D×D 外道の悪魔   作:水飴トンボ

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今回が章の区切りとなります。
原作で3番手で良いと言いながら、ガンガン行く朱乃さんなら、1番ならこれくらいやるんじゃないですかね…。


第12話 男女2人

 6月ある日の朝、天気は快晴であった。少し眩しい日差しやカラッとした空気、夏の近さを感じさせる陽気は、本当に梅雨時なのかを疑わせるものだ。程よく木が揺れるような風も吹いており、悪魔ですら心地よく感じさせる不思議な魅力に包まれていた。

 

「ん…いい天気。絶好のお掃除日和ですわ」

 

 姫島朱乃は縁側でぐっと身体を伸ばす。少し古そうなTシャツとジーンズという彼女にしては珍しい組み合わせの服装であったが、美しさと色気は損なわれておらず、いつもと違った

 この日、彼女は久しぶりにかつて住んでいた神社に足を運んでいた。兵藤家に転がり込む前は、ここで一人暮らしをしており、多くの経験をした。少なからず愛着があるこの神社を掃除することが目的であった。

 

「たしかにいい天気だ。洗濯をすればすぐ乾きそうだし、外にも出られるから窓ふきもできるだろう。でも…俺らだけというのは無理あるだろ!」

 

 腑に落ちない様子で大一は主張する。彼も朱乃同様にラフな服装であったが、気難しい表情はその軽い雰囲気とは真逆なものであった。

 しかし彼の様子に、朱乃はまったく驚きもせず、相変わらず人を惹きつけるような笑顔を浮かべている。

 

「あらあら、彼女のお願いを無下にしないでしょう」

「だからって、この神社を俺らだけで掃除するのは無理があるよ。一誠達も呼んだほうが良いだろうに」

「みんな、忙しいから仕方ないわ」

「まるで俺が暇みたいな言い方…」

「でも時間はあったでしょう」

 

 確信めいた言い方をする朱乃に、大一はがしがしと頭を掻く。彼のスケジュールを把握して空いている日を狙ったし、自分のお願いや約束の類を反故にしないことをよく理解している。

 朱乃は神社を掃除するあたり、人手として大一を呼んでいた。リアスや一誠達はアザゼル杯関連や高校生活で忙しいため、今回招集したのは彼ひとりだ。たまに来て掃除をしていたとはいえ、埃が溜まっていた神社を掃除するには人手は必要なはずだが…。

 

「あなたがいれば10人分の働きを期待できるもの。前に部室を掃除した時みたいにね♪」

「…まあ、手数は増やせるけど」

「うふふ、期待しているわ。この部屋と隣の部屋、廊下の方をやれば大丈夫だから、午前中で終わらせちゃいましょう」

 

 大一はため息をつくものの、背中から触手のように黒い腕をいくつも出していく。腕は伸びていくと箒とちりとりを掴んだり、バケツに水を汲んだり、ぞうきんを絞ったりと準備を始めていった。

 

「…さっさと終わらせよう」

「ありがとう、あなた」

 

 結局、引き受けてくれたことに朱乃は笑みを浮かべると、自分も掃除の準備に取り掛かるのであった。

 

────────────────────────────────────────────

 

 昼過ぎごろ、大一は縁側に座って額の汗を拭っていた。短時間ならまだしも、龍人状態にもならずに数時間も複数の腕を創り出し、あらゆる箇所の掃除を行うのはかなりの重労働であった。自分も手を動かしながら、黒影の腕も緻密な動かすとなると、シャドウのサポートがあっても疲労を感じられる。

 それでも努力の甲斐あって、目標としていた部屋の掃除は見事に終えていた。窓や廊下は綺麗に磨かれており、畳には染みひとつない。さらには目の前に広がる境内も雑草が丁寧にむしられていた。

 これほど綺麗になれば達成感もあるし、シャドウをより深くコントロールする特訓としても悪くないような気がしていた。

 

「お疲れ様。冷たい麦茶を持ってきたから飲んでくださいな」

「ありがとう。…その恰好、どうしたの?」

 

 お茶を受け取りながら、大一は少し面食らったように眉を上げる。先ほどまでは掃除のために汚れても大丈夫なTシャツとジーンズを着ていたのだが、今は巫女装束に身を包んでいた。

 

「久しぶりでしょう、この格好。最近は堕天使化することが多くて戦いでも着なくなったし、神社に来る人を迎えることも少なかったもの。掃除も終わったし、せっかくだから久しぶりにと思ったの」

「ふーん…たしかに久しぶりすぎて新鮮な感じもあるな」

 

 朱乃は見せるように腕を広げる。白い小袖に赤い袴とシンプルなデザインの巫女装束だが、それゆえに彼女の美しさをよく引き立てていた。

 

「似合っているかしら?」

「今更それを聞くか」

「恋人からそういう言葉が欲しいの」

「…とても綺麗だよ」

「ん、よろしい」

 

 満足そうな笑みを浮かべた朱乃は、大一の右隣に座ると寄りかかるように身体を密着させる。右腕が無い分スペースも空いており、それを埋め合わせるかのように、肩に頭をのせて甘えるようにすり寄ってきた。

 これには大一も緊張と戸惑いの感情が一気に入り混じっていくのを感じた。もともとボディタッチは多い彼女であったが、ここまでストレートに甘えてくることは珍しくも感じた。

 

「きょ、距離近いけど、なにかあった?」

「なにも。ただこうしたいだけ」

 

 さらりと答える朱乃は安心に満たされていた。先日の大一とバラキエルの対決を見ていたことを、彼女は2人に話していなかった。わざわざ娘には見せないような方法を取った父の意図と、それを真っ向から受けて立った恋人の想いがあったはずだ。戦いを見ていたことを話して、2人の考えを無下にするようなことを行うつもりは無かった。

 ただあの対決を見たことは、朱乃にとって幸運であった。ここ最近、彼女は大一に対して不安で煮え切らない感情を抱いていた。負担の大きい彼を支えられるのか、もっと甘えたいが余計に彼の重荷になるのではないか、そんな想いを抱え込んでいた。

 だがその心配は父のバラキエルとの対決で払拭された。彼女が思う以上に、大一は強かった。どれだけ打ちのめされても立ち上がり、終いにはバラキエルに負けを認めさせるほどに、心身の実力を見せつけた。たったそれだけのことではあるが、それが彼女の心に安寧をもたらし、同時に遠慮というストッパーを外すことに繋がった。自分の弱みも見せて甘えることに、躊躇など無かった。

 

「あなたはどんどん強くなっていたのね…」

「藪から棒にどうしたんだ?」

「思ったことを言っただけよ。いずれ私たちにも勝つつもり?」

「まあ…俺としては朱乃やリアスさん達も超えたい相手だからさ。自分のチームを集めて、本当に超えて見せる」

「その時は全力で受けて立つわ」

 

 リアスの言う通り、杞憂であった。彼女が大一には心配していなかったのも、同じように力強い野心を抱いていたからだろう。リアスの眷属として両翼を務めていた時は勝るとも劣らない信用を感じていたが、深い関係性になったことやこれまでの経験から、彼の弱さにばかり注目することが増えていた。今回の一件は改めて彼を理解するきっかけとなった。

 一方で彼女がその父親との対決を見ていたことを知らずに、大一はいつも以上に緊張していた。夜と違って明るく、暖かい空気や羞恥心を増大させていた。もっとも、内心は幸せも感じていたのだが。

 

「数日前の体育祭の後、アーシアちゃんもイッセーくんと将来を誓ったんですって」

「何気に初耳だよ。まあ、いずれはそうなると思っていたが…。これを知った時の父さんたちの反応が気になるな」

「泣いて喜ぶと思うわ。お二人とも、とても愛しているから」

「だろうな。俺としても一安心だ。ここ最近、アーシアの方が気負っていたらしいからな。弟がしっかり彼女を見ていたことが間違いでないことがわかったし」

 

 2人は境内の景色を見ながら、淡々と身内のことを会話する。たまに木が風に揺れる程度で特に面白味のある景色ではない。アーシアが一誠に好意を持っているのは周知の事実であり、彼がハーレムを作っていることも理解しているので、そこまで目新しい会話の内容でもない。それでもこの穏やかな時間は、2人とも心身を幸せで満たされるのを実感していた。

 

「…あのさ、朱乃。ちょっと相談があるんだけど」

「なーに?」

「今度、バラキエルさんのところに一緒に行かないか。えっと…その…挨拶に…」

「…絶対に行くわ」

 

 大一は赤面しながらも内心とてもホッとしていた。先日のバラキエルとの対決の際に、彼と果たした約束を早々に実現できる見込みができた。

 一方で、朱乃の方もかなり赤面していた。いよいよ将来のことが本気になったことを自覚すれば、余裕を見せる彼女であっても当然の反応だろう。もちろん、先日の対決で大一とバラキエルが最後に交わしていた会話が、聞こえていなかったのも大きいだろうが。

 彼との将来を考えるほど、さらに恋心が燃えていく。その証拠ともいうように、彼女はさらに身体を預けていく。

 

「…右腕があれば肩を抱くこともできるんだけどな」

「でも代わりにあなたは私を支えてくれるわ。何人寄りかかっても、こんなふうに倒れないくらいにね。触れるのは…私がするから…」

 

 朱乃は脳を溶かすような甘い声でつぶやくと、大一の首に腕を回して静かに互いの唇を触れ合わせる。触れるだけのキスであったが、彼女の想いをぶつけられたような熱さがそこにあった。

 

「告白された時、我慢しない方って言ったわよね。私、これからもっとそうなると思うわ。だから…覚悟していてね、あなた」

「が、頑張るよ。俺だって朱乃のために出来ることはするつもりだ」

 

 それだけ聞くと、朱乃は再び口づけをする。今度はずっと深く、より情熱的なものであった。2人ともこの時期とはかけ離れた熱さで、心身を焦がしていた。もう迷わない。彼を最後まで支えるし、自分も弱さや甘えを遠慮なく吐き出していくつもりだ。

 ゆっくりと唇を離した朱乃は、その口を再び動かして彼への想いを伝える。

 

「…あなたが大好きよ」

 

────────────────────────────────────────────

 

 ごつごつとした岩肌が特徴的な山岳地帯、そこの一画は大きくえぐられてクレーターが出来ていた。その中央では巨大な魔物が倒れこんでいる。その近くでは煙が上がっており、近くを通った者ならばすぐに目がつくだろう。煙は人工的なもので、ひとりの男が焚き火をしつつ、魔物の肉を焼いていた。

 

「魔物がもっと来ると思って、こんな方法を取ったんだがな。変な奴を呼んじまったみたいだ」

「あんたにそう言われるのは、かなり屈辱的だわ」

 

 男のもとに現れた少女は冷たく言い放つ。人形のような美しい顔立ちに少しウェーブのかかった金髪は、場所が場所ならば振り向かない男はいないと思われる美貌であった。そんな顔を持つアリッサは、険しい表情で魔物へと目を向ける。

 

「これだけあれば、十分な気がするんだけどね」

「だがこれを食いたがるような魔物なら、それなりの実力が期待できるだろう。ぶちのめしてもいいし、それをまた食ってもいい」

「あんた、自暴自棄になっていない?」

「ハッハー!俺にそんな言葉があるなら生きていねえよ!」

 

 男はゲラゲラと笑いながら答える。低音な声だが、妙に甲高くも聞こえる笑い声は粗暴さが感じられて、アリッサは不快さを眉間にくっきりと刻まれたしわで主張していた。

 男はツンツンと立った短髪はうっすらと緑が混じったような白髪で、彼の青白い肌や鋭く光る赤い瞳にはミスマッチであった。2メートル以上の長身に見合った筋肉もあるが、妙に長い腕が不気味さを醸し出す。この見た目で真っ黒いライダースーツを着ており、背中には2本のブレード、腰には古いデザインの銃を2丁装備していた。

 この荒々しい雰囲気が、彼女はどうも好かなかった。それでも今は彼の実力を求めていた。

 

「私は談笑しに来たんじゃないわ。さて、ベル。あなたに頼みがあるの。一緒に来てちょうだい」

「あん?なんで俺がお前についていかなければならねえ」

 

 ベルと呼ばれた男は、焼けた魔物の肉を思いっきり噛み千切る。予想していた反応に、アリッサは淡々と答えていく。

 

「どうしても気になる問題があるのよ」

「答えになっちゃいねえな。お前はここに来たわりに、かなり外の世界に干渉しているな。飽きないねえ」

「私は必要があるから動いているだけよ。無角の件だって、後始末のために動いたんだし」

「結局、返り討ちにあったらしいじゃねえか!」

「本当にむかつくわね、あなた。とにかく戦力が欲しいの。まだ噂レベルだけど、ハーデスが動いているみたいなのよ。他にもきな臭いことがあるし…だから、あなたに協力してほしいの」

 

 アリッサの話をベルはまともに取り合っているのか懐疑的であった。身体こそ向いているが、肉を食う手と口は止まっていない。

 

「俺が行く義理はねえな。他のバカどもみたいに、外に干渉するつもりもねえからな」

「魔物を狩れなかった時に、人の家の畑を荒らして野菜をかっぱらった奴に、義理がどうこうとか言われたくないわよ。むしろその件をチャラにしてあげるから、手を貸しなさい」

「ギャハハ!痛いところをついてくるな!だがそれで納得はできねえな。俺に利点が無い。久しぶりに女侍らせて、浴びるほど酒を飲めるならいいかもな!」

「どれだけ面の皮が厚いのよ…。勘当されたとはいえ、仮にも名家の悪魔が言うことじゃないわね。じゃあ、強い奴とも戦えるかもしれないってことでどう?確約はできないけど、可能性は高いと思うわ」

 

 アリッサはイライラしながら、指でこめかみを軽く叩く。これ以上の交渉しなければいけないことにむかっ腹が立つ上に、出来ることならこの男に品格を叩きこんでやりたかった。

 

「それだけで動くなら、あの半悪魔がスカウトしてきた時に一緒にテロリストやってたぜ」

「あなたが行かなかったのは、ブルードがすでにスカウトされていたからでしょう?」

「当然だ。この俺があいつと陣営を同じにするなんざ、天地がひっくり返ってもありえねえ。それはあいつだって同じだろう。たまたまあいつの方が先にスカウトを受けたから、こうなったんだ。戦争のころから、俺とあいつの関係性は変わっていねえんだよ」

「…ならば、ブルードを倒した者達と会えるかもしれないというのは?」

 

 アリッサの言葉に、ベルは初めて手を止めた。肉を食いちぎる鋭い歯の動きも止まり、焚き火に照らされる瞳は獲物を狙う獣のようにギラギラ光っていた。

 

「あいつがやられたのは知っているが…その場にいたのか?」

「いいえ。でも私が冥界の病院にいた時に聞こえたのよ。聖剣を使う転生悪魔と転生天使数人にやられたって。いずれも強力な聖剣や神滅具を持っているわ。いずれもアザゼル杯に出ているし、そのうち2人は例の赤龍帝チームよ。あなたにとっては興味深いんじゃない?」

 

 その時であった。クレーターの外側から大きな雄たけびが聞こえると同時に、覗き込むように魔物が2匹も現れた。片や巨大な蛇のような見た目で3つの眼をギョロつかせながら、口から覗かせる牙と巨大な爪をきらめかせている。その反対側から現れた魔物は腕が6本もあるサルの魔物で、腹にも口があって長い舌がこぼれていた。

2匹の魔物は同時に走り出していく。目的は中央に倒れている魔物に肉であることは疑いようもなかった。

 だが間もなく魔物たちは地に伏せて、命の炎が消えていった。蛇のような魔物はベルによって頭と胴体をバラバラに切り裂かれた上に、それぞれの1部に銃弾で開けられたと思われる穴ができていた。サルの魔物の方は6本の腕と両脚をアリッサが召喚した骸骨や人形に斬り落とされた。さらに彼女が展開した魔法陣から噴き出した炎が腹部の口にありったけ叩きこまれ、魔物は内部から焼き尽くされた。

 小さく息をつくアリッサに、落ちていく魔物の返り血を浴びながらベルは声高に話す。

 

「承知したぜ、アリッサ。お前の言う通り、手を貸そうじゃねえか。このベルディム様がな!」

「交渉成立。でも余計なことはしないでよ」

「わかっているよ。俺は暴れられればそれでいい」

 

 高らかに笑うベルディムに、アリッサはため息をつく。本当に理解できているのか懐疑的であったが、彼の実力を無視することは出来なかった。

 それでもこれから予測される心労に愚痴のひとつでもこぼしたくなる。

 

「まったく、あいつが現魔王アジュカ・ベルゼブブと同じ家系だっていうのだから、驚きだわ」

 




妙なオリキャラも出しながら、次回から24巻分辺りを書いていきたいと思います。
余談ですが、AIイラスト使って、オリキャラの見た目を出そうとしましたが難しいですね…。
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