D×D 外道の悪魔   作:水飴トンボ

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自分を突き通すのはすごいですが、時と場合による気も…。


第23話 我が道

 戦いは半ば混乱気味になっていた。その原因は、突然現れたベルディムと名乗る悪魔の存在だ。彼はゼノヴィアとイリナに狙いをつけており、死神の方は無視を決め込んでいた。そして死神の方も下手に刺激しなければ、手を出さないことを理解したため、当初の目的に沿って小猫たちを狙うためにこの場を突破しようとする。妙な悪魔のせいで、結果的に防衛側は戦力の分散を余儀なくされた。

 ゼノヴィアとイリナは油断なく剣を構える。目の前の人物から感じられる魔力は大きいが、圧倒的と言うほどではない。現時点では銃と背中に携えているブレード程度で、特別な武器は見当たらない。傍から見れば、並みの上級悪魔くらいの存在であった。それでもクリフォトにいた大天使の名前を口にしたことや、彼の狂気的な戦意を踏まえれば、油断ならない相手であるのは間違いない。そしてその警戒はすぐに間違いないと確信した。

 

「悪魔が嫌いな光の感覚、肌に刺さるような戦意…楽しませてくれよ、聖剣使い!」

 

 荒々しい声と同時に、彼は両腕に持つ拳銃を素早く上げて銃弾を撃ち出す。リロードも無く連射をしている点から、魔力を弾として発射しているようであった。弾速はかなりの速さであったが、彼女たちは得物で器用に防ぎつつ、同時に素早いスピードで回避していく。伊達にチーム内で「騎士」を務めているだけあり、その速度は目を見張るものであった。

 

「規模はそこまででもないが速度と威力は本物だ。小手調べは必要ない!行くぞ、イリナ!」

「OK!」

 

 2人は持ち前のスピードで接近しては、一定の距離を保った状態で相手の周囲を走っていく。そして一瞬で近づいては斬撃を入れ、素早く離脱したらまた違う方向から攻撃するヒット&アウェイの戦法を取り始めた。ただでさえ速い「騎士」のスピードに、悪魔にとっては効果抜群な聖剣の攻撃、これを2人がかりで行うのだから並みの相手であれば、早々に無力化されるだろう。

 

「しゃらくせえ!」

 

 対するベルディムは目にも止まらぬ速度で銃をしまい、代わりに背中に抱えていた2本のブレードで彼女たちの斬撃を防いでいく。あらゆる方向から高速で迫るゼノヴィアとイリナの攻撃を、並々ならぬ反射速度で対応していた。それでもゼノヴィアとイリナはスピードを落とすことなく、隙を与えぬように攻撃していく。

 

「なるほどなぁ!それじゃ、こいつでどうよ!」

 

 鼻で笑ったベルディムは、イリナのオートクレールをブレードで受け止めると刃を地面に叩きつけて、彼女の態勢を大きく崩した。さらにゼノヴィアが接近するのに合わせて、デュランダルを振り下ろす前にブレイクダンスのような動きで、態勢を崩したイリナと一緒に蹴り飛ばした。

 

「これくらい…!」

 

 剣の重さで踏ん張ったゼノヴィアはすぐに体勢を変えると、両手に持つ聖剣を振っていく。今度はパワーも活かしており、相手の反撃も許さないような連撃をしつつ、押し込んでいく。

 ベルディムもブレードでいなしてこそいるが、せわしなく脚を動かして後退していった。もっともその顔は悪辣的な笑みを浮かべていたが。

 

「おいおい、隙だらけじゃねえの!」

 

 一瞬、ベルディムの姿が消えたと思った時にはすでに遅かった。ゼノヴィアの後ろに彼は立っており、彼女の胸部から右肩にかけて鮮血が噴き出した。デュランダルとエクスカリバーが代わる代わるに迫っていく中、わずかな隙を狙って一撃を浴びせたのだ。それでも咄嗟に気づいてエクスカリバーの柄で防いだおかげで、腕を斬り落とされるような致命傷は避けられた。

 

「ぐうっ…!」

「少しは防げたか。可愛い顔して粘るねえ。そんじゃ今度は…」

「これ以上はさせないわ!」

 

 ゼノヴィアの背中を狙うベルディムであったが、割って入るようにイリナが復帰する。かつては「擬態の聖剣」を使い新体操のような滑らかな動きで翻弄していたが、オートクレールを得物としても見事な剣さばきは変わらなかった。

 

「だがパワーが足りねえな。まださっきの小娘の方が俺好みだ」

「別にあなたに好かれようなんて思わないわ!それにあなたが悪魔であるなら、これは致命傷になるわよ!」

 

 オートクレールの刃に更なる光の力が纏わっていく。転生天使の光も合わさったこの斬撃は悪魔にとって致命傷になりかねなかった。それが鞭のようにしなやかに動く斬撃として、あらゆる方向から向かってくる上に、イリナの攻撃速度も落ちるどころかさらに上昇していった。

 

「あなたは捕まえさせてもらうけど、油断して勝てるような相手じゃないのはわかる。全力で行かせてもらうわ!」

「この程度のパワーで俺を倒せると思っているとはお笑い草だな!」

「私が考えなしにこんな戦法をしていると思わないことね!」

 

 言い切ったイリナは振り下ろした剣が相手に防がれるのと同時に、身体をひねりながら上空へと大きく飛び上がる。次の一手としてはこれで充分であった。教会時代から共に戦い、同じ男に告白した相棒ならば必ず決めてくれるという信頼があったのだから。

 イリナが射線を開けた瞬間、デュランダルとエクスカリバーを交差させて溜めていた聖なる波動を撃ちだした。地をもえぐるほどの威力と規模を持つ攻撃は、真っすぐにベルディムへと向かっていった。

 とはいえ、攻撃の大きさで足がすくむような男でも無かった。ベルディムは落ち着いて回避しようとするが、それを上空へ飛んだイリナが許さなかった。光の槍を複数作り出すと、相手の逃げ場を塞いでいくように撃ち込んでいく。この一瞬の最中、2人は言葉も交わさずに阿吽の呼吸で相手を追い詰める連携を披露した。

 

「ちょこざいな。だったら、防ぐだけだ」

 

 ベルディムはブレードに魔力を集中させていく。相手の攻撃が凄まじいとはいえ、避ける場所が無ければ真っ向から打ち破るだけであった。それに彼自身、まったくこの攻撃に動じてもいなかった。

 そして迫ってきた波動を交差させたブレードで正面から防いだ。魔力を集中させたブレードはかなりの硬度を持ち、同時にベルディムの鍛えた腕も相まって攻撃を霧散させた。しかし…

 

「ハアアアアッ!!」

 

 いつの間にか、ゼノヴィアはベルディムに大きく接近していた。先ほどの攻撃はあくまで布石であり、わずかながらに威力を弱めて次の攻撃への準備をしていた。二振りの聖剣を交差させて一気に斬りつける。彼女の必殺技である「クロス・クライシス」は、相手が盾としたブレードの刃ごと破壊し、後方へと一気に吹き飛ばした。そのまま近くの建物に激突し、さらに上から瓦礫が降り注いでいく。

 荒い呼吸を整えるように小さく息を吐くゼノヴィアの隣に、イリナが降り立った。

 

「ゼノヴィア、怪我は?」

「アーシアが回復のオーラを飛ばしてくれたから問題ない。それよりもあれで倒せたか怪しいな。ブレードで勢いが殺された」

「でも聖剣を喰らったのだから、ただじゃすまないはずよ。ところであの悪魔に見覚えとかってある?」

「まったくない。さっきの一撃で気絶でもしてくれれば、そのまま捕えていろいろ聞けるが…」

 

 瓦礫の山が崩れていき、戦塵が晴れていく。潰れることなく起き上がってきたベルディムは服も擦り切れ、斬られた箇所から血が流れていたが、苦悶の表情は浮かべていなかった。その様子を確認したゼノヴィアとイリナは構えなおした。

 対するベルディムの方は、折れたブレードを一瞥して背中に再び帯刀する。

 

「あーあ、折れちまったよ。また別のを探さなきゃな。それよりも…」

 

 斬られた箇所をなぞり指に付着した血液を調べていく。身体の動きを確認するかのように肩を回していく。そして茶色い歯をむき出しに狂気的な笑みを浮かべた。

 

「悪くねえが、まだまだ足りねえな!もっと本気でかかってこい!俺は楽しみ足りねえんだ!」

 

 再び銃を取り出したベルディムには、凄まじく活気づいたエネルギーを感じられた。彼の身体には血がべっとりとついており、聖剣がダメージを与えた感覚もある。にもかかわらず、苦悶の様子は一切見せずに、戦いを楽しむ姿は一種の恐怖すら抱かせた。

 ベルディムはゲラゲラと高笑いしながら、周囲一帯にめちゃくちゃに銃を乱射し始めた。近くの廃ビルにあたり瓦礫が崩れたり、凍った死神を撃ち砕いたりと敵も味方も入り乱れる状況になった。

 

「ひゃっ!」

「アーシア!」

 

 アーシアに銃弾が真っすぐに向かっていくのを見たゼノヴィアが声を上げるが、エルメンヒルデが防御魔法陣を展開して攻撃を防ぐ。親友の無事に安堵するとともに、鳴りを潜めていた怒りが一気に彼女を覆った。

 

「やめろッ!」

 

 デュランダルの聖なる力が斬撃となって飛んでいく。ベルディムは見た目に似合わない華麗な側転で攻撃を避けると、銃の乱射を止めずに目を輝かせていた。

 

「おっと、今のはいい感じの殺意だな!あの女が原因かぁ?」

「これ以上、余計なことをするなら…!」

「おいおい、戦いの場にいておいて無傷でいられるはずなんかねえだろうがよ!その小娘を傷つけたくないなら死ぬ気でかかって来な!」

「あなたこそ、これ以上の横暴を許しませんの」

 

 淡々とした声が、ひんやりした空気と共に流れてくる。ゼノヴィアが対峙していた相手は足元から透明な氷に覆われていき、あっという間に悪辣な笑みを浮かべていた頭まで凍ってしまった。

 異形の氷姫を従えたラヴィニアはやれやれといった様子で、ゆっくりと息を吐いていく。出てきた息の白さは、彼女の強さと美しさを引き立てているようであった。気づけば襲撃してきた死神たちは全員倒れており無力化しており、この防衛戦に勝利したことをゼノヴィアとイリナは理解した。

 

「すまない。あまり力になれなかった…」

「この悪魔を引きつけて戦ったことで充分です。おかげで私たちは死神に集中できたのですから」

「何者かしら?死神を倒したことから冥府の人物じゃないと思うけど…」

 

 戦いが一区切りついたところで、各々が首をひねるように凍結したベルディムを見る。ただのはぐれ悪魔が冥界の真っただ中にいるとは思えない。ブルードの名を口にしたとはいえ、クリフォトが手を組んでいた冥府の死神を援護しに来たようにも見えない上に、行動に計画性も感じられなかった。

 

「とにかくこの人物からはいろいろ聞き出さなければ───」

 

 ラヴィニアが最後まで言葉を紡ぐ前に、いきなり氷の砕き割れる音が響いた。すぐに全員が警戒態勢を取るが、凍っていたはずのベルディムの姿はそこになく、上空に翼を広げて一行を見下ろしていた。

 

「ハッハッハッ!あやうく芯まで凍るところだったぜ!ただの氷じゃねえとは思ったが…神滅具とやり合う機会なんざ稀だ!やべえ!滾る感覚が収まらねえ!もっとだ!もっとくれぇ!」 

 

 ダメージは間違いなく負っている。斬撃を入れたゼノヴィアや凍らせたラヴィニアがそれをよく理解していたが、上空の悪魔は消耗するどころか溢れんばかりのエネルギーを全身にみなぎらせていた。

 得体の知れない相手との戦いに全員が覚悟を決めるが、今度は相手の身体が眩いほどに光りだす。そして輝かしい光とはまるで似合わないような落胆が彼の口から発せられた。

 

「おいおい、もう時間かよ!ったく、これからだっていうのに…!」

 

 光が強くなっていき、一瞬だけ視界を封じるほど発光してすぐに落ち着くと、ベルディムの姿は消え去り、代わりのように上空から骸骨が落ちてきた。

 突然現れた謎の悪魔は、文字通り嵐のように過ぎ去っていった。

 

────────────────────────────────────────────

 

『バカな!俺の会話に、この神器の中に介入してくるなんて、いったいどんな力を使ったというんだ!?』

【お釈迦様にお頼みしたら、なんかできたぞ。龍神様にも手伝ってもらうとか言ってたな】

『釈迦とオーフィスか~ッ!そりゃ、介入できる!』

 

 一誠の頭にドライグの納得と苦悶が入り混じったような声が響く。突然の祖父の登場に驚き、半ば思考放棄しているのは間違いなかった。このピンチを極楽から観察していたらしい祖父が援護に来てくれたようだが…。

 

『一誠はまだしも、なんで俺まで聞こえるんだよ!?』

 

 弟同様に頭に祖父の声が響き、大一は素っ頓狂な声を上げる。祖父の魂は一誠の神器にあるはず。なにかしらで繋がっているわけでもなく、祖父の方も完全に一誠とドライグに話しかけているのに、彼にその声が聞こえていることは疑問しか感じられなかった。

 そんな相棒を落ちつけるようにシャドウが見解を述べる。

 

『もろもろ条件が重なったからじゃない?ほら、ディオーグと融合した上に、最近は仙術の修行で気の感知も上達しただろ。加えて、同じ宗教だと繋がりやすいらしいし。実際、赤龍帝が雲外鏡のところで祖父と話せたのって、それもあったからじゃないか』

『そ、そんなことで…』

 

 言いよどむ大一であったが、思い返せばいくらでも理由はつけられた。ディオーグが神器同士の会話を盗み聞きしていたことやヴァレリーが会話していた死者の魂を感知したことなども踏まえれば、当然のことかもしれない。それでも首をひねる思いであるのは間違いないが。

 

《グルルルルアアアアッッ!!》

 

 けたたましく雄たけびを上げながら、またもや無角が接近していく。獣のような鋭い爪を連続で振ってくるが、それを大一は錨で受け止めていく。

 そんな中、上空では一誠と祖父の会話が続いていた。どうも祖父がかつての記憶を呼び起こしているようだが…。

 

「…ろくな思い出じゃねえええぇぇぇっ!」

 

 一誠の声が鎧の中で響き渡る。彼が強制的に思い出された記憶は、祖父とプラモデルを作ったことであった。幼心をくすぐるデザインのロボットのプラモを作る一誠に対して、祖父はエロ本片手に美少女フィギュアに触れる祖父。完成したプラモでフィギュアと戦いごっこをして、おっぱい波動砲やおっぱいビームなる攻撃で遊んだ日…傍から見れば呆れるのも当然な内容であった。

 

【波動砲用意】

 

 祖父の声と同時に、赤龍帝の鎧の尾がひとりでに動き出す。それは蛇のようにうねりながら真っすぐにロスヴァイセへと向かっていった。この状況に味方全員がどうすればよいのかもわからず、間もなく尾がロスヴァイセの胸の先端に取りついて覆った。

 

「…あんッ!」

 

 尾が脈打つたびに官能的な喘ぎが彼女の口から漏れ出る。なんでも祖父の記憶と助力により、おっぱいの力を集めているのだという。その証拠に一誠の意志とは関係なく、肩のキャノン砲も勝手に動き出してタナトスに狙いをつけていた。

 

『…大一、集中だよ』

『わかってるわ!』

 

 無角の爪をいなしながら、大一は赤面して答える。普段のロスヴァイセからは想像できないような色っぽい声には、姿が見えなくても動揺してしまうものがあった。

 そんな兄の様子もつゆ知らず、一誠たちは着々と準備を進めていく。どうも祖父が神器の力に干渉しているようであり、その事実にドライグも完全に困惑していた。

 

「俺のじいちゃんだから、俺のエロ根源を動かせるのは当然なのかもしれない」

『そうなのか!?それで納得しているのか!?俺もそれで納得していいのか!?』

【極楽で徳を積んだからな。お釈迦様も喜ばれるだろう】

[その通りです。これは釈迦如来の願いでもあるのです]

 

 この会話にまたひとり新しい声が混ざる。穏やかで安心を印象付けるような声の主は観音菩薩であり、おっぱいドラゴンの歌によって極楽浄土にいる多くの人物を笑顔にしたというお礼も兼ねて力を貸しに現れた。

 

《バ、バカなッ!釈迦如来に観音菩薩まで赤龍帝に介入するというのか!?》

 

 観音菩薩の存在を感知したタナトスもいよいよ動揺を隠せずにいた。魂を刈り取る大鎌を振りかぶり攻撃しようとするが、観音によって発せられた後光により怯まざるをえなかった。

 その間にもロスヴァイセから力を得ていき、いよいよ魔力が溜まったのを知らせるかのように籠手の宝玉に96(彼女のバストサイズらしい)の文字が記される。

 

【さあ、イッセー。準備は整ったぞ。名前は…波動の名前をつけてくれ】

「な、名前か…超乳波動砲(にゅうトロン・ビーム・キャノン)、とかかな…」

【ニュートロンとかはよく知らんが語呂さえ合えばいいか。そしてロスヴァイセさんとやら、未来のために今日の恥辱に耐えてくださいな。それが女ってものですぞ】

「…なんだかわかりませんが、胸に響きました」

 

 いちおうロスヴァイセが納得したことに驚くも、一誠はたしかにすさまじいエネルギーを感じていた。そして確信した。この戦いに勝つことを。

 それを察したようにビナーも援護として、高い火力と規模を有した魔力の塊を撃ち出していく。かつてはセラフォルーにも並んだほどの魔王級の攻撃はすさまじく、タナトスも回避と防御に徹していた。結果的にそれが足止めとなり、一誠が狙いをつける時間を稼ぐことになった。

 

「これで決めるッ!超乳波動砲、発射ァァアアアッ!!!」

 

 砲口から強大なピンク色のオーラが放たれ、タナトスに向かっていく。周辺を巻き込みながらオーラは相手を飲み込んでいき、大きくえぐれたクレーターを作り上げた。その中央でタナトスの全身からは煙を上げており、先ほどの一撃のすさまじさを物語っている。一誠が近づくと、タナトスは瀕死寸前な瞳を向けると同時に絞り出すように声を出す。

 

《み、見事だ、赤龍帝…近い将来、貴公は神クラスを滅ぼしうる抑止力となるだろう…ファファファ…ハーデス様…あなたは誰よりも3大勢力を呪い囚われたお方…冥府は…冥府以上にはなれない…》

 

 自嘲的な笑いをこぼし、タナトスは気絶する。今回の事件の首謀者を打倒したことに、一誠は内心胸をなでおろすのであった。

 しかし戦いはすべて終わっていない。神器の中で再び祖父の声が響いた。

 

【よし、次は…大一。お前の番だ】

『…』

【無視するな。声が聞こえていることには気づいているからな。加勢するぞ】

 

 祖父の呼びかけに応答せずに、大一は無角の攻撃を錨でいなしていく。主が倒れたにもまったく気にせず、無角は最初に受けた命令を遂行しようと攻め続けていた。理性ない攻撃は苛烈であったが、大一の方は動じずに対処し続ける。

 

【お前も兵藤家の男だ。イッセーほどではないが、乳力を活用できるはず───】

『いらない』

【ほ、本気で言っているのか!?お前も姫島さんと付き合って、ようやくおっぱいの魅力が分かったと思ったのに!】

 

 自身のスケベ心とおっぱいへの熱意を祖父は語るが、これはむしろ火に油を注いでいるように一誠は思えた。高校時代の兄が自分に言ってきたことや頭を下げていたこと、おっぱいドラゴンへの態度が想起されていく。それを踏まえれば、祖父の言葉に素っ気ないのは当然だろう。そもそも昔から兄は祖父に対して、そういった節が散見されたのだ。

 そしていよいよ大一の方が先に限界を迎えるのであった。

 

『ったく、うるさいな!そもそも俺は昔からじいちゃんのそういう強引なところが苦手なんだよ!それにおっぱいドラゴンについては関わりたくない!極楽では良いかもしれないがな、こっちとしてはずっと前から悩みの種なんだ!それに朱乃とは胸が理由で付き合っているわけじゃない!』

【昔からそうだったが、じいちゃんにも容赦ないな。まったく頭が固いのう】

『勝手なことやって、ロスヴァイセさんにも無茶苦茶な迷惑かけている人に呆れられる筋合いはないわ!』

【だが援護はするぞ。見たところ、状況が好転しないからな。乳力でお前も更なるパワーアップを───】

『だから余計なお世話だ!他のみんなも援護は不要!』

 

 苛立ちを持って吠えると同時に、大一はまたもや無角を蹴り飛ばす。祖父の言う通り、傍から見れば先ほどから攻撃をいなしているだけで、相手を倒す兆しは感じられない。

 しかし大一はまるで動じず、姿勢を低くする無角相手に錨の切っ先を向けていた。

 

『まったく集中が途切れる。もう勝てる布石はあるっていうのに…さあ、次の一手で終わりにしよう』

 




なんかオリ主が我慢を止めたの久しぶりな気がします。
24巻では祖父のキャラに困惑した思い出が…。
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