オリジナルキャラや設定も出しているため、出来るだけ原作読んでなくてもわかるように書いているつもりですが、それでも漏れがあると思います。というか、ここまでくると原作追う人少ないでしょうか…?
梅雨時も終わりに近づき、じりじりとした日差しが印象的なある日のこと、兵藤大一は大きく欠伸をする。この前日も外国に住むはぐれ悪魔の討伐に向かわされており、戻ってきたのが深夜1時半ごろ。そこから1時間で大学のレポートを仕上げた後に眠り、4時に起きるといつものようにトレーニングをしていた。いくら短時間の眠りに慣れた彼でも、睡魔が襲ってくるのは当然のことだろう。
それでも肉体的な体力は回復しているあたり、もはや彼の身体が見た目と同様に特異なものとなっているのは疑いようも無かった。
『休日なんだからこんなことやっていないで、寝てれば良かったんだ』
「誘われたら、そうもいかないだろう」
シャドウのつぶやきに、半ばぼんやりとした声で答える大一は、卒業した駒王学園に来ていた。今年もここでプール開きを行うこととなり、高校を卒業したメンバーまで参加していた。卒業したのに来る必要はあるのかと思うが、他のメンバーに誘われれば断る理由も無かった。
「お兄さん、大丈夫ですか?」
ベンチに座ってぼんやりしている様子の大一に、水に濡れたアーシアが心配そうに声をかける。かわいらしい水着姿であったが、同時にへそが見えているデザインであり、彼女の背伸びした感情が窺える。
「体調は悪くないよ」
「でもせっかくのプール開きなのに、泳いでいませんし…」
アーシアの指摘はある意味正しかった。大一は水着を着ているものの、シャツを羽織っており、ボタンも締めている。これから泳ぐというには、疑いを抱くような服装であった。
実際、大一としては泳ぐつもりはほとんど無かった。水着から伸びる左足はつま先まで焼け焦げたような皮膚をしており、左腕も例によって健康的な見た目をしていない。顔だけは特別なクリームと魔力によってごまかしているものの、泳げば瞬く間に剥がれ落ちるだろう。高校にいる以上、後輩たちに大きく変化した身体をさらすリスクは極力減らす必要があった。
「あまり無理はしないでくださいね、お兄さん。忙しいですから体調管理は気をつけないと」
「さすがオカルト研究部の新部長だ。仲間達のことをよく見ている」
「か、からかわないでください!」
アーシアは赤くなる頬を隠すように手を当てて答える。すでに彼女は新しいオカルト研究部のために、新たな方法を模索して努力している。先日行われた体育祭では、部員を鼓舞して見事に生徒会との同率優勝を勝ち取った。彼女としてはまだ慣れない気持ちはあるだろうが、傍から見れば彼女は十分な実績と仲間からの評価を得ていた。
「妹分が頑張っているんだ。からかうつもりなんて微塵もないよ」
「でもこんなふうに言われるの慣れなくて…」
『将来の旦那である赤龍帝に言われたら、もうちょっと素直に受け取れるか』
シャドウの皮肉っぽい言い方に、アーシアはさらに頬を赤くさせていく。手で隠せていない箇所は、リアスの紅の髪ともよい勝負ができそうなほどであった。
相棒の言葉に、大一はため息をつく。これではアーシアを困らせていると言ってもおかしくなかった。
「すまない、アーシア。そういうつもりじゃないんだ」
「だ、大丈夫です…!それに本当のことですから…」
どこか上滑りしたような声でアーシアは答える。実際、彼女は体育祭後の帰りに一誠から告白されたことを、数日後には大一を含めた兵藤家に報告していた。これに父母は泣いて喜び、アーシアの方も半泣き気味になって、一誠が戸惑っていたことをよく覚えている。
大一の方は内々に朱乃から話を聞いていたが、それでも報告を受けたことには内心ホッとした。この1年以上、ヤキモキしていた関係性にハッキリと決着がついたのだから、当然の感想だろう。
「いろいろあるだろうが、眷属としても恋人としても弟のことを頼むよ」
「私の方こそお願いします。これからお兄さんにもっと頼ると思うので。それこそ本物の兄になるのですから」
「別にそこまで気にする必要はないだろう。相談されれば、話を聞くくらいはいつでもするよ」
淡々と答える大一に、アーシアはにっこりと微笑む。その太陽のような明るさは、男子にモテるのも納得な雰囲気だと今更ながら思わせた。
「ようやくお兄さんと朱乃さんのような関係になれたんだと思うと…すごく嬉しくて…」
「去年の冥界へ行く際に言っていたな、そんなこと…。いや憧れるようなものじゃないからな。そもそも今のアーシアと一誠は、あの頃の俺たちよりも深い関係を築けているだろう」
「でもそれはお兄さんたちも同じじゃないですか?お互いに信頼や愛情、尊敬もあって…私にとって見本になるカップルなんです。最近はもっと仲良くしていますし」
アーシアは目を輝かせながら話す。たしかにバラキエルとの一戦以来、朱乃はより大一を求めるようになっていた。身体的接触は増え、甘える回数も増えていく。人目を気にする節操こそあるものの、その頻度は明らかに増えていた。
それをしっかりとアーシアが観察していることがわかると、大一としては恥ずかしさに心ごと掻きむしりたくなる想いであった。もはや彼女には、朱乃に対して将来のプロポーズをしたことも見透かされているのではないかという気持ちになる。
「はあ…お兄さんと朱乃さんの関係にドキドキします」
「やめてくれ、アーシア。なんかすごい気まずい…」
『今更だろうに』
「やめろ、シャドウ。別にそういうつもりじゃ…」
「本当に憧れなんですよ。だからこそイッセーさんの方からプロポーズしてくれた時、私は涙まで出ちゃって…」
アーシアはその時の光景を思い出したのか、小さく目を拭う。彼女がどれだけ幸せを感じていたのかを証明するには充分な行動であった。
とはいえ、大一もこれ以上のむず痒くなる言葉を受けるつもりも無かった。彼はプールの奥の方を見据える。そこにはイッセーに対して、リアス、ゼノヴィア、イリナ、レイヴェルがなんらかのアピールをしている姿が見られた。
「まあ、お前が幸せなのはわかるが、出遅れないことも必要だな。それこそ、あいつに惚れているのは多いんだから。ほら、油断しているとオイル塗りに出遅れるぞ」
「ふえっ!?そ、それは困ります!イッセーさん、私もお願いします!」
パタパタと急かした様子でアーシアは、一誠の方に向かっていく。まだ不器用な面が残る妹分の後姿を見て、大一はふっと笑みがこぼれる。彼女すらもいずれ超えたい相手と思っていることに、不思議な笑いを感じるのであった。
そんな彼に今度は朱乃が近づく。黒いビキニ姿の彼女の色気はすさまじく、自慢の巨乳は暴力的な魅力を放っていた。しかし彼女は目を細めて、訝しげに大一を見ていた。
「アーシアちゃんに見とれていたのかしら」
「アーシアに?どうしてまた?」
「だって彼女のお尻を見ていたでしょう」
「いや、見てないよ!ちょっといろいろ考えていただけだって!」
「これはお仕置きが必要ですわ。今夜のお楽しみにしておきましょう」
S的な表情を浮かべる朱乃は嫉妬半分、楽しみ半分に瞳に光を宿していた。もはや言いがかりでもあることは、彼女自身が承知していたものの、それを口実に彼との糖蜜に漬けたチョコレートのごとく蕩けるような時間を過ごすことは至福であった。
「それはそれとして、せっかくだからオイルを塗って欲しいわ」
「さっきの話題から、よく転換できるな…」
「うふふ、いいじゃない。ねえ、お願い。私の身体の隅々まで塗って…」
朱乃のストッパーが外れたような態度に、大一はごくりと唾を飲み込む。理性をフルに働かせると共に、このような態度を取られればアーシアが気づくのも当然だと思った。
もっとも大一としては断る選択肢も無かった。先日、バラキエルに対してあいさつをしており、彼女との関係をより深めたがっていた。
「…まあ、出来るだけ満足させられるように頑張る」
「ん…よろしい」
「朱乃さんの次は私に泳ぎを教えてほしいです」
オイル塗りの準備をしつつ、すっかり出来上がりかけていた2人の空間に、白いワンピースタイプの水着を着た小猫が訴える。すぐ横にはハイカットの水着を着たロスヴァイセが立っており、恥ずかしそうに2人の光景を見ていた。手には琥珀色のオイルが入った小瓶を持っている。
「私だって先輩と一緒に過ごしたいですから、文句ないですよね」
「だが小猫、俺は泳ぐのはもう難しいぞ。祐斗の方が…」
「…乙女心がわからない鈍さですか。あとシンプルに祐斗先輩に声をかけられません」
たしかに先ほどから祐斗はストイックに泳ぎ続けていた。クロール、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライと次々と泳法を変えていくが、その姿に話しかけるのは至難の業だろう。その横では現在彼と同居している教会時代の仲間であるトスカが応援していたが、この空気を壊すのには二の足を踏んでしまう。
ただし小猫の本命はあくまで最初に言ったことに込められている。さすがに大一もここまで言われれば、彼女のリクエストをどのように受け止めるかを考えた。
「あー…オイル塗りの方でどうだ?」
「…先輩もスケベですね。でもいいですよ。そっちで許してあげます」
「言い方が…いや女性に興味ないとかじゃないから否定も違うが…」
『まあまあ、赤龍帝のオープンスケベよりは、隠しているムッツリスケベの方がマシだって』
シャドウのフォローにならないフォローを、大一も小猫も無視してそのまま準備を進める。さらにロスヴァイセが持っていた小瓶に入っている液体にも目をつけながら、彼は遠慮がちに口を開いた。
「えっと…ロスヴァイセさんはどうしますか…」
「わ、私は…その…で、でも…よ、よろしくお願いします…!」
あたふたと反応するロスヴァイセに、大一の方も恥ずかしさが心身を蝕んでいくような気分であった。先日のバラキエルの一件しかり、弟のハーレムが着々と進んでいることしかり、彼もいい加減に自分から動いていく必要性を学んだのかもしれない。もっとも一誠のように公言するような勇気は持ち合わせていなかったが。
そんな中、大一は落ち着いた声で呼びかける。
「黒歌、後ろから抱きつくなよ」
「あれ、ばれていた?けっこう気配を消していたつもりなんだけど」
「むしろゆっくり動いているから怪しいんだよ」
ため息をつきながら後ろを振り向くと、布面積の少ないスリングショットを身に着けた黒歌の姿が映った。持ち前の女性的な肉体美と色気よりも、すでに身体にオイルを大量に塗っていたことの方が気になった。
怪訝な表情を浮かべた大一に対して、黒歌は心をくすぐるような笑顔を向ける。
「大一にもオイルを塗ってあげようと思っただけにゃん。泳がないなら尚更ね♪」
「それで自分の身体に塗る理由がわからん」
「なーに、ちょっと全身を使って隅々までぬるぬると…」
「シャツを着ている俺にするなよ…」
「じゃあ、人目のつかない場所で、しっぽりエロエロな展開にする?私は大歓迎にゃん♪」
「お断りだ。そもそもこういうのは段階を踏むべきだろうに」
「姉様、すでに順番は決まっているんです。横取りしないでください」
小猫が腕を組みながら、頬を膨らませて黒歌を睨みつける。顔にはハッキリと苛立ちの感情が刻まれていたし、その腕の組み方は数年は解こうとしないつもりなのかと思わせるほどであった。
もっとも小猫がここまで神経を尖らせるのにも理由はある。アザゼル杯で近づいている試合が、リアスのチームとヴァ―リのチームによる対戦であった。間違いなく姉妹同士でぶつかることを踏まえると、彼女がここまで過敏になるのも無理はない。日常のふとしたことでも、対決的な姿勢を取ることは多かった。
一方で、黒歌は特に気にした様子も無く、面白そうに妹を見る。あまりにも対照的な雰囲気であったが、大一としては黒歌の態度は心に秘めたものを隠しているようにも見えた。
「待っていたら、いつまで経っても欲しいものは手に入らないもの。だから私は横取りできるなら、がんがんやっちゃうにゃん。白音も頑張らないと、後手後手になっちゃうわよ?」
「…姉様」
「ま、今日は妹がお怒りなので、撤退するにゃん♪」
小猫の声色を聞いた黒歌はそれだけ言い残すと、手早く転移型魔法陣を展開させてこの場から去っていく。嵐のような姉の言動に、小猫は緊張をほぐすようにふーっと息をついた。昔からいたずら、からかいの類が大好きなのは知っていたが、いまだに姉の態度に慣れることは無かった。これまでの経緯を踏まえれば当然のことではあるが、試合が近いこともありどうも冷静でいられなかった。
「小猫、大丈夫か?」
「…ええ、大丈夫です。姉様はいつもあんな調子ですから」
「それでも小猫ちゃんが無理をする必要はありませんわ。彼女の方もいろいろ思うことはあるのでしょうけど…」
少し迷ったように朱乃は呟く。いかんせん、彼女の方も肉親の関連で苦労した経験があるので、小猫と黒歌が抱える心労には敏感であった。
そこに離れたところでパラソルを立てているギャスパーが慌てたように声を上げていた。
「こ、小猫ちゃーん!ヴァレリーが暑さでダウンしちゃったよぉ!」
「…わかった、ギャーくん。建物の中に連れて行こう。先輩、後で約束は守ってくださいね」
「私も手伝いますよ」
そう言って小猫はギャスパーの手伝いに向かっていき、ロスヴァイセも後に続いた。残った大一と朱乃は心配そうに目を向ける。
「実際、小猫の調子はどうだ?」
「上々だと思うわ。仙術には磨きがかかっているし、得意の格闘や怪力はより強くなっているもの。だからといって小猫ちゃんが割り切れたと思えない。おそらく黒歌の方も思うところはあるんじゃないかしら…」
「複雑な関係だよな…」
大一はぎゅっと目を細めて思案する。小猫が姉の件でどれだけ苦しみ、悩んだかを何度も見てきている。去年、冥界で過ごした夏休みではそれで無理をしたり、心を砕くように涙を流している。
一方で、黒歌はいまいち妹への感情が掴めない。元来のいたずら好きな性格は、彼女の本心を常々隠しているような状態だ。それでも冥界での襲撃時に、小猫に見せた殺意は印象深い。
だからといって、互いに相手を毛嫌いしているとは思えなかった。英雄派との戦いでは黒歌は妹を守り、小猫も姉から仙術を学んだり一緒に食事をするのを誘ったりしている。もつれた糸のごとく、複雑に絡み合った関係性であるのは疑いようもない。
大一としては2人とも大切な仲間であった。小猫からは何度も頼ってもらうのと同時に勇気をもらい、黒歌からは仙術の修行や自分には無い感性から気づかされることもあった。それを思うと…。
ふと彼の左手に柔らかく温かい感触が伝わってきた。見れば、朱乃が彼の手を握っていた。
「小猫ちゃんたちのこと、気にかけてあげてね。あなたに出来ることって多いと思うの」
「当たり前だ。大切な仲間なんだから。ただ期待されるほどのことは出来るか…」
「あなただからこそよ」
妙に確信めいた彼女の言葉と笑顔に、大一は顔が熱くなるのを感じた。その深く美しい目で、自分の本心を見透かされているような気分を抱いた。
このまま緊張と甘さが煮詰まった時間が展開されるかと思ったが、間もなくレイヴェルが全員に向けた報告がそれを妨げた。リアス、朱乃、ゼノヴィア、イリナ、レイヴェルの保護者が一斉に兵藤家に集まったというのだ。
今更ですが、前作からヒロインを増やすつもりはありません。オリ主の性格的にも無理でしょうし、メタ的にもむやみに増やせば個々の描写が薄まりかねませんし…。