D×D 外道の悪魔   作:水飴トンボ

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けっこう前になりますが、原作が15周年でしたね。おめでたいです。
こっちの展開は相変わらずですが…。


第30話 お見合い

 夏も本格的になってきたある日のこと、新旧オカルト研究部の一行は都内にある高級料亭へと足を運んでいた。この日は各々が頭を悩ませていたお見合いの当日であった。場所は北欧側がセッティングしており、この料亭に合わせるためにロスヴァイセの方も朱乃の手伝いで美しい着物姿であった。

 着々とお見合いの準備は進められていき、あとは皆が緊張する本番を迎えるだけであったのだが…

 

「本気ならば惚れた相手にアプローチかけて、とっとと既成事実作っちまえばえがったでねぇの!」

「んだごど言ったって、わたす、男の子のこと、わからねぇことばっかだし!」

「スケベなことさしてえって言ってだでねぇがっ!」

「ばあちゃんに言われなくったって、わ、わ、わたすだって、スススス、スケベなことしてぇさ!」

 

 お見合いまでの時間が近づいていく中、待合室ではロスヴァイセとゲンドゥルは方言バリバリで高級料亭では信じられないような内容を言い合っていた。ゲンドゥルが一向に対して押し切られてしまったお見合いについての謝罪をしたのだが、同時に孫娘へ早く身を固めなかったことの窘めをすると、それに応じるようにロスヴァイセも言い返した。気づけば話はヒートアップし、一行もすっかり面食らってしまっていた。先ほどゲンドゥルにとりあえず今回は様子を見ると宣言した一誠ですら、頭の中からこれから起こるお見合いのことがすっぽ抜けたような表情であった。

 

「あらあら、まさかそんな話をしていたなんて…」

「ゲンドゥルさんもそこまで言わなくても…」

 

 朱乃は困ったように頬に手を当てて呟き、大一もばつの悪そうに答える。ロスヴァイセが彼氏ができないことを嘆くのを何度も目の当たりにしたが、さすがにこの件で彼女が責められる筋違いだろう。それどころか祖母に漏らしていた本音を結果的にさらけ出す状況には同情せざるを得なかった。

 

「まあ、私たちもなかなかスケベなことができない状況だからな」

「女の子が多いから、例の部屋を使っても誰かが入ってきちゃうものね」

 

 ゼノヴィアとイリナの発言にリアスやアーシアもうんうんと頷く。彼女たちの指摘通り、

 そういった行為が難しいのは共同生活の中では難しいことだろう。一誠とその彼女たちは多忙さも合わさって身を持って体験していた。

一方で堕天使によって同様の部屋を所有する大一に関しても、勝るとも劣らない激務に加えて、持ち前の感知能力も踏まえてすぐに察知して避けていたため、気がつけば朱乃も使わなくなっていた。もっとも彼の場合は、数か月前に戦った男が出生率の低い悪魔にもかかわらず、1回の性交で生まれた奇跡的人物であるのも影響しているのだろうが。

 幸い、間もなくヴィーザルが到着したことが知らされてこの話には区切りがつくのであった。

 

────────────────────────────────────────────

 

 ロスヴァイセとゲンドゥル、そして彼女の主として一誠がお見合いの場へと向かってから、15分経つかどうかというところであった。待合の部屋に残った一行は魔法で映し出されているお見合いの様子を確認しながらそれぞれ話し込んでいた。

 

「…ロスヴァイセさん、大丈夫ですかね。相手が神様だと断りきれない可能性もあるんじゃないでしょうか」

「そうよね。小猫も気になるわよね」

「リアス、落ち着いて。この前のことを引きずりすぎよ。というか、あなたはライザー相手にしっかり態度に示していたじゃない」

「だからこそよ。ロスヴァイセだって想い人がいるなら、それをもっと言ってもいいのはずでしょう?」

 

 小猫、リアス、朱乃が各々の想いを口に出す。それで答えが出るわけが無いのは理解しているも、現在進行形でことが進められている状況ではどうしても気になるだろう。

 女性陣の話に、今度は祐斗がふと感じた疑問を言いにくそうに投げかける。

 

「そういえば、朱乃さんたちはどう思っているんですか?その…あー…ロスヴァイセさんと大一さんの方は」

 

 ロスヴァイセが好意を抱いている相手は、祐斗もすでに察しがついている。そして相手にはすでに特別な異性がいることも。

 一誠の方はもとよりハーレム願望があったのを幾度となく目の当たりにしていたため、リアスや他のメンバーの態度は特に気にならなかった。しかし大一の方はどうもイメージがつかないため、疑問を口にせずにはいられなかった。

 

「そうねぇ…私は今更という感じですわ。生島さんとの契約や魔法の件もあったし、もしかしたらって思っていたもの」

「朱乃がそう答えるのって意外な感じね。もっとこう…束縛的なイメージがあったわ」

「1番というだけで余裕が出るもの。それに私は我慢していませんわ。いっぱい甘えているし他にも…とにかく愛されているとわかっているもの♪」

「…私もそれなりに満足していますよ。ちょっと特別な関係になってから、ちゃんと見てくれていることわかります。それに朱乃さんとはちょっと方向性が違うというか…いや男性として好きなのもあるんですけど…うーん…尊敬という感じですかね」

 

 朱乃は軽快に答え、小猫は思案しながら言葉をひねり出す。悪魔という特殊な価値観と恋慕の情を受けている実感があるため、ロスヴァイセの好意の対象が自分たちの恋人に向かれていようが、そこに動揺する必要性は無かった。

 彼女たちの反応にリアスはうんうんと頷き、祐斗はあごに手を当てて思案するような表情となる。

 

「あっ、でも不満や心配はありますよ。最近は先輩が性欲とかあるのか怪しくなりますし」

「それは私も気になりますわ。あのお部屋も使えていないし…イッセーくんくらいエッチでも私は問題ないのに」

「2人とも、心配するのそこなんだ…」

 

 苦笑いしながら祐斗は部屋の隅で電話をしている大一の後姿を見る。少し前から電話をしているのだが、聞こえてくる単語や話し方、定期的に申し訳なさそうに頭を下げている様子からまた冥界の仕事関係だろう。

 彼の様子を女性陣も見ると、再び思ったことを口にしていた。

 

「大一が同い年って信じられない時があるわ。私がまだ主だったら何か言えたかもしれないけど…」

「そういえば、ロスヴァイセさんは悪魔になった際は福利厚生やお金のことを気にしていましたよね。だったら大一先輩はイッセー先輩ほど荒稼ぎじゃないですが、お金はある方ですから…」

「それは僕も聞いたことあるな。激務と立場を思えばそれなりだからね。でもそれだけの理由じゃないと思う。それこそユーグリットの件があったし」

「それも要因のひとつでしょう。私は…大一が彼氏役をお願いされたときから可能性はあったと思うのだけれど…」

 

 話を展開させていく中、大一も電話が終わり小さなため息と共にスマホをしまう。さすがに当事者前でやるほどのアグレッシブさは持ち合わせておらず、リアス達の自由な恋愛話も終止符が打たれるかと思われたが…。

 

「失礼します。兵藤大一さんはいらっしゃいますか?」

 

 先ほどヴィーザル達が来たことを知らせてくれたお店の人が戸を開けて問う。大一は少々面くらいながらも、すぐに焼けたような皮膚である左手を小さく上げる。

 

「自分ですが…」

「こちらへどうぞ。お部屋の方に連れてきてほしいと言われまして」

 

 部屋中のメンバーが疑問符を脳内に浮かべつつも、大一はそれに従い、他は再び話を広げていくのであった。

 

────────────────────────────────────────────

 

 お見合いといえば、基本的に顔を会わせて話をして、そこから相手を知り関係を構築する。神が相手とはいえ、ただの出会いの席でしかなく騒ぎになることはありえないだろう。

 しかし店の人に呼ばれた大一は部屋に案内されるなり、ロスヴァイセに抱きつかれて騒ぎの一端にツッコむこととなった。

 

「うぃ~、やっと来ましたね!大一くん!」

「ロ、ロスヴァイセさん!?もしかしなくても酔ってます!?」

「そんらこと、どうでもいいのれふよ!」

 

 頬は紅潮し、舌が回っていないロスヴァイセは完全に酔っていた。ビールが注がれた大きなジョッキを片手に持っているも、どう考えても彼女が頼んだとは思えない。大方、京都の時のように間違って飲んでしまったのだろう。

 ただそうだとしてもこの場に呼ばれた理由が、大一には分からなかった。困った様子で部屋を見渡すも、一誠はやってしまったというように頭を押さえ、ゲンドゥルは怒鳴りたいのを我慢するようにぴくぴくと口の端を動かしていた。

 居心地が悪そうな2人であったが、もうひとりの人物だけはまるで違って面白そうにこの惨状を眺めていた。白金色の髪にそれに見合った金色の瞳、無精ひげを生やしつつも顔は若々しい雰囲気で20代でも通用する整った顔立ちの男性だ。それがお見合い相手のヴィーザルであることはすぐに察せられた。

 

「ほう、お前が赤龍帝の兄か。いやこいつが間違って俺のビールを飲んでな。そこからお前の話題が出て、しかも今日来ているって言うから、ちょっと会ってみようと思ってよ」

 

 値踏みするような視線を向けながら、ヴィーザルは低く落ち着いた声で話していく。父であるオーディンとも引けを取らない余裕を彼は持っており、それを存分に活用する術を理解しているようであった。

アジュカや何人かの切れ者な上層部を目の当たりにしてきた大一としては、すぐにそれが察せられた。同時にこの間にもヴィーザルが何かを思案していることを。

 

「そうだったんですか…。あっ、失礼しました。自分は───」

 

 大一は向き直って自己紹介をしようとするが、ロスヴァイセがしっかりと抱きしめているため身体が動かない。困っている彼はお構いなしにロスヴァイセはビールを一口ぐびりと煽ると、ジョッキをテーブルへと置く。そして身体は大一の方を向いたまま、ヴィーザルに宣戦布告するかのように指さした。

 

「いいですか!わらしは彼と結婚したかっらんれす!冥界は福利厚生もばっちり、みなはんは優しいと好条件ばかりれす。そして大一くんは気も合いまふし、頼れるし、私のために戦ってくれたのに…魔法の勉強もしたのに…生島さんの件もあったのに…!」

「あ、あの…ロスヴァイセさん…?」

 

 気づけば彼女の身体はわなわなと震えており、抱きついていた腕は解かれてスーツの襟をつかんでいた。

 

「どうしれあのクソシスコン野郎のユーグリットを眷属にするなんて約束したんれすか!酷い裏切りです!うわああああん!!」

 

 ロスヴァイセはそのまま手に力を入れたまま号泣した。この様子に一誠は兄に非難する視線を向け、ゲンドゥルは疲れたようにため息を吐く。そしてヴィーザルの方は一誠にもちらちらと視線を送りながら、少年がいたずらを思いついたような顔をしていた。

 だが大一には彼らの反応を気にする余裕も無く、彼女の口かは発せられた不満に戸惑いつつもとにかく落ち着かせようと左腕で背中をさすっていく。

異常なほど時間が長く感じたが、少しずつロスヴァイセが落ち着きを取り戻してヴィーザルの対面に座りなおしたところで、今度は呆れを全面的に乗せたような鋭い声が聞こえる。

 

「相変わらずお酒に弱いようですね、ロセ」

「せ、先輩…」

 

 ロスヴァイセは一気に酔いがさめたようでしゃんと姿勢を直す。現れた水色髪の女性は整ったスーツ姿であり、町を歩けば間違いなく男が振り向くであろう美人であった。

 しかし大一も一誠も彼女の美貌よりもその素性の方が気になった。映像越しでしか見たことなかったが、ヴィーザルの所属するチーム「王たちの戯れ」に属している戦乙女、ブリュンヒルデだ。北欧では戦乙女の代名詞とも言える名を継いだ彼女は、ロスヴァイセも頭の上がらない先輩らしい。

 

「こちらに来ていらっしゃったのですね」

「私は現主神のヴィーザル様のお付きをしているのよ。まさかあなたの酒癖の悪さをこの場で見ると思っていなかったわ。あなたのことだから、ヴィーザル様の飲み物と間違ってそうなったんだろうけど…うかつっぷりはあの頃から変わっていないようね」

「まあいいじゃないか。俺は楽しかったぞ」

 

 先輩からの容赦ない言葉にロスヴァイセは委縮するも、ヴィーザルがとりなす。主神の態度に呆れた様子でブリュンヒルデは首を振るが、彼の方はまったく意に介していないようであった。それどころか快活な口調でさらりと爆弾発言をかます。

 

「この見合い、俺は気に入った。ロスヴァイセと婚約しようじゃないか」

「「…ええええええええええええ!!!」」

 

 一誠とロスヴァイセは一瞬の沈黙を挟み、同時に信じられないような驚愕の叫びをあげる。大一の方は声こそ上げないものの、絶句して目を見開いており、別部屋にいるメンバーはここまで聞こえるほどの驚きの声を上げていた。もっとも先ほどのロスヴァイセの酔っぱらった言動を見て、この縁談を取り決めようとはなかなか思えないだろう。

 

「だがそれだけじゃ面白くない。それこそロスヴァイセの本音も聞いたし、そもそも赤龍帝たちからは抗議を受けているんだ。そこでだ」

 

 そこで言葉を切ると、ヴィーザルは金色の双眸をハッキリと大一に向けてきた。

 

「次の試合、お前が赤龍帝のチームに入ったうえで彼女を懸けて戦おうじゃないか。俺が勝てばロスヴァイセを嫁の一人にする。赤龍帝が勝てば、この約束は無しだ」

 

 あまりにも無茶な提案に大一はすぐに抗議しようとするが、それよりも一誠の方が早かった。これまで溜まっていた苛立ちが一気に噴き出して、荒い声でヴィーザルに言い放つ。

 

「ロスヴァイセさんを懸けてどうこうという問題じゃありません!俺は今回の件、勝手に話を進められて不愉快でした。この見合いを許しましたけど、それはあくまで形式だけです!ロスヴァイセさんは大事な仲間で眷属だ!ただでやる義理はねぇッ!賭けうんぬんに関係なく狙うというなら、俺は兄貴と一緒にあんたをぶっ飛ばすだけだ!」

「これでいいッ!天龍との戦い、こんな建前がなきゃ嘘だよな!」

 

 怒りの表情である一誠に対して、ヴィーザルは高揚していた。試合前にも関わらず、両者には奇妙な因縁が形成されて、料亭に似つかわしくないメラメラとした空気感を蔓延させていく。

 渦中の人物であるはずの大一はこの場で口出しもできず、頭の中で不満に満ちたシャドウのため息だけが妙に響いていた。

 




オリ主も振り回されることが増えて…いや元々ですね。
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