D×D 外道の悪魔   作:水飴トンボ

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一誠側は原作とほとんど変わらないのでほどほどにして、今回のメインはリアス達の方です。


第39話 必死

 爆発音にも劣らない大歓声が包むスタジアム、そこで行われている試合は多くの者を魅了した。疑似ユグドラシルの下方から頂上近くまで、各階層で行われている戦いはアザゼル杯きっての名勝負といっても過言ではないだろう。圧倒的な実力を持つ神々を相手に、世界に名を轟かす赤龍帝のチームが食らいついているのだから。

 その最中、頂上近くでは兵藤一誠とヴィーザルが激しい格闘戦を繰り広げていた。疑似龍神化した一誠が鋭い拳を入れようとすると、ヴィーザルの方は高速で避けてより重い蹴りを放つ。かと思えば、その一撃を受け切ってアスカロンを振り避けようとした相手に、隠し玉であったアスカロンⅡで追撃をしかける。虚を突かれてヴィーザルもダメージを受けるも、力を入れて強引に出血を止めるなど、荒々しくもレベルの高い攻防が展開されていた。

 

「やるやる。神相手に喰らいつきやがって」

「ま、こちらも死ぬ気でいろいろしてきたんすよ」

 

 帝釈天から与えられた秘薬、それが一誠と神器を格段にレベルアップさせていた。思い返せば激しい苦しみであったが、それに見合った効果を確かに感じ取れた。疑似龍神化は1時間以上も続くようになっており、神相手に一歩も引かないほど善戦していた。

 

「ロスヴァイセさんや兄貴のことでいろいろ振り回された分も含めて、全力でやらせてもらいます」

「ハハハ、言ってくれる。しかしお前の兄貴は間違ってなかったな。あんなことはしなくても」

 

 再びヴィーザルが高速で接近したかと思うと、激しい蹴りの連撃が迫ってくる。これに対して、一誠はすぐに両腕を交差させて防御の姿勢を取っていく。

 

(重いッ…!)

 

 一撃が鎧の内部にまで響き渡るような衝撃に一瞬だけ後退しそうになった。

 しかしすぐに踏みとどまり、それどころか前進しようとする素振りさえあった。打ち付ける雨のような激しい攻撃を防ぎ、間もなくわずかに緩んだ隙を狙った鋭い拳の一撃を腹部へと放つ。

 ヴィーザルも咄嗟に気づいてカウンターの蹴りを放ち、互いの攻撃が相手を後退させてふたたび距離を取らせる結果となった。

 

「神とも戦える奴が多くなったな。この戦いで残っているのは、そんなのばかりだ。不安視する神も多いが、俺としては世界が強くなっていくことは悪くない」

 

 不敵に笑うヴィーザルは床を軽く踏んで脚甲を整える。同時に魔力がぐっと高まるのを、一誠は感じられた。

 

「俺らも強くなる機会を貰っているようなものだ。簡単に追い抜かれたら神としての威厳も無い。そしてなによりも…こんな感じで楽しめるしな」

 

 目の前で放たれる強いプレッシャーを感じて、一誠は確信した。ヴィーザルはまだ本気を出していないと。単純に本領を発揮していないのか、それとも他に奥の手があるのか、それはまだわからない。しかし兄と模擬戦をした際にも、底知れなさがあったようだから元々相手の実力を見極めたうえで、さらに仕掛けてくるタイプなのかもしれない。

 これに一誠は臆することはなく、むしろ高揚していた。自分の実力がいよいよ神の本気に差し迫っていること、それほどの相手から認められていること、いよいよ恋人やライバルに並んだことと多くの要因があった。

 同時にごたごたに巻き込まれたことへの想いもぶつけられる状況に、不思議な喜びもあった。

 この試合には必ず勝つ、あらゆる想いが入り混じったうえでその決意は盤石なものとなっていた。

 

────────────────────────────────────────────

 

 同時刻、彼の恋人であるリアスも強敵と対峙していた。もっともその想いは高揚とは真逆で、むしろ舌打ちをしたくなるような疲労感を抱いていた。

 突撃してきたベルディムは祐斗と朱乃がそのまま相手することとなり、リアス、小猫、ギャスパーの3人でアリッサを無力化するつもりであったが…。

 

『くっ…!どうして…』

 

 白音モードとなった小猫が苦悶の声を上げながら、向かってきた刃を掌底で受け流す。彼女に対して、青と白銀の入り混じった鎧騎士が攻撃を仕掛けていた。腕が4本あり、すべてに輝く剣を持っていた。祐斗ほどの剣術ではないものの、それぞれの腕から繰り広げられる斬撃には手を焼いている。

 しかしそれ以上に疑問であったのが、仙術が全く通じないことであった。先ほどから何度も火車で攻撃を行うも、燃え尽きずに浄化の炎をあっさりと払って攻撃へと転じてくるのだ。

 その少し後方では禁手化したギャスパーが闇の獣たちを使役して、大量に展開された刀剣を持った骸骨や拳銃を携えた西洋人形たちを迎え討っていた。

 

『なんて多さだ…!』

 

 相手を飲み込む闇の獣たちをものともせずに、奇妙な骸骨たちは攻めたててくる。何度も何度も飲み込んだり、能力を停止したりして無力化するも、この軍勢はまったく減らなかった。というのも、この軍勢の後方に様々な色の水晶で造られたような長い腕の魔術師が、魔法陣によって骸骨たちを召喚させていた。

 この大元を倒そうにも骸骨たちが肉壁となり、さらになんとか近づいた獣たちも水晶が放つ魔法によって倒されていくのであった。

 このようにアリッサが召喚した奇妙な相手に数的有利は覆されており、リアスは上空にて彼女と一騎打ちをしていた。

 

「いい加減に通してほしいものね」

「無理な相談よッ!」

 

 リアスはハッキリした声で答えながら、アリッサが展開した魔法陣から飛び出してくる巨大な針と複数のメスを、滅びの魔力で消滅させていく。この攻撃の合間を縫うように、炎の渦が蛇のように迫ってくるが、すぐに気づいて魔法陣で防ぎ切った。

 このような防戦一方の状況に小さく息を吐く。あくまで今回の戦闘は相手の無力化であり、しかも周辺の結界への影響を踏まえると、大技の使用は控えるべき状況であった。そのため必殺技でもある「消滅の魔星」は使えなかったし、ギャスパーと距離を取らされた状態では合体技も難しい。

 強くなっている自負はあるものの、それでも崩せない相手に煮え切らない感情を抱いていた。

 

「まったく厄介ね…!」

「その言葉、そっくり返すわよ」

 

 空中に展開させた魔法陣を足場に、アリッサは苛立ちながら答える。彼女の方も秘蔵の人形を使役していたため使える魔法攻撃には制限があり、しかもその人形たちでいまだに相手の頭数を減らせないことに己の未熟さとリアスたちの実力を恨んだ。

 

「同郷の顔なじみに会うだけで、ここまで邪魔されるとは困ったものね」

「元テロリストに会うために、わざわざ結界を潜り抜けて来た相手を通すわけないでしょう。こんなことをして、戦争をするつもり?そもそもギガンの話では、あなたたちは協力関係じゃないのにどうして?」

「知りたいなら力づくでやってみなさいよ。もっとも知ったところでどうしようもないけど」

 

 素早く腕を動かすアリッサの前に複数の魔法陣が展開されていく。見たこともない術式であったが、それぞれの魔法陣から炎、水、雷、風の攻撃が噴き出していく。単純な魔法による攻撃であったが、その速度と威力は目を見張るものであった。

 だがリアスも負けてはいない。相手の攻撃に対応するように滅びの魔力を撃ち出して一気に相殺し、それどころか攻撃を放っていた魔法陣ごと消滅させた。

 これにはアリッサも驚いたようで足取りがふらついてしまい、すぐに後方にいくつかの足場となる魔法陣を展開させて距離を取った。

 

「ならば、その通りにやらせてもらうわ」

 

 静かに、しかし妙に響く芯のある声でリアスは言う。ギガンに接触する理由は不明だが、このまま彼女たちの侵攻を許せば、冥界に混乱を招きかねないような気がした。下手をすれば、また戦争になるかもしれない。それを未然に防ぐためにも、彼女をここで止めなければならないのだ。

 

「ふぅ…さすがは世界を救った悪魔。つくづく自分の弱さが情けなくなるわ。これでも独立者として認められているのに…でもこの戦いは貰ったわ」

「どういう意味?」

「私程度にてこずっているようじゃ勝てないってこと」

 

 アリッサの答えに、リアスは後方の丘で祐斗たちと戦っているベルディムの存在を感知する。アスタロト家の凶弾、先日の襲撃から素性は彼女の方でも調べていた。記録は少なかったものの、無法な性格と道楽という名の問題行為、それらを押し通す実力が垣間見え、厄介者として名を馳せたことを納得させられた。先日の襲撃も踏まえれば、一筋縄ではいかないことも理解している。

 同時に彼女は眷属が負けるとは微塵も思っていなかった。

 

「あの男が危険であることは理解している。でもそっちこそ、私たちを甘く見ていないかしら」

「ただの転生悪魔でしょうに。ベルは物が違う。あいつは天才よ」

「ええ、そう言うでしょう。でも才能なら私の眷属も負けちゃいない。それに何よりも必死で鍛え上げて強くなった」

 

 リアスは挑むような口ぶりで主張する。テロリストたちから世界を守るため、アザゼル杯に勝つため、理由はこれまで様々であったが常に並々ならぬ努力と修業を重ねてきた。その培った経験は自信となり、同時に仲間たちへの信頼にも結び付いていた。

 

「どれだけ才能があろうとも、それに負けないほど努力してきたのが私たちよ。簡単に勝てるとは思わないことね」

 

────────────────────────────────────────────

 

 刃の交わる金属音が、木場祐斗の耳に響く。それに伴って迫ってくる鎌の攻撃を、彼はグラムでいなしていった。振り方こそ雑なものの、力はある上に攻撃速度も素早いため、結果的に防戦一方の状況となっていた。

 

「おらおら!守ってばかりか!」

「しつこいな…!」

「祐斗くん、しゃがんで!」

 

 朱乃の声に応じて、素早く体勢を低くする。それとほぼ同時に雷光が真っすぐにベルディムの顔に向かっていった。

 相手は咄嗟に雷光を鎌で受け止めるが、そこに追撃をかけるように腹部を狙って突きを行った。

 この一撃すらも鎌で防がれるが体勢を大きく崩しており、祐斗はそのまま押し切ってベルディムを後方に吹き飛ばし、丘の岩場へと激突させた。

 

「あれで倒した…とは思えませんわ」

「同意します」

 

 横に降り立った堕天使化した朱乃に、祐斗は答える。前衛を彼が引き受けて、後方から彼女が攻撃する布陣であったが、いかんせん相手も素早さと運動量に関してはすさまじかったため、なかなか攻撃が当てられなかった。そこで先ほどのように祐斗が抑えているところに、朱乃が攻撃を撃ち込むという戦法を取った。

 見事に攻撃は決まったが、どちらも手ごたえはあまりなかった。加えて、先日の襲撃で聖剣の斬撃や神滅具による氷すらも耐えたことを踏まえると、あの程度の攻撃でダウンしているとは思えない。

 案の定、ベルディムはあっさりと立ち上がると値踏みするような視線を向けてくる。妙に光の宿る目は、土と砂にまみれている身体と比べてより輝いているように見えた。

 

「んー…死神の鎌は頑丈だが、どうも使い慣れねえな。やっぱり剣の方が好きだな。よし、決めた。その魔剣を戦利品として貰おう。前の剣もお前らの仲間に折られたからな」

「負けるつもりはサラサラ無いよ。禁手化!」

 

 祐斗の声と共に複数の龍騎士が現れ、一斉に攻撃を仕掛けていく。以前と比べて、自身の技術をかなり反映できるようになっており、連携の幅も広がっていた。3体の騎士が正面から斬りかかり、さらに他の騎士が左右からも時間差で攻撃を仕掛けようとする。

 これに対して、ベルディムは鎌で正面にいた1体を力任せに叩き割った。他の斬撃は受けるもののあまり気にした様子はなく、それどころか破壊した騎士の一部を掴んで、他の騎士を殴りつけ始めた。さらに左右からの攻撃には鎌と奪った剣で防ぎつつ、身体を回転させて一気に蹴り飛ばした。

 

「対応が早い…だったら、手数だ」

 

 祐斗はさらに龍騎士を呼び出すと、再びベルディムへと攻撃を仕掛けさせる。20体はいるであろうかという数が、あらゆる方向から狙っていた。

 

「数だけじゃ俺の首は取れねえぞ!」

 

 ベルディムはさっそく右から来た騎士を蹴り上げる。それを皮切りに向かってくる斬撃をひねって避けたり、鎌や奪った剣で捌いたりと、数の差を感じさせないほどの動きで暴れていった。

 だがこれも祐斗の狙いであった。ここまで戦って分かったのは相手の強みは戦闘センスと身体能力だ。向かってきた攻撃にどう対応すればよいか、それを瞬時に判断して独特の動きで回避しており、攻撃も致命傷にならないように、魔力で身体強化しつつ受ける箇所を選んでいる。戦い方としてはシンプルながらも厄介であった。

 とはいえ、現時点ではリゼヴィムたちのような特殊能力は見受けられない。そのためわざわざ騎士たちで行動範囲を狭めて、強力な一撃を叩きこもうとしていた。

 

「準備できましたわ」

「わかりました。よろしくお願いします」

 

 隣で魔力を溜めていた朱乃が上空に向かって魔力を放つ。すると黒雲が現れてゴロゴロと不穏な音を鳴らしていた。間もなく黒雲から先ほどよりも規模の大きな雷光がベルディムに落ちていく。その威力はかなりのものであり、結界に影響こそ出なかったものの、轟音によって空気が震えているような錯覚を感じるほどであった。

 しかし煙が晴れていくと、そこには煤にまみれながらも余裕な表情のベルディムが立っていた。

 

「ハッハッハー!なかなかの威力だが、見立てが甘いな!これだけ肉壁になるのがいれば、防ぐのにも事足りる!」

 

 そう言って両腕に持っていた騎士の残骸を投げ捨てる。彼は大量に展開された騎士を盾にして、朱乃の雷光を防いでいた。もっとも完全に防ぐことは出来なかったようで身体にはいくらか雷光を受けた跡として煙が上がっている上に、あまりにも強い衝撃がかかったため、左肩が外れていた。それでも声の張りや表情からはまだ余裕を感じられる。

 

「あらあら、まだ私たちの攻撃は終わっていませんわ」

 

 その瞬間、ベルディムの視野外から祐斗が一気に接近する。音で気づくベルディムであったが、スピードでは祐斗の方も負けてはいない。魔剣グラムを使って、師匠直伝の三段突きを叩きこむ。

 朱乃の雷光ですら囮として使った作戦は成功し、咄嗟に防ごうとしたベルディムも防御が間に合わず、まともに受けて再び吹き飛んでいった。

 朱乃は衝撃で砂ぼこりが舞う辺りを油断なく見ながら、息を切らす祐斗に話しかける。

 

「手ごたえはどうかしら?魔力の感覚はあるから死んではいないはずだけど…」

「充分ですよ。これでおとなしくなればいいですけど」

 

 内心、倒れてくれという願いを2人とも抱いていた。この短時間でも分かるほどの凄まじい運動量は衰えた様子が無く、スタミナは一誠や大一すらも超えているように思えた。そんな相手と長期戦を行うのは避けたかった。

 だがその願いは届かず、せき込みながら立ち上がってきた。背中から悪魔の翼が生えており、それをクッション代わりにしたのだろう。もっとも身体の至る所に傷があり、特に左腕は血にまみれている上に不自然に曲がっている。そこまでなっても鋭い歯をむき出しにして歓喜の表情をしていたことに、2人とも背中にゾッと冷えるような感覚が走るのであった。

 

────────────────────────────────────────────

 

「ずいぶんな自信ね、リアス・グレモリー。でもまあ…そう思っているなら、ベルには勝てないわよ」

 

 リアスの啖呵にもまるで動じずにアリッサは淡々と言葉を続けていく。

 

「たしかにあいつにはずば抜けた戦闘センスがある。それで悪魔の中でも天才などと呼ばれたこともあったらしいわ。しかし本領はそこじゃない。戦うことが好きで好きでたまらないのよ」

「そういう無茶苦茶な相手ならいくらでも見てきたわ」

「どうかしら。女も酒も好きで、無法なことを繰り返したと思われている。しかしそれ以上に戦うことが好きなのよ。どんなに強い相手でも、どんなに弱い相手でも戦うこと自体が楽しくて仕方ないの」

 

 独立者の中でも頭一つ抜けた強さを持つのがベルディムであった。異界の地に来て間もない頃、彼女も敗北したことがあった。その後、彼の経歴を聞いてその狂気と実力の理由を知るのであった。戦うことをより楽しむには実力が必要だ。それに負けて死んだら戦うこともできない。だから強くなる。そのための努力や修行は惜しまないし、それすらも趣味の一環となっていた。

 

「そんなイカレた奴が負けるわけないでしょう。そして私も───」

 

 アリッサの右手の平に魔法陣が展開される。先ほどの攻防の時よりも間違いなく強力な感覚であった。

 相手の様子にリアスも魔力を集中させる。才能と家柄、血筋が重要視されていた旧悪魔時代の常識から外れた悪魔、奇妙な兵を操る付喪神もどき…少しだけ攻勢に出たところで油断できない相手であることを改めて実感すると、気持ちを引き締めなおすのであった。

 




碌な性格してない…。
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