RIDER VS ー異形たちの見る夢ー   作:K/K

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天に獅子、地には薔薇

 黄金のライダーの登場に場の空気は一気に張り詰める。一目見ただけで只者ではないことは分かったが、不思議なのは変身した女給仕はスマートブレインに関わっている者であり、経歴からして不審なものは無い。なのに明らかにミラーワールドに属する力で変身した。そこには何か秘密があるように思えた。例えば、変身前に彼女が翳していたカードデッキ。それにもしかしたら彼女を操る力があった可能性が考えられる。

 

『ボス……』

「分かっていますよ」

 

 レオは鋭く睨みながらも村上に小声で声を掛ける。油断出来ない相手と警告する意味があったが、村上もそれを理解していた。黒髪の美女とサングラスの男も顔に紋様を浮かび上がらせて臨戦態勢に入っている。しかし、黄金のライダーに臆する態度を微塵も見せずに村上は徐に椅子から立ち上がる。

 

「初めまして。貴方もミラーワールドや神崎という人物に関わる存在ですか? それとも彼の友人でしょうか? ライダー……と言えばよろしいでしょうか?」

 

 相手の反応を伺う為、浅倉から齎された情報を並べて訊ねる。

 

「私が何者なのかお前たちが知る必要は無い」

 

 返ってきたのは低い男性の声での拒絶。やはりというべきか完全に女給仕の存在はこの黄金のライダーによって上書きされていた。

 

「そう邪険にしないで下さい。私たちが敵対する必要などありません。浅倉さんから色々と聞かせてもらいました。正に上の上というべき素晴らしい情報です。まさか、この世界には私たちの知らなかったもう一つの世界があるとは……!」

 

 あくまで敵対する姿勢を見せない村上。

 

「しかも貴方たちはそこへ自由に出入りする技術まで有している。革新などという言葉では片付けられない有史以来の発見であり発明です! 我々としては是非ともそれに協力したいと願っています」

 

 逆に協力することを求める。

 

「言いたいことはそれだけか?」

 

 だが、黄金のライダーの反応は至って冷徹なものであった。

 

「お前たちオルフェノクは、ミラーワールドに相応しくない」

 

 一方的に拒絶すると黄金のライダーは羽根を散らしながら姿を消す。

 見失い、急いで探そうとする村上たち。次に黄金のライダーが現れたのはレオの傍であった。

 

「っ!」

 

 瞬間移動に気付き、レオは人外の反応速度で腕を振るうが黄金のライダーは片手で軽々とそれを受ける。腕の力のみでレオを後ろへ押し退けると手の甲でレオの顔を叩く。

 軽い平手打ちに見えるが常人ならば首が折れてもおかしくない威力が込められたそれを、レオは顔面で受けながらも力の流れに逆らわずに受け流すことで威力を軽減させた。

 

『やるね……!』

 

 口の端から血を垂らしながら好戦的な笑みを見せるレオ。そこで気付く。手に持っていた筈の浅倉のカードデッキが無い。

 

「返してもらう。これはお前たちには不要だ」

 

 黄金のライダーの手にはレオから奪い返したデッキがあった。

 浅倉はニヤリと笑って手を差し出す。しかし、黄金のライダーは何を思ったのか窓へ向かってデッキを投げた。

 投げ放たれたデッキは窓ガラスを突き破る──ことなく水に沈むようにガラスの中へと消えていった。村上とレオは初めてミラーワールドに関わる現象を目撃する。

 

「どういうつもりだ……!」

 

 浅倉は黄金のライダーへ怒りを剥き出しにする。デッキは浅倉に返されると思っていた。他の者たちも同様に思っていたが、実際は違った。

 黄金のライダーは分かっていたのだ。ここでデッキを返せば浅倉は迷わず戦い始めることに。それは黄金のライダー──もとい彼にとって都合が悪い。

 

『退け』

 

 無感情な声。その声は浅倉のみに届いている。そして姿も浅倉にしか見えない。

 鏡面のみに存在する虚ろな印象を受けるコートの男性──神崎。その手には先程黄金のライダーが投げた浅倉のデッキが握られている。

 

『オーディンに後は任せてお前は退け』

 

 機械音声かと思える程人間らしい感情を感じさせない平坦な声でもう一度言う。

 

『ライダーとして戦いたければ退け』

 

 三度目の言葉。浅倉は奥歯が割れそうな程に強く噛み締める。だが、反抗的な態度はその程度であり、浅倉は村上たちに背を向けて走り出した。

 浅倉はライダーとしての力を永久に失う訳にはいかない。そして、彼は神崎に対して少なからず恩があった。彼を脱獄させ、ライダーとして戦うという快感を与えたのは神崎である。浅倉の数少ない言う事を聞くときもある相手であった。

 恩義に報いるなどという大層なものではないが、このときの浅倉は仕方なく神崎の言われた通りに動く。

 

「止めなさい!」

 

 村上の鋭い声が飛び、サングラスの男と黒髪の美女が浅倉を追おうとする。そこへ瞬間移動した黄金のライダー──オーディンが割って入った。

 オーディンの手には羽を前に畳んだ不死鳥の装飾がされた長杖──ゴルトバイザーが装備されている。

 ゴルトバイザーに警戒する二人の前でオーディンは自身のカードデッキからカードを一枚抜き、装飾部分の一部を下にスライドさせて、空いた箇所にカードを装填した。

 

『CLEAR VENT』

 

 カードの効果が読み上げられるがオーディンに変化は無い。訝しむ二人だがすぐにレオの声が飛んだ。

 

「そっちじゃない!」

 

 二人の視線がオーディンから離れ、浅倉へ向けられるがそこに居る筈の浅倉の姿が見えない。

 

「逃げた!」

 

 レオが声を上げた直後、閉じていた扉が激しい音と共に開く。まるで蹴破られたかのようであった。

 二人は見ていなかったが、レオと村上の視点からは音声を読み上げられると浅倉の姿が透明になるのが見えた。先程のカードには対象を透明化させる効果があったらしい。

 

「追うんだ!」

 

 通路を走る足音だけが聞こえる。レオの言葉に背を押されて二人は扉の方へ向かおうとするが、オーディンが立ち塞がってそれも出来ない。

 レオが二人の頭上を飛び越え、オーディンに組み付く。

 

『変身!』

『Complete』

 

 既に番号を入力していたサイガフォンをベルトに挿し、オーディンの眼前でサイガへと変身。

 

「むぅ……」

 

 オーディンはサイガへの変身に微かに呻く。そこには動揺が含まれていた。自分の知る技術以外のライダーへの変身を目の当たりにした驚きによるもの。

 

「僕の相手をしてもらうよ?」

 

 オーディンを掴んだままフライングアタッカーが噴射し、オーディンごと真横へ飛ぶ。これにより追跡を阻む壁が無くなった。その隙に二人は浅倉が蹴破ったであろう扉を抜け、不可視となった浅倉を探しに行く。

 一方でサイガは窓ガラスへ向かって飛んでいた。レストラン内はそれなりの広さはあるが、サイガの能力を発揮するには狭過ぎる。窓ガラスを突き破り、最も得意とする空を戦いの場にしようとしていた。

 だが、オーディンはサイガの狙いにすぐに気付く。オーディンは黄金の羽根を残像のように残し、サイガの手から逃れる。

 

「チッ!」

 

 サイガは舌打ちをし、フランイングアタッカーの噴射孔の角度を調整して空中で反転。窓ガラスを突き破る前に急停止する。

 サイガは気配を感じ、振り返る。消えたオーディンが腕組みをして立っているが、その右手が消える程の速度で振り抜かれる。

 

「うっ!」

 

 平手打ち或いは手刀、どちらかは分からないが咄嗟に身を翻したサイガの頬にオーディンの右手先が掠め、火花が散る。

 サイガは掠めた頬に触れる。指先に伝わる微かな凹み。スマートブレインが開発した超硬金属ルナメタルの装甲が削られていた。それだけでどれ程の強敵なのかが分かる。

 

「やるね……!」

 

 臆するどころか逆に昂るサイガ。最近は格下ばかりを相手にして少々フラストレーションが溜まっていた。久しぶりに同格、もしくは格上の相手に戦士としての血が滾って来る。

 サイガは操縦桿を操作し、フライングアタッカーの両端を水平に変形させる。銃火器形態であるブースターライフルモードにすると噴射孔を噴かせながら離れると共に銃口にエネルギーをチャージさせる。スワローオルフェノクのときは連射を重視させたモードだったが、今回は破壊力に特化させたモードであった。

 フライングアタッカーの銃口に青いエネルギーが溜まっていくのを見て、オーディンも動く。

 ゴルトバイザーにカードを装填。

 

『GUARD VENT』

 

 サイガは操縦桿の引き金を引き、球体状になった二発の光弾を撃ち出す。

 オーディンに命中すると爆風、熱が発生し周囲の物が吹き飛びながらも炎上。テーブルや椅子などが壁などに衝突して壊れていく。

 爆心地となった場所は床が融解しているが、その上で何事もなかったかのようにオーディンは立っていた。右手に白い宝珠が嵌め込まれた鳥の尾羽を模した盾──ゴルトシールドを構えており、それが先程の銃撃を防ぎオーディンは無傷である。

 

「高そうな良い盾だね」

 

 サイガは冗談っぽく言うがオーディンは無反応であった。

 壁際で二人の戦いを見ていた村上。傍にいたスマートレディに密かに話し掛ける。

 

「すみませんが、()()を取って来てもらえませんか?」

 

 村上の言うアレを知っているのかスマートレディは一瞬目を見開くもののすぐに普段浮かべている笑みで覆う。

 

「はぁい」

 

 いつのも調子で応じる。

 サイガは単発から連射へ切り替え、オーディンの周囲を飛び回りながら光弾を連続で発射。正面から来る光弾は全て盾によって防がれる。背後へ素早く回り込み、光弾を撃ち込むがそうするとオーディンは瞬間移動により射線上から消えてしまった。

 サイガのセンサーとレオ自身の直感でオーディンの移動先を読み、そこへライフルを向ける。だが、そのときにはオーディンの方も攻撃態勢へと入っていた。

 左手を前に突き出す。黄金の羽根が一斉にサイガへ飛ぶ。

 サイガはライフルで羽根を撃ち落としながら飛行して羽根から逃れようとするが、羽根はサイガを追尾する。

 撃ち落としても撃ち落としても中々羽根の数は減らない。

 

『しつこいね!』

 

 サイガは片手でフライングアタッカーを操作しながらサイガフォンをベルトから抜き取り、番号『106』を入力。

 

『Burst Mode』

 

 フォンブラスター形態となったサイガフォンのトリガーを引くと光弾が一度に三連射される。フライングアタッカーとサイガフォンの一斉発射により何とか黄金の羽根と拮抗する。

 オーディンはサイガが乱れ飛ぶ羽根に苦戦している間に悠々とすら見える動作でゴルトバイザーにカードを入れる。

 

『SWORD VENT』

 

 黄金の刀身の片刃剣。それが一対。オーディンの両手に握られる。

 オーディンは両腕を胸の前で組みながら瞬間移動。次に現れたのはサイガの背後であった。

 羽根への対処に気を取られていたサイガは反応が遅れてしまい、気付いたときにはオーディンは黄金の剣──ゴルトセイバーを振り上げている。

 間に合わないかと思われたとき、何故かゴルトセイバーは振り下ろされる前に止まる。それはオーディンの意思では無い。オーディンの腕は細かに震えており明らかに力が入っている。見えざる力がオーディンを阻害していた。

 サイガはオーディンの動きが止まっている間に素早く退避する。

 

「困りますね」

 

 荒れたレストラン内に響く不気味なぐらいに落ち着いた村上の声。

 

「彼は替えの効かない上の上以上の部下なんです。そう簡単に失う訳にはいかない」

 

 右手を伸ばした構えの村上。その右腕は肘から下が白に近い灰色の異形の腕を化しており、異形の手から念動力と呼ぶような不可視な力が発せられ、オーディンの剣を止めている。

 

「ボス……」

「私も手を貸します」

 

 村上の全身が異形へと変わる。

 彫刻を思わせる白に近い灰色の体。脇腹、両肩、頬、側頭部から棘のような突起物が生えている。頭部は透けており中には白いバラの花束のような物体が入っている。

 バラの特性を持つ怪人──ローズオルフェノクとなった村上は両手を後ろで組む。その構えには余裕を超えて傲慢さすら感じさせる。

 

「私は貴方の持つ全てに興味があります」

「私はお前たちに興味は無い」

 

 オーディンは冷たく一蹴すると念動力を振り払いゴルトセイバーの剣先をローズオルフェノクへ向ける。ゴルトセイバーから突風が生じ、それに乗った羽根が加速して飛ばされた

 

「はっ!」

 

 ローズオルフェノクは左手を頭部に添える。頭部のバラが青白く発光すると額から赤いバラの花弁が無数に放たれる。

 

『不味い』

 

 バラの花弁が飛ぶのを見て、サイガは何が起こるのか分かっているのか素早く安全圏まで飛ぶ。

 羽根と花弁が触れ合った瞬間、爆発が起こり羽根も花弁も全て吹き飛ばされる。

 この間にオーディンは黄金の羽根を散らしながら瞬間移動をし、ローズオルフェノクの背面へと移動。ゴルトセイバーを振り抜く。

 だが、オーディンが斬ったのはローズオルフェノクではなくバラの花弁であった。

 

「初めてですよ」

 

 声が聞こえたのはオーディンの後ろ。振り向き様にゴルトセイバーが奔るが、手首に腕を押し当てられ振り抜くことが出来ない。

 

「私と同じような力を持つ相手と戦うのは」

 

 オーディンと同じく瞬間移動をやってみせたローズオルフェノクが感心を示す。

 黄金の羽根が漂い、赤いバラの花弁が舞う。戦場とは思えない煌びやかで華やかな空間。しかし、そこで衝突する意志は紛れもなく戦場のもの。

 

「レオ。私と貴方で彼を捕えますよ」

「了解。ボス」

 




オルフェノクのデザインの中ではローズオルフェノクが一番好きです。
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