RIDER VS ー異形たちの見る夢ー   作:K/K

48 / 49
これにて全対戦終了。


ファイナルベント

 彼は今何も考えてはいない。周回の中で得た既視感を直感的に信じ、それを躊躇うことなく実行することでドラゴンオルフェノク激情態の攻撃を掻い潜っているのだ。

 言葉や理屈で説明することなど出来ない。頭の中で閃光のように浮かんだ答えに対し、何故そうなるのか考える前に体を動かす。己の直感に命を全て懸けているのは狂人のみに許されるもの。

 ドラゴンオルフェノク激情態が腕を振り被る。それを見た王蛇サバイブはその場で跳躍。直後に籠手から水流のカッターが放たれ、地面を深く抉る。判断が一瞬でも遅れていたら王蛇サバイブの両脚は切断されていた。

 しかし、跳び上がったことで次の攻撃に対して回避が難しくなる。王蛇サバイブは空を飛ぶことは出来ないので空中では無防備であった。ドラゴンオルフェノク激情態は反対側の籠手で王蛇サバイブを狙い、火球を発射。

 そのとき、王蛇サバイブはベノバイザーツバイを前方に突き出す。刃が伸び、壁へ突き刺さると今度は伸ばした刃を戻す。それにより王蛇サバイブは空中で引っ張られ、壁際まで移動し火球を躱す。

 そして、すぐさま壁を蹴ってドラゴンオルフェノク激情態の懐へ飛び込んだ。

 

「はっ!」

 

 上半身を捩じるようにして力を溜めてから放つ渾身の上段斬り。

 ベノバイザーツバイの刃をドラゴンオルフェノク激情態の籠手が受け止める。渾身の力を込めたが、籠手に刃が食い込む程度。切断には程遠い。

 すぐさま反対の籠手が刃を噛み付くようにして掴む。これによりベノバイザーツバイが奪われる──かと思いきや、ベノバイザーツバイはするりと籠手から抜けた。蜥蜴の尻尾の自切のように掴まれていた刃がベノバイザーツバイから抜ける。

 再びベノバイザーツバイをドラゴンオルフェノク激情態へ向ける王蛇サバイブ。ベノバイザーツバイから飛び出したのは刃ではなく毒々しい黄土色の光弾。それがドラゴンオルフェノク激情態の顔面に炸裂する。

 光弾であってもダメージは低いが、至近距離且つ顔面であった為に流石に怯む。

 仰け反りながら後退するドラゴンオルフェノク激情態に王蛇サバイブが詰め寄ろうとするが、突如として突き飛ばされ、壁に衝突する。

 王蛇サバイブを突き飛ばしたのはドラゴンオルフェノク激情態の尾。鞭のようにしなりながらも尾先が槍のように鋭く固いので刺突武器として使用したのだ。

 王蛇サバイブの装甲であろうと容易く貫く──しかし、その攻撃も王蛇サバイブは別の時間で経験済みである。

 

「あぁ……」

 

 呻きながら衝突で凹んだ壁から離れる王蛇サバイブ。その手に持つベノバイザーツバイには罅が入っている。尾先で突かれる直前に反射的に挟み込んだことで直撃を防いでいた。

 痛みはある。それこそ普通なら戦えない程の強い痛みが。しかし、戦いが生み出すカタルシスが王蛇サバイブの中のそれをすぐに消し去ってくれる。

 ダメージを与えたのに物ともしない王蛇サバイブを見て、ドラゴンオルフェノク激情態は不快そうに握っていたベノバイザーツバイの刃を地面に叩き付ける。

 

「ははぁ!」

 

 王蛇サバイブは前方に跳び込みながら体を捻る。ドラゴンオルフェノク激情態には普通の攻撃では威力が足らない。跳び込むことで勢いを付け、更に体を大きく捻ることで振る際の威力を高めようと本能的に導き出した行動である。

 だが、王蛇サバイブの攻撃のモーションは隙が大き過ぎた。ドラゴンオルフェノク激情態の視点からすれば、攻撃をしてくれと言っているようなもの。

 単調過ぎる攻撃。そこで素直に迎撃しても良かったが、ドラゴンオルフェノク激情態は王蛇サバイブの行動にどことなく罠のニオイを感じる。

 五感を敏感にさせ気付いた。今まで存在感を消していたベノヴァイパーが王蛇サバイブの行動に合わせて自分もまた行動を開始している。

 ベノヴァイパーは、数メートルもある巨体にも関わらず音も無く動いている。長い胴体を器用に操り、音を立てずに地面を這っている。もしも、相手がドラゴンオルフェノク激情態でなければ襲われる直前まで気付かなかっただろう。ただでさえ目を離すことが出来ない王蛇サバイブが居るので、ベノヴァイパーの存在感は完全に消えていた。

 ライダーとミラーモンスターの挟撃。だが、ドラゴンオルフェノク激情態は全く動じていない。一人と一匹を足したとしてもドラゴンオルフェノク激情態は自分が完全に上回っていると自負している。

 激情態という感情が振り切れた状態の中でドラゴンオルフェノク激情態は意外なほど冷静に状況を把握している。怒り狂って暴れ回ってもおかしくはないのに、それとは真逆の行動であった。

 ドラゴンオルフェノク激情態の最も優先すべきことは王蛇サバイブを殺すこと。その為に思考力と戦闘力を全て注ぎ込んでいる。ドラゴンオルフェノク激情態の中の怒りが限界を通り越して逆に冷静さを与えており、皮肉にも王蛇サバイブへの限りない怒りと殺意がドラゴンオルフェノク激情態──北崎を少しだけ大人へと成長させていた。

 ドラゴンオルフェノク激情態の左右の籠手が王蛇サバイブとベノヴァイパーに向けられる。放たれるのは火球か水流か。どちらにしても致命傷は免れない。

 すぐに攻撃はしない。十分引き付けた上で回避出来ない状況を作ってから攻撃をするのがドラゴンオルフェノク激情態の考えである。

 開かれた竜の口を向けられても王蛇サバイブとベノヴァイパーは接近を止めない。それを勇気ではなく──蛮勇、無謀と評そうとしたがその言葉すらもこの一人と一匹の行動を飾るには上等過ぎる──ただの考え無し。

 裡に抱く怒りを吐き出すようにドラゴンオルフェノク激情態は攻撃──をしようとした瞬間、爪先に強い痛みが走る。

 

「っ!?」

 

 知らぬ間に攻撃を受けたことに驚いたドラゴンオルフェノク激情態は、反射的に足元に視線を向けてしまった。ドラゴンオルフェノク激情態の足先に生える鉤爪のような太く鋭い爪。その根元部分に突き刺さっているのは先程自切されたベノバイザーツバイの刃。まるで生きているかのように這い、ドラゴンオルフェノク激情態の最も柔い箇所を見つけて刃を潜り込ませる。そして、寄生虫のように内部へ侵入しようとしていた。

 切り離された状態でも動くベノバイザーツバイの刃に驚愕する。全くそんな気配や前兆など感じられなかった。

 これをドラゴンオルフェノク激情態の注意不足と責めるのは酷というもの。何故ならば王蛇サバイブもそんなこと出来るとは知らなかった。王蛇サバイブの強い意思に反応し、ベノバイザーツバイの刃に備わっていた機能が自動的に動き出したのだ。

 思いもよらない横槍が入り、ドラゴンオルフェノク激情態の意識が一瞬だが王蛇サバイブたちから離れてしまった。

 

「ははぁっ!」

 

 それは紛れない隙であり王蛇サバイブたちにとっての好機。

 王蛇サバイブは再び生えてきたベノバイザーツバイの刃を振り上げ、ベノヴァイパーは大きく口を開く。

 先に仕掛けたのはベノヴァイパー。射程内に捉えると口から溶解性の毒液を吐き出す。ベノスネーカーのときよりも遥かに強力になっている毒がドラゴンオルフェノク激情態へ浴びせられた。

 数ある周回の中での意趣返しに成功した王蛇サバイブは、毒液によりグズグズになっているだろうドラゴンオルフェノク激情態の胸部に刃を突き立てる──が、刃は先端が僅かに埋め込まれるだけでそれ以上は硬くて入らなかった。

 

「何だとっ?」

 

 想像とは異なる手応えに驚く王蛇サバイブ。黄土色に塗れながらドラゴンオルフェノク激情態は動く。すると、毒液に変化が生じる。黄土色一色であった筈の毒液に黒い色が混じり始める。

 ドラゴンオルフェノク激情態が体を震わす。細かな振動を秒間に数え切れない程繰り返すことでベノバイザーツバイの刃を弾き飛ばし、ついでに纏わりついていた毒液が吹き飛ばす。王蛇サバイブは飛び散る毒液を咄嗟に避ける。王蛇サバイブであってもベノヴァイパーの毒は危険である。

 浴びせられていた毒液の下から現れたドラゴンオルフェノク激情態の体は、黒い液体に塗れている。それはドラゴンオルフェノク激情態自身が体から出した毒である。

 ベノヴァイパーの毒を吐きかけられる直前に体から毒を滲み出させる。纏っている間も常に毒を生成させ続け、ベノヴァイパーの毒と自身に間を作り直接触れないようにしたのだ。

 毒を以て毒を制す、という言葉があるがドラゴンオルフェノク激情態は正にそれを体現する。尤も、これは考えてやったではない。ドラゴンオルフェノク激情態の本能が危険を感じて行ったこと。しかし、これだけでも分かる通りドラゴンオルフェノク激情態は戦いを制する為に誕生した怪物であった。

 後にも先にも一回しかないチャンスを逃してしまった王蛇サバイブ。だが、彼は──

 

「はぁ……! いいぞ……!」

 

 ──それに絶望を感じず戦意と高揚に変換してしまう。

 怪物に勝つのは常に人間或いは英雄と謳われることがあるが、ここには人間も英雄も居ない。

 居るのは二匹の怪物だけ。

 

(あぁ……頭がスッキリしていく……)

 

 やはり戦いの中でのみ王蛇サバイブの精神を蝕む病のような苛立ちが消える。頭の中が今までに無いぐらいに澄んでいた。

 ドラゴンオルフェノク激情態は紛れもなく最強の敵であり最高の相手である。お互いの性格の反りが合わないのも良かった。精神的な部分では似通っているように判断されるかもしれないが、当事者同士はお互いを殺してしまいたいぐらいに合わない。その合わなさ具合は王蛇サバイブが目の仇にしている某弁護士と良い勝負であった。

 もっと面白く、もっと楽しく、もっと激しく戦いたい。何度も同じ時を繰り返しても王蛇サバイブの欲求は尽きない。それどころか過激になっていく一方。それは危険な精神状態であり、王蛇サバイブはいつ大爆発を起こしてもおかしくはない。

 あと百回戦いの後に? あと十回戦いの後に? あと一回戦いの後に? それとも今すぐに──

 王蛇サバイブはカードデッキからカードを抜き取った。それは決して切るべきではない鬼札。だが、王蛇サバイブの頭の中に躊躇の二文字は無ければ理性によるブレーキも存在しなかった。

 

『UNITE VENT』

 

 遂に発動してしまった禁忌のカード。ベノヴァイパーが天を仰ぎ、咆哮を上げる。それは集合を告げる号令のようであり、これから我が身に起こることに対しての悲鳴のようにも聞こえた。

 最初に現れたのは王蛇サバイブの契約モンスターであるメタルゲラスとエビルダイバー。続いて跳ねながらゼールたちが乱入し、空中ではガルドサンダーらが旋回している。

 建物の壁や天井を突き破り、ディスパイダーらが登場。絶えることなく後続のミラーモンスターたちがここへ集めって来る。

 流石のドラゴンオルフェノク激情態も異常事態に気付く。

 

「何をした!?」

 

 王蛇サバイブに問うが答える筈もない。首を傾けながらドラゴンオルフェノク激情態を見ているだけ。ただ、仮面越しでも王蛇サバイブがニヤニヤと笑っていることだけは分かった。

 

「思い通りに行くと思うなっ!」

 

 ドラゴンオルフェノク激情態は吼え、集合しているミラーモンスターたちごと王蛇サバイブを屠ろうとする。

 だが、ドラゴンオルフェノク激情態が行動を起こすよりも先に王蛇サバイブは、ドラゴンオルフェノク激情態に飛び掛かっていた。

 

「焦るな……!」

 

 ドラゴンオルフェノク激情態にしがみつき、先へ行かせないようにする。

 

「邪魔だ!」

 

 ドラゴンオルフェノク激情態に王蛇サバイブの背中を籠手で強打。背部の装甲に亀裂が生じるが王蛇サバイブの拘束する力が弱まならない。

 王蛇サバイブが足止めをしている間にユナイトベントの効果は発動し続ける。ベノヴァイパーはエビルダイバーとメタルゲラスと融合しジェノサイダーと化す。融合はそれで終わらず集まっていたゼールたちやガルドサンダーら、ディスパイダーたちがジェノサイダーに触れる。

 ミラーモンスターたちがジェノサイダーに触れると引き摺り込まれるようにジェノサイダーの中へと入っていき、一体化する度にジェノサイダーの体は膨張していく。この段階で十三体を超える融合を果たしており、獣神と呼ばれるジェノサバイバーへと更なる進化を遂げていた。しかし、それでもまだユナイトベントの効果は途切れない。

 ユナイトベントで引き寄せられるミラーモンスターたちは、正気を失っているのか自分の方から融合していく。自分が無くなることに恐怖を感じている様子はなく、ジェノサバイバーに対し、神に供物を捧げるように自らを差し出していく。

 ドラゴンオルフェノク激情態はその光景に怖気を覚える。自分を絶対的強者だと思っている彼からすれば弱肉強食は当たり前のことであるが、その弱者が自ら喰われていく様を心の底から理解出来ない。

 

「気持ちが悪い……!」

 

 今すぐにでもその気持ちが悪い光景を消し飛ばしたくなったドラゴンオルフェノク激情態。両角が激しい音を立てて電光を帯びていく。それに伴い足元の瓦礫が左右に細かく揺れ出したかと思えば、小さな瓦礫から転がり始める。

 

「あぁ?」

 

 ドラゴンオルフェノク激情態を止めていた王蛇サバイブも周囲の異変に気付く。建物内の筈なのに風が吹き始めている。激しい戦闘により建物の壁は穴だらけであるが、そこから風が入って来ている形跡は無い。明らかにドラゴンオルフェノク激情態を中心にして風が起こっていた。

 

「──吹き飛べ」

 

 ドラゴンオルフェノク激情態の声を合図にし、室内に生じる竜巻。ドラゴンオルフェノク激情態の角から放たれる雷撃もそれに加わり、狭い空間内にて風雷が発生した。

 気候すらも操り、風と雷により集まってきているミラーモンスターたちを吹き飛ばしていく。

 建物は内部で発生した風や雷に耐えられる筈もなく天井や壁は崩壊し、空の彼方へ強風によって飛ばされてしまう。

 王蛇サバイブも例外ではなく、中心地であるドラゴンオルフェノク激情態にしがみついて竜巻に耐えていたが落雷によって貫かれ、力が緩んだ間に風の渦により何処かへ飛ばされていく。

 雷と暴風により周囲が綺麗にされ、視界が広がる。全てが収まった後に見えた光景はドラゴンオルフェノク激情態の予想とは違ったものであった。

 

「何だよこれ……」

 

 吹き飛ばした建物の外には集まってきている大量のミラーモンスターたちが蠢ている。エイに似たミラーモンスター、クラゲに似たミラーモンスター、セミに似たミラーモンスター、澤田たちが相手にしていたシアゴーストたちなどドラゴンオルフェノク激情態が未だにミラーワールドで発見していないモンスターも混じっている。

 それらが目指す中心にあるのはやはりジェノサバイバー。先程の雷と暴風でもびくともせず鎮座している。大量のミラーモンスターを体内に取り込んだことで既にジェノサイダーのときの原型は無くなっており、辛うじて残っているのは長い胴体と頭部のみ。そこから下は肥満のように膨張した体で、所々取り込んだミラーモンスターの手足や顔がはみ出ており悪趣味な飾り付けがされている。

 限界寸前まで膨れ上がった体は体皮が内側から裂けそうな程に張り詰めており、透けて見える輝きは内にあるミラーモンスターたちのエネルギーを圧縮したもの。今すぐにでも破裂してしまいそうなのに破裂しない。『無限』のサバイブの効果で創り出された器に底は無い。故に取り込まれたミラーモンスターたちにとっては死ぬことも出来ない無限の地獄である。

 ドラゴンオルフェノク激情態はその輝きを見た瞬間、生涯で初めて恐怖による身震いを起こした。

 亡者のような生気と正気を感じさせない動きでミラーモンスターたちはジェノサバイバーの許へ向かう。

 

「何なんだお前らは!?」

 

 ドラゴンオルフェノク激情態は火球を、毒を、雷を、水流を全方向へ撒き散らし、集まってきているミラーモンスターたちを纏めて屠ろうとする。

 火球により焼き尽くされるもの、毒により溶かされるもの、雷により貫かれるもの、水流により両断されるもの、兎に角攻撃をしてジェノサバイバーに近寄れないようにする。

 だが、既に手遅れの段階まで進んでいることに気が付いた。

 

「これって……?」

 

 絶命したミラーモンスターの体表に伸びる根のようなもの。見れば倒れたミラーモンスターだけでなく今も押し寄せてきているミラーモンスターの大群にも付いている。

 根を辿った先にあるのはジェノサバイバー。膨張した体から伸びる樹木の根を思わせる体の一部がこの場に居る全てのミラーモンスターを浸食していた。最早、全てのミラーモンスターはジェノサバイバーの体の一部。

 足し合わされ、掛け合わされ、融け合わさることで誕生した(いのち)の塊。

 

「く、くく、ははははははっ!」

 

 ドラゴンオルフェノク激情態の耳に入り込んで来る凶笑。王蛇サバイブはベノバイザーツバイを構えながら一枚のカードを今まさに装填しようとしていた。

 王蛇サバイブは楽しんでいた。ユナイトベントの果てに生み出された怪物を超えたナニカがこれから起こすことを。見たことがないようなことを引き起こすことを。

 

「やめろぉぉぉぉ!」

 

 ドラゴンオルフェノク激情態は瞬間移動のような超高速の動きで瞬時に王蛇サバイブとの間合いを詰め、籠手から伸びる牙で王蛇サバイブの心臓を貫き、持ち上げる。

 マスクから零れ出る血がドラゴンオルフェノク激情態の顔を濡らす。誰がどう見ても致命傷。しかし、即死には至らない。残された時間でカード一枚入れるには十分。

 王蛇サバイブは血を吐きながらもその手を止めない。

 

「何が……起こるんだろうな?」

 

 子供のような好奇心と後先考えない刹那的な考えのまま王蛇サバイブは最期のカードを発動する。

 

『FINAL VENT』

 

 内包していたエネルギーを解き放つ言葉。その瞬間、王蛇サバイブとドラゴンオルフェノク激情態を閉じ込めていた歪められた時間は内から放出されるエネルギーにより一瞬で崩壊。光の中で王蛇サバイブとドラゴンオルフェノク激情態は共に消えていく。

 時間の歪みすら破壊するエネルギーは、すぐにミラーワールドへと広がっていき塵も残さずにあらゆるものを消滅させていく。

 ミラーワールドが許容出来る破壊をすぐに上回る。許容を超えるとどうなるのか。

 ミラーワールド全体を揺るがす空間の揺れが発生。それは現実世界でも起こっており、その揺れは共振して激しさを増していき、遂には壊してはいけないものを壊してしまう。

 現実世界とミラーワールドの境界。ガラスが砕け散るような音と共に、この瞬間それが破壊された。

 異なる二つの世界が重なり合うとどうなるのか。まず最初に起こったのは、ミラーモンスターたちの出現である。

 激しい揺れの後、突如としてミラーモンスターという異形たちが現れる。人々はそれだけでパニックになり逃げ惑う。

 だが、パニックを起こしているのは人だけではない。ミラーモンスターたちも無理矢理巣穴から引き摺り出されパニックを起こしていた。

 ミラーワールドへ帰ろうとして鏡面に触れても何も起こらない。彼らは戻る場所が無いことを思い知らされる。

 ミラーモンスターたちの体が粒子化を起こし、消滅を始める。ミラーワールドでのみ生存を許された存在。時間が経てば跡形も無くなる。

 彼らが次にとった行動は、消滅していく体を補うこと。つまりは捕食であった。

 ミラーモンスターたちは手当たり次第に人間を襲い、捕食する。

 

「うわぁぁぁぁ! 嫌だぁぁぁぁぁ!」

「いやぁぁぁ! きゃああああっ!」

 

 悲鳴ごと人々はミラーモンスターに喰われる。しかし、ミラーモンスターたちも同じように苦鳴を上げながら喰らっている。空腹だから食べているのではない。食べなければ死ぬから喰らうのだ。

 だが、それでも追い付かないミラーモンスターもおり、消滅の苦しさに耐え切れずに倒れるミラーモンスターが現れる。そうなるとその時点でそのミラーモンスターも餌と化し、他のミラーモンスターたちにより喰われる。

 喰う、喰われるがひたすらループする自然界の業を煮詰めたような光景。その下層に居る人間はその脅威により消費されていく。

 だが、地獄は下へ下へと更に続く。

 オーディン、オーガ、サイガとの戦いでミラーワールドにばら撒かれた劣化したフォトンブラッド。それが境界が無くなったことで現実世界に一気に流れ込む。

 漏れ出たものの比ではない量が、青白く光る雪のように降ってきた。

 劣化フォトンブラッドに触れれば人間もミラーモンスターも区別なく青い炎に包まれて焼かれ、灰と化していく。

 

「あ、あれ……?」

 

 しかし、唯一人間だけ一つだけ残された道がある。

 劣化フォトンブラッドにより全身を焼かれ、死んだと思われた男性。衣服は焼け焦げているのに生身の部分には火傷一つ無い。

 戸惑う男の顔に紋様が浮かび上がる。

 人は死ねば稀にオルフェノクとして覚醒をし、戦う力と術を得る。何千、何万という人々がフォトンブラッドの洗礼を受ける中で一握りの者たちが、適者生存と弱肉強食という言葉を体現させた地獄を生き残るチャンスを手に入れた。

 しかし、それが当人たちにとって幸運となり得るかどうか。

 浅倉が最後に生み出したのは神というべき存在であった。だが、神は神でも破壊神。何かを創造することはなくただ破壊するだけの存在。

 この結果に彼が満足しているかどうかは彼自身にしか分からない。そもそも、浅倉という男を理解出来る人間がこの世に居るのかすら不明である。

 ただ、言えることは一つ。

 浅倉威という男は最期の瞬間まで笑っていた。

 




次回で最終回の予定です。良ければ印象に残ったシーンを教えてください。

・破壊獣神ジェノサバイバー AP15000~
十三体以上のミラーモンスターを融合させたミラーモンスター。融合させるミラーモンスターの数によりAPが上昇。
戦闘は行えない生きた爆弾。

・ファイナルベント『ファイナルベント』 AP0000
ジェノサバイバーが取り込んだ命を全て破壊に変える技。
現実世界で使用すると威力は減衰するが、ミラーワールド内で使用すればミラーワールドを内側から崩壊させられる。
技名がファイナルベントなのは、文字通りミラーワールドで使用される最後の召喚(ファイナルベント)だから
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。