!」

 

 王蛇サバイブが両腕を激しく動かし、抵抗する。しかし、ドラゴンオルフェノク激情態は容赦なく竜頭の籠手で王蛇サバイブの両腕を嚙み砕いた。腕を砕かれたことでベノバイザーツバイを放し、床に落ちる。

 

「があああっ!」

 

 王蛇サバイブは苦鳴を上げながらも腕や武器が使えなくなった途端、今度は足で抵抗を続け、何度も何度も爪先でドラゴンオルフェノク激情態の胴体を蹴る。だが、王蛇サバイブのキック力を以ってしても吊り上げられた不安定な体勢では十分な威力を発揮することが出来ず、ドラゴンオルフェノク激情態は微動だにしなかった。

 王蛇サバイブの危機にベノヴァイパーが動く。威嚇音を立てながら素早い蛇行でドラゴンオルフェノク激情態へ近付き、その牙を突き立てようとする。

 

「邪魔」

 

 ドラゴンオルフェノク激情態の骨のような尾がベノヴァイパーの胴体を強く打ち、数メートルもあるベノヴァイパーの巨体が軽々と飛んで行く。

 ベノヴァイパーは口から黄土色の体液を吐きながら壁面に衝突。それでも勢いは衰えず、壁面を突き破って外に消えていった。

 ベノヴァイパーを一蹴したドラゴンオルフェノク激情態は、王蛇サバイブを高く上げる。王蛇サバイブの足は完全に地面から離れ、王蛇サバイブの全体重が砕かれた両腕に掛かる。

 

「っあ!」

 

 王蛇サバイブもその激痛に一瞬動きを止めた。しかし、すぐさまその痛みを怒りに転じさせ、ドラゴンオルフェノク激情態を蹴り付ける。

 ドラゴンオルフェノク激情態は王蛇サバイブに敢えて無駄な抵抗をさせながら徐に上半身を後ろに逸らす。

 王蛇サバイブを胸部のドラゴンの意匠が睨むような形となる。すると、胸部のドラゴンの意匠が迫り出し、口吻が伸びていき遂には口を開いて長く湾曲した牙を見せた。

 ドラゴンオルフェノク激情態の胸から突き出たドラゴンの巨大な顔は、顎を限界まで開く。

 ドラゴンの口内の奥を照らす光。光は強さを増していき、光は熱を帯びていく。至近距離でその光を浴びせられた王蛇サバイブの装甲から白煙が立ち昇り出す。

 

「──消えろ」

 

 ドラゴンの大口から吐き出される強力な炎。太陽を吐き出したのかと勘違いしてしまいそうな超高温の炎が王蛇サバイブに直撃。王蛇サバイブの装甲に一瞬で泡が立ち、溶け、最後には蒸発。

 王蛇サバイブは灰すら残らずドラゴンオルフェノク激情態の台詞通りに気化して消えてしまった。

 

『TIME VENT』

 

 王蛇サバイブの死をトリガーにしてタイムベントが自動的に発動する。時間は戻り、戦いも振り出しに戻る。

 王蛇サバイブはファイナルベントのカードをベノバイザーツバイに装填しようとし、動きが止まる。突如脳内を巡る焼失の記憶。覚えのない一瞬で全てを消し去る業火の記憶がフラッシュバックし王蛇サバイブの硬直させていた。

 既視感として残る前回の時間の記憶。それが作用するのは王蛇サバイブだけではない。

 

「ああああああああああっ!」

 

 ドラゴンオルフェノクが咆哮を上げ、激情態へと進化する。激情態への形態変化など今まで一度も行ったことがない筈なのに既知のように変身することが出来た。何かが起こっているのは間違い無いが、ドラゴンオルフェノク激情態はそれを気にしない。

 それよりも優先すべきこと──王蛇サバイブの息の根を止める方が最優先である。

 ドラゴンオルフェノク激情態は左右の籠手を王蛇サバイブは突き出す。竜の口部が向けられると王蛇サバイブの脳裏に火球が撃ち出される光景が浮かぶ。

 何故それが浮かんだのか王蛇サバイブには分からない。しかし、いやに生々しい光景であった為、その光景に従い王蛇サバイブは横へ飛んだ。

 王蛇サバイブが飛んでからワンテンポ遅れて籠手から火球が放たれる。当てるべき王蛇サバイブは居ないので、外れた火球は壁に直撃。爆発を起こすが、王蛇サバイブは先に動いていたおかげでギリギリ爆風には巻き込まれずに済んだ。

 飛び終えた王蛇サバイブは、ベノバイザーツバイを構える。だが、ドラゴンオルフェノク激情態は王蛇サバイブが火球を避けたことに動揺はしていない。

 初見で躱されたことは少々驚くべきことなのかもしれないが、大したことではない。ドラゴンオルフェノク激情態が王蛇サバイブを仕留める手段はまだ豊富にある。

 王蛇サバイブがベノバイザーツバイを振り抜こうとしたタイミングでドラゴンオルフェノク激情態は右の籠手を払う仕草を見せる。バシュン、という音が鳴り王蛇サバイブの背後の壁に一文字の傷が生じる。

 

「あぁ……?」

 

 王蛇サバイブは不思議そうに背後の壁を見た。どういう原理で王蛇サバイブをすり抜けて壁に傷を付けたのか分からない。

壁の傷に注目してみる。傷の縁から垂れる透明の液体。壁の傷は濡れていた。

 何故傷が出来たのか、どうして濡れているのか王蛇サバイブには理解出来なかったが、いつまでもそれに拘るような性分ではないので、さっさと忘れて目の前の戦いに集中しようとする。

 そこで王蛇サバイブは自分の身の異変に気付く。半身になった体勢が元に戻らない。首から下が王蛇サバイブの意思が伝わっていないかのように。

 王蛇サバイブは強引に体を動かそうとする。そのとき王蛇サバイブは後ろへ倒れていく。

 摩訶不思議なことに倒れていく王蛇サバイブが見たのは、まだ立っている自分の下半身。

 何が起こっているのか理解する前に王蛇サバイブは二つの感覚を味わう。それは熱と冷たさ。焼けるような熱い感覚を胴体に感じる一方で、本来ならば外気に触れる筈の無いものが外気に触れ冷たさを感じる。

 ドラゴンオルフェノク激情態の攻撃は王蛇サバイブをすり抜けた訳では無い。あまりに速く、鋭かった為にすり抜けたと勘違いしてしまったのだ。

 ドラゴンオルフェノク激情態の籠手から放たれたのは加圧された水。それをカッターのように使い、切断した。

 火だけでなく水すらも操るドラゴンオルフェノク激情態。地面に落ちた王蛇サバイブは、それをしっかりと目に焼き付け、そして──

 

『TIME VENT』

 

 ──次なる時間に生かす為に痛みと死を魂に刻み込む。

 タイムベントにより時間が戻り、二人に新たな既視感が増える。王蛇サバイブは知らぬ筈の痛みと死の既視感が増える。王蛇サバイブにとって既知感が増えることは愉快なことではなかったが、それによる死の痛みが彼の中に苛立ちを上書きし、苛立ちを消してくれる。

 一方でドラゴンオルフェノクは怒りが増していた。彼の記憶の中に残る王蛇サバイブの死。王蛇サバイブが死ぬことを心の底から願っているが妄想にしては生々しく具体的な記憶であった。

 しかし、頭の中でそれが流れても現に王蛇サバイブはまだ生きており、目の前に立っている。その現実がドラゴンオルフェノクを余計に怒らせ、彼を激情態へ進化させた。

 初撃から繰り出されるドラゴンオルフェノク激情態の火球。王蛇サバイブは来ることを知っていたかのような動きで余裕を持って回避。ドラゴンオルフェノク激情態はすかさず籠手を横薙ぎに払う。

 籠手から加圧された水流のカッターが飛び出し、王蛇サバイブの胴体を狙う。

 王蛇サバイブは地を這うが如く低空姿勢となって水のカッターを避け、その状態のまま前進。ドラゴンオルフェノク激情態の足元まで移動し、立ち上がり様にベノバイザーツバイで斬り上げる。

 ドラゴンオルフェノク激情態の胸部がベノバイザーツバイにより傷付けられる。しかし、傷は浅い。王蛇サバイブの攻撃が当たる前に半歩程後ろに下がったことでダメージを軽減させた。

 王蛇サバイブは攻撃を続けようとし、あるものが目に入る。ドラゴンオルフェノク激情態の両肩にある竜の意匠。飾りかと思われたそれが王蛇サバイブへ鎌首をもたげている。

 両肩の竜と目があった瞬間、左右の竜は口からどす黒い煙を吐き出し、王蛇サバイブへ浴びせる。

 

「ぐっ!」

 

 王蛇サバイブが黒い煙を浴び、最初に異変が生じたのは目。眼球に直接針を刺されたような激痛が走り、まともに目が開けなくなる。続けて起ったのは手足の痺れ。感覚がおかしくなっていきベノバイザーツバイを握っている感触が消失していく。

 黒い煙を吸い込んだことで喉、肺に熱湯を流し込まれたような痛みを覚え、呼吸がままならなくなる。

 

「がはっ! ごほっ!」

 

 喉の強烈な違和感により咳き込みだす王蛇サバイブ。咳は激しさを増していく。ゴボッという何かが溢れ出る音がする。王蛇サバイブの口部──クラッシャーから大量の血液が出ていた。

 大量の吐血。吐き出しても尚血は止まらない。ドラゴンオルフェノク激情態の出した煙は、王蛇サバイブの状態を見て分かるように毒である。吸えばたちまち体を蝕み、溶かす邪竜の毒。

 王蛇サバイブが吐き出しているのは血だけではない。溶解し出した体内の一部もそれに混ざっていた。

 このまま吸い込み続ければいずれは王者サバイブは口から体内のもの全てを吐き出し、骨と皮のみになるだろう。そうなる前に全身が溶けてしまうかもしれない。

 だが、ドラゴンオルフェノク激情態はせっかちである。王蛇サバイブを嬲るつもりはない。彼の怒りは既に最高点に達しており、王蛇サバイブの生死関係無く目の前に存在することすら許せない。

 ドラゴンオルフェノク激情態の両肩の竜の口から再び吐き出される。先程は毒の煙であったが、今度はどす黒い液体であった。

王蛇サバイブの頭からそれを掛けられ、黄金の装甲が黒で穢される。

 すると、王蛇サバイブの装甲が音を立てて溶け出す。竜が出したのは毒の煙を液体化させたもの。範囲は狭まるが、その分濃度が増しており毒の煙よりも威力が高い。

 強い粘着性を持つ毒液を拭い取ることは出来ず、王蛇サバイブは毒液の中でもがきながらやがて毒液と肉体との境目が無くなり、溶け込んでいく。

 

『TIME VENT』

 

 何度も巻き戻される時。その度に王蛇サバイブに刻まれていく死の記憶と体験。

 ある時はドラゴンオルフェノク激情態の角から放たれる電撃による感電死。別の時ではドラゴンオルフェノク激情態の剛力により真っ向から圧し潰された。更に別の時ではドラゴンオルフェノク激情態に掴まれ、そのまま空を駆けて行き最期には頭から地面へ叩き付けられる落下死。ベノヴァイパーと一緒に仕掛けたこともあったが、ベノヴァイパーの方が先にやられ、契約解除されて呆気無く死んだ時もあった。

 王蛇サバイブは強い。だが、ドラゴンオルフェノク激情態はそれよりももっと強い。一対一ではまず勝てない。しかし、王蛇サバイブはタイムベントというイレギュラーにより本当ならば一回で終わる筈の戦いを何回もやり直すことが出来ていた。

 周回を重ねる度に既視感による読みで王蛇サバイブは確実にドラゴンオルフェノク激情態にダメージを入れられるようにはなっている。だが、時を重ねる度に王蛇サバイブの中には死が蓄積されていく。それは常人ならば耐え難い経験である。

 しかし、王蛇サバイブが既知感の死に対して屈する様子はなかった。それどころか、時を重ねるにつれて動きがより激しく、禍々しくなっていく。

 時間を繰り返すことで蓄積した経験により現状を打破する。王蛇サバイブと似たような状況に陥ったとあるライダーは、そうやって繰り返す時間の中を乗り越えた。

 王蛇サバイブもまた似たようなやり方で相手を攻略する──ことは不可能である。そもそも王蛇サバイブにはそのライダーのような忍耐力は無い。執念深さは持っているが、それは忍耐とは似て非なるもの。

王蛇サバイブは性格上耐え続けて学習することは不得手であった。

 なら、王蛇サバイブの周回が増す毎に動きにキレなどが出来ている理由は何なのか。そもそも王蛇サバイブは考えること自体をある種放棄した生き方をしている。考えること捨てた代わりに彼が得たのは本能、直感という自分の感覚に従って生きること。

 蛇の如き蛇行した動きでドラゴンオルフェノク激情態へ接近していく王蛇サバイブ。

 

「ははっ! 愉しいなぁ!?」

 

 言わずにはいられない。笑わずにはいられない。

 相手が強敵だろうが、死が付き纏おうが、何処までいっても王蛇サバイブにとって戦いは苛立ちを消してくれる娯楽であり麻薬であり快楽に過ぎない。

 

 

 




・ドラゴンオルフェノク激情態
身長:225.0cm

体重:177.0kg

特色/力:伝承や伝説にある竜、龍の能力が使用可能
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