D×D 外道の悪魔   作:水飴トンボ

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オリ主がこれほどの大物と戦うのは初かもしれません。


第33話 激突

 背中にじっとりと汗がにじむ。無意識に呼吸が早まっていく。戦闘もできる護衛用のスーツであったが上着やネクタイを外さないと、息が詰まりそうな感覚だ。緊張感は容赦なく大一に襲い掛かっていき、冷静でいることを意識しなければならなかった。覚悟は決まっているとはいえ、これから神と戦うと考えれば当然の反応とも言えた。

 一方でヴィーザルの方は緊張とは無縁といった様子で、ブリュンヒルデに呼びかける。

 

「立会人は任せる。大事な後輩を任せるのに足る男か見ていてくれ」

「余計なお世話です。しかし…そこまでする必要があるのは疑問ですが」

「ま、俺もその辺りは分からないからな。ただ噂の龍と融合した実力は見てみたいだろ」

 

 大会で実績を重ねてきた赤龍帝と違い、彼の場合は噂レベルの話だ。それでもヴィーザルは滾る感覚を抑えられなかった。

 小刻みにジャンプして身体をほぐしていく中、少し先にいる大一は義手を外したところであった。

 

「妙な傷をしていると思ったら隻腕か」

「片腕なのは傷とは無関係なんですけどね。それに私には代わりがありますから」

「それで全力を出せないわけじゃないってことだろ?それだけ分かれば十分だ。準備は?」

「いつでも大丈夫です。全力で相手をさせていただきます」

 

 大一の言葉を聞いてヴィーザルはニヤリと笑みを浮かべると、目配せしてブリュンヒルデを見る。彼女は呆れたように小さくため息をつくと、片腕をゆっくりと挙げた。

 

「それでは…始め!」

 

 合図と共に、ヴィーザルは一瞬、視界から消えたと思わせるほどの猛スピードで接近すると、ハイキックで頭部を狙う。剣の一振りのごとく鋭い一撃であったが、大一は龍人状態へと変化しており、シャドウによって形成された右腕で防いでいた。

 これに対してヴィーザルは表情を変えずに、そのまま連続で蹴りを放っていく。足技をもっとも得意とする彼の動きは踊るように滑らかでありながら、放つ蹴りが苛烈でありだんだんと激しくなっていった。しかもこの速度でフェイントまで挟んでくるため、小技ひとつとってもその実力が垣間見える。

 攻撃はなんとかいなしているものの、このままでは防戦一方になると確信した大一は背中からシャドウの腕を4本生みだすと、蹴りをいなした瞬間にそれらでパンチを打ち込み始めた。

 

「そうくるか…」

 

 4本の腕による連撃に加えて、大一は両腕に錨を掴み振っていく。錨と拳の波状攻撃は硬さと重さを伴い、シャドウが得意とする手数による戦法であった。

 しかしヴィーザルは間を縫うように避けつつ、軽やかな足技で錨や腕をいなしていった。硬度と重さは十分に上げているものの、それをあっさり捌ける技術は傍目には感嘆を抱かせるだろう。間もなく攻撃の隙を見抜いたヴィーザルは大一の胸元に矢のような蹴りを放つ。とっさに錨で防ぐものの、その反動を利用してヴィーザルは一気に後退していく。攻撃というよりも距離を取るための一撃だったのは明白であった。

 

「よし、じゃあ少しだけ本気でいくか」

 

 ヴィーザルが指を鳴らすと、特異な光を放つ鎧が脚へと装着される。この脚甲はかつてオーディンが分け与えたものであり、ロキが生みだしたフェンリルへの対抗策として用いられた逸品であった。試合ではこれを装着して自身よりもはるかに大きな魔物を打ち倒しており、彼の本領が発揮されたことを示していた。

 再びヴィーザルは接近してくると先ほどと同様のハイキックを放つ。すぐに大一はこの一撃をいなそうと右腕を上げるが…

 

『ぐっ!?』

 

 シャドウによって形成された右腕はあっさりと破壊され、痛烈な一撃が顔の側面に入る。そのまま蹴り飛ばされて一気にフィールドの外壁へと叩きつけられた。大一は蹴られて腫れた頬を抑えつつ立ち上がる。血の味が口内に広がり、鋭くなった牙も歯も数本折れているようであった。

 硬度も重さも十分に上げており、向かってくる反応も出来ていた。だがそれでもヴィーザルの攻撃を防ぎきることは出来なかったのだ。

 

『大丈夫か、大一!?』

『ああ、なんとか…』

「休んでいる暇はないぞ」

 

 向かってきたヴィーザルは大きくジャンプすると、鎧をまとった脚でかかと落としを仕掛けてくる。

 すぐに転がってその一撃を回避するも、間髪入れずに再び蹴りの連打で攻めたててきた。

 龍人状態では直接受けるのは厳しいと判断するも、龍魔状態に変化する隙も見当たらない。そうなれば直接の攻撃を受けないことに徹するしかなかった。両手の錨を握り直し、背中の腕の方には疑似防御魔法陣を発生させて盾代わりにして攻撃をいなしていった。

 

「北欧の術式か。簡易ながら自身の魔力を投影できるもの…疑似的な防御に転用しているということか」

『さすがは北欧の主神様。あっさりと解読してきますね』

「これでも魔法はそれなりに詳しいのでな。だがその程度で、俺の蹴りを防ぎきれるか?」

 

 錨の一振りを体勢をぐっと低くして回避したヴィーザルは、そのまま背中に地をつけてブレイクダンスのような動きで複数の黒い腕を一気に薙ぎ払う。加えて大一の腹部に蹴りを2発ほど打ち込もうとして来た。寸前のところで錨で防ぐも、その衝撃で再び後方へと飛ばされた。

 

「上手くやったな」

 

 ヴィーザルはぽつりと呟く。本気で体重を上げていれば、防御が間にあった先ほどの攻撃で大きく飛ばされることは無かった。

 しかしこのまま肉弾戦をしてもジリ貧であると感じたため、その衝撃を利用して距離を取るために魔力を弱めて体重を落としていた。

 飛んでいく途中で体勢を立て直すと、再び体重を上げて地に足をつける。加えて口から数発、魔力の塊を撃ち出した。規模はそれなりなものの、神相手に通じるほどの威力は見込めない。実際、ヴィーザルはあっさりと蹴りで打ち消していった。

 しかしそれも想定の範囲内であった。魔力の撃ち出しは攻撃後の隙に次なる一手を存分にぶつけるための布石でしかなかった。

 

(魔力も魔法も難しいとなれば…)

 

 両手を合わせると大きく息を吸って広範囲の火炎を吹き出す。仙術・火炎太鼓はまだ龍人状態でしか使えない技であったが、彼にとって貴重な遠距離用の強力な技であった。大きく広がる業火は、ヴィーザルを一気に飲み込んでいこうとするが…

 

「おっと、そう簡単には喰らわねえよ」

 

 一瞬で防御魔法陣を展開させると炎を正面から防いでいく。火炎太鼓の規模はかなり大きいため、魔法陣の外から相手を飲み込むこともできるだろうが、このわずかな隙にヴィーザルは片足を軸にして大きく回し蹴りを行う。その風圧で炎は消えていき、同時に視界を遮る戦塵がフィールドを覆いつくした。

 隙を作るのはヴィーザルの方も狙ったことであった。視界が遮られているこの状況で、再び肉弾戦を行おうとしていた。しかし魔力を感知した瞬間、ヴィーザルは怪訝な表情を浮かべる。

 

(なんだ?)

 

 先ほどから打ち合ってきた悪魔と比べるとはちきれんばかりの力強さを感じる。魔力の質は悪魔というよりもドラゴンに近い感触であった。

 間もなくフィールド全体に響き渡るような咆哮が聞こえ、ほとんど同時に戦塵が吹き飛ばされていく。ヴィーザルの視線の先にいたのは3メートル近くの巨躯を持った龍の頭の男であった。

 

「まだまだあるじゃねえか。そうこなくちゃ」

『期待に沿えるようにします』

 

 龍魔状態となった大一は、不敵な笑みを浮かべるヴィーザルに向かっていく。見た目のわりに直進的なスピードは落ちておらず、巨大な牛が突進してくるような印象であった。そのまま丸太のように太い腕で側面からパンチを行う。

 ヴィーザルはその攻撃を大きくジャンプしてかわすと、返すように再び大一の側頭部にハイキックをお見舞いした。

 

「おっと…!」

『ぐっ…』

 

 しかし吹き飛ばずに攻撃を耐えた大一は、ヴィーザルがわずかに面食らった隙に雄牛のような角をぶつけて吹き飛ばした。

 さらに追撃がてらに口から巨大な重力の球を吐き出す。地面を削りながら進んでいく攻撃の規模はもちろんのこと、球体の中であらゆる方向に重力がかかり半端な防御を砕くほどだ。

 

「珍しい技だ。重力でこんなことをする奴は初めて見る」

 

 素早く体勢を立て直したヴィーザルは静かに片脚を上げていく。上げた脚には魔法の光が鎧を照らしていき、力が増幅されていることが肌で感じられる。

 そして驚くことに、彼は真正面から重力の球に蹴りを入れた。互いの攻撃がぶつかり合った瞬間に凄まじい風圧が発生し、空気自身が振動しているように感じられた。立会人のブリュンヒルデもその勢いに踏ん張っており、なんとか目を開けているような様子だ。

 攻撃がぶつかり合う重い音が響いていくが、間もなく重力の球の方がはじけて霧散していった。

 

『…やっぱり強いな』

『僕らの最大の攻撃が…!』

 

 大一の肩から血走った眼玉を見開いたシャドウが驚愕する。この攻防の中で持てる手札は出し惜しみをしなかった。大一が油断していなかったことも、神器であるシャドウはよく理解している。しかし相手はことごとく対処して上回ってくるのだ。

 ヴィーザルは一息つくと、口元のわずかな出血を拭う。

 

「ただの転生悪魔じゃないことは聞いていた。俺の動きに反応できているし、肉弾戦もできる。そのドラゴンの力や妙な神器を扱えているし、魔法や仙術まで可能だ。こんな悪魔は珍しいだろう。だが…足りない」

『…足りないですか』

「お前は強いよ。ただ常識の範囲を超えないな。拳もどこか軽い」

 

 そんなことはない、シャドウは反論したかったが言葉が紡げなかった。

 大一は強くなった。シャドウは自信を持って主張できる。元々の悪魔としての運動能力は反応速度、感知能力などはもちろんのこと、ディオーグやシャドウの力を引き出しているし、魔法や仙術と身につけられる技は努力を重ねて習得している。戦いの勘も研鑽されているだろう。だからこそバラキエルや復活した無角にも勝利を収められた。

 しかし神クラスが相手ではそれでも足りないのだ。タフな精神力や受け継いだ才能、過酷な戦いの経験をあれほど積み上げてきても、神には想定の範囲内の強さでしかなかったのだ。

 先ほどから打ち合っている中で、ヴィーザルはまだ本気を出していないことを強く実感した。強くなったからこそ、全力でないことに気づけた。それは成長であると同時に、恐ろしいことでもあった。上の存在の遠さを目の当たりにしたのだ。

 そんな神々が一誠やリアスたちに一目置いている事実はシャドウにとって恐ろしいことであった。アザゼル杯での活躍や破格の実力から神クラスでも辞退するようなチームが増えている。自分たちがいずれ追い越そうとしているのは、そんな一行ばかりなのだ。彼らの一歩は自分たちが走っても追いつけないほど大きく、どんどん差をつけられているように感じられるのだ。

 

『遠い…!』

 

 目指す世界が遠くなっていく。こんなに離れている筈が無いと思っても、容赦ない現実がつきつけられる。それが何度も繰り返されれば、どれだけタフな信念を持っていてもいずれは折れるのではないかという恐怖に変化していた。

 シャドウが血走った眼を震わせる一方で、大一は岩のような拳を握りなおして構える。

 

『魔力の上げ方が甘かったですかね。申し訳ありませんでした』

「折れないのは大したもんだ。その想いをどうして拳に乗せられない」

『失礼ですが、その考えにあまり共感できないんですよ。大なり小なり想いは誰でも持っている筈です。しかし勝負を決めるのは実力と経験、そして時の運などが大きいと思います』

「達観しているな。それがお前の限界か?」

『大事な相棒の受け売りですよ。だからといってお手上げなんて言うつもりはありません。そもそも限界なんて、私自身もわかっていませんよ』

 

 答えると同時に、大一の拳に重力の塊が展開される。サザージュと戦った際にも行った技であったが、これがヴィーザルにどこまで通じるかは懐疑的であった。

 その巨体で接近していくと、大一は腕をこん棒のように振り回していく。

これに対してヴィーザルはひらりとかわすと、懐に入り込み下から銃弾のような鋭い蹴りを顎にヒットさせた。

 大きく体を浮かせるかのような一撃であったが、すぐに体重を上げてこの攻撃を耐えると、右側からその大きな拳で殴りつけようとする。

 鎧をまとった脚を上げて攻撃を防ぐが、さすがに重すぎたようなのかヴィーザルはわずかに体勢を崩した。この隙に今度は左側からも拳を迫らせて、両側から挟み込むように攻撃をした。

 その狙いに気づいたヴィーザルはわずかにジャンプし、再び大一の顎をめがけて蹴り上げようとする。

 

「なに!?」

 

 しかしそれを見越していたように大一は角にも重力の塊を纏わせて頭を振りかぶっており、ヴィーザルの蹴りを真正面から頭突きで迎え撃った。互いにぶつかり合う中、地に足のついた大一の方が重さに分があり、そのまま押し切った。

 ヴィーザルは地面に叩きつける前に体を起こして着地するも、顔を上げた瞬間に目の前には拳を合わせてハンマーのように振り上げていた大一の姿があった。

 

『うおおおおっ!』

「ちっ!!」

 

 ヴィーザルは自慢の脚力で不安定な体勢からも攻撃を回避すると、すぐに自慢の足技を側面から連続で叩きこむ。魔法の力を乗せることで先ほどよりも一撃は重く、それがマシンガンのごとく連撃されるのだから溜まったものではないだろう。事実、大一は側面に展開した疑似防御魔法陣は瞬く間に砕かれて、その身体に蹴りを受ける羽目になった。

 

『ぐううう…それでも!』

 

 身体を向き直ると同時に、大一は重力の塊を伴ったパンチで攻めたてていく。手数は龍人状態の時よりも減っていたため、わずかな隙にヴィーザルの蹴りが飛んでくるものの、それを受けたうえで逆に生まれる隙を見つけて攻撃していく。持ち前の防御力を利用したインファイトの戦法に切り替えていた。

 

(こいつ…!)

 

 ヴィーザルの口角が無意識に上がっていく。先ほどまでは決定打が足りないように思えていたが、今の肉弾戦は驚くほど充実していた。一撃が重く感じる、蹴った際の感覚が硬く思える、まるで戦いとの中で少しずつ実力が研磨されて自分に近づいているようであった。しかもただ殴り合うだけではなく、きっちりと考えて攻撃の一手を打っている。考えなしに拳を振っているのではなく、どのようにカウンターを狙っているかも予想しているし、攻撃を受ける際も急所を外すようにしている。先ほどの魔法陣による防御もこの肉弾戦に持ち込むために、耐えるためだろうか。序盤の物足りなさも狙っていたのだろうか。

 しかし今はそういった考えをする暇すら惜しく、滾る感覚をぶつけていく方に集中していた。目の前の半龍は蹴りを受けるたびに痣はできるは、牙は折れるわと手負いになっていくのに、そのギラギラとした眼には生気が溢れていた。

 

「さっきの言葉、撤回しよう!楽しませてくれるぜ!」

『まだまだッ!!』

 

 無理やり鼓舞するような声をあげながら大一は攻撃を続けていく。ヴィーザルもダメージを受けつつも嵐のような蹴りを止めない。この戦いに終わりはないようにすら思えるほどであった。

 しかし間もなくヴィーザルの渾身の蹴りが大一のみぞおちに入り込んだ。一瞬、魔力が弱まり身体をくの字に曲げて大きく後退した。同時に右腕がバネのように縮まっており、その眼光はハッキリとヴィーザルを捉えている。そして彼も自信に集中している視線には気づいていた。

 

「来い!」

 

 ヴィーザルの声に呼応するように、大一の腕が一気に伸びていき重力の塊を纏った拳が大砲の弾のように突き進んでいく。

 この一撃に対して、ヴィーザルは魔法の力を纏ったハイキックで受け止めた。雷のような轟音と共にぶつかり合った攻撃は、周囲に空気が振動しているかのような衝撃が伝わり、その威力を物語っていた。

 激しいぶつかりは10秒ほど続き、2人は反対側へと吹き飛んでフィールドの外壁に叩きつけられた。

 この結果にブリュンヒルデも意外そうに眼を見開き、ただ驚きの感情を顔に表していた。

 間もなく、ヴィーザルは肩で息をしながらぶつかった衝撃による戦塵の中から現れた。

 

「ヴィーザル様、大丈夫ですか…?」

「これくらいで倒れるような男じゃねえよ。むしろ思っていた以上に燃えてしまった。最後の一撃とかは特にな」

 

 額の出血を抑えつつ治癒魔法で簡単な処置をすると、フィールドの反対側を見る。少しずつ戦塵が晴れるとうつ伏せになって倒れこんでいた大一の姿が確認できた。

 

「想像以上だったよ、お前は。約束通り、例の条件は破棄してやる。ただ試合の方は全力で来いと言っておいてくれ。ブリュンヒルデ、あいつの治療を頼む。俺は先に戻って取り消しの旨を文書にしておこうか」

 

 軽快な足取りでヴィーザルはフィールドから去っていく。これほどの戦いを見せてくれたのだから、赤龍帝との試合も期待できると確信していた。

 一方でブリュンヒルデは小さなため息をつくと、倒れこんでいる大一へと近づいていく。龍魔状態は解除されており瀕死のように見えたが、呼吸は落ち着いていた。ただ小さく歯を食いしばっており、その様子に彼女は訝しげに眉をひそめる。

 

「まさか本気で勝つつもりでしたか?」

「…そのつもりでしたよ。数分で実力差を実感しましたが」

「そのわりには最初は全力で無かったようですが」

「まさか…自分はいつだって本気ですよ。どういった戦い方がヴィーザル様に1番対応できるか分からなかったから…」

 

 この男がどこまで本気で信頼できる人物なのか、彼女は懐疑的であった。先ほどのヴィーザルのように正面からぶつかり合えば思うことがあるのかもしれないが、そこまで行う道理も無いし主が認めたことを自身が口出しするつもりも毛頭なかった。

 ブリュンヒルデは魔法で大一を起き上がらせると、そのまま肩を貸して出口へと向かっていく。

 

「そういえば…あなたは赤龍帝たちのように抗議しませんでしたね」

「あいつらとは立場が違うので…それにヴィーザル様がどんな方か…知らなかったから…」

「…どういうこと?」

「だってロスヴァイセさんが…ヴィーザル様と気が合うかもしれなかったじゃないですか…それであの人が幸せになれるなら…」

 

 なんとも呆れた男だ。自分が幸せにするという甲斐性も持てないのだろうか。ただ後輩のことを考えていたことに安堵したのも事実であった。

 何度目かというため息をつくと、ブリュンヒルデはそのまま大一を抱えて歩を進めるのであった。

 




まあ、実力的には無理でしょうよ…。
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